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ネフローゼ症候群 加味越婢湯(かみえっぴとう)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療260報)

2014-02-08 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:張某 6歳 男児

初診年月日198256

主訴:浮腫反復発作一年

病歴

19815月に罹患、某医院でネフローゼ症候群と診断され、治療後緩解。10月頃再発、エリスロマイシン、ステロイド等の治療で再度緩解。翌19824月下旬、尿蛋白2~3+、浮腫加重し、氏を受診した。

初診時所見

全身高度浮腫、頭部から顔面が最も酷く、精神萎縮、面色黄、気促、粘った痰を吐く、水を飲みたがらず、小便甚だ少ない。舌紅苔薄、脈滑。尿蛋白4+、顆粒円柱2~3個/LP

中医弁証:風熱壅肺、湿邪困脾

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:宣肺清熱利湿

方薬:加味越婢湯(かみえっぴとう):

麻黄発汗解表、宣肺利水消腫)7.5g 蒼朮(燥湿健脾)10g 生石膏(清熱瀉火)50g 連翹(清熱解毒利湿)20g 滑石(利水通淋)20g 澤瀉(泄濁清熱利水)15g 茯苓(健脾利水)15g 半夏(燥湿化痰、降逆止嘔)10g 生姜10g 赤芍(清熱涼血活血)10

五剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 1982511

58日に尿再検査、尿蛋白3+、円柱(-)、前薬を服薬6剤で浮腫全消、小便通暢、精神やや改善、大便やや溏、手心熱、舌尖紫、脈沈滑。風熱は既に散じ、脾湿未清、湿邪留恋、健脾清熱利湿を以って治療する。

方薬 経験方:

茯苓20g 白朮15g 澤瀉15g 滑石20g 桂枝15g 陳皮15g 木香7.5g 檳榔15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 木通10g 甘草10

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

(桂枝は通陽利水目的で、陳皮、木香、檳榔などは行気を以って利湿、利水を補助するという目的で配伍されていると思います)

三診 1982525

浮腫は全消、518日、523日の二回の尿検査で尿蛋白(-)、上薬を継続服用して治療効果を固めた。

ドクター康仁の印象

木通は腎毒性があるために現代では使用禁止です。

さて、

この医案を理解するには、中医学の「水腫論での陽水」と「哮証での熱哮」の2分野についての基礎的な知識が必要です。

単語を知らないと文章が書けないと同様なくらい基本的なことですので、少し長くなりますがお付き合いください。

水腫

水腫とは水液が体内に貯留することにより、頭面、眼瞼、四肢、腹背及び全身に浮腫が生じる病証であり、重症の者には、胸水、腹水を伴う。

原発性急性、慢性腎炎を含む各種腎疾患、慢性心不全(うっ血性心不全)、肝硬変、内分泌系機能失調(甲状腺機能低下症など)、栄養失調の際に浮腫が現れた場合、本証の弁証論治を参照する。

“丹渓心法”(朱丹渓12811358)では水腫を陽水と陰水に分類している。その特徴は以下に要約される。

陽水

病因は風邪外侵、飲食不節、病理は表証、実証、熱証、発病は急、病程は短、主な症状は、頭部から発症、皮膚弾力光亮、皮膚凹陥回復速。

陰水

順に、労倦内傷、生育不節、裏証、虚証、寒証、緩慢、病程 長い、下肢から発症、皮膚弛緩無沢、皮膚凹陥回復慢

以下、水腫を陽水と陰水に大別して進めます。

陽水

(1)風水氾濫

症状

眼瞼浮腫、続いて四肢及び全身まで腫れてきて、勢いが急であり、多くは悪寒、発熱、肢節酸痛、小便不利などがみられる。風熱に偏るものは、咽喉が腫れ痛み、舌質紅、脈浮滑数などを伴う。風寒に偏るものは、悪寒、咳き、喘息、舌台薄白、脈浮滑あるいは緊が見られる。水腫が酷い場合、沈脈も見ら


