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パニック症候群の漢方治療 症例編

2008-03-23 09:48:52 | パニック症候群

パニック症候群が炙甘草湯、蘇子降気湯で改善した31歳女性の例

会社員C子さんは、夫の転勤で、勤務会社までの通勤時間が、以前は40分程度であったのが、90分程度かかるようになり、疲労が溜まっていたところに、新しい土地でのお子さんの通学問題もあり、かなりストレスも蓄積していました。

冷え症で、特に腰部から下肢の冷えがひどく、下痢気味で、腰痛や背中の痛み、下肢のだるさなどがありました。

3年前に電車の中で急な不安感に襲われ、動悸が激しくなり、呼吸も荒くなって過換気気味になり、シートにうずくまってやっと出社するという発作が2度ありました。喘息気味と高校時代に言われたということで、はじめは喘息が出たのかと思っていましたが、会社の健康診断でパニック症候群の疑いがあるということで漢方相談においでになりました。

診察して、問診してみると、喘息に特徴的な息を吐くときの呼吸困難ではなく、むしろ息が吸いにくいと感じであり、あわてて換気気味になるとのことです。抹消血の好酸球の数やIgE値は正常でアレルギーを思わせる所見はありませんでした。

冷えや腰痛、下痢などは腎陽虚の証です。舌の苔は白色で厚く、寒痰が体内に溜まっている状態です。補腎陽が必要です。

陽気を巡らし、動悸を抑える目的で炙甘草湯(しゃかんぞうとう)、腎陽を補い寒痰を除く意味で蘇子降気湯(そしこうきとう)を併用しました。なお、炙甘草湯中の桂枝量は半分に、蘇子降気湯中の肉桂はそのままの量としました。服用開始後1ヶ月で、冷えの症状と動悸が消失。4ヶ月蘇子降気湯のみ継続、服薬を中止しても発作はまったくなくなりました。現在は冷えに対して、時々当帰四逆加茱萸生姜湯を服薬するだけとなっています。

蘇子降気湯(そしこうきとう)とは、名前の中にある降気が意味するように、「気逆(きぎゃく)の中でも肺気上逆」による呼吸困難、咳嗽に対する方剤です。一般に冷えがある陽虚気味の症例に適しています。

上実下虚に対する代表方剤です。上実とは肺にある寒痰の実邪による実証を表し、下虚とは腎陽虚の虚症を指しています。

蘇子 半夏 前胡 厚朴 肉桂 当帰 炙甘草(生姜 大棗(なつめ) 蘇葉(紫蘇の葉)と水煎服用する)(降気平喘 温化寒痰 主治:上実下虚(具体的には寒痰壅肺 腎陽不足を指す)

清書には、腎陽不足で化気行水が出来ないため水が泛濫して寒痰が生じ、腎不納気による吸気性の呼吸困難に使用する。舌苔は白滑 或いは白?苔は寒痰を表す)肉桂は引火帰源に働く。本方剤は温燥に偏るために熱痰による喘(呼吸困難)には用いない。寒痰が多ければ陳皮を加えて燥湿化痰を強めるもよく、肉桂に代えて香を用いると納気平喘が強まるとあります。本症例は冷えと腰痛等の腎陽虚の証がありますので最適です。

もちろん、腎陽虚に用いる八味地黄丸に蘇子、杏仁 款冬花 紫 前胡 貝母などを配合する方法でも良いと思います。

同じ肺気逆症で用いられる方剤に白果定喘湯がありますが次のような違いがあります。漢方に興味のある医療関係者のために比較表を以下に示します。

蘇子降気湯

(白果)定喘湯

共通点      肺気逆症の方剤である

相違点

主治

腎陽虚を伴う寒痰壅肺に使用

上実下虚の呼吸困難に使用

風寒外束の咳嗽 呼吸困難に使用

外寒内熱の咳嗽 呼吸困難に使用

効能

降気平喘

温化寒痰

   宣肺平喘

   清熱

君薬

蘇子

   麻黄 白果

補薬

当帰

    なし

温里薬

肉桂

 (温腎納気に働く)

    なし

寒涼薬

涼性の前胡のみ

寒性の桑白皮 黄芩

 

     中医内科学の分野に属しますが、

蘇子降気湯は内傷病(ないしょうびょう)である臓器の機能不全から生じる喘(ぜん)(呼吸困難)に使用し、

 定喘湯は原則として外感病(がいかんびょう)である感染症に使用すると記憶すればよいでしょう。

呼吸困難を主症状とするパニック症候群のご相談は下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック

パニック症候群で悩むことから解放されるのはもうすぐです!


