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陰吹(いんすい)

2008-09-17 06:27:14 | うんちく・小ネタ

膣からのおならである。上海留学中に実際に患者を見た。当時、曙光病院の婦人科実習の際に、張主任教授から「これが陰吹の典型症例ですよ」と教えられた。矢を吹くように前陰(膣)から失気(おなら)が連続して出る状態である。「えっ?本当にあるのか!」とびっくりした。

後漢時代の医学書「金匱要略」の婦人雑病脈証弁治には「胃気下泄して、陰吹してまさにかまびすしきは、此れ穀気の実なり、膏髪煎これを導く」の記載がある。意訳すれば「胃中の気が下に排泄され、膣から漏れ、失気のような騒がしい音が出るのは、穀気が実している(大便不通)ためであるから、豚の油と髪の毛を煎じたもので便通を改善して導く」となる。

上海中医薬科大学留学中は同姓の張老師に古典医書の講義を受けていた。初めて陰吹の条文に接したときは、「まったくの違和感」を感じた。直腸膀胱婁の様に、直腸と膣が物理的につながっている場合を除いて、膣からおなら(失気)が出るはずがないからである。性行為の際に、膣口から空気が入って、失気のように音が出ることは知っていた。性行為とも直腸膀胱婁とも関係の無い、失気のような膣からの音を伴う排気、それも頻回に比較的大きな音を立てるなどあるはずもないでは無いか?と思っていたのである。しかも、豚の油と髪の毛で治療するとは、、。まさに便秘の際の(屁)ではないかと思っていたのである。果たして、婦人科の張老師は膏髪煎を処方したか?否である。

しかし、いくら古代の医学書でも、屁と陰吹を混同するはずもなく、実際に患者に遭遇してみないことには「陰吹」の存在には疑念を抱いていた。

中医学の原因論は日本人には理解不能

腑気不通

「主として便秘によって胃気が通常の道を通れず膣から出る」とする説である。便秘薬の麻子仁丸を用いるべしとある。前述したとおり、特殊な場合を除いて、通常のおならが膣から出るはずもなく、便秘の合併症が多いと考えたほうが自然だろう。産後に見られるという陰吹には、産後には痛みや体力低下が原因で便秘を合併しやすいのは事実である。

気虚

いわゆる脾気虚が長期化、重症化すると中気下陥の症状を呈するようになる。内臓下垂、脱肛、子宮脱などである。子宮脱までいかない場合でも、膣壁は緩み、膣口は脱出気味になる。弛緩した膣口から空気が入りやすくなる。急に体位を変換した場合に陰吹が起こりやすい。補中益気湯を与えるべしとある。便秘でも、腹圧をかける力が無く、自汗傾向があり、気短や大便後に疲労感を覚え、疲れやすく、淡舌薄苔である「虚秘」に中気下陥を伴う場合は補中益気湯がよろしい。これなどは、比較的理解しやすい病因論である。

痰湿下注

白色のおりものが多く、同時に陰吹があり、口が粘り、舌には苔が厚く、脈は滑であると清書に記載があるが、湿熱下注型もあるとされる。その場合には陰部の掻痒やおりものに臭気があり、舌苔は黄色味を増す。治療方針は、陰吹を主とするか、帯下病を主とするかで方薬は変わってくる。

燥湿化痰の二陳湯(半夏 橘皮 茯苓 生姜 烏梅 甘草)に白朮 苡仁を加味し、帯下が臭い場合には黄柏 苦参 萆薢を加味すると良い。ここで疑問に思うのは、痰湿下注のみでは陰吹の原因にはならないのではないかということだ。帯下病は多いが、陰吹はまれであるからだ。

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昨日は、アメリカの証券大手リーマン ブラザーズが破たんしたのに加え、アメリカの保険最大手AIG(アメリカン インターナショナル グループ)の経営危機もあり、アメリカの金融機関に対する懸念からNYダウが同時多発テロ以来の500ドル以上の大幅安となり、それを受けて日経平均も600円以上の下げになり、ドル安とクロス円の円高が加速し、いったい今後世界はどうなるかと危惧していました。そして昨日NYダウは下げて始まり円は全面高になって始まりました。そして、FOMCの政策金利2%据え置きの発表で、利下げ期待もあったことから、NYダウは急落し下げ幅を拡大、円高も一層進行しそうな雰囲気でしたが、その後、AIGの救済策が発表されるに及んで、一転、NYダウは反発、円高にも一時的にストップがかかったようです。現在17日、5時55分です。今日はどんな一日になるのでしょうか?世界同時不況、それにしても恐慌だけには陥ってほしくないと心配でたまりません。サブプライム問題は何も解決されていないのですから。経営危機の会社に政府特融をした段階なのです。政府特融といえば、以前に、山一證券が破綻した際に、メリルリンチが山一を買収した経緯があります。そのメリルリンチが経営危機でBOA(バンク オブ アメリカ)から救済融資を受けることになりました。嫌な世の中になりました。平気で汚染米を食料として売る大阪や新潟の会社があるとは、、子や孫の時代の暗雲を懸念するようになったのは老いたためだと実感しています。

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シャックリ(吃逆)の漢方治療

2008-09-07 16:36:52 | うんちく・小ネタ

現代西洋医学によるシャックリの治療

現代西洋医学ではシャックリは横隔膜の間代性痙攣が原因とされるが、その痙攣を起こす原因と即効性の治療方法については、はなはだ心もとない状態である。心因性の原因はあるのか? 中枢あるいは末梢神経の神経異常の存在は?代謝性疾患の有無は?薬剤性の可能性は?胃、食道などの消化器疾患は?背景疾患の有無を探るのは、あくまで頑固なシャックリがあって、それがある程度収まってからである。患者は医師のゴタクは結構であるから、早く止めてくれと訴える。
私自身、西洋医学オンリーであった時代に、シャックリが2日もとまらない患者を前に、即効性のある治療法が無いものかと頭を抱えてしまった経験が数回ある。癌術後のシャックリで大いに苦労したこともある。

