gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

がんの休眠治療 漢方薬 蚕の効能

2007-02-27 12:30:45 | うんちく・小ネタ

白僵蚕(びゃくきょうさん 中国語バイジャンサン)の可能性

岩手大農学部の鈴木幸一(すずき・こういち)教授の研究グループがラットの細胞を使った実験で、野生の蚕(かいこ)が冬眠を継続する間に体内で分泌される微小蛋白物質に、がん細胞の増殖を抑える働きがあることを確かめたと発表があった。

 野生の蚕「天蚕(てんさん)」は冬眠の間に体内で細胞分裂を抑える物質の分泌が続くという。研究グループはラットのがん細胞にいわば「休眠物質」を投与したところ、がん細胞の増殖が48時間でほぼ停止したという。この物質の構造は5個のアミノ酸で構成されているという。従来の抗がん剤が化学物質であるのに対して、天然のペプチドである点が注目に値する。

2007_27_012

<shapetype id="_x0000_t75" stroked="f" filled="f" path="m@4@5l@4@11@9@11@9@5xe" o:preferrelative="t" o:spt="75" coordsize="21600,21600"><stroke joinstyle="miter"></stroke><formulas><f eqn="if lineDrawn pixelLineWidth 0"></f><f eqn="sum @0 1 0"></f><f eqn="sum 0 0 @1"></f><f eqn="prod @2 1 2"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelWidth"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @0 0 1"></f><f eqn="prod @6 1 2"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelWidth"></f><f eqn="sum @8 21600 0"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @10 21600 0"></f></formulas><path o:connecttype="rect" gradientshapeok="t" o:extrusionok="f"></path><lock aspectratio="t" v:ext="edit"></lock></shapetype><shape id="_x0000_i1025" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 207pt; HEIGHT: 155.25pt"><imagedata o:title="2007 2月27日 家族 白僵蚕 012" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image001.jpg"></imagedata></shape>

白僵蚕(びゃくきょうさん 中国名バイジャンサン) 帰経: 肺 肝

中国漢方医学では、古くから息風止痙(そくふうしけい)(痙攣を止める)、消腫散結(しょうしゅさんけつ あるいは化痰散結ともいう)(リンパ節の腫大、腫瘍のしこりを除く)作用が注目されてきた。細胞代謝に対する抑制効果は消腫散結作用と関係すると思われる。

古来より、腫瘍は痰と淤血が結びついたものだという概念が古典中国医学には存在した。化痰とは痰を除くという意味だが、気管支炎などの際に用いる痰(きょたん)剤という意味ではない、化痰の「痰」とは中医学独自の腫瘍や慢性病に出現する病理産物の一つである。

  続く、、


子宮筋腫の漢方治療

2007-02-23 12:04:58 | うんちく・小ネタ

子宮筋腫とホルモンとの関係

妊娠可能な年齢,つまり女性ホルモンの分泌が盛んな間はホルモンの影響で子宮筋腫は大きくなります。通常は50才を過ぎて女性ホルモンが低下すると筋腫は縮小し,生理が終わると(閉経すると)症状も軽快するので外科的な治療の必要はなくなります。
 子宮筋腫は悪性腫瘍ではありません。従って子宮以外の臓器に転移したりしません.癌化して手遅れになるような病気ではないのです。外科手術の適応は、筋腫のサイズとは無関係です。ただ単に大きいという理由だけで手術する必要はありません.一方、小さい筋腫でも、たとえば粘膜下筋腫などの場合で、過多月経などの症状が強く,内服薬の治療がうまくいかない場合は手術の適応になります。当然、妊娠、分娩の希望があるかないかで治療方針はかわってきます。

 義父が婦人科医であった関係上、自然と婦人科の術式には慣れ親しんだ経緯がありますが、開腹手術でなくても腟式でも粘膜下筋腫は手術が可能です。子宮筋層にある筋腫の場合には、一部の医療機関では、子宮鏡観察下に高周波メスやレーザーを用いて筋腫核を摘出する手術が行われるようになりました。過多月経が著しく、かつ妊娠を望んでいない場合には,子宮内膜を一定温度で凝固壊死させる方法などもあります。 

子宮筋腫のホルモン療法は考え物

 生理不順や生理痛,過多月経の時などの薬としてエストロゲン(卵胞ホルモン) とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤があります。経口避妊薬のピルと,生理日を変更したい時に使うホルモン薬は同様のホルモン剤です.

