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慢性腎炎 茯苓導水湯(ぶくりょうどうすいとう)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療293報)

2014-03-13 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

記憶力の良い読者でしたら、ネフローゼ症候群 茯苓利水湯加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療257報)2000年の医案でしたが、医案中の

茯苓利水湯」を思い出したでしょう。

中医弁証:脾虚不運、気滞水蓄に対する健脾行気利水法として、茯苓利水湯:組成は、木香10g 檳榔25g 青皮10g 陳皮15g 紫蘇15g 茯苓40g 白朮30g 党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30

でした。私のコメントとして、再度記載しますが、

茯苓利水湯の出典は「医宗金鑑」で原方は茯苓30g 猪苓20g 木瓜(酸/温 行気止痛、健脾消食、止瀉、平肝舒筋、和中袪湿)10g 澤瀉20g 檳榔20g 党参20g 白朮20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15g 陳皮15g 麦門冬15gです。本案(257報)では木瓜、麦門冬は配伍されていません。

茯苓30g 猪苓20g 澤瀉20gは利水、檳榔20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15gは理気(行気)であり、気滞は水停を起こし、気がめぐれば水行する、という中医理論から、行気と利水を同時に行った訳ですね。海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gの配伍は腹水があるばあいに張琪氏は愛用するようです。黄耆、党参、白朮、茯苓は益気健脾利水の効果で祛邪(利水)と補益を兼ねるものです。二診では既に浮腫が全消したのですから、行気利水の木香 檳榔 青皮を除き、舌紅、咽赤に対して金銀花 連翹の清熱解毒薬を加味しました。白花蛇舌草も清熱解毒利湿薬ですが、免疫調整という弁病的な考慮もあるかもしれません。乾姜を配伍した理由は氏がやや脾胃虚寒の印象を持ったのかも知れません。あくまで推測ですが。畏寒肢冷、便溏などの腎陽虚を兼ねる場合には附子を配伍するでしょう。

以上でした。

それでは、茯苓利水湯茯苓導水湯の違いはどこにあるのでしょうか?

医案に進みましょう。

患者:郭某、26歳 男性 工場労働者

初診年月日1982518

病歴

患者腎炎4ヶ月に及び、尿蛋白4+、顆粒円柱+、浮腫尿少、胃脘痛、かつて健脾行気、清利湿熱の治療を受けたが、効果不良。

初診時所見:尿蛋白3+、全身浮腫、脈沈舌紫

中医弁証:脾虚気滞水蓄

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:健脾 行気 利水

方薬茯苓導水湯加減

茯苓20g 檳榔20g 澤瀉20g 白朮15g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 陳皮15g 木香7.5g 萹畜20g 瞿麦20g 海藻(消痰軟堅 利水退腫)30

二診:1982年61

腫脹倶消、食欲増加、精神状態改善、尿蛋白±、顆粒円柱(-)、RBC0~1個/HP、WBC0~2個/HP

ドクター康仁の印象

1982年の症例ですから、西洋医学的なデータは全くありません。ネフローゼ症候群を示していたのかどうかも不明です。

さて、本題に戻って、

茯苓利水湯2000年度:木香10g 檳榔25g 青皮10g 陳皮15g 紫蘇15g 茯苓40g 白朮30g 党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30g(計315g)

茯苓導水湯1982年度:茯苓20g 檳榔20g 澤瀉20g 白朮15g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 陳皮15g 木香7.5g 萹畜20g 瞿麦20g 海藻30g(計202.5g)

海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gの配伍は腹水があるばあいに張琪氏は愛用するようです。

結論は同じものです。1982年度には黄蓍 党参の参耆(益気固摂)の組み合わせがありませんでしたが。萹畜(利水通淋)瞿麦(活血利水通淋)は2000年度には益母草(活血利水消腫)に変更されています。利水と導水と区別したのはやはり理由があったのでしょうが、漢文の講義では有りませんので、市民講座としては「同じ」ということで落着させていただきます。

弁証治療だけでも充分に効果が現れていますね!

