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アトピー 皮膚科 診療と漢方 第十報

2012-07-30 19:12:16 | アトピー性皮膚炎

風(きょふう)生薬の漢方臨床 

複雑多彩な「風」の理解をすすめる。

原則体系論から帰納的に論を進めるのに対し、風作用のある生薬を、しらみつぶしに調べ、どのような目的で利用されているかという論の進め方、つまり遠回り的手法が、結局は理解するうえで近道になると信じるので、漢方医学の用語を楽しみながらスタートする。そもそも中国医学の体系化は、使用生薬の効能の分析結果の集積によるものだからである。

荊芥けいがい

都合の良いことには、風寒風熱どちらにも効くので風寒風熱の鑑別がつきかねるときには?を用いても良い。?芥のの風とは外風を意味し、内風(肝陰虚由来、肝陽由来、動風をさす)ではない。皮膚の痛みや痒みを抑える。

防風ぼうふう

風解表(風邪が著しい表症の解表、防風は特に風湿性関節炎に効果があり、羌活と異なり、長期に使用しても副作用が少ない。羌活より穏やかである。湿止痛あるいは止痛湿といわれている。「風薬」の中の「潤剤」といわれ、燥になることはない。

感冒の止痛にも用いられる。以前は破傷風の止痙薬として使われた歴史をもつ。

防風の昇散(止瀉)作用は精神的原因で下痢がくる木乗土の「痛瀉要方」中に使用されている。防風に関係するのは下痢、風湿、症などである。

症(ひしょう):風邪の関節痛、筋肉痛、など.症はその原因として、風、寒、湿があるが風は早期のものとされる。関節炎は化膿が無い限り温めると良くなることが多いので寒と考える。治りにくいものは湿邪が長くなった為と考える。

羌活きょうかつ発汗解表 風除湿に働く。

上半身の痛みに効果的。風薬中の燥剤とされ、関節リュウマチなどに長期使用すると防風と異なり傷陰をきたすので、短期に使用する。対照的に独活(風湿薬)は下半身の痛みに効く。解表作用は補助的である。皮膚科領域では用いられない。

羌活は太陽経に沿って後頭部の痛みに効果がある。

近年、インフルエンザに対して板蘭根、蒲公英、金銀花などと一緒に処方された歴史を持つ。

芥、防風が配合されている有名方剤

風寒(ふうかん)証に用いられる「荊防敗毒散」

悪寒がするものの、発熱が軽い。発熱時に汗は出ないことも出ることもある。頭痛、四肢関節の疼痛、鼻詰まり、嗄声、鼻水、喉の掻痒感、咳嗽があるが痰が薄くて白い、口渇はあったり無かったりする。舌苔は薄白で、浮或いは浮緊の脈象を示す。

寒は陰の邪気であるために、口渇はないことが多いが、或いはあっても熱飲を好む。舌苔が薄白、潤、脈が浮或いは浮緊などはすべて表寒の特徴である。

治療原則は辛温解表、宣肺散寒であり、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)(外科理例)を主方とする。組成は?芥 防風 生姜 柴胡 薄荷  前胡 桔梗

枳殻 茯苓 甘草 羌活 独活である。荊芥、防風、生姜は辛温散寒に、柴胡、薄荷は解表退熱に働く。川は活血に働くとともに頭痛に効き、前胡、桔梗、枳殻、茯苓、甘草は宣肺理気、化痰止咳に作用し、羌活、独活は風散寒、除湿を兼ね、四肢疼痛の要薬でもある。表寒の重い場合には麻黄、桂枝を加えて、辛温散寒の力を強めるとよい。

蕁麻疹や湿疹に用いられる十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう

柴胡 桔梗 川芎 防風 茯苓 桜皮 生姜 独活 荊芥 甘草の十味からなる。

十味敗毒湯は荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)を基に華岡青洲が創方した漢方処方である。風(湿)薬として、防風 荊芥 独活 川せんきゅう)が配合されている。中国語の「敗」は「負かす、打ち勝つ」の意味で、日本語の「敗戦」のごとく「負ける」という意味ではない。

