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指迷茯苓丸 考

2012-11-30 00:15:00 | 漢方市民講座

「痰」 最終講義

本日の漢方市民講座は「痰」最終講座です。来月12月からは、もう少し解りやすい内容にしたいと思います。

それでは、師弟問答に入ります

老師:

痰が存在する臓腑が異れば、症状の表われも特異であることは覚えておかなくてはならない。昨夕は「痰動于腎」を問うた。今朝は「痰留骨節・経絡」について問う。およその病機はなんぞや。

貴方:

痰留骨節・経絡」とは痰濁が骨節・経絡に停留して、気血鬱滞、絡脈痺阻(ひそ)となることです。

老師:

然り。骨節はおよそ関節と同意である。経絡は眼に見えないものであるが、血気運行の通道で、直行する経脈と、経脈から分かれ身体各部を網絡する絡脈の総称であり、経絡は全身の気血の運行 臓腑四肢関節の連係 上下内外の疏通 体内各部分の調節などの通路と考えられ、経絡の系統的な連係が、人体を有機的統一体にしている。 では骨節や経絡に痰濁が停留すればいかなる症状が生じるや。

貴方:

   骨節疼痛腫脹、肢体が麻痺不仁、或いは半身不随、口眼歪斜、瘰癧(リンパ節腫)、気(甲状腺腫)、結節、腫塊などです。経絡に沿って痰濁が停留するために生じる症状です。

老師:

然り、では一般的な舌象と脈象は?

貴方:

苔白膩、脈弦滑です。

老師:

然り。他の「痰」症と大方同じである。では治則はなんぞや。

貴方:

軟堅消結、通絡化痰です。

老師:

然り。通則不痛 痛則不通のごとく、経絡に停留している痰を除き(化痰)、経絡の流れを改善するのが通絡化痰であり、経絡に停留した痰が凝結して気(甲状腺腫)、結節、腫塊を形成した場合には、堅さを軟らかくしてシコリ(結)を散らすのが、軟堅消結(散結)である。方剤を挙げれば四海舒鬱丸、指迷茯苓丸になる解説せよ。

貴方:

四海舒鬱丸(しかいじょうつがん)(出典:瘍医大全):組成は、海蛤粉鹹寒) 海蒂 海藻苦鹹寒) 海螵蛸(=? 昆布 陳皮 青木香です。

青木香15g 陳皮 海蛤粉各9g 海(わかめ) 海藻 昆布 海螵蛸各60gを沸騰水をかけて塩分を除きます。その後、乾燥したら細末に砕き、一日3回服用します。沸騰水をかけ、容器の底に沈んだ残りの残滓はツボである気頚に塗ります。病状が改善したら、再発予防として、黄薬子120g 白酒1升を60分煮詰め、7日間容器に置き、白酒の火毒を除き、日に2回数杯を飲みます。効能は、行気化痰,散結消?(しょういん)です。格生薬の効能は、青木香、陳皮は理气化痰、海蛤粉、海、海藻、昆布は清熱化痰,軟堅散結に、海螵蛸は活血消?に、全体として、行気化痰,軟堅消?に作用します。黄薬子は凉血降火,消?解毒に働き、白酒と煮て内服すれば、能?瘤結気を治し,継続服用すれば、気?を根治できます。

老師:

然り。四海舒鬱丸(しかいじょうつがん)の主治は、肝脾気鬱による気?(きいん)であり、甲状腺種(qi goiter/simple goiter)であり、喜怒にしたがって消長するもので、はなはだしくなれば飲食の障害を起こすものとなる。

次に、指迷茯苓丸について問う。出典と組成と効能を述べよ。

貴方:

指迷茯苓丸の出典は通常は、朱丹渓の丹渓心法とあるか、全生指迷方であると聞いております。効能は燥湿滌痰にて、経絡の留痰を滌痰することにより四肢、関節の痛みを除くと聞いております。組成は

半夏60茯苓30枳殻15風化芒硝7.5 生姜 一回6gにて、主治は痰留経絡です。四肢の疼痛、あるいは浮腫があり、舌苔は白膩が多いと聞き及びます。

老師:

