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手荒れ(主婦湿疹型)とアトピー性皮膚病変の合併

2014-10-24 00:15:00 | 主婦湿疹

 

主婦湿疹とは、手に起こる湿疹の総称で,とくに慢性刺激性接触皮膚炎,アレルギー性接触皮膚炎をいいます。主婦は水仕事をする機会が多く,また,皮脂を損なう洗剤などの刺激で手に湿疹が生じやすいのが原因とされます。刺激性薬品を素手で扱う美容師さんにも多い病態です。

 

症例は25歳の主婦で、特殊な刺激性の溶剤などに触れる仕事はしていませんが、3か月ほど前から「手荒れ」が酷くなり受診されました。

 

 

 

初診時の所見をご覧ください。

 

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指先の発赤を伴う湿疹と皮膚の角化、手掌部分にも手掌と指の連結部分にも痒みを伴う「手荒れ」が認められます。左拇指の付け根部分は乾燥した皮膚がひび割れ、痛みを訴えていました。

 

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肘部を観察すると、アトピー性皮膚炎を思わせる痒み、赤み、色素沈着が存在します。他に、体の観察できる部分にはこのようなアトピー類似病変は有りませんでした。

 

 

単なる手だけの主婦湿疹とは異なるようです。そこで、限局的なアトピー類似病変を考慮に入れました。

 

外用薬:オイラックス系痒み止め+保湿剤+少量のステロイド+生薬濃厚エキス(清熱涼血活血剤)全部を混ぜて外用剤としました。

 

内服漢方エキス剤:当帰飲子5g+消風散5g(12回に分けて服用)

 

抗アレルギー剤は処方しませんでした。

 

 

 

その後の経過をご覧ください。

 

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乾燥と赤みと痒みは収まってきました。

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肘部の皮膚病変も軽快しつつありますが、色素沈着が軽度存在します。

 

 

初診から約1年になる直近の所見をご覧ください。

 

 

 

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手の湿疹はほぼ寛解しています。

 

 

 

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肘部病変の再発は無く、色素沈着もほぼ消失しました。

 

 

 

主婦湿疹は頑固で難治性の症例が多いのが実情ですが、漢方治療で十分にコントロールが可能です。

 

 

 

ドクター康仁

 

20141024日(金)

 

 

 


尋常性乾癬 中西医結合治療(漢方西洋医学統合治療)成功例2 食事療法の重要性を示す症例

2014-10-20 00:15:00 | 尋常性乾癬

 

日本では、40年前にはほとんどいなかった尋常性乾癬の患者さんが、近年、急激に増加した原因は、食生活の欧米化に関係すると考えます。一方、欧米では、昔から乾癬の人は圧倒的に多く、皮膚病の入院患者の約3割は乾癬が占めるほどです。すなわち、肥満がある場合には、特に肉食、脂っこいファーストフード、脂肪分を多量に含むケーキ類の菓子、砂糖たっぷりの飲み物、甘い果物などを、きっぱり止めて「玄米を中心とした昔の日本人の食生活」に戻ることが食養生では大切なことです。

 

 

 

症例は体重110kg30代後半の男性です。10年ほど前から尋常性乾癬をわずらっています。初診時の所見をご覧ください。

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典型的な「銀白色」の鱗屑(りんせつ)ができます。引っ掻くと出血しやすいのも特徴です。

 

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基本的に紅斑の上に鱗屑(りんせつ)が重なっているのが観察されます。

 

 

安価なエキス剤として、滋陰降火湯荊芥連翹湯7.5gを処方しました。

 

外用薬としては、オイラックス系痒み止め、ザーネ軟膏、VitD軟膏、生薬エキス剤(涼血活血剤、養陰清熱剤)の濃縮エキス剤を混合しました。

 

治療後の変化をご覧ください。

 

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「銀白色」の鱗屑(りんせつ)が薄くなっています。

 

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「銀白色」の鱗屑(りんせつ)は薄くなり、紅斑が目立つようになりました。

 

 

 

