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慢性腎不全 漢方薬 12(大黄の応用)(腎病漢方治療 396報)

2014-06-24 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

大黄の基礎および臨床研究は進んでいます。本稿では腎不全に特化してお話します。内容は中医学表現が多いので難解な印象を受けられるかも知れません。気軽に読み進めてください。「大阪の商人」の如き、実利、実学なのです。机上の空論ではありません。<o:p></o:p>

 

大黄は血分熱毒を清解し、血中の尿素窒素等の窒素産物貯留を降下改善します。(古くは)「神農本草経」に「大黄味苦寒、瘀血血閉を下ろし、癥瘕積聚、留飲宿食を治し、腸胃を清め、古きを排出し新しきに到り、通利水谷、調中化食、五臓を安和する」とあります。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全で湿熱濁毒内蘊と弁証される場合、出現する症候は、胃脘張満、悪心嘔吐、口臭、全身から呼気まで尿臭があり、大便は乾燥し閉結不通、舌質紅、舌苔垢膩、脈弦滑あるいは沈滑などです。<o:p></o:p>

 

かかる時に、大黄を用いれば、苦寒清瀉熱結、濁毒除去に作用し、同時に砂仁 草果仁 蒼朮 藿香の芳香醒脾、化湿辟?(化湿し汚物を除く)を配伍することにより、相互調和がなされ、苦寒傷脾(胃)にならず、また辛燥傷陰の弊も無く、服用後に血清クレアチニン、BUNを比較的迅速に下降させます。臨床症候も、常に随時改善されます。<o:p></o:p>

 

大黄は一般には醋炙大黄(醋で炮制した大黄)を10g15g用いますが、具体的な量の調節は患者の毎日の大便回数を根拠に調節します。患者により程度の異なる腹瀉がありますが、毎日便通が2~3回が宜しく、軟便を基本とします。水様便が続くようになれば大黄の量を減じ、損傷胃気を防止します。<o:p></o:p>

 

中医による慢性腎不全の治療は大多数が泄濁を立論としていますが、さまざまな薬物により、大便、皮膚(汗)中に老廃物質を体外排出させますが、大黄の応用が頻度的には疑いも無く最多です。<o:p></o:p>

 

現代薬理学で実証されているのが、大黄鞣質(タンニン物質)と大黄蒽?アントラキノン)です。大黄鞣質(タンニン物質)は体内の窒素代謝を改善させ、両者は腎糸球体での係蹄壁の通過性にも関与し(詳細は省きます)、蛋白合成には基本的に抑制的に作用し、糸球体細胞の成長増殖に抑制的に作用することを付記します。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全は脾腎両虚が本ですが、若し舌質が淡で、大便溏泄、泄瀉大便溏薄、便通が毎日5回を越すようであれば、脾胃虚寒或いは脾腎陽虚であり、大黄は慎用或いは使用しないほうが良く、不用意に使用し続ければ、脾胃虚寒或いは脾腎両虚の病情を悪化させます。この類の患者に対しては、人参 黄耆 白朮 葛根 山茱萸 何首烏の類の健脾益腎の薬剤を併用すれば、満意(充分に納得のいく)の効果を収めることが出来るのです。<o:p></o:p>

 

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大黄の臨床応用の実例は非常に多く、過去にも多数の報告をいたしました。<o:p></o:p>

 

基本に戻り、教科書的な「要薬 大黄」を再度ご参照ください。<o:p></o:p>

 

要薬 大黄:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121106<o:p></o:p>

 

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2014624日(火)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 11(八大治法 8 補脾腎、瀉湿濁、解毒活血法)(腎病漢方治療 395報)

2014-06-23 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

慢性腎不全の病態は多様であり、治法もまた多様であり、本日の講座までに、八大治法の七法、即ち、①芳化湿濁法:方用:平胃化湿湯(へいいかしつとう) ②化湿濁 苦寒瀉熱法:方用 化濁飲(かだくいん) ③活血解毒法:方用 加味活血解毒湯 ④清肺胃利湿熱法:方用 加味甘露飲 清熱利湿分消法:方用 中満分消飲(ちゅうまんぶんしょういん) 益気血補脾腎法方用 帰芍六君湯(きしゃくりっくんとう) 脾腎双補法:方用: 加味参耆地黄湯(かみじんぎじおうとう)をご紹介しました。<o:p></o:p>