然り。元来、指迷方では「茯苓丸」と称されたものであり、停痰臂(肩)痛,指迷方と私も聞き及んでいる。飲伏於,停滯中脘,脾主四肢,脾滯而氣不下,故上行攻臂,其脈沉細者是也と記載があるように、脈象は沈細とあるが、必ずしもそうでない症例がある。生姜汁で丸薬にしたものである。風化芒硝は軟堅に作用するとある。虚痰により、行気すれば肩の痛みはおのずから止むとある。痰飲流入四肢に流入するのが病機であり、風邪によるものではない。導痰湯も可なり。症状が重ければ、控涎丹(こうえんたん)(三因极一病証方論):甘遂 大戟 白芥子も考慮に入れるべし。蠲痺湯は痺証の共用処方である故に考慮すべし。蠲痺湯(医学心悟):羌活 独活 桂心 秦艽 当帰 川芎 炙甘草 海風藤 桑枝 乳香 木香の組成である。証により、風邪が盛んな者には、羌活、独活、防風を加え、寒邪が盛んな者には、川烏、細辛を加え、湿邪が盛んな者には、薏苡仁、防己を加えるのがよい。肩の痛み、関節の痛みが慢性化して、気血不足、肝腎虚弱を伴う者には、三痺湯(婦人良方)を病証の重点に従い加減使用する。三痺湯(婦人良方):独活桑寄生湯の桑寄生を黄耆 続断 生姜に変えたものと理解できる。続断 杜仲 防風 肉桂 細辛 人参 茯苓 当帰 白芍 黄蓍 牛膝 甘草 秦艽 熟地黄 川芎 独活 生姜の組成となり、袪痰より、補気に重点が移る。

貴方:

200962日に、「臨床経験録」で発表された指迷茯苓丸の記事を拝読する経験がありました。

http://www.haodf.com/zhuanjiaguandian/zhaodongqi_67726.htm

??奇医生(医師)の発表です。氏は指迷茯苓丸について以下のように述べています。以下簡体漢字が混じります。

??奇医生(医師)の発表200962


論論 「痰」 金水六君煎 考

2012-11-29 00:15:00 | 漢方市民講座

本日の漢方市民講座も引き続き「痰」です。

師弟問答に入ります

老師

痰が存在する臓腑が異れば、症状の表われも特異であることは覚えておかなくてはならない。本夕は「痰動于腎」を初めに問う。およその病機と症状はなんぞや。

貴方:

痰動于腎のおよその病機は長期の慢性病を患うと、腎を病むようになり、腎気(腎陽)不足になり、蒸化無力となり、結果、水湿内停が生じ、水湿が上を氾して痰になります。または腎陰が虧耗すれば、陰虚火旺が生じ、虚火が津液を灼し、痰になります。

老師:

然り。では主な症状は何ぞや。

貴方:

主要症状としては喘逆気促、動くともっと酷くなり、或いは浮腫畏寒、膝腰冷痛、朝に下痢、頻尿、舌は淡、脈は沈細です。或いは腎虚普遍の症状たる、頭暈耳鳴り、腰膝酸軟があり、舌紅少苔、脈弦細かつ数なれば陰虚火旺の証と弁じます。

老師:

然り。およそ久病が腎に及べば腎陽、腎陰も傷される。陽が損なわれれば、寒の 証が多く、下痢、小便は清長となり、陰の虚損がより酷くなれば、虚熱の証が現れる。陰陽互根なれば、陽のみ虚損され、陰は健全であるということは無く、また、陰のみ虚損されて陽は健全であることは無い。腎陽は老化とともに生理的にも虚衰するものであり。腎陰も同様である。治療にあたり、標に腎陽虚の証があれども、腎陰虚も同時にあるということを忘れてはならない。

温腎化痰利湿、滋腎化痰を治則とすれば、各方剤はなんぞや。

貴方:

温腎化痰利湿には済生腎気丸(済生方)を用います。

済生腎気丸(済生方):別名牛車腎気丸であり、金匱腎気丸加味牛膝 車前子です。牛膝69

+金匱腎気丸去る桂枝、加肉桂の構成で、下肢の浮腫などがある場合に特に有効と覚えております。

八味地黄丸{六味丸+炮附子、桂枝}の桂枝を肉桂3に替えて牛膝6

9を1日分とします。

老師:

肉桂の効能は?