ネフローゼ症候群 利湿解毒飲(りしつげどくいん)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療259報)

2014-02-07 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:呉某 27歳 男性

初診年月日1989531

主訴:反復浮腫4年余

病歴

患者ネフローゼ症候群歴4年余、治療を経て病情は穏定していたが、198810月感冒後に病情再発、当時尿蛋白4+、浮腫が高度で某病院に入院、プレドニゾン等薬物治療で病情は好転、蛋白尿は転陰、浮腫は漸消、但しプレドニソン減量隔日15mgで、反跳出現、尿蛋白4+、遂に治療を求め氏を受診。

初診時所見

周身困重、腰酸、尿黄、咽痛、口苦、舌質紅、苔白膩、脈滑数。尿蛋白3+、尿WBC5~7個/HP

中医弁証:湿熱毒邪蘊結下焦

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清熱利湿解毒

方薬利湿解毒飲加減

瞿麦(活血利水通淋)20g 萆薢(苦/平 利水滲湿)20g 土茯苓(菝葜 山帰来に同じ、清熱解毒泄濁除湿利関節50g 白花蛇舌草30g 薏苡仁25g(健脾利水滲湿) 滑石20g 白茅根凉血止血、清熱利尿25g 山薬20g 益母草(活血利水消腫)30g 金桜子(酸渋/平 固精、縮尿、渋陽止瀉)15g 萹蓄(利水通淋)20g 竹葉清熱除煩、生津、利尿)15 山豆根20g 重楼30

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

付記:清熱解毒剤の土茯苓(菝葜、山帰来)の大量50gの投与も、その薬性が平であることから脾胃を障害しないという氏の経験があるのでしょう。

二診 1989614

周身困重は明らかに減軽、咽痛は癒え、口苦無し。但し、腰酸乏力、尿黄、口干あり。舌質紅、苔白、脈細数。尿蛋白2+、尿WBC0~3/HP、プレドニソンは隔日10mg服用中、気陰両虚、兼挟湿熱と弁証。益気養陰、清熱利湿を以って治療する。

方薬清心蓮子飲加減

黄蓍50g 党参30g 石蓮子15g 地骨皮15g 柴胡15g 茯苓15g 黄芩15g 麦門冬15g 車前子15g 益母草50g 桃仁15g 紅花15g 白花蛇舌草0g 甘草15g

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 1989628

既に自覚症状無し、尿蛋白2+、舌質紅、苔薄白、脈沈細。プレドニゾンは隔日5mg服用。この期間に感冒が一度あったが病情穏定。

上方(清心蓮子飲加減)をやや加減し、連続服用30余剤、プレドニゾンを停薬、尿検査正常、病情穏定。

ドクター康仁の印象

1989年代の医案で、腎機能を示すデータの記載が有りませんが、顕微鏡学的血尿が無かったことから、おそらく(腎生検)をしていたら「微小変化群」に属し、感冒を機に再発し、プレドニゾン減量中に再発した症例と想像できます。

初診の利湿解毒飲は張琪氏の創方です。さて、命名の利湿は理解できますが、解毒の毒とは何を指すのかが、根が西洋医の私には疑問なのです。山豆根 重楼などの清熱解毒利咽の薬剤は咽の炎症を抑える目的で配伍されたのでしょうから、炎症性毒素の毒か、炎症そのものなのかでしょうが、実体の定義が曖昧な中医学の漢字表現はその使用によっては解釈上都合が宜しいのです。曖昧なままでも許されるのですから。

一味だけ、他の薬剤と性質の違う収渋薬の金桜子が配伍されていますね。尿蛋白の残存を意識したものでしょう。

ともかく、初診の処方には温薬が一切配伍されていませんね。

私流にまとめれば、活血利水消腫、清熱解毒利湿利咽となります。

周身困重の定義となると、湿が全身に溜まり全身が重く感じるとでもいうべきものでしょうか?いわゆる陥没性の浮腫や、腹水を伴う全身水腫よりも程度の軽いものでしょう。初診から14剤で周身困重減軽、咽痛癒え、口苦無しとなったのですから、ある程度利湿、清熱解熱毒利咽の効果が出た訳です。