 

最終稿として、⑧補脾腎、瀉湿濁、解毒活血法:方用 補脾腎泄濁湯をご紹介します。<o:p></o:p>

 

面倒な中医学用語が並びますがご容赦ください。慢性腎不全は往々にして、脾腎両虚陰陽倶傷湿毒貯留虚実挟雑を示します。臨床症候は、面色蒼白、眩暈、倦怠乏力、気短懶言、唇淡舌淡、腰膝酸軟、腹張嘔悪、口臭、舌淡紫苔黄、脈沈滑或いは沈緩等です。<o:p></o:p>

 

治療には補瀉兼施正邪兼顧、即ち補脾腎、瀉湿濁、解毒活血の補と瀉を合わせ、扶正し邪を留めず、祛邪して正気を傷つけないことが必要です。<o:p></o:p>

 

方用: 補脾腎泄濁湯(ほひじんせつだくとう):人参15g 白朮15g 茯苓15g 莵絲子20g 熟地黄20g 淫羊藿15g 黄連10g 大黄7g 草果仁10g 半夏15g 桃仁15g 紅花15g 丹参20g 赤芍15g 甘草15g 水煎服用<o:p></o:p>

 

本方は、益気健脾補腎の品と、大黄 黄連 草果仁の泄熱化濁の品、桃仁 紅花 丹参 赤芍の活血の品が配伍され、扶正祛邪 消補兼施となります。補して消を得る、即ち補にして滞ること無く、消は補を得る、即ち泄濁作用が顕著であり、臨床でこの方を頻用して明確な効能を得ることができます。一つに、危を転じ安とし、二つに、病勢の進展を顕著に延緩することが可能であり、高窒素血症期でも、多数の症例で臨床的緩解に導くことが可能なのです。<o:p></o:p>

 

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2014623日(月)


慢性腎不全 漢方薬 10(八大治法 7 脾腎双補法)(腎病漢方治療 394報)

2014-06-22 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

慢性腎不全の一部の患者群に、次のような症候、即ち面色蒼白、腰膝酸痛、下腹部冷痛、腹瀉が止まらない、畏寒肢冷、夜尿頻多、尿の切れが悪く排尿が完全に終わるまでぽたぽたと尿が出る、嘔吐、腹張、顔面及び四肢の浮腫、舌淡胖大にて歯痕がある、苔白滑、脈沈細遅弱などである。これらの症候は、多くは脾陽虚損及び腎陽虚衰によるものです。中医学的には古くから、腎中の命火は脾土の母といわれ、明代の張景岳は次のように認識していました。「命火は釜底(かまどの下)の薪(たきぎ)のようなもので、腎陽が不足すると温化が不能となり、泄瀉 水腫等を起こす。命門火衰は脾の運化も不能にさせ、釜底(かまどの下)の薪(たきぎ)が無ければ、消化(腐熟)も失う。」<o:p></o:p>

 

清代の医家沈金?は、脾腎双補が治療上宜しく、「雑病源流犀?」の中で「脾腎は兼補が宜しい。腎虚には補が宜しく、更に扶脾を当てる、壮脾には養腎を忘れてはならない。」<o:p></o:p>

 

脾と腎の関係は極めて密接であり、先天(腎)と後天(脾)は相互滋生、相互促進の関係にあり、脾腎には協調の保持が必須なのです。<o:p></o:p>

 

「腎は薪(たきぎ)と水の如く、脾は鼎(かなえ)と釜(かまど)の如し」とは脾腎の相互滋生、相互促進の関係の喩えであり、脾の運化作用には必ず腎陽の温煦蒸化を得てこそ、気血精微の生化が可能になり、(付言すれば)腎精も後天の脾の運化精微に滋養されなければなりません。脾腎の正常な相互滋生の生理機能により、生命体には生機と活力が充満するのです。張琪氏の常用方剤は脾腎双補方、加味参耆地黄湯です。<o:p></o:p>