貴方:

辛甘大熱の純陽たる薬性で、衰えた患者の命門の火を補い、腎に火(陽気)を 戻す作用である引火帰原に働くので、下元虚冷や腎陽不化気の水質停滞 小便不利に良く、活血行瘀の効能もあるがゆえに、陽虚寒凝血瘀にもよろしいかと。

老師:

大方然り。では精血虚衰の痰盛にはどの方剤を用いるや。

貴方:

張景岳の金水六君煎(きんすいりっくんせん)を試します。

金水六君煎(景岳全書)

だんぐいじゅくじ二陳湯と記憶しております。

当帰6熟地

6~15+二陳湯 肝腎不足と痰湿内盛に用います。

元気が無く疲れ果てており、皮膚は血虚にて艶がなく、精血虚衰を思わせるも、慢性に多量の湿痰を吐き、舌質は胖大ではなく精血虚衰のために、むしろ痩せていて、脈は精血虚衰のために細となっているような者に使用します。標の多痰に着目し、健脾燥湿行気温化湿痰の二陳湯を使い、補肝精血の当帰、傷陰防止に補陽に過ぎず、傷陽防止に補陰に過ぎない熟地黄を加えたものと理解しています。

老師:

然り。

腎は蔵精を主り、肝は蔵血を主るので、精血不足の病証では一般に養肝補腎の治法を用いる。当帰は甘辛苦温、血中の気薬として心、肝、脾に入り、血病の要薬であり、熟地黄は甘微温、心 肝 腎に入り、滋腎益精に作用する。補陰補陽に過ぎないことが熟地黄の性質である。

貴方:

張景岳が処方によく熟地黄を用いたので張熟地と呼ばれた理由となる一つの処方例が金水六君煎ですね。

Photo

地球 

陰陽学説って何でしょうね。宇宙の物理理論から、バクテリアもホモサピエンスも逃れられないのですが、、、。

ドクター康仁 記


「痰」症 続考

2012-11-28 00:15:00 | 漢方市民講座

本日の漢方市民講座も引き続き「痰」です。

師弟問答に入ります

老師:

痰が存在する臓腑が異れば、症状の表われも特異であることは覚えておかなくてはならない。本朝は「痰蘊脾胃(たんうんひい)」を初めに問う。およその病機と症状はなんぞや。

貴方:

病機の概要を申せば、飲食の不摂生、過度の思慮により、脾胃が傷つけられ、脾の運化の失調により湿を生じ、痰が形成される。症状の主なるものは、食欲不振、嘔気、嘔吐、痞満不舒、倦怠無力、身重く眠く、診て、苔白膩、舌胖、脈は濡緩なり。

老師:

然り。治則と方剤を問う。

貴方:

健脾化痰です。方剤げれば、平胃散(へいいさん)(和剤局方)蒼朮 厚朴 陳皮 大棗 炙甘草の組成です。六君子湯(りっくんしとう)(医学正伝)は、人参 茯苓 白朮 炙甘草 陳皮 制半夏の組成であり、四君子湯に陳皮制半夏を加味したものです。

老師:

然り。六君子湯は見方を転ずれば、半夏9陳皮9茯苓6甘草3(二陳湯:和剤局方人参白朮を加味した組成になる。面白いではないか。四君子により益気健脾するは、すなわち燥湿化痰となるゆえ、行気化痰の陳皮、袪湿痰の半夏を加味し、化痰の効を強めたのである。逆もまた真なりにて、二陳湯の燥湿化痰の効能に、健脾利水の茯苓、健脾益気、大補元気の人参を加味して、その効を強化したものと解するも可である。大棗、生姜は患者の本虚の程度により加味してもよろしい。

貴方:

四君子湯加半夏陳皮は二陳湯加人参茯苓と酷似しているのには驚きました。六君子の意味が身近に感じられるようになりました。

老師:

良き哉。では、痰鬱于肝論を展開しようではないか。病機の概要は、多くは肝気鬱結、気結痰凝により、痰と気が互いに結して塞ることによる。主な症状は、咽喉に物がつまった感じ、胸脇隠痛、げっぷ、易怒(怒りやすい)、鬱しやすい、苔は薄白膩であり、脈は弦滑である。治療法則解鬱化痰にて、方剤を挙げれば、四七湯(ししちとう)がある。四七湯(太平恵民和剤局方 引 簡易方法)の源方は何ぞや。