子宮筋腫はこれらのホルモンによって増殖する性質をもっていますので,長期の使用は禁忌とされます。現在では「エストロゲンと同様プロゲステロンも筋腫の増殖に関わる」という認識が一般です。
 これらのホルモンの分泌を強力に抑制して人工的に閉経状態にする薬(商品名スプレキュア,リュープリンなど)が開発されました。これにより閉経し、生理痛から開放され,筋腫もかなり縮小します.しかし,更年期障害の症状(のぼせ,肩こり,めまい、骨粗しょう症、はなはだしい場合は鬱など)がでやすいことが副作用です。値段も高価であり、6カ月以内が保険給付期間とされています。そこで、6カ月で治療を一旦終了しますが、また生理が再開してさらに6カ月後にはほとんどの人は筋腫がもとの大きさ以上になります.そこで(元のあるいは別の医療機関で)スプレキュアなどを再開するわけです。なにかいたちごっこの様相です。この治療法は閉経が近いと思われる人には向いている治療法です。 しかし、漫然と繰り返す治療ではありません。出血を減少させ貧血を速やかに改善させ,筋腫のサイズを縮小させて手術を容易にするなどの,手術を前提とした一時的な使用と考えるべきです。

手術時に置き忘れたガーゼの塊りは子宮筋腫と誤診される可能性がある。

最近のニュースより

岐阜県のある病院は、30代の女性に帝王切開手術をした際、体内にガーゼを置き忘れた上、7年後にこれを子宮筋腫と間違えて、子宮と右卵巣を摘出する医療ミスがあったことを表明し、慰謝料を女性に支払うことで和解したという。発表によると、女性は子宮筋腫と左卵巣嚢腫と診断され、子宮と右の卵巣を摘出した後に、子宮と直腸の間に丸まったハンカチ大のガーゼ1枚が見つかり、子宮筋腫と誤診していたことが分かった。左卵巣膿腫の診断に誤りはなかったという。ガーゼの塊りが子宮と直腸の間に癒着し、あたかも子宮の漿膜下の筋腫のように見えたのであろうが、将来の妊娠分娩のチャンスは永久に失われた。痛ましいニュースであった。

手術したくなければ子宮筋腫は漢方で治療するのがいい

子宮筋腫の患者さんには同時に冷え性、痔、静脈瘤、更年期障害などを合併していることが多く、漢方治療により「総合的な子宮筋腫の治療」が可能です。特殊な保険の効かない生薬を使う場合は別として一般の桂枝茯苓丸などを使用する場合はコストが安いのも魅力です。スプレキュア,リュープリンなどと比較して安価ですみます。

将来の妊娠を望んでいる場合,妊娠中に筋腫が増大した場合、更年期障害の症状がある場合などには特に漢方薬が有効です。また低用量の男性ホルモン製剤を併用することも可能です。通常使用量の3分の1以下の使用量では、報告されているむくみ、体重増加、肝機能障害、にきび、性器出血などの副作用はありません。

 漢方薬単独で十分効果が現れない場合は,低用量の男性ホルモン製剤を併用することは選択肢の一つです。プレキュア,リュープリンなどと比較して更年期障害のような症状が出たり,骨のカルシウム含有量が減ったりする心配はありません.