パニック症候群の漢方治療 症例編

2008-03-22 09:41:49 | パニック症候群

閉所恐怖症 パニック症候群が帰脾湯で治った42歳の女性の例

A子さんは5年前に、満員電車の中で急に息苦しさから過換気症候群に襲われる発作が2回あり、それ以降は、また同じような発作が起きるのではないのかという予期不安で電車に乗れないようになりました。4年前、地下商店街を歩いている最中に同じような発作に襲われ救急車で病院に運ばれ、過換気症候群の診断を受けました。同時に不安神経症という診断を受け、抗不安薬と睡眠薬を服用して、2ヶ月ほど発作はありませんでしたが、エレベーターに乗った際に、発作が再発し、閉じ込められそうな狭いところに入ると呼吸しにくい感じがするということで、漢方相談においでになったのが3年前です。

不眠傾向があり、顔色が悪く、唇の色が淡く、脈も弱い上、生理が遅れ気味で、典型的な心脾両虚の証でした。

学校で教師をされており、症状が生徒の前で出現したら大変だと、とても緊張なさっていました。離婚後3年になっていました。

帰脾湯に睡眠を安定させるために竜骨、牡蠣を加味しました。2ヶ月の服用期間中発作は無く、以後、抗不安薬も睡眠薬も中止しています。時々早めに眠りたいときだけ、酸棗仁、延胡索、真珠粉を配合した睡眠導入の漢方薬を服用してもらっています。その後は、基本的に養血剤である四物湯(しもつとう)(当帰 熟地黄、白芍、川芎)と酸棗仁湯(さんそうにんとう)合方にて現在に至っています。発作の再発はまったくありません。

毎回1時間ぐらい時間をかけてゆっくり話を聞く

初心忘れるべからず。なるべく、時間をかけて心理カウンセリングも兼ねて、ゆっくり話を聞くことにしていたのですが、、そのうちに、優に1時間半以上、女先生は話し込まれるようになり、今では、私のほうが、パニックを起こしそうになります。(笑)

お問い合わせは下記URLより

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パニック症候群の漢方治療 続編

2008-03-21 13:09:30 | パニック症候群

気滞湿阻(きたいしっそ) 気滞痰鬱(きたいたんうつ)

漢方に“怪病に痰多し”あるいは“怪病挟痰”という教えがあります。

原因不明の病気にはが原因となっている場合があるという考え方です。

脾は生痰の元(源)、肺は貯痰の器」といい、痰、特に目に見えない痰の原因は脾の水質運化機能の衰えと漢方の世界では考えます。

このタイプの不安神経症(パニック症候群)は体に悪い湿や痰が溜まっている場合の精神不安定と言えます。

診察では、

舌苔が白く厚く生えている人が多く、「湿、痰」が体に溜まっている状態と推察できます。

問診では、

常に体が重く感じられ、息が詰まる感じや喉に何かが引っかかる感じがあり、頭も帽子がかぶさっているような気分になり、精神的に落ち込みやすくなることが多いようです。

精神的なストレスは気の流れを悪くさせます。この気の滞りを気滞といいます。気の基本的な作用である推動作用が低下すると、痰が喉の部分に鬱結(うっけつ)することが多く、息が詰まる感じや、喉の異物感を感じ、急に食欲が無くなり、喉の閉塞感で吐き気がすることがあります。また、脾虚の場合には、だるさや眠い感じが一日中続くことがあり、痰湿のたまった体は重く感じられます。

また痰濁頭痛といい、帽子をかぶっているような頭痛を感じます。痰濁性の眩暈(めまい)などがあることが多いのです。――頭痛 眩暈は脳外科の病気ではありません。

脾の水質運化の低下により、漢方で胃中停飲といい、胃液が胃内に滞りやすくなり、嘔気の際にすっぱい水が上がると訴える場合もあります。水湿が腸に停滞すると下痢を起こしやすくなり、下痢の後は便秘気味になるという交替性便通異常が生じます。――消化器内科専門の病気でもありません。

痰湿が体内にたまると、骨盤に注ぎ(これを下注と漢方ではいいます)おりものが多くなることもあります。--婦人科の特別な病気ではありません。

痰は体中の経絡を塞ぐ作用があり、手足の痺れや、肩こり、背部痛の原因ともなります。――整形外科の病気でもありません.