ここで、上記の塗り薬に、ステロイド軟膏とプロトピック軟膏を加え、処方はそのままで、「玄米を中心とした昔の日本人の食生活」に戻るようにしました。勿論、辛辣な香辛料は厳禁です。熱性の生薬以下、附子{辛 補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)、乾姜(辛温 温中 回陽)、肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)などは禁忌です。体重は110kgから95kgに減じました。上記写真時より14か月後の所見をご覧ください。

 

 

 

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「銀白色」の鱗屑(りんせつ)や紅斑はほぼ完全に消失しています。

 

面倒な煎じ漢方薬をも用いなくても、安価なエキス剤の組み合わせと外用薬と厳格な食養生によって穏解が得られた症例です。

 

 

 

―後記―

 

エボラ出血熱の抑え込みは成功しておらず、死者数の急激な増加、感染の拡散が報告されています。日本に入ってきたら感染拡大は抑えきれないのではないかと危機感は重大です。

 

 

 

世界同時株安が、先週末のNY市場でストップがかかり、一服するのか?週明け、つまり本日の東京市場はどうなるのか?円高傾向が一服するのか?

 

 

 

1週間ほど記事の更新をしなかったのは、心穏やかならずの状態だったからです。

 

 

 

ドクター康仁

 

20141020日(月)

 

 


初期のアトピー性皮膚炎は早期に改善するのが通常という印象

2014-10-11 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

中医学に限らず、日本の漢方医学で用いられる方剤の特徴は、効能にしても、効果にしても定量化できないという難点があります。それぞれの学問の体系が、西洋医学とは異なる独自の言語体系で構成されていることに加え、時には30種類にもなる生薬の配伍は、実際に、投与群と非投与群のプロスペクティブな対照実験を行うにも、どれだけのコントロール群(対照群)を置くべきかと考えれば、配伍量の変化も加えれば、天文学的組み合わせになるのです。

 

そこで、宿命的になるのですが、過去の先達の症例報告と、個々の生薬の薬理作用を言語体系の中で照らし合わせて、言わば、臨床医の「悟り」に近い経験から試行(錯誤)を繰り返して満足のいく臨床効果を「手繰り寄せる」しかないのが現実なのです。

 

やや、下世話な話になりますが、開業医にとって、効果が表れなければ、患者さんは、再診しなくなります。とは言え、改善傾向を無理なく自然に醸し出すということは、実際には難しいことです。

 

本稿では、伝統的な言語体系を用いながら、早期のアトピー性皮膚炎をどのように治療していくかを紹介したいと思います。

 

患者さんは30代前半の女性です。1年ほど前から、顔面胸部背中前腕部分に痒みが出現しました。既往歴としてアレルギー性鼻炎、鶏肉、豚肉、牛肉(ハム、ベーコン)等で皮膚アレルギー症状が出現し、患者さんも、なるべく肉食を避け、皮膚科で処方されたアズノール軟膏、プロトピック軟膏、ステロイド剤の外用で対処してきましたが、皮膚の改善が「いまいち」であることから当院を受診されました。

 

時系列で各皮膚病変を比較します。

 

私が、ある程度「悟った」アトピー性皮膚炎の治療原則は、皮膚の赤味に対しては、燥に偏らない清熱解毒、養陰清熱です。痒みに対しては祛風止痒、勿論「治風先治血 血行風邪減」の基礎理論があります。皮膚の乾燥には養陰清熱潤膚です。白花蛇舌草(清熱解毒利湿 静菌 免疫調整)等による免疫操作も必要な場合があります。

 

 

初診(平成25514日)と20再診(平成26717日)、22再診(直近平成26104日)所見を比較してみましょう。

 

25514 初診

267172 第20再診

 

皮膚の湿疹は消失し、かつ、皮膚は潤であります。

 

強いステロイド軟膏で痒みや赤みを抑えるのは比較的簡単なことですが、必ず再発し、皮膚は乾燥し苔癬化局面に陥ることは多いのです。

 

261042 第22診

 

直近の頸部、顔面の皮膚は色素沈着も無く、潤いに満ちています。

 

 