お勧めの漢方製剤と生薬

子宮筋腫の漢方治療の原則は活血化淤(かっけつかお)と軟堅散結(なんけんさんけつ)です。西洋医学の医師でもあり漢方専門医でもある医師は月経周期に合わせて治療を行います。生理前には逍遥散や四物湯をあわせ疏肝解郁(そがんかいうつ)や養血を行います。生理期には膠艾四物湯などで補血と共に過剰な出血を止めます。生理が終わると桂枝茯苓丸などで子宮内の血液循環を改善し、しこりを軟化させます。中国では生理周期と関係なく海藻 石見穿 三 蛇莓 生甘草 玄参 牡蠣 貝母などを併用します。中等度までの子宮筋腫であれば、確実に縮小効果が得られます。閉経が近い40代後半や50代前半のご婦人には、早期に閉経へ誘導する漢方治療が併用されます。

子宮筋腫 冷え 月経過多 経期延長 生理痛の症例から

38歳の女性で、直径7cmの子宮筋腫があり、将来の妊娠分娩を希望している女性が漢方外来を受診された。脈象は細弱、青紫舌で舌下静脈やや怒張、下肢が冷え、しもやけになりやすく、眠れないくらいジンジンと足先が冷えるとのこと、生理痛は生理が来ると痛みが増し、イブやバッファリンを服用して痛みをコントロール、生理量が多く、生理期間が10~12日と長く、生理に血塊が混じるとの事であった。

気血両虚、気虚不摂血気味、寒凝淤血、筋腫合併と診断した。

気血両虚に対して人参 白朮 茯苓 生甘草 当帰 熟地黄 白芍を、

衝任寒証に対して、肉桂 桂枝 烏薬 小茴香の温薬を、

寒凝血淤に対して 丹参 紅花 桃仁 莪朮 三などやや多目の活血薬を、

理気止痛の目的で川郁金 延胡索 香附子を

筋腫に対しては夏枯草 蒲公英根 威霊仙 蘇木 劉寄奴 石見穿を配合しせんじ薬を調合した。

服用後1ヶ月後、生理痛も無く、とても楽であったとのこと、手足の冷えも改善し、生理時の血塊が少なくなり、生理期間も5日に短くなって調子がとてもいいと喜んでおられた。

服用後2ヶ月で筋腫サイズは5cmに減少、4ヵ月後には3cmに減少した。

劉寄奴の「破血通経」 「斂瘡消腫」とは?

劉寄奴(りゅうきど)とは耳なれない生薬であるが中国では一般的な生薬である。

淤血(おけつ)を除く作用を淤(きょお)と言うが、その作用の中でも特に強い淤作用を破血という。血を破ると書くが、その血は淤血の血である。通経とは生理を再び起こさせるという意味である。しかし、生理が正常にある場合でも劉寄奴を使用しても問題は無い。卵巣嚢腫 子宮内膜症 子宮筋腫に中国では治療効果をあげている。

斂瘡消腫(れんそうしょうしゅ)の効があるとされ、傷を収斂させ(固めて)、腫れや浮腫を除く。古くから刀傷には単味を粉末にして外用すると、傷の治りが非常に早いとされている。

  続く、、


タミフル服用中の子供から目を離すな

2007-02-20 16:45:07 | うんちく・小ネタ

八角茴香(はっかくういきょう)そのものは安全なのだが

インフルエンザ治療薬タミフルの服用中に中2の少女がマンション10階から転落死したと報道があった。警察は事故と自殺の両面で捜査しているという。転落死した生徒はその日の午前中に、母親と病院に行き、インフルエンザと診断され、タミフルを処方され、母親は仕事に出かけ、生徒は自宅で1人になっていた時の「事故」である。処方されたタミフルは1錠なくなっており、生徒が服用したらしい。いずれ解剖所見にてタミフルを服用していたかどうかは明らかになるだろう。

毎年のようにタミフル服用時に「異常行動」による「事故死」の報道がある。転落死、トラックへの飛び込み、さらに転落死と事故の報道が連続している。インフルエンザ患者の異常行動の原因は、厚労省の研究班のこれまでの調査によると、タミフルの副作用であるかの断定はされていない。一方、米食品医薬品局(FDA)はタミフルの添付文書を改訂して異常行動への警戒を促している。