そこで、清心蓮子飲加減の登場です。再度 暗記文を載せますね。

参蓍茯車麦冬黄芩地骨石蓮子(さんぎぶくしゃ ばくとうおうごん じこつせきれんし)

本案では

黄蓍50g 党参30g 石蓮子15g 地骨皮15g 柴胡15g 茯苓15g 黄芩15g 麦門冬15g 車前子15g 益母草50g 桃仁15g 紅花15g 白花蛇舌草0g 甘草15g

黄耆が50g 党参30gと大量に配伍されています。益気を強化したのです。柴胡の配伍理由は升陽なのか疏肝理気なのか私には判断しかねます。活血利水消腫の益母草も50gと多いですね。私も日常診療で50gを使用している症例があります。活血化瘀の桃仁 紅花、清熱解毒免疫調整の白花蛇舌草の配伍があります。

本日の市民講座のポイントは、再発性ネフローゼ症候群にはステロイドと中薬治療の併用が宜しいということです。

清心蓮子飲によるネフローゼ症候群の治療に関しては、239報~243に紹介しておりますのでご参照ください。

2014年2月7日(金)


ネフローゼ症候群 加味八正散(はっしょうさん)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療258報)

2014-02-06 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:史某 10歳 男児

初診年月日2005726

主訴:顔面と双下肢浮腫10日間

病歴

患児は10日前、誘因無く顔面と双下肢の浮腫が出現、ハルピン医科大学第一病院受診、尿蛋白2+、尿潜血3+、尿RBC135.0/μL、血清総コレステロール8.3mmol/L321.2m/dL)、アルブミン2.4/dL。ネフローゼ症候群と診断され、メチルプレドニゾン40mgを毎日点滴静注、1週後、尿蛋白2+、尿潜血3+、尿RBC1178.1/μL、尿WBC25~30個/HP、更なる治療を求め、張琪氏の病院に転院。

初診時所見

眼瞼及び双下肢浮腫、顔面少華、神志清楚、双目有神、尿少、尿色淡紅、舌質淡紅、苔白、脈滑、尿蛋白3+、尿潜血3+、尿RBC満視野/HP

中医弁証:湿熱内蘊

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清熱利湿、涼血止血

方薬:加味八正散:

瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 車前子50g 茯苓50g 王不留行(苦/平 おうふるぎょう 活血化瘀 通経 下乳)20g 桂枝15g 山薬20g 地楡(涼血止血 解毒収斂)20g 小薊涼血止血、解毒消癰)30g 白茅根凉血止血、清熱利尿50g 茜草(涼血化瘀止血)20g 蒲黄収渋止血、行血祛瘀)15g 藕節収斂止血)20g 三七(化瘀止血 活血定痛)10g 焦山梔子15g 生地黄(清熱養陰)20

七剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 200582

患者の水腫は消退、24時間尿量は1400ml、面色不華、時に心悸有り、気短、手足発熱、多汗、舌紅苔白、脈数。益気養陰を主として清熱解毒利湿を補佐とする。

方薬生脈飲加減

太子参15g 麦門冬15g 五味子15g 党参15g 玄参15g 生地黄15g 金銀花20g 連翹20g 白花蛇舌草20g 黄耆15g 柴胡15g 丹参15g 小薊20g 芦根(清熱生津清胃熱)20 藕節15

七剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 200589

患者尿色淡黄、午後尿淡紅、尿量正常、水腫、多汗、煩熱症状は消除され、舌紅、苔白、脈細数、尿潜血3+、尿蛋白2+、尿RBC3040/HP、尿WBC2~3個/HP、気陰両虚の証と判断し、益気養陰摂血を以って治療する。