貴方:

半夏厚朴湯(金匱要略)半夏 厚朴 茯苓 生姜 蘇葉に大棗を加味したものであり、効能は行気解鬱 降逆化痰です。

老師:

然り。配合生薬は茯苓(平)を除き、全て温薬となっている。およそ、気滞痰郁の者は、咽喉に物が詰まり、吐き出せなく、飲みこめないという違和感を訴える。胸悶、窒息感、或いは脇痛を伴う。舌苔は白膩、脈は弦滑である。

肝鬱犯脾、脾失健運、痰湿内生の結果、痰と気が横隔膜の上に郁結するため、咽喉中に物が詰まり、吐き出せなく、飲みこめない違和感、“梅核気”とも称される症状をみる。気機不暢のため、胸悶、窒息感が生じる。肝経の鬱滞の結果、脇痛をみる。舌苔が白膩、脈が弦滑なるは肝鬱気滞、痰湿内聚の証候である。

行気解鬱 降逆化痰の治則は化痰利気解鬱とも換言できる。半夏厚朴湯中、半夏、厚朴、茯苓を以って降逆化痰、紫蘇、生姜で利気散結の効能を求む。

制香附子、枳殻、佛手、旋覆花、代赭石を加え、理気解鬱の効能を強化するも可なり。

貴方:

若し、嘔吐、口苦、舌苔が黄膩である場合にはどの方剤に依ればいいのでしょう。

老師:

嘔吐し、口が苦く、舌苔が黄膩であるは痰熱証であるが故に、温胆湯に黄芩、貝母、瓜萋皮を加え、化痰清熱、疏理気機の効能を求めることになる。

貴方:

利気と理気の違いは何でしょうか?

老師:

利気散結の利は通利の意味であり、理気解鬱の理は疏理の意味である。

貴方:

お疲れの御様子ですので、早めにお休みください。

老師:

      では「痰動于腎」については後日にいたそう。

ドクター康仁 記

安逸をむさぼると 以下の3つの異常が生じると言われています。

    気血のめぐりが悪くなる

    痰湿が出やすい

    「久臥傷気」と称し、気を損傷する


続 「痰」 考

2012-11-27 00:15:00 | 漢方市民講座

本日の漢方市民講座は引き続き「痰」です。

師弟問答

老師:

痰は病をなし、その病理学はとても広く、喀出される形のある痰も指し、又痰の特異症状を指しても言う。「痰」を生む原因が異なるために生じる痰の性質にいかなる違いが生じるや。

貴方:

寒 熱 燥 湿 風等の多種類の痰です。痰が存在する臓腑が異れば、症状の表われも特異です。

老師:

然り。痰が存在する臓腑が異れば、症状の表われも特異であることは覚えておかなくてはならない。痰の産生と密接に関係する臓とは?

貴方:肺・脾・腎の三臓です。

老師:然り。では肺について痰の発生を述べよ。

貴方:

肺は気を主り、外邪が肺を犯すと、肺失宣粛により、肺の津液が凝集して痰ができます。

老師:然り、次ぎに脾を問う。

貴方:

脾は運化を主り、外感の湿邪、或いは飲食の不摂生、或いは思慮労倦、脾胃の損傷によって、運化ができなくなると、水湿が内停し、凝集して痰ができます。

老師:然り、次ぎに腎を問う。

貴方:

腎は開合を司り、腎陽不足、開闔不利によって、水湿が上氾し集まって痰となります。命門の火が衰え、温運脾陽ができなくなり、水殻が精微を形成できない等により、湿を生じ、痰ができます。腎陰虧耗、虚火内熾によって、津液から熱せられて痰となります。

老師:

肝について覚えておきなさい。この他、情志不遂、肝気鬱結、気鬱化火等によって、津液が熱せられ痰となり、痰と鬱が互いに結びつきあうと鬱痰が発生する。肝陽化風、痰涎内壅は風痰の発生を成す。痰と熱が結びつくと熱痰となり、寒と痰が互いに凝ったのが寒痰であり、痰に湿証を兼ねそなえたのが湿痰であり、痰に燥証を兼ねたのが燥痰である。

痰がすでに作られて体内に留まると、ともに升降し、どこにでも現れる。或いは肺に阻し、或いは胃に停止し、或いは心竅に蒙閉し、或いは肝に鬱し、或いは腎に生じ、或いは経絡に流れると、いろいろな証が生じる。以下は痰の存在するそれぞれの部位についての証を分類して述べるものとする。

老師:

証治分類に論を進めよう。痰阻于肺とは?