2014年 3月13日(木)


慢性腎炎 加味地黄湯(かみじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療292報)

2014-03-12 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

前案と同じ加味地黄湯加減治療ですが2003年の症例です。どのような組成でしょうか。

( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者:張某 十歳 女児

初診年月日20031231

病歴

顕微鏡学的血尿が4年間、尿蛋白2+、尿潜血±、RBC10~22個/HP

(尿潜血反応と沈渣RBCの乖離がまま氏の医案に出現します。)

初診時所見:腰痛 乏力 尿痛、舌質紅、苔薄白

中医弁証:脾気虚、腎陰欠乏の証

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:補腎滋陰、益気健脾固摂、清利湿熱

方薬加味地黄湯加減

黄蓍30g 太子参20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬15g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉10g 知母10g 黄柏10g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)15g 女貞子15g 旱蓮草20g 烏梅炭15g 側柏葉15g 甘草10g 白花蛇舌草20g 瞿麦(活血利水通淋)15g 萹畜(利水通淋)15

水煎服用 毎日2回に分服

(参耆知柏地黄湯加味であり烏梅炭は収斂止血、側柏葉は涼血止血、瞿麦と萹畜は排尿痛の対症療法であり、白花蛇舌草はやや弁病論からの配伍でしょう。)

二診2004114

11剤服薬後、尿蛋白±、尿潜血±、WBC満視野/HP、RBC6~8個/HP、RBC68/HP、セフトリアキソンNa セフェム系抗生物質の点滴静注3日後、尿WBC1~2個/HP、RBC3035/HP、尿潜血+、尿蛋白±。排尿痛あり、舌質紅舌苔白、脈細数。

(尿路感染は収まったが、血尿は悪化、それでも尿潜血は1+、排尿痛残存、はてどこかに本質が隠れていますが、、)

方薬

黄蓍30g 太子参20g 石蓮子15g 地骨皮15g 柴胡15g 茯苓15g 麦門冬15g 車前子15g(はて、清心蓮子飲になりましたね。益気養陰清利湿熱です。)蒲公英30g 金銀花30g 連翹20g 天花粉15g 


慢性腎炎 加味地黄湯(かみじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療1(腎病漢方治療291報)

2014-03-11 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

張琪氏の地黄湯と名のつくものには、参蓍地黄湯、知柏地黄湯が代表でした。今回は加味地黄湯です。どのような組成でしょうか。

( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者53 女性 工場労働者

初診年月日1999617

病歴

慢性糸球体腎炎歴一年余、尿蛋白2~3+、RBC満視野/HP、尿潜血3+、かつて雷公藤?苷片、及び清熱止血薬の治療を受けたが、効果は不十分、紹介されて氏を受診した。

初診時所見

全身乏力、気短、腰酸痛、下肢無力、臀部後部の酸痛、脈沈細やや数、舌質紅。

中医弁証:腎陰虚、気虚固摂無力の証

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:益気補腎陰固摂

方薬加味地黄湯加減

熟地黄20g 山茱萸5g 山薬20g 牡丹皮15g 澤瀉15g 知母15g 黄柏15g 黄蓍30g 党参30g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)20g 血余炭止血散瘀、補陰利尿)15g 地骨皮15g 女貞子20g 旱蓮草20g 側柏炭20

水煎服用 毎日2回に分服

経過

617日から720まで計28剤服用し、全身有力、腰酸膝軟ともに大減、RBC23/HP、潜血(-)、尿蛋白±、脈沈滑、舌転潤、かくして緩解した。

ドクター康仁の印象

参耆で益気固摂、茯苓を配伍しなかった理由は不明ですが、知柏地黄湯と二至丸(女貞子、旱蓮草)と亀板で養陰、地骨皮で退虚熱、血余炭と側柏葉炭で止血という1999年代ですので単純な方薬配伍になっていますね。それも二診で中止とは、2000年代とは随分様相が異なります。やはり、参耆地黄湯加減です。

次回は同じく「加味地黄湯」のタイトルの2003年の医案を紹介します。比べてみるのも面白いでしょう。

今回は分かりやすい処方ですね。

2014年 3月11日(火)


慢性腎炎 参耆涼血湯(じんぎりょうけつとう)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療290報)

2014-03-10 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

前報までは参耆地黄湯加減を5報ご紹介しましたが、本日は参耆涼血湯加減治療をご紹介します。

( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者某、43歳 女性

初診年月日2004513

病歴

患者はもともと咽喉部の反復性の炎症腫痛があり、半年前腰痛が出現、体を惹き起こせない程度で、一ヶ月前検尿で、尿潜血3+、RBC3040/HP、尿蛋白2+、現地医院で慢性糸球体腎炎と診断され、抗感染治療(??曲松?セフトリアキソンNa セフェム系抗生物質 日本での商品名 ロセフィン)2週後、病情の明らかな好転は無く、遂に中薬治療を求めて氏を受診した。

初診時所見

腰痛乏力、舌紅無苔、脈沈滑。尿潜血3+尿蛋白+、RBC710/HPWBC1~3個/HP

中医診断:尿血(気陰慮虚、湿邪傷絡)