日本でも異常行動とタミフルの関係は否定できず、感染症学会として調査すべきだと主張する声が上がり始めている。した。一方、タミフルの年間販売量のうち、日本が世界の8割以上を占めている現状がある。「金持ち日本」などと海外で揶揄されているほどだ。 ともかく「青年期」を含めた子供がタミフルを服用している間は目を離さないに越したことは無い。

 

手洗い、うがい、保温、ゆっくり寝て、部屋を暖かく、化湿すること

そして、「予防茶」の薦め

 単純なようだが、インフルエンザにかからないための最善の予防策である。

インフルエンザウイルスは手指から感染する。手を洗うことは一番重要である。
二番目にうがいだ。うがいでお勧めなのはうすい酢水である。中国では春節の二月頃にインフルエンザの流行がある。この時期に甘酢をかけた料理を食べる習慣があるのはインフルエンザ予防のためとも言われている。

生姜(しょうが)を乾燥させたものを薄く切り、八角茴香(はっかくういきょう)の砕いたものを煮立て葛(くず)を溶いてお茶代わりに飲むのもお勧めだ。そして保温と部屋の化湿をする。これで一般のカゼは引きにくくなることは確かである。

インフルエンザ感染後40時間以内にタミフルを服用する理由

A型とB型インフルエンザに有効とされているタミフルであるが、
インフルエンザウイルスが感染細胞で増殖し、増殖した細胞の表面から遊離して新しい細胞への感染を起こす。この遊離を抑制すれば、細胞表面のウイルスが生体の免疫系にさらされて容易に攻撃を受けやすくなるし、新たな細胞への感染も防げるというわけである。ウイルスが感染増殖した細胞の表面からウイルスが遊離するためにはノイラミニダーゼという酵素が働く。タミフルはこの酵素の拮抗阻害剤である。つまりタミフルはウイルスが新たに遊離拡散するのを阻害する薬剤であり、既に増殖したウイルスを失活(不活化)させる効果は無い。ウイルス失活(不活化)させるのは生体に産生されるインターフェロンなどのサイトカインなどである。

中国大陸とインフルエンザの関係

なぜ渡り鳥がインフルエンザウイルスを運んでくるのか?

中国の渡り鳥は夏はシベリアに行き、冬は中国でも長江周囲の南の方へ、あるいは日本へと渡ってくる。中国の農家では野鳥―鶏―アヒルー豚(鶏の糞を食べる)―豚の糞―肥料と水湿汚染―人間という一連の感染経路が考えられている。一方シベリアの永久凍土の中にウイルスが潜んでいて地球温暖化の影響で溶け出し、それを野鳥が運ぶという説も有る。

インフルエンザはどうやって治療するか? 西洋医学


マスコミでは、もしインフルエンザの流行が起きたら大量の死亡患者が発生し

都市機能が麻痺状態になるなどと危機感をつのらせる報道がある。西洋医学が

達している現代では、一般人は首をひねるだろう。

A型インフルエンザ感染後4時間以内に飲めば有効だとされるアマンタジンは現実的にはまったく服用時期を逸してしまう。A型、B型両者に有効であるとされるタミフルにしても40時間以内である。大方の患者さんは症状が出現してから医師に受診するわけであるから、ぎりぎり間に合うくらいだろう。

解熱剤は使わないのが原則である。体温が下がると身体の抵抗力は下がる。解熱剤を使うとサイトカインの機能も低下する。それでも症状が悪化すれば入院となる。白血球が9000~10000ぐらいに上昇している場合あるいはレントゲン検査で肺に影が出現していれば、抗生物質の投与は必要である。後は全身状態の管理に徹する。要はインフルエンザの特効的な治療法は今のところ無い。

インフルエンザの治療 中国漢方

インフルエンザを中国語で「流行感冒」と言う。清代の中国医学の「温病学」にその治療法が記載されている。詳細は省くが、銀翹散(ぎんぎょうさん)羚羊角加銀翹散、桑菊飲などが初期に使用される。ウイルスを体外に排泄させる利水剤も併用される。「閉門留寇(へいもんりゅうこう)」を避ける目的で補気薬は使用しない。実熱に対して補気薬を安易に使用するべきではない。炎症を悪化させる可能性が大きい。