皮膚科、耳鼻科領域で用いられる荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう

前報「小児アトピー性皮膚炎 治療開始の試行錯誤」を参照してください。

上焦の風熱の皮診、とくに首から上の赤いニキビに有効な清上防風湯せいじょうぼうふうとう)防風 桔梗 連翹 川 白芷 黄 山梔子 甘草 枳実 薄荷 荊芥 黄連の配合である。荊芥、防風はやはりセットの印象がある。

びゃくし


アトピー性皮膚炎の漢方治療 第九報

2012-07-23 12:50:27 | アトピー性皮膚炎

症例 アトピー性皮膚炎 M.S 16

   小学3年よりアトピー出現 ステロイド軟膏 痒み止め軟膏を使用

   高校受験直後から悪化(数年以上も前の症例である)

2012_07230005 (肘関節部の苔癬化局面) 

2012_07230006 (首の苔癬化局面)    

2012_07230004 (顔面の発赤と苔癬化)

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漢方治療 2ヶ月後

2012_07230007 2012_07230008

(苔癬化局面の消失)    (苔癬化局面の消失)    

2012_07230010

(正常な顔面)

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漢方診断:湿熱外欝 血虚生風

治療方針:清熱養陰 祛

風止痒

外用薬:紫雲膏(保湿クリーム、オイラックス系軟膏で薄めて使用する。ステロイド剤は減量中止)

内服漢方:黄連解毒湯+消風散+滋陰降火湯 合方加減(2ヶ月間)

     滋陰降火湯を主体に少量の祛風剤 清熱解毒剤を使用中

さてこの高校生が中期留学の際に空港の「手荷物検査」「キャリーバッグ」の検査で、よ

もや正体不明の薬物を持ち込みが禁止されたら困るということで、税関でこまらないよう

に診断書を書いた。

2012_07230011_2

同様のケースが数例ある。

生薬をドイツに送った際には、診療の合間に半日がかりで、数十の生薬をそれぞれ英語、ラテン語、中国語で説明し、診断書を英文で作成したこともある。

2012_07230001 2012_07230002

通常診療の10倍は時間がかかる。途中のやり取りは全部メールだからだ。ドイツ医療機関での診断、検査、治療内容も添付ファイルで送ってくるので、それをまたメールで説明してやらなければならない。

私が温薬である桂枝、肉桂、乾姜、五味子などをアトピー診療で嫌うようになった一因

実は写真のお嬢様のお母様が教育機関の栄養士で「体を温めると免疫力が上がり、病気がよくなる」という考えをお持ちになり、娘さんにその信念を元に「独自」の食べ物を与えていた。嫌な医者だと思われたに違いない。「止めてください。当分の間はダメです。」と申し上げた。病状が軽快するうちにお母様の態度が柔らかくなったが、一旦信じ込むと、いわば「洗脳」状態となり、抜け出すのは不可能に近いの印象を持った。

―――***----

大量のマスコミ情報の中で特に目立つのが「美容健康」「アンチエイジング」「保険会社の宣伝」等である。サブリミナルな仕掛けも辞さないものもある。ともかく「信者=洗脳された消費者群」を多く作り上げることで利益を出そうしているのは確かである。


アトピー性皮膚炎の漢方治療 第八報

2012-07-22 18:20:47 | アトピー性皮膚炎

祛風止痒の「風(ふう)」とは?

祛風止痒(きょふうしよう)とは平たく言えば風邪(ふうじゃ)を除き、痒みを止めるという意味である。しからば、風(ふう)とは何か?と考え始めるのが常であろう。古代中国人は「六淫」を発病の原因と考えた。六淫とは

風、寒、暑、湿、燥、火の6種の外邪の総称であり、正常時は大気と称するが、発病の原因となる時は六淫であるという概念を創造した。現代医学からして正誤の課題は残るものの、概念の創造は一種の哲学の創造に近い。風邪(ふうじゃ)について「特徴」を伝承あるいは記載した。

簡単にまとめると、風は百病の長であり、風寒 風暑 風湿 風燥の如く、他の邪は風に付随してくる。陰陽論からすれば、形無く、動き有り、の「陽邪」である風邪は毛穴を開く作用(開泄作用)があり、頭、鼻、口、皮膚など陽の部分を冒すことが多い。善行、数変(よく動き、よく変化する)の性質を有し、風による関節痛である

