以前に75報から92報まで、紫斑病性腎炎の漢方治療総論5回、医案13症例(計18報)についてご紹介しました。昨年の3月19日から4月6日にかけての紹介でした。今回は張琪氏の紫斑病性腎炎(Henoch-Schönlein purpura nephritis:以下HSPN)の医案を16案ご紹介します。1984年の医案が1例、残りは全て2000年以降の症例です。HSPNの張琪氏の医案を始めて目にしたのは1984年の医案でした。今回の1984年の症例とは別の症例です。氏は少なくとも22年間はHSPNの治療に携わってきたことになります。
紫斑病性腎炎 張琪氏医案 毒熱蘊結 迫血妄行案
(張琪臨床経験?要集より)
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130328
それでは新しい医案に進みましょう。
患者:?某 13歳 女児
初診年月日:2006年4月19日
病歴:
3ヶ月前四肢に紫斑が出現、ハルピン市児童病院受診し“過敏性紫斑”と診断され、ステロイド、抗感染剤、抗アレルギー剤の投与を受け、紫斑は消失。10余日後に検尿にて尿RBC40~50個/HP、尿蛋白2+にて、紫斑病性腎炎と診断され、ステロイド継続服用、黄葵カプセル3錠、毎日3回服用。4月4日再検査:微量尿蛋白0.15g/L、RBC6~8個/HP、WBC1~2個/HP、中医治療を求め氏を受診。
(付記、黄葵カプセルは中成薬で慢性腎炎治療薬であり、蛋白尿に効果があるとさ烘れ、成人では1日15カプセルを5カプセルずつ日に3回服用し、8週間で1クールとしています。効果は清熱解毒利湿消腫です。)
初診時所見:
四肢に紫斑が散在、尿黄、時に心悸、顔面烘熱(焙られたように熱い)、手足心熱、唇干、舌紫紅、苔薄白、脈滑数。尿潜血3+、尿RBC50個以上/HP、扁平上皮細胞3~5個/HP。
中医診断:尿血(湿熱相搏)搏:ハク、う(つ)、と(る)、つか(まえる)
「相搏(そうはく)とは互いに取っ組み合うの意味で、互結(ごけつ)という用語よりも動きや流動性を感じさせる用語です。」
西医診断:紫斑病性腎炎
治法:清熱解毒、祛風勝湿、涼血止血
方薬:当帰拈痛湯加味 拈る(ひねる)
当帰20g 羌活20g 防風10g 升麻15g 猪苓15g 澤瀉15g 茵陳蒿15g 黄芩15g 葛根15g 蒼朮15g 苦参15g 知母15g 甘草15g(ここまでが当帰拈痛湯去る人参です。以下が加味となります。) 側柏葉(涼血止血、袪痰止咳)20g 地楡炭(涼血止血、解毒収斂)20g 孩儿茶(清熱 生津 収斂止血)15g 赤石脂(渋腸止瀉、収斂止血)20g 白頭翁20g 三七10g 金桜子