息を吸い込みにくい感じは痰湿が心胸部に溜まり、気機を阻害するために生じます。――呼吸器内科の病気でもありません。

 痰の停滞が長くなると熱化してきて「痰火」になり、心を脅かし(痰火擾心といいます)、動悸の原因となります。――心電図ではほとんど異常が出ません。

  よく使われる方剤

蒼附導痰丸(そうぶどうたんがん)や半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、温胆湯(うんたんとう)などを選択して使用します。

ここでは温胆湯を紹介します。

温胆湯(うんたんとう)

半夏 陳皮 茯苓 炙甘草 竹茹 枳実 

生姜 大棗と水煎服用

参考までに 漢方の温胆湯証をあげれば、

証:寒熱起伏 胸痞腹張 ?

(胖大舌、歯痕舌)脈滑(痰熱の場合は数)不寝 嘔吐 頭痛 眩暈

となります。日常用語でなく、漢方用語ですが、興味のある方は清書で調べてください。

痰熱には:寒涼剤の竹茹  ? 黄連 などを一緒に使うのが原則です。

つまり舌苔が黄色になっている場合 脈が数の傾向になった場合などですが

半夏厚朴湯(半夏 厚朴 茯苓 蘇葉、生姜)に竹茹 黄 瓜?などを加減してもよいと思います。

心火(しんか)の強い場合、動悸、不眠、口内炎が頻繁に生じる場合には、清心火の作用を持つ黄連(おうれん)を加えた黄連温胆湯を用います。

不安神経症(パニック症候群)のその他のバリエーション

精神的なストレスで思い悩むうちに抑鬱傾向が出てきて、よくため息をつき、食欲も無くなり、場所の定まらない腹痛などが出てくる肝気鬱結タイプや、イライラ怒りっぽい性格で、仕事上のストレスが溜まりに溜まって頭痛、眩暈などの上に精神不安定症状がでてくる気鬱化火タイプなどがあります。日本では気鬱化火タイプには加味逍遥散(かみしょうようさん)が愛用されています。それぞれ、正確な弁証(診断)をして、適切な漢方薬を服用すればパニック症候群を乗り越えられます。


これらのタイプの生活上の防止策は?

上手にストレスを解消することです。ストレスや睡眠不足は

  1. 血を消耗し心血不足を起こす。

  2. 腎精を消耗し、体全体の陰、陽の根源を損なう。

  3. 「心(しん)」を損なう。

心(しん)は西洋医学での心臓とは意味あいが異なります。ポンプ作用としての心臓の機能の他に、「心(しん)は神志をつかさどる」とされ、精神状態のバランスをとっています。心(しん)が弱ってくるとまず動悸、不眠が出てきて、よく夢を見る、悪い夢をみてうなされるなどの症状が出てきます。

一般的にパニック症候群の方は十分な睡眠が必要です。不眠そのものが随伴症状となる場合が多いので、不眠の漢方治療も含めた総合的な漢方治療が必要となります。

お問い合わせは下記URLより

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パニック症候群の漢方治療 続編

2008-03-20 02:37:53 | パニック症候群

陰虚火旺(いんきょかおう)の症状

手足が火照り、特に手の平や足の裏が火照り、午後に微熱が出る場合もあります。このようなタイプの不安神経症(ひどくなればパニック障害を起こす)は、虚火が精神不安定を引き起こし、津液が脳を滋潤させることが出来なくなることが原因と中医学は考えます。

月経不順も同時に来る場合が多く、動悸、不眠などを伴います。

このタイプの原因としては、津液不足(腎水、或いは腎陰の不足といいます)を発生させるもの、たとえば、過度のセックスや、夜更かしが多いなどの津液を消耗する行為を長くししていることがあげられます。ここで強調したいことは、津液不足には、大きく分けて、単純に体液の不足を意味する場合と、腎陰虚の二つがあることです。前者は飲水や点滴で補正されますが、後者は中医学特有の概念であり、点滴などでは補正されない状態です。体内の陰陽のバランスが崩れ、相対的に過剰になった陽気のために、虚熱が生じ、体に「ほてり」感が出てきます。脈を診ると、弱いものの、やや頻脈気味で、舌のコケ(舌苔ぜったい)が少なく、舌が乾燥し、てかてかと光る感じが診てとれる場合があります。

滋水清肝飲(じすいせいがんいん)や六味地黄丸(ろくみじおうがん)、滋陰至宝湯(じいんしほうとう) や柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を組み合わせることによってパニック症候群に良い治療成績が得られています。

ここでは代表的な補腎陰の方剤である六味地黄丸についてご紹介します。

六味地黄丸(ろくみじおうがん)

熟地黄 山茱萸 山薬(三補)澤瀉 牡丹皮 茯苓(三瀉)