寇(こう)とは賊(ぞく)の意味で、生体にとっては邪気(じゃき)を意味する。邪(きょじゃ)(邪気を生体から追い出す意味)すべき治療法を、間違えて、門を閉じて邪気を生体の中に留め助長させるという意味である。

八角茴香(はっかくういきょう)

タミフルの生薬原料である。大茴香(だいういきょう)ともいう。英語圏ではスターアニス(Star anise)と呼ばれる。
タミフルの合成原料の基は八角茴香由来の良質のシキミ酸である。香辛料として中華料理に多く使われている。豚肉鶏肉料理から魚の揚げ物料理、はては殻つき生ピーナッツの茹で料理まで幅広く使われている。中国香辛料で有名な五香粉(ウーシャンフェン)は肉桂 丁香 山椒(花椒) 小茴香 八角茴香などの粉末が配合されたものだ。良質な八角茴香は封を切った瞬間にパーッと部屋中に香気が満ちる。


2007_19_001_1

八角茴香(はっかくういきょう) 帰経: 脾 腎 (心 肝 小腸 膀胱 胃)

性味: 辛甘温

効能: 温陽散寒 理気和胃 散寒止痛 

お腹が冷えて吐き気や嘔吐がある場合、陽虚腰痛、寒湿による関節痛などに有効。

  続く、、

<shapetype id="_x0000_t75" stroked="f" filled="f" path="m@4@5l@4@11@9@11@9@5xe" o:preferrelative="t" o:spt="75" coordsize="21600,21600"><stroke joinstyle="miter"></stroke><formulas><f eqn="if lineDrawn pixelLineWidth 0"></f><f eqn="sum @0 1 0"></f><f eqn="sum 0 0 @1"></f><f eqn="prod @2 1 2"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelWidth"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @0 0 1"></f><f eqn="prod @6 1 2"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelWidth"></f><f eqn="sum @8 21600 0"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @10 21600 0"></f></formulas><path o:connecttype="rect" gradientshapeok="t" o:extrusionok="f"></path><lock aspectratio="t" v:ext="edit"></lock></shapetype><shape id="_x0000_i1025" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 196.5pt; HEIGHT: 147.75pt"><imagedata o:title="2007 2月19日 八角茴香 001" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image001.jpg"></imagedata></shape>


若年性認知症と漢方治療

2007-02-19 12:01:21 | うんちく・小ネタ

弁証論治と弁病論治

補剤(ほざい)か瀉剤(しゃざい)かの選択

中国漢方医学の用語で補剤(ほざい)とは人体に足りなくなってきている気、血などを補う意味や、五臓の機能が虚した場合に機能を正常化する意味で用いられる薬剤を指します。補気薬、養血薬、補陽薬、滋陰薬などが相当します。

一方、瀉剤とは人体に過剰に蓄積したものを取り除く性質を持つ薬剤を指します。清熱解毒薬や利水滲湿薬、化痰薬、湿薬、化淤血薬などが瀉剤の範疇に入ります。

認知症に対する中国漢方医学の補剤、瀉剤の使い分け

中国医学では脳は髄海といわれ、髄は腎より生じると考えられているため、痴呆症は腎虚が最も関係すると考えています。つまり補剤である補腎薬を使用することが多いのです。また老化とともに、脾胃虚弱になると、運化失調のために、血虚が生じ、そのために脳が徐々に養われなくなると考えます。この場合も健脾薬や養血薬などの補剤を用います。

一方、脾胃虚弱は内湿を生み、内湿より痰濁が生じて脳の清竅(せいきゅう)を塞ぐことも原因と考えます。たとえば脳血管型痴呆の場合は、肝鬱(がんうつ)気滞(きたい)が原因となって生じる淤血が脳の清竅を塞ぐことが大きな原因と考えます。従って、初期の痴呆の原因としては、気血両虚、腎虚に対してはそれぞれ気血双補、補腎の効能をもつ補剤を投与し、肝鬱などのタイプには疏肝(そがん)剤などの瀉剤を投与し、淤血に対しては化淤血剤の瀉剤を投与します。病気の進行とともに、腎精不足が顕著になってくる状態には更なる補腎剤を、痰濁、淤血などが加わってくるタイプには化痰剤、化淤血剤などの瀉剤を投与するわけです。若年性認知症でも治療方針は変わりません。