貴方:

病機概要の主な原因は、風・寒・湿・熱邪を受けたり、長期の咳によって肺に津液が分布されずに集まって痰となり留まることです。

主要症状は咳嗽喘息、喉に痰がありゴロゴロ鳴る、痰多色白、喀痰しやすい、或いは伴って寒熱表証が見られ、苔薄白膩、脈浮或いは滑。

老師:

治療法則宣肺化痰である。いかなる方剤をもちいるや

貴方:

方剤挙例:止嗽散(しそうさん)、杏蘇散(きょうそさん)の2方剤を挙げます。

止嗽散(医学心悟):効能:止咳化痰 疏表宣肺

ききょうけいがい じーわんばいぶ びゃくぜんちんがん

桔梗 荊芥 紫菀 百部各9 白前陳皮4.5甘草 

全 量54g 細末一回6g服用 9回分

平性に近く、風寒、風熱の両者の咳嗽に使用可能です。

杏蘇散(温病条弁):効能:軽宣涼燥 宣肺化痰 主治外感涼燥です。

  きょうにんそよう しょうはんげ きこくききょうちんぴぶくりょう

  ぜんこ各6大棗2と覚えております。

  杏仁 蘇葉 生姜 半夏  枳殻 桔梗 陳皮 茯苓 前胡6大棗2

老師:

外感温燥には何を用いるや。

貴方:

外感温燥には桑杏湯(温病条弁)を用い清宣涼潤をはかります。

そうきょう    べいしゃだんどうち  さんしし梨皮 外温燥と覚えております。

桑葉3杏仁4.5 貝母3沙参6淡豆豉3 山梔子 梨皮3 水煎服用

老師:

佳にして然り。痰蒙心竅を覚えておきなさい。

痰蒙心竅(たんもうしんきょう)とは、病機概要として、多くは七情によって人体が傷つけられて生じる。例えば抑鬱、暴怒等、或いは湿濁の邪気を受け、気機が塞がれ、気結により痰ができ、心竅を阻閉することを意味する。

主要症状は精神錯乱、胸悶心痛、或いは卒倒、人事不省、喉で痰の音がする、苔白膩、脈滑。治則化痰開竅である。方剤を記憶しているや。

貴方:

導痰湯(どうたんとう)、蘇合香丸(そごうこうがん)を記憶しています。

導痰湯(済生方):主治:風痰上擾 効能:化痰熄風 健脾除湿 

はんちんふーじ たんきしょうと記憶しています。

半夏9陳皮9茯苓6甘草3


続 眼に見えない「痰」とは?

2012-11-26 00:15:00 | 漢方市民講座

始めに「お詫び」 

張景岳のスライドに誤りがあったので訂正してお詫びします。張景岳とすべきを、張岳景と誤記しました。山岳景色と入力して「山色」を消去した結果です。景色山岳と入力して、「色山」を消去しなくてはなりませんでした。お詫びいたします。次回からは間違えないように氏名単語登録いたしました。

訂正後のスライドを2枚表示いたします。

Jpeg 

張景岳略歴1

Jpeg_2

張景岳略歴2

眼に見えない痰について、景岳全書、張景岳は「眩暈 頭重」に関して、こう述べています。

眩暈や頭重は、虚実を中心としてその原因を弁証していくとよい。
何かの病気の最中に眩暈するものは、清陽が昇り難くなって上が虚したためになる。

(清陽不昇という概念を私は中医基礎理論で学びました)
朱丹渓が、「痰無ければ暈なし」と言っている通りである。完璧な論ではない。

(「痰無ければ暈なし」の病因論は、同じく中医基礎理論で学びました)
その形と気とを合わせて観察し、また慢性病と急性病とを分けてよく弁別すべきである。(内経)に、(上虚すれば眩し、上盛ならば熱痛する)その意味をよく理解するべきである。(頭重の場合はとりわけ上虚に属する)とあり、また、(上焦の気が不足すれば脳満ちず、頭を傾けると苦しい)とあるのはこの意味である。この意味とは「清陽不昇」ということでしょう。

張景岳は朱丹渓の「痰」に言及していますが、では「痰」とは何かを具体的に記述してはいないようです。いまだに中医学者が具体的に示していないのですから、「痰」とは、朱丹渓にも張景岳にも明確に定義できない「概念」である「病理産物」です。

ふたたび思考実験として、読者が昔の漢方医の弟子となり、師弟問答を再現してみましょう。

老師:この心悸(動悸)を訴えるご婦人から何を診てとるや?