オレンジ色は軽い温薬、赤は温薬、グリーンは平薬、青は寒薬です。熟地黄は補腎陰に、山茱萸は補肝腎に、山薬は補脾固精に働く補薬です。澤瀉は泄腎濁に、牡丹皮は山茱萸の温薬に対する対薬で、ストレスから起こる肝火を瀉するとともに、山茱萸の温燥の性質を防止します。茯苓は健脾利水に働きます。

中医学の処方学(方剤学)では補薬と瀉薬がバランスよく配合されているので、三瀉三補の方剤とも呼ばれます。ここでも、山薬、茯苓など、脾の機能(胃腸機能)を正常化するという中医学の基本的な考え方が見て取れます。六味地黄丸は腎陰虚、陰虚発熱、小児の発育不全、糖尿病に広く用いられます。

六味地黄丸の加減による方剤

更年期の顔の火照りなどを伴うパニック症候群で、特に陰虚火旺が目立つ場合には六味地黄丸に知母と黄柏を加えた知柏地黄丸を用います。知母と黄柏は苦寒薬で虚熱を取り除きます。

特に眼精疲労などが著しいコンピューター関係などの仕事をされている女性などのパニック症候群には六味地黄丸に枸杞子と菊花を加えた杞菊地黄丸を用います。

もちろん、不眠傾向が強ければ、酸棗仁、遠志、茯神などを加味します。その他に、咽頭の乾燥感などが強い場合には沙参、麦冬などの補陰剤を加える場合もあります。不安感、焦燥感が強ければ竜骨 牡蠣 真珠粉 小麦 大棗などを加味します。

津液不足、腎陰不足には便秘が伴いやすく、便秘傾向がある場合には、玄参、麦冬、生地黄、大黄、芒硝などを適宜加減します。

一人の患者さんがいれば一つのまったく異なる病態があると漢方では考えます。人体は宇宙であるという生体観念が中医学にはあり、人が異なれば、病態は千差万別なのです。

決め細やかなケアこそ漢方の得意とするところです。

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パニック症候群の漢方治療 続編

2008-03-18 22:39:23 | パニック症候群

心脾両虚の症状

唇色がさえない、肌が青白いか、あるいはくすんだ黄色、肌ががさがさしている、生理が遅れ気味であったり、月経量が少ない場合、眩暈(めまい)がする、動悸がある、髪の毛が乾燥している、全身の倦怠感がある、下痢や軟便の傾向がある 診察してみると舌質の色が淡く、脈は細弱の場合が多いのです。このような症状を伴うパニック症候群を漢方医はどう考えるのか?

まず、脾虚(ひきょ)(平たく言えば胃腸障害)が根底にあると考えます。原因は、食事の不摂生、無理なダイエット、冷たいものの過飲などです。もちろん脾の五志が「思」でありますから、深く悩んだり、考えすぎるというような精神的な負荷も脾虚の原因になります。脾虚が存在すると、脾は後天の元、気血生化の元であることから、気虚が生じ、やがては、気は血を生むという中医基礎理論から(営気は血の元と基礎理論は説きます)、やがては血虚が起こるわけです。

さて、精神の不安定はどこから生じるのか?という問題に対して、中医学は血、特に心血不足が原因と考えます。これは、血液が血管内を巡り、心臓の中でも絶えず移動するという西洋医学的な感覚とは別世界の漢方の独自の考え方です。中医学でも心血を心臓の心房、心室の中にある血液とは定義していません。そのまま受け止めるしかない中医学の概念とも言えます。

このような心血不足とそれを引き起こす脾虚を総合して、中医学では「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」という疾患の「概念」、あるいは現代風に言えば、症候群を考え出しました。

心血を補い、精神を安定させ、脾虚を改善する方剤として、古来より有名なものに帰脾湯(きひとう)があります。

帰脾湯の組成

茯神 酸棗仁 遠志 ? 黄耆 人参 木香 当帰 炙甘草 竜眼肉など

グリーンは平薬、赤は温薬です。全体として「温」の性質を持ちます。

茯神 酸棗仁 遠志は精神安定作用のある生薬です。白朮 黄耆 人参 木香の組み合わせは、胃腸機能を強め(健脾作用)ます。木香は益気補血薬に伴いやすい胃腸のもたれを改善する働きがあります。当帰、竜眼肉は養血に働きます。

エキス剤には「加味帰脾湯」があります。帰脾湯に柴胡と山梔子を加えたものです。柴胡は涼、山梔子は苦寒であり、帰脾湯の温薬としての性質を、やや涼にしたもので、いらいら、のぼせなどの肝郁化火(がんうつかひ)の症状が伴った場合に用いられます。

                      続く

漢方相談は以下のURLより

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