 

方用: 加味参耆地黄湯(かみじんぎじおうとう):黄耆30g 党参20g 白朮20g 当帰20g 遠志15g 何首烏20g 五味子15g 熟地黄20g 莵絲子20g 女貞子20g 山茱萸20g 淫羊藿15g 仙茅15g 枸杞子20g 丹参15g 山楂15g 益母草30g 山薬20g 水煎服用<o:p></o:p>

 

方中、参耆の人参 黄耆 白朮 山薬は益気健脾に、何首烏 淫羊藿 仙茅 莵絲子は補腎陽に働き剛燥に非ず、枸杞子 山茱萸 熟地黄 五味子は腎陰を滋助し、人参 白朮の合用で、脾の運化作用の障害を防止し、温補腎陽を配伍し陰陽を調和させ腎気を助け、腎機能を回復させ、益気補血に働きます。慢性腎不全の病の本質は脾腎両虚にあります。<o:p></o:p>

 

配伍の妙は、丹参 当帰(尾) 益母草 山楂の活血の品です。腎血流量を改善させ、補と消の合用といえます。<o:p></o:p>

 

注意すべきは苦寒大黄の瀉下傷脾です。腎不全においては既に高窒素血症の改善などの要薬ですが、苦寒傷脾を知らずして、漫然と投与した結果、病情が悪化する症例もありますので、適時適用を心がけなくてはいけません。<o:p></o:p>

 

加味参耆地黄湯の臨床例は過去の記事をご参照ください。<o:p></o:p>

 

IgA腎炎:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140110<o:p></o:p>

 

慢性腎不全:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131212<o:p></o:p>

 

糖尿病性腎症:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140321<o:p></o:p>

 

まだまだ沢山ありますが、消化不良を怖れて、上記の三例にしました。<o:p></o:p>

 

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2014622日(日)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 9(八大治法 6 益気血補脾腎法)(腎病漢方治療 393報)

2014-06-21 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

益気血補脾腎法の漢字表現は益気血(気血を益し)補脾腎(脾腎を補する)と分割すると理解しやすいでしょう。そもそも補益という漢字があるのです。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の症例に対して、活血泄濁等の治療を行い、クレアチニンや尿素窒素(BUN)が下降し、病情が緩解の兆しを見せた時に、本法を併用するのです。脾虚の症候を主たる症候としている場合に、益気健脾和中の治療を行います。常見される症候は、面色無華、唇淡舌淡、乏力倦怠、不思飲食、脘腹張満、悪心があり嘔吐しそうになる、便秘或いは腹瀉、脈象沈弱、舌苔白膩等であり、多くは貧血を伴い、中医学的な見地からは脾胃機能の虚弱がもたらした症候と捉えます。<o:p></o:p>

 

脾の中医学的生理では、水湿の運化のみならず、水谷精微の運化もつかさどり、平易に言えば、水穀精微から後天の精の本が吸収され、水穀精微の「栄養部分」は営気となり脈内に分布し肺、心を経て血となり、水穀精微の「力」の部分は衛気となり肺の主気作用により全身の脈外に分布します。脾の水湿運化とは、水湿を肺と腎に運ぶ作用を指し、肺、腎は気化作用により水湿を汗液と尿液に変えて体外に排出し、津液の生成、代謝に深く関与するのです。これらは脾の昇清を主る機能によるとされます。勿論、脾の昇清降濁の降濁とは「濁」なるものを腸に降ろす(大便に降ろす)ことを指します。唐容川1846-1897 清代中医学者 中西医?通医義で知られる)の「血症論」で言うように、脾胃は気血生化の源なのです。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の病機の主要なものの一つが脾胃虚弱であり、水谷精微の正常な運化が損なわれ、気血化生の源が虚弱になれば貧血、乏力等の一連の脾胃虚弱の症候を呈し、脾胃の機能の強弱と慢性腎不全の予後には密接な関係があり、補脾胃と益気血の治療は慢性腎不全治療の中で充分な重要性を持つと考えられます。<o:p></o:p>

 