認知症に対する中国漢方治療の大要

補剤治療としてはまず補腎薬を多めに使用します。熟地黄、山薬、山茱萸、巴戟天、杜仲、枸杞子、黄精、鹿茸、海馬などが良く使われます。脾胃の虚が見られ血虚が合併する場合には、健脾薬の人参、黄耆、白朮などに、当帰、白芍などを併用します。

次に瀉剤的な治療として、痰濁がある場合は半夏、石菖蒲、胆南星、遠志、茯苓、竹茹、陳皮などを併用します。肝鬱が強ければ、柴胡、枳、香附子、郁金などを、淤血がある場合は丹参、川、紅花、桃仁、赤芍、麝香、石菖蒲などを併用します。

市販薬では、腎を補うには海馬補腎丸(かいばほじんがん)が良く使われます。脾胃の虚がある場合は六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、帰脾湯(きひとう)などを併用します。痰濁がある場合は温胆湯(おんたんとう) 黄連温胆湯(おうれんおんたんとう)、或いは導痰湯(どうたんとう)などの方剤を併用します。淤血がある場合は丹参飲(たんじんいん)などを併用します。

一般には、漢方専門医が、認知症の患者さんを診察した上で、生薬を服用するほうが効果が上がります。漢方専門医が患者さんを診察して病態を診断することを「弁証論治」といいます。

弁病論治では西洋医学も漢方医学もまだスタートライン

 アルツハイマー病は大脳に「老人斑」と呼ばれている「βアミロイド」と言うタンパク質が沈着し、やがては脳細胞が死んでいくことによって発病する痴呆症のことです。多くの「呆け」症状は、大脳にこのβアミロイドタンパクが沈着する事により発症します。βアミロイドタンパクは脳に沈着しにくいように「掃除」されているのが正常な状態であり、「老人斑」は作られない状態になっています。

 異常な病理産物の蓄積が病気の本質であるならば、その病理産物を体内から排除、掃除するという治療概念が生じます。つまり瀉剤の考え方です。現在、世界中の研究機関でβアミロイドタンパクの瀉剤の研究がなされていますがまだ確実に効果のある瀉剤は見つかっていません。

 βアミロイドタンパクの異常蓄積が生体の掃除機能が虚していると考えれば、衰えている生体機能を賦活するという治療概念が生じます。つまり補剤的な概念です。これも特効薬だといえる補剤はまだ見つかっていません。

アリセプト、ガランタミン

 補剤も瀉剤も手詰まり状態ですが、「非特異的に脳の活動を活発化させる」という治療は一部行われ始めました。

アセチルコリンは、記憶学習に関連する物質です。アルツハイマー病患者の脳ではアセチルコリンが減少していることも知られていました。そこで、脳内でアセチルコリンを分解する酵素「コリンエステラーゼ」の機能を抑制し、結果的にアセチルコリンの量を増やすことで、記憶学習機能の低下を防ごうとする治療概念が生じました。アリセプト(製薬会社エーザイ、主成分 塩酸ドネペジル)が相当する薬剤です。ただし、痴呆の進行を遅らせることが確認されましたが、βアミロイドタンパクの異常蓄積による神経細胞の最終的な死を抑制するものではありません。ルツハイマー病の進行は遅れますが、最終的には薬剤を飲まないときと同様の痴呆状態は免れません。海外製品では生薬由来のアルカロイドの一種ガランタミンもアリセプト同様にコリンエステラーゼ阻害作用により脳内のアセチルコリンを増加させるとして承認販売されています。