 

同じ時系列で肘部の所見を比較してみましょう。

 

25514_2

明らかな湿疹と赤みがあります。

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赤みが消失し、痒みも消失、軽度の色素沈着を残すのみとなりました。

 

26104

 

色素沈着も消えて、正常な皮膚になり、再発は有りません。

 

 

 

後頚部の皮膚所見も同じ時系列で比較してみましょう。

 

25514_3

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赤みを伴う湿疹は消失し正常な皮膚となりました。アトピーの再発は有りません。

 

 

 

背部所見も同じ時系列で比較してみましょう。

 

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色素沈着を伴う痒みの強い病変は完全に消失しています。再発は有りません。

 

 

 いつの時点で、アトピー免疫系のスイッチが、オンになったのかは不明ですが、30代からもアトピーの発症があるものと認識しています。アトピー免疫系のスイッチオンと簡単に記載しましたが、抑制系が失調したのかもしれませんし、今後は、その分野での基礎研究の発展が望まれますね。30代発症1年程度の早期のアトピー性皮膚炎は、適切な漢方治療により、ほぼ完治に導くことが出来るのではないか?という印象を強くしています。温熱性の香辛料の禁食は勿論のことです。

 

 

 

 

 ドクター康仁

 

20141011日(土)

 

 


閉経後も持続するアトピー性皮膚炎の中西医結合治療成功例

2014-10-08 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

45歳で閉経し、50歳になってもアトピー性皮膚炎に悩んでいた症例をご紹介します。直近の平成2610月4日まで計57回の診察をしていますが、平成241215日以降、アトピーの再発は無く、安定している症例です。

 

初診年月日:平成22721

 

病歴:幼少時期よりアトピー性皮膚炎が始まり、皮膚科で主としてステロイド外用で対処していたが、29歳頃から悪化傾向が出現、45歳で閉経。3年前(47歳)から皮膚病変が酷くなり、皮膚科ではステロイド軟膏、プロトピック軟膏を処方されたが改善傾向が少ないために、漢方薬局で、薬剤師に勧められ、オウゲインV(コタロー)、涼血清営顆粒(イスクラ)、瀉火利湿顆粒(イスクラ)を購入し、当院初診前の4か月間、朝オウゲインV6錠、瀉火利湿顆粒2包、夕にオウゲインV6錠、瀉火利湿顆粒1包、涼血清営顆粒1包を服用していた。アレルギー性鼻炎(通年型)があり、鯵(あじ)とセフェム系抗生物質ケフラールにてアレルギー性皮膚病変が出現したことがある。20代後半に腎盂腎炎の既往がある。外用剤として、皮膚科から処方されたステロイドは減量して主としてプロトピック軟膏を使用していた。

 

補足:温(熱)薬は赤、微温薬はオレンジ、平薬はグリーン、涼薬はライトブルー、寒薬はブルーで記載してあります。

 

オウゲインV黄連解毒湯の錠剤です。

 

組成:黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰)山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)

 

瀉火利湿顆粒(イスクラ):竜胆瀉肝湯の処方に基づいた9種の生薬からなる製剤です。

 

組成:当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)木通(苦/寒 泄熱利水通淋)黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)澤瀉(利水滲湿 泄腎濁)車前子(清熱利水通淋)龍胆草(清熱解毒燥湿 瀉肝火)山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)甘草(調和諸薬)

 

涼血清営顆粒(イスクラ):

 

組成:地黄{熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)か生地黄(養陰清熱)か不明}芍薬{白芍(養血斂陰)か赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)か不明}黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)大黄(活血解毒通腑泄瘀濁下行)牡丹皮(清熱涼血 活血祛瘀)山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)

 

服用漢方薬に対する私の印象

 

 