方用 帰芍六君湯(きしゃくりっくんとう)人参15g 白朮20g 茯苓15g 甘草10g 半夏15g 陳皮10g 白芍15g 当帰15g 水煎服用<o:p></o:p>

 

慢性腎不全で脾胃虚弱に属する症例では、特に脾胃陽虚には六君子湯を使用することが可能ですが、臨床観察からは脾胃陰陽倶傷の症例が多く、発病慢性化の過程で多くは陽損が陰損に及び、この時に温補剛燥の薬剤を使用すると、陰をますます傷することになります。往々にして、五心煩熱、頭痛、咽干、鼻出血、歯肉出血等の症候が出現します。この時に、若し、甘寒益陰の品、即ち陰柔滋膩の性質を持つ品を用いれば、陽気の布化を妨げることもあり、脾胃の運化機能を傷害し、腹張満、便溏嘔逆等の諸症が加重されることになります。これが故に、剛柔の薬剤は皆、使用は制限されます。ところが、気味中和(性質温和)の六君子湯は補益助胃 滋助化源 益気血に最も適しています。但し、人参は甘温、白朮は苦温、半夏は燥に偏する性質を持ち、茯苓の淡滲を配伍しても、まだ燥の嫌いがあり、補気に重きがあり、やや養血にかけるのです。故に当帰 白芍の二薬を加味し、帰芍六君湯としたのです。<o:p></o:p>

 

当帰は補血、養血の要薬であり、潤燥の性質もあり、白芍は酸苦微寒、斂陰養血、柔肝理脾に作用し、当帰 白芍の二薬で六君子湯の偏燥を調済(調和)し、柔肝かつ脾胃の運化を助け、補血養血と補気を重ね合わせた帰芍六君湯腎性貧血に用いれば頗る有効な結果を得られます。<o:p></o:p>

 

帰芍六君湯の臨床応用については、過去の記事をご参照ください。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全220報:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131229<o:p></o:p>

 

慢性腎不全221報:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131230<o:p></o:p>

 

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2014621日(土)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 8(八大治法 5 清熱利湿分消法)(腎病漢方治療 392報)

2014-06-20 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

慢性腎不全の病態で、脾胃不和、湿熱中阻、清濁混交、水気内停と弁証される症候、即ち浮腫張満、小便少、五心煩熱、悪心嘔吐、口干、口中尿臭、舌質紅苔膩、舌体胖大、脈弦滑に対応する方薬を(再度)御紹介します。<o:p></o:p>

 

方用 中満分消飲(ちゅうまんぶんしょういん):白朮15g 人参15g 炙甘草10g 猪苓15g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 茯苓15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉15g 橘皮15g 知母15g 黄芩10g 黄連10g 半夏15g 枳実15g 川厚朴15g 水煎服用<o:p></o:p>

 

方中、苦寒の黄連 黄芩は清熱除痞に、乾姜 砂仁は脾胃を温め運化除湿を助け、白朮 人参 甘草 茯苓(四君子湯)は益気健脾に作用し、厚朴 枳実 姜黄は開鬱理気散満に働き、半夏 陳皮(橘皮)は和胃降逆に、猪苓 澤瀉 茯苓は利水に、知母は水の上源である肺を清する組成になっています。<o:p></o:p>

 

本方は「内経」の記載によるものです。「素問 陰陽応象大論」の「中満者、内に之を瀉す」に根拠とする分消法であり、「辛熱を以って散じ、苦を以って瀉し、淡滲をもって利し、上下分消(湿熱)となる。」という記載から後世の医家、例を挙げれば李東垣は(蘭宝秘蔵)で中満分消飲を創方しています。清昇濁降となれば張満は自ずと除かれます。この上下分消法は慢性腎炎の水腫張満、口干苦、悪心、小便不利、高窒素血症(腎不全)などに有効な法であるとされます。<o:p></o:p>

 

中満分消飲の臨床応用の実例は過去の記事をご参照ください。<o:p></o:p>

 

ネフローゼ症候群:<o:p></o:p>

 

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130601<o:p></o:p>

 

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140117<o:p></o:p>

 

腎不全:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140416<o:p></o:p>

 

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2014620日(金)<o:p></o:p>