 実は、漢方生薬の脳細胞に対する効能は研究が始まったばかりです。今後の研究を期待したいものです。

  続く、、


慢性関節リュウマチと「リウマトレックス」

2007-02-16 12:43:03 | うんちく・小ネタ

漢方で副作用防止

 

「リウマトレックスは最も基本的な抗癌剤ですよ。」

あるリュウマチ患者に話したら

「えっ? ぜんぜん知らなかった。もう何年も飲んでるんです。」との返事である。

「副作用について何か説明を受けていましたか?」と尋ねると

「とくに何も伺っていません。」との返事。のんきで天真爛漫な美しい女性である。兵庫県でも雪深い地方にお住まいだが今年は記録的な暖冬だとのこと。

リューマトレックス

リウマトレックスというよりもメトトレキセート(MTX)の方が認知度は高い。乳がん、肺がん、胃がん、食道がん急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ザルコーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、絨毛がん、菌状息肉腫(皮膚T細胞リンパ腫)など多くの癌に使用されてきた。免疫抑制剤としてネフローゼ型慢性腎炎やSLEに伴うループス腎炎などに以前は積極的に使用された経緯もある。

メトトレキセート

メトトレキセート(MTX)は、19993月より抗リウマチ剤として使用されている。強い葉酸代謝阻害作用を有する。細胞(がん細胞、正常細胞を問わず)が分裂するためにはDNAが複製されなくてはならない。DNAが複製されて後に有糸分裂が起きて細胞は2つに分裂する。DNAの材料はヌクレオシドでありプリン体とピリミジン体である。そのヌクレオシドの材料がテトラハイドロ葉酸(補酵素F)であり葉酸から体内で合成される。メトトレキセート(MTX)は葉酸からテトラハイドロ葉酸(補酵素F)への過程をブロックする。細胞分裂の大本(おおもと)の過程を阻害すると考えてもいいだろう。つまり何でも屋的な細胞分裂阻害剤である。正常細胞のうちで最も活発な分裂を起こしているのが骨髄細胞である。従ってメトトレキセート(MTX)服用による最大の副作用は骨髄障害である。白血球、赤血球、血小板の減少が同時に起こる汎血球減少症(pancytopenia)は報告によると1-2%と低率であり、死に至らないとされている。しかし一部の症例では服用後短期間で、しかも急激で重篤な汎血球減少症があることも確かである。邦文の報告では、40例弱のpancytopenia症例のう一割強の死亡率である。重症例では、感染症、出血、多臓器不全(MOF)、DICから死に至るとされる。突然に発症する汎血球減少症の可能性とそれに対する活性型葉酸や骨髄刺激に働くG-CSFの投与などの必要性を患者さんに説明しておくべきである。一般的に血小板が6万以下になると出血傾向が出現し、赤血球が200万以下になると動悸、息切れがひどくなり、白血球が1500以下になると感染のリスクが高まる

僕が慢性関節リュウマチの治療に補気剤や補益肝腎剤を使用する理由

古来より中国医学では慢性病(久病)は気血不足、肝腎両虚になるので、気血双補、

補益肝腎が必要であるとする。人参は補気薬の代表であり、桑寄生 杜仲 牛膝 などは補益肝腎剤である。

人参の作用は

①実験的に抗がん剤の作用を増強させる一方で、抗がん剤による白血球減少などの副作用を有意に改善する。

②実験的に、異物を貪食する大食細胞(マクロファージ)を活性化するとともに、リンパ球のナチュラルキラー活性を増強する。細胞性免疫機能を、人参は活性化し、抑癌効果はがん防止につながる。

③抗がん剤や放射線療法に伴う骨髄抑制を防止する。

などである。リウマトレックスを服用している場合などには特に配合することにしている。

中国医学では腎は骨と髄をつかさどるとされ、慢性関節リュウマチには補腎剤の配合を行う。まさに抗がん剤の骨髄抑制には「うってつけ」の配合なのである。

西洋医学と協力して患者の痛みを除き、副作用を防止する。これが中国漢方医学の面目躍如たる所以である。

  続く、、