方薬益気養陰摂血合剤

側柏葉涼血止血、袪痰止咳)20g 白茅根凉血止血、清熱利尿30g 小薊涼血止血、解毒消癰)30g 蒲黄収渋止血、行血祛瘀)20


ネフローゼ症候群 茯苓利水湯加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療257報)

2014-02-05 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

茯苓利水湯と言えば、茯苓が先で茯苓 澤瀉 猪苓の順になるのではないかと思いますが、氏の茯苓利水湯は木香 檳榔 青皮と先に行気薬が配伍されています(初診時)。

患者:金某 18歳 男性

初診年月日200058

主訴:腹部張満、尿少、双下肢浮腫一週間

病歴:ネフローゼ症候群歴一週間

初診時所見

腹部張満、尿少、双下肢浮腫、納差を伴う、胃脘部不快、苔白膩、脈滑、腹部膨隆、腹液証+、尿蛋白3+、血清総蛋白5.7/dL、アルブミン1.9/dL、総コレステロール11.50mmol/L445m/dL)、トリグリセリド3.90mmol/L331.5m/dL)。

中医弁証:脾虚不運、気滞水蓄

西医診断:原発性ネフローゼ症候群

治法健脾行気利水

方薬茯苓利水湯

木香10g 檳榔25g 青皮10g 陳皮15g 紫蘇15g 茯苓40g 白朮30g 党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 2000年 5月 22

腹液、浮腫ともに消え、尿蛋白+、尿量正常、自覚症状無し、舌紅、咽赤。

方薬:茯苓利水飲加減:(上方より木香 檳榔 青皮の行気薬を除き白花蛇舌草、金銀花、連翹を加味した)

方薬:茯苓利水湯加減

陳皮15g 白花蛇舌草30 金銀花30g 連翹30g 紫蘇15g 白朮30g 茯苓40

党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜20g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30

7剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 2000年 529

尿蛋白転陰、連続2回尿検査異常なし、血脂は降下し正常になり、血清アルブミンは3.1/dL、病情は緩解した。

ドクター康仁の印象

僅か3週間で浮腫、腹水、蛋白尿までが消えたのですから見事な治療です。

茯苓利水湯の出典は「医宗金鑑」で原方は茯苓30g 猪苓20g 木瓜(酸/温 行気止痛、健脾消食、止瀉、平肝舒筋、和中袪湿)10g 澤瀉20g 檳榔20g 党参20g 白朮20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15g 陳皮15g 麦門冬15gです。本案では木瓜、麦門冬は配伍されていません。

茯苓30g 猪苓20g 澤瀉20gは利水、檳榔20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15gは理気(行気)であり、気滞は水停を起こし、気がめぐれば水行する、という中医理論から、行気と利水を同時に行った訳ですね。海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gの配伍は腹水があるばあいに張琪氏は愛用するようです。黄耆、党参、白朮、茯苓は益気健脾利水の効果で祛邪(利水)と補益を兼ねるものです。二診では既に浮腫が全消したのですから、行気利水の木香 檳榔 青皮を除き、舌紅、咽赤に対して金銀花 連翹の清熱解毒薬を加味しました。白花蛇舌草も清熱解毒利湿薬ですが、免疫調整という弁病的な考慮もあるかもしれません。乾姜を配伍した理由は氏がやや脾胃虚寒の印象を持ったのかも知れません。あくまで推測ですが。畏寒肢冷、便溏などの腎陽虚を兼ねる場合には附子を配伍するでしょう。

2014年2月5日(水)


ネフローゼ症候群 加味牡蠣澤瀉飲(ぼれいたくしゃいん)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療256報

2014-02-04 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:呂某 28歳 男性

初診年月日1989412

主訴:反復浮腫三年

病歴:ネフローゼ症候群歴3年、プレドニゾン他多種の西洋薬治療にて明らかな好転無し。

初診時所見

腰以下の浮腫が甚だしく、陰嚢腫大、腹張満、口が粘って乾燥、尿少、尿色赤多泡沫、尿量約500ml/24hr、舌紅胖大、苔白膩、脈滑。血清蛋白正常域の低限、総コレステロール増加、尿蛋白3+、顆粒円柱3~5個/LP