苦寒薬の黄芩、山梔子の重複が明らかであり、清熱解毒は理解できるが、燥湿に傾く(皮膚が乾燥する)のは明らかである。当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)の配伍は、中医基礎理論の「治風先治血 血行風邪減」の観点からは望ましい。しかし、何より痒み止め(祛風剤)の配伍が全く無い。慢性化したアトピー性皮膚炎に対する養陰(清熱)潤膚(陰を養い熱を清し肌を潤す)の原則からすれば養陰剤の配伍が無いに等しい。漢方薬局の薬剤師に勧められるままに、長期服用すれば、必ず「苦寒傷脾」、即ち、胃腸障害を起こす組み合わせであり、皮膚は粉をふいた様にガサガサに乾燥するであろうし、苔癬化皮膚病変の改善は望めない。

 

初診(平成22721日)時所見

2010721_001_2

 

前腕部皮膚表面は乾燥、発赤疹が多数存在するが、赤味は軽い。

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上腕から前腕にかけて皮膚の硬化と厚化、表面の乾燥が著しく、ゴワゴワした苔癬化アトピーの所見を示す。

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健常部分と苔癬化部分との境界部である。病変部分には赤味は少ないが、硬化と厚化が出現しており、表面は湿潤を失いつつある。

 

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前頸部から前胸部の皮膚は、いわゆる「ツッパリ感」を伴


挫創(ニキビ)に荊芥連翹湯、清上防風湯のいずれを使うべきか?

2014-10-05 00:15:00 | あばた顔 ニキビ

 

前報では両者を併用して、いわゆるニキビによる「あばた顔」の改善例を紹介しました。再度、写真をご覧ください。

 

治療前

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26111_2

 

治療後(写真下)

 

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2667_2

 

さて、各組成を同じツムラのエキス剤で比較してみます。

 

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):エキス剤7.5g中に以下の割合の生薬乾燥エキス4.5gを含有すると記載があります。

 

温熱薬は赤、微温薬はオレンジ、平薬はグリーン、涼薬はライトブルー、寒薬はブルーで記載してあります。

 

     

  • 黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)(オウゴン)
  •  

  • 黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰)(オウバク)
  •  

  • 黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)(オウレン)
  •  

  • 桔梗(祛痰利咽 排膿 載薬上行)(キキョウ)
  •  

  • 枳実(破気消積、化痰除痞)(キジツ)
  •  

  • 荊芥(祛風止痒)(ケイガイ)
  •  

  • 柴胡(疏肝理気 清熱 升陽)(サイコ)
  •  

  • 山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)(サンシシ)
  •  

  • 地黄(ジオウ)生地黄(養陰清熱)と思われます。
  •  

  • 芍薬(シャクヤク)白芍(養血斂陰)と思われます。
  •  

  • 川芎(活血行気、祛風止痛)(センキュウ)
  •  

  • 当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)(トウキ)
  •  

  • 薄荷(疏散風熱、清利頭目、利咽、透疹)(ハッカ)
  •  

  • 白芷(解表 祛風燥湿 消腫排膿 止痛)(ビャクシ)
  •  

  • 防風(祛風解表、勝湿、止痛、解痙)(ボウフウ)
  •  

  • 連翹(清熱解毒、清癰散結)(レンギョウ) 以上各1.5g
  •  

  • 甘草(調和諸薬)(カンゾウ) 1.0g (計17生薬25g
  •  

 

黄連解毒湯(黄連 黄芩 黄柏 山梔子)を骨格に、清熱解毒、清癰散結の連翹、防風、白芷の祛風薬、排膿の桔梗、柴胡と枳実による気機調整、養血活血の当帰、活血行気の川芎などの組み合わせになります。等分配伍ですので、君薬がはっきりしませんが、黄連解毒湯の配伍が有りますので、涼寒に偏した方薬でしょう。地黄が熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)であれば、四物湯(当帰、熟地黄、白芍、川芎)の配伍も考えられますので、温清飲(黄連解毒湯+四物湯)に祛風、排膿の効能を持たせた方剤とも考えられます。ただし、現行の保険制度ではニキビの適応は温清飲にはありません。

 

さて、

 

保険の適応症は、蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、ニキビとされます。

 

一方、保険の適応症がニキビのみである清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)の組成は、エキス剤7.5g中に下記の割合で生薬乾燥エキス4.75gを含有すると記載があります。