貴方:舌苔が粘?で、やや黄、脈は弦滑で、やや肥満であるのが目立ちます。

老師:では、体内に何が滞っていると感じるか。

貴方:「湿、痰」が体に溜まっている状態と推察できます。しかし経血に異常はなく、瘀血にはいたっていません。

老師:問うてみての特徴はなんぞや。

貴方:常に体が重く感じ、息が詰まる感じや喉に何かが引っかかる感じがあり、頭も帽子がかぶさっているような気分で、精神的に落ち込みやすい特徴があります。

老師:気から弁証すればなんぞや。

貴方:気滞です。

老師:然り。気の推動作用が低下するが故に、見えざる痰が喉に鬱結(うっけつ)し、異物感となり、喉の閉塞感で嘔気する。病の根源は肝鬱脾虚であるがゆえに、だるさや眠い感じが一日中続くことがある。体の重い感じは痰湿の為なり。帽子をかぶっているような頭痛は痰濁頭痛と称されるもので、はなはだしきは眩暈にて起きていられなくなる。

老師:便を問うてみてなんぞ特徴ありや。

貴方:下痢気味です。嘔気の際にすっぱい水が上がると訴えています。

老師:脾虚水質内滞による下痢と弁ずる。胃中停飲と弁ずる。

貴方:帯下の量が多いと訴えていますが。

老師:痰湿下注と弁ずる。

貴方:手足の痺れ、肩こりは経絡痰阻によるものですか?

老師:然り。痰湿の停滞が長引くと何に変ずるや。

貴方:「痰火」です。

老師:然り。痰火擾心(じょうしん)が心悸(動悸)の病機なり。しからば、金匱要略中の方剤では何を用いるや。

貴方:半夏厚朴湯です。

老師:然り。ただし、半夏厚朴湯は「痰火」には不十分なり。温薬のみで制火には不十分なり。三因極一病証方論中の方剤では何を用いるや。

貴方:温胆湯です。

老師:組成はいかに。

貴方:半夏4.8茯苓4.8生姜0.6g陳皮2.0g 竹筎1.6g 枳実1.2g 甘草0.8です。

老師:然り。制火清心火の目的とするなら、何を加えるべきや。

貴方:黄連です。

老師:然り。もし病が長引き、不寝を訴えれば酸棗仁を加えるのも可なり、痰火が肺陰を灼傷し、粘い喀痰が混じるようになれば、麦門冬を加えるのも可なり、胆南星も加なり、もし、帯下が黄色に変じ、匂いが鼻につくようになれば黄柏を加えても、滑石を加味するのも可なり。ただし現在は必要を認めず。

貴方:葉氏女科中の蒼附導痰丸(そうぶどうたんがん)は可なりや。

老師:蒼朮 香附子 枳殻 半夏 陳皮 茯苓 胆南星 甘草 生姜の組み合わせは二陳湯(和剤局方 半夏 陳皮 茯苓 炙甘草 生姜)を基本とし、蒼朮 香附子 枳殻 胆南星の加味方である。温胆湯から竹筎を除き、蒼朮、香附子、胆南星の加味とも言える。医方集解 清代」中の清気化痰湯(せいきけたんとう)黄芩 栝萋仁 半夏 陳皮 杏仁 枳実 茯苓 胆南星 のごとく、胆南星が加味されているものの、本日の症例は、肺の痰熱でもないことは勿論であり、婦科の主訴でもなく、月経異常(多くは月経後期)もないが故に、調経の必要性は小さい。婦科の要薬である香附子は不要と即断するのではないが、香附子の必要性は小なり。したがって清気化痰湯と同様に蒼附導痰丸は不向きなり。

貴方:覚えておきます。

続く  ドクター康仁 記