中医弁証:湿熱壅滞下焦

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清熱逐水

方薬:加味牡蠣澤瀉飲:

牡蠣20g 澤瀉20g 葶藶子(ていれきし 苦辛/大寒 瀉肺平喘、利水消腫)15

商陸(苦寒/有毒 行水退腫、散結消腫)15g 海藻(消痰軟堅 利水退腫)30g 天花粉養胃生津 清肺熱 消腫排膿)15g 常山(じょうざん 苦/寒 有毒 催吐痰飲、截逆=抗マラリア作用)15g 車前子15g 五加皮(苦/温 祛風湿 強筋骨)15g 白花蛇舌草30

六剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

付記:海藻を腹水の要薬とする意見もあります。

二診 1989418

尿量増多24時間量1800ml、尿蛋白2+、顆粒円柱0~2個/LP

方薬加味牡蠣澤瀉飲、前方から(寒峻の)常山を去り、(代わりに穏やかな)瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20gを加味。

六剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

( )は私の印象です。

付記:峻下逐水薬に分類される商陸は大小便を通暢させことで、水湿を除きます。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130309

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130227

三診 1989年 4月 24

諸症は顕著に好転、尿蛋白+、円柱(-)、やや腰酸あり、下肢に僅かに浮腫、舌淡紅やや胖、苔薄白、脈沈滑、補腎利湿を以って治療する。

方薬済生腎気丸

牛膝20g 車前子20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬20g 牡丹皮15g 茯苓20g 澤瀉15g 制附子7g 肉桂10

20剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

四診 1989514

尿蛋白陰性、浮腫は全消して病は癒えた。その後1年来 再発は無い。

ドクター康仁の印象

西洋医が阿呆に見えるくらい立派な治療効果でしたね。初診時にステロイドの副作用もあったのでしょうね。最初の12剤は商陸、常山など有毒な生薬が多いので日本では使用されにくいですね。涼寒大寒薬が目立ちますね。温薬は五加皮だけで、反佐でしょうか?商陸や常山の寒峻攻逐水による傷陰を天花粉が防止しているとも考えられます。常山は二診で中止しています。代わりに瞿麦 萹蓄を加味し、最終的には牛膝 車前子 制附子 肉桂 六味地黄丸つまり牛車腎気丸で益腎補陽(補陰)利水に落ち着かせるのは見事な手腕です。牡蠣 澤瀉 海藻の組み合わせは清利湿熱でしょう。

張琪氏ご自身もその老師から教えを頂き、加味牡蠣澤瀉飲を創方したのです。伝統と経験が大切であるという証拠がここに存在します。

寒熱弁証のみから論ずれば、冷やして祛湿、冷やして利水して、一段落したら、補腎陽(腎気丸)と温めながら補肝腎利水(牛膝 車前子)するという流れです。

極端に寒い日は嫌な予感がします。

先日、開業医をコンビニ扱いしている患者様が混んでいる外来に単身飛び込んできました。その御心中を察するに、

「今日は酷く寒いし、遠い主治医のところまで行って、待たされて診察受けるのが面倒だし、近くの医者で薬だけ貰っておくことにするか」が本音なのですね。その本音は勿論言いませんが。いろいろ問診していると、

「ええわ、そんなに面倒ならもうええわ、こっちからお断りやわ」

とチンピラ風に切れるのですね。

「薬だけでいいんですか? ジェネリックの名前が多いので今調べています。」

「そんなに面倒?もうええわ。患者と医者の相性もあるし。」

あとはお決まりの自己弁護に徹して、他医の悪口を言い散らし、気晴らししてお帰りになる。年に二度ぐらいはあります。

呆れていました。後に引きずらないためにも

「いつでも急に具合が悪くなったら診ますよ。お大事にしてください。」と丁寧にお引取り頂くのです。これも臨床経験の一つですね。

2014年2月4日(火)