症(ひしょう)は善行数変(よく動き、よく変化する)である。風は「動」(症状が動である)であり痙攣、振え、めまい、硬直も内風(ないふう)が惹き起こし、角弓反張(背筋をそらせ首筋を突っ張り、全身が硬直する体位)は典型的内風である肝風内動の症状であるとした。

多彩である。雑多とも言える。

現代医学からすれば、皮膚科、アレルギー科、耳鼻科、整形外科、膠原病内科、感染症内科、神経内科、脳神経外科領域に広がる広域内科の如き様相を呈する。古代中国(日本では卑弥呼時代より前)から延々と医師が考え続けてきた風邪(ふうじゃ)という病因論の概念である。目の前の患者を何とか治療しなければ、或いは斬首されかねない戦乱の世を秘術あるいは秘法として弟子達によって相伝されたものである。「敵に手の内を見せない」という性質を持った。

人間が臨終を迎え死すれば、体温は下がり、脈は弱から無と変化する。戦乱、圧制、飢餓、人権も無視同様、累々と死人を重ねる戦国時代に、古代医師達は何を考えたのか?

ともかくも「生命力=陽気」を保ち、脈を蘇らせ、存命を計らねばならない。と考えたに違いない。そうしなければ己の命すら危ない危機的な状況であったに違いない。そこで生まれたのが「傷寒論」であり、また「生脈飲」の類であったと想像できる。

中国医学がテクノロジーの前提以前に、概念の体系化に至ったのは、そういった時代背景がある。また、時の絶対権力者によって医学が「体系化」された側面が強い。

本来、サイエンスは権力とは相容れないのが本質である。キリスト教的宇宙論とガリレオやコペルニクスの地動説の関係や、同じくC.ダーウィンの進化論を例にとれば理解できる。

生真面目

であるも、全体像を眺めることの苦手な現代日本の漢方医は一字一句「傷寒論」を精読するも、疲れ果てて、そこから先へは思考停止状態になっていることが多い。アトピーに限って論ずれば、大昔と比較して現代に多発しているのは何故なのか?食品、大気、水といった基本的に生存に必要な物質の汚染、環境中の化学物質の増加、人間の遺伝子的な変化など、山ほど考察を深めなくてはならないことがある。思考停止の状態で傷寒論にしがみついてはならないと思う訳である。

効率化、簡便化はよろしくない。

パソコンが発達した影響で、近年、日本の漢方医はキイを一つ叩くだけで、グループ別生薬群を打ち出すようになってきた。

血には○○○、冷えると患者が訴えれば△△△、便秘傾向があれば□□□などという具合だ。問題は「横の繋がりの中での相互関係を無視」する結果になっていることがままあるということだ。アトピー診療の中でも良く見かける。なるほどキイを打てば、漢字で書くよりはるかに簡単で時間もかからず、見栄えがよく、保険の請求も簡単だからである。しかし、これこそ思考停止そのものではないのか?データベースを登録した段階から一歩も思考の発達が無いと危惧される。

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当院手書きの処方箋の例

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パソコン打ち出し?処方箋


アトピー性皮膚炎の漢方治療 第七報

2012-07-20 15:51:46 | アトピー性皮膚炎

女性は肌が美しくなると表情に自信があふれてくる。

四十二歳女性。初診時所見

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顔面には両側頬部、眼周囲、前額部、下顎部分の痒みを伴う発赤疹が目立つ。

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前頚部胸部の痒疹 色素沈着 後頚部の発疹が目立つ

治療 ?芥 防風 牛蒡子 蝉脱 当帰 白芍  生地黄 藜 何首烏 黄耆 蒼朮 苦参 通草 石膏 知母 生甘草の配合から治療を開始した。外用剤には当帰エキス、紫根エキスを配合した。色素沈着が目立つために、ビタミンCとビタミンHを併用した。経過は順調であった。私の禁食指導もよく守ってくれた。元来花粉症の時期に鼻炎症状が悪化する傾向があったが、症状の悪化は無かった。