大半の西洋医がするように、以前は向精神作用のあるクロルプロマジン(ウィンタミン)、吐き気止めのメトクロプロミド(プリンペラン)のなどの注射薬を用いたが、数時間以内に、しゃっくりが止まった例(ためし)が無い。治療してか、あるいは自然の経過か、いつの間にか止まるのである。

中国漢方医学におけるシャックリの捉え方

シャックリは日本語では吃逆(きつぎゃく)、中国語では逆という。中国では宋代以前の古くは?(フイ)といわれた。俗称を打?という。最古の医学書をさかのぼれば、素問では「胃の気逆」、霊枢の口問では「胃気が肺に注ぐ(気逆)」と説明され、後漢に下ると、金匱要略の嘔吐?下痢病脈証治において逆を寒証、虚熱証、実熱証に属する3つに分類している。それぞれ、橘皮湯(きっぴとう)、橘皮竹茹湯(きっぴちくじょとう)(橘皮 竹茹 大棗 生姜 人参 炙甘草)、大黄甘草湯が主方であると記載されている。さらに後世に下り、「虚実寒熱」の弁証に基づき、諸家が治療法を模索してきた。明代の景岳全書では、寒、熱、虚脱のの3分類がされている。現代では丁香柿蔕湯(ちょうこうかていとう)(丁香 柿蒂 人参 生姜) 旋?代赭石湯(せんぷくかたいしゃせきとう)(旋覆花 人参 生姜 代赭石 半夏 大棗 炙甘草)などが主方とされており、現代中国では寒邪?結(にほぼ相当)、胃火内盛(にほぼ相当)、気鬱痰阻、気血虚損(虚脱のにほぼ相当)が胃気上逆の原因とされ治療が行われている。

漢方医学では飲食不節という概念はもっとも重要なもののひとつである。シャックリの病因においても、冷たいものの過食、寒涼薬の摂取過剰は寒邪?結をきたすとされる。ストレス、怒りなどは肝鬱気滞を起こし、肝鬱化火になると津液が灼焼され痰と化し、痰熱が胃火とともに胃気上逆を起こすとされる。また辛熱の食品のとりすぎもこれを助長させる。慢性病や病後、下剤の乱用は胃陰不足に陥りやすく、胃気上逆が起こりやすくなるとともに、脾虚になると濁気を降ろすことができなくなり胃気上逆を招くとされる。ともかく、虚実寒熱の弁証は治療に欠かせない。シャックリの音が大きく、連続して起こり、脈象が弦、滑の場合は実証であり、シャックリの間隔が長く、音が低く、脈が弱の場合は虚証である。寒がりや下痢を伴う場合は多くは寒証であり、顔面が赤く、肢体の熱感があり、喉が渇き、便秘があり、かつ舌が赤く、苔が中等度以上にある場合で色が黄色味がかっている場合は多くは熱証に属する。やや専門的になるが、もう少し細かく分類すると、以下のようになるので、漢方医学に興味のある諸兄のために記しておきます。

実証:

    胃中寒冷{寒邪?結(にほぼ相当)}主方 丁香散加減

    胃火上炎{胃火内盛(にほぼ相当)}主方 竹葉石膏湯加減

    気機鬱滞{肝鬱気滞型}        主方 五磨飲子加減

      {気逆痰阻型}        旋? 花代赭石湯

虚証:

①脾胃陽虚             主方 理中湯 丁香柿蒂湯合法加減

②胃陰不足             主方 益胃湯 加 柿蒂 枇杷葉

特効薬に近い処方?

現代日本では八綱弁証のうちの4綱である虚実寒熱の基本ができる医師は限られているので、弁証不要の特効薬とでもいうべき処方を紹介します。

丁香10g 柿蒂10g 茱萸g 枳実10g 紫蘇子10g 旋?花10g

以上を300mlの水で煎じ200mlになったら煎じ液の半分を一気に飲む。シャックリが止まらなかったら、さらに、数時間後に残りの半分を服用する。温薬を赤、微寒薬をブルーで表記した。

丁香(丁子 クローブ)、柿蒂(柿のヘタ) 茱萸 枳実は漢方薬店で手に入る。紫蘇子と旋?花は無ければ省いても良い。紫蘇子は紫蘇の葉でもかまわない。この中で手に入りにくいものは旋?(せんぷくか=和文表示で旋覆花)である。化痰薬に分類される生薬で、痰の多い咳や喘息などに使われる。降気作用があり、胃気上逆に効果がある。花類で下降(降気)の性質を持つのは旋覆花だけである。ちょっと厄介なのは花の裏にじゅう毛があるのできめの細かい布で包んで煎じる包煎が必要なことだ。

色分けで明らかなように上記の処方は温の性質を持つ。したがって、熱証には不向きであるが、私の経験では日本人はほとんどが寒証によるシャックリが多く、丁香10g 柿蒂10g 茱萸g 枳実10gの4薬の組み合わせで十分有効であると思っている。

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私の故郷は福島県の会津である。子供のころ、まだ荷馬車が使われていた。特産の会津みしらず柿の出荷の時期になると街道筋には馬が並び、渋抜きのための焼酎の匂いが風に乗って街道を流れていた。すこし大人になったような気がしてその匂いを楽しんだ。柿の朱、天空の青、焼酎の匂い すべてが懐かしい。

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