西医診断:慢性糸球体腎炎

治則:益気滋陰補腎 清熱解毒 涼血止血

方薬参耆涼血湯加減

黄芩(清熱解毒燥湿)15g 麦門冬(養陰)15g 白花蛇舌草(清熱解毒燥湿)30g 金銀花30g(清熱解毒燥湿) 白茅根凉血止血、清熱利尿)30g 小薊涼血止血、解毒消癰)30g 側柏葉涼血止血、袪痰止咳)20g 連翹(清熱解毒)20g 枸杞子(養陰)20g 女貞子20g(養陰) 墨旱蓮旱蓮草(清熱養陰止血)20g(本案では旱蓮草に統一します) 生黄耆(益気)30g 太子参(補気生津)15(参耆で益気固摂と考えます) 焦梔子(清熱解毒止血)15g 生甘草(清熱)15g

水煎、毎日2回に分服

(印象:治則:益気滋陰補腎 清熱解毒 涼血止血とありますが、補腎薬の配伍はまだありません。)

二診2004518

乏力症状減軽、まだ腰痛あり、小便色深黄、大便秘結、咽干、舌紅紫、脈沈滑。尿潜血3+、RBC2530/HP、尿蛋白+。

方薬

生地


慢性腎炎 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療5(腎病漢方治療289報)

2014-03-09 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

本日の市民講座で参耆地黄湯加減による慢性腎炎の治療を終了します。

( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者?某 29歳 男性

初診年月日2005518

病歴

高血圧の病歴三年、ここ2ヶ月腰酸乏力、尿蛋白3+、血圧160/100mmHg、腎機能:Cre144μmol/L1.63m/dL)、西医は嘗て、限局性硬化性糸球体腎炎と診断し、降圧?那普利(絡汀新)Benazepril Hydrochloride(塩酸ベナゼプリル、ACE阻害薬、日本ではチバセン)と血小板凝集抑制剤のdipyridamoleを与えた。中医治療を求めて氏の病院受診、外来では虚労、慢性糸球体腎炎、慢性腎不全と診断され入院となった。

(限局性硬化性糸球体腎炎とは組織病理学的な診断ですから腎生検を受けたのでしょう。チバセンは懐かしいですね。十数年前までは私も使用していました。Dipyridamoleは商品名ペルサンチンです。)

初診時所見

腰酸乏力、双下肢軽度浮腫、下腿に軽度指圧痕が残る、舌質紅、苔白、脈沈。BUN5.24mmol/L31.44m/dL)、Cre113μmol/L、尿酸478μmol/L8.03m/dL)、尿蛋白2+、潜血2+、RBC3~4個/HP、ヘモグロビン10.2/dL、超音波検査:双腎軽度炎症性変化、右腎小嚢胞結石を伴う。

(嚢胞の数、サイズ、結石の存在する場所についての記載は有りませんでした。)

中医弁証脾腎両虚、湿熱瘀血

西医診断慢性糸球体腎炎

治法脾腎双補

方薬参耆地黄湯加減

熟地黄25g 山茱萸20g 山薬20g 牡丹皮15g 茯苓25g 澤瀉20g 黄耆50g 党参20g 淫羊藿(仙霊脾に同じ、補腎壮陽、祛風除湿)20g 蘇木(活血祛瘀 消腫止痛)20g 胡芦巴温腎陽、逐寒湿寒湿を伴う腎陽不足に適している薬剤)25g 懐牛膝20g 車前子15g 土茯苓50g 薏苡仁25g 丹参20g 桃仁20g 金桜子20g 桑椹子30g 甘草15g

七剤、水煎200ml 毎日100mlずつ2回に分服。

(参耆六味地黄湯加味方になっています。

黄耆50gの大量配伍はネフローゼ症候群242259、慢性糸球体腎炎261262報にも有りました。一般に蛋白尿の多い場合や、気虚症状が強い場合に増量されます。胡芦巴は温腎陽、逐寒湿寒湿を伴う腎陽不足に適している薬剤ですが、一方では湿熱と弁証しながらも、腎不全の弁病論として祛寒湿という考えをお持ちなのかもしれません。本案はそれほどの腎不全ではありません。慢性腎不全 張琪氏漢方治療6.(腎病漢方治療206報)でも胡芦巴が配伍されています。土茯苓(清熱解毒)50gの大量配伍も同206報に見られます。蘇木、丹参、桃仁は祛瘀活血の生薬群です。これらの活血薬は腎機能の低下を防ぐ弁病論でしょう。)