八ヵ月後の所見

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顔面の発赤疹は残存するも、非常に軽快している。

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後頚部、前頚部胸部の発疹は消失し、色素沈着の改善が著しい。

一年一ヶ月後 直近の所見

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顔面の発赤疹は消失している。

紫外線を避け、禁食を守り、睡眠を十分にとることを指導している。

---***---

皮膚科としての診療を積むにつれ、「女性は肌が美しくなると表情に自信があふれてくる」と確信する。写真を撮り、カルテにもらさず貼り付けるようになってからはその感を強くする。人間の記憶は確かなものではない。素描家なみのデッサン能力は普通の医者は持っていない。ましてや、いい加減にカルテの記載をしていると、皮膚病変の細かな変化を忘れてしまう。数値化、数式化できない所見を素描や文章で記録するのは困難だ。皮膚科診療はビジュアルな結果を伴うものである。加えて、患者さん御自身でも自分の背中や後ろ首周辺を詳細に観察できない。

「随分とお綺麗になりましたねえ」と患者さんに言う際に、残しておいたビジュアルな情報、つまり写真が何よりのエビデンスになる。

アトピー性皮膚炎についての相談は「すずき康仁クリニック」の相談フォームkojindou@cap.ocn.ne.jpから


アトピー性皮膚炎の漢方治療 傷寒論は向かない?

2012-07-19 17:57:08 | アトピー性皮膚炎

五年間漢方治療を続けても改善しない中年症例

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顔面の激しい痒み、じくじくした湿疹と赤みが目立つ

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前頚部、後頚部も同様、引っ掻き傷がある。

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肘部のアトピー疹も目立つ。

背部はやや乾燥しているが、発赤と痤瘡様病変が目立つ。苔癬化も著しい。

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直近の処方内容

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20120710

上記URLでも触れたが、現代中国の漢方現場では使用される頻度がゼロに近い

乾姜、桂枝、小柴胡湯中の生姜が使用されている。党参が平の性質を持つのに対し小柴胡湯中の人参は温の性質をもつので、アトピー治療現場では多用されない。

2012_07190016_2  同じく乾姜4五味子6gが目立つ。五味子も現代中国ではアトピー治療には極々稀で遭遇する確率は小さい。五味子は温薬であることから「留陽」の性質がある。熱はすなわち陽ですから、清熱を必要とするアトピー治療にそぐわない。五味子の名前の由来は、その香りと味にある。鼻先に持ってくると、独自の酸っぱい匂いを感じる。噛みしめると順に酸味、次第に独自の苦味、渋みを感じ、次に甘み、と少しの塩辛さを感じるようになる。酸味がもっとも強い。五味子の酸味は甘味と一緒になると酸甘化陰となり生津に作用する。

この漢方医がなぜ五味子を配合したのかを好意的に解釈してみる。

古来より五味子と梅(うばい)には下痢を止める止瀉作用と、体の陰液を増やす生津作用のほかに、肺気逆を抑える斂肺作用があることが知られている。さらに精液の漏れる遺精に効果があることが経験的に知られており、五味子の補腎作用の根拠になっている。五味子の帰経は肺 心 腎の3経で、心経から由来する効能の特徴として、不眠症に有効な養心安神作用がある。また、自汗や盗汗(寝汗)をとめる斂汗作用も有名である。上下内外に効能をまとめると、上は肺気を収斂して咳嗽を抑え、下は補腎に働き渋精止瀉に作用し、内は生津し、外は収汗止汗に働くことになる。配合されている有名方剤は小青龍湯(傷寒論)と射干麻黄湯(金匱要略)である。五味子が斂肺止咳に働く。傷寒論六経弁証では、外寒内飲証に使用されている。温化裏水(寒痰)兼 解表をはかるわけである。

小青龍湯の組成は麻黄 桂枝 干姜 細辛 白芍 五味子 半夏 炙甘草であり、温薬が中心である。五味子の量は1銭で3gである。麻黄による過度の宣肺を五味子の斂肺によって防止しているという解釈も可能である。

小青龍湯より柔らかい散寒化飲剤である射干麻黄湯(金匱要略)がある。射干 麻黄 乾姜 細辛 半夏  冬花 甘草 五味子 大棗の組成である。