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糖尿病性腎症 補腎活血法 張琪氏弁証論治3.(腎病漢方治療296報)

2014-03-16 00:15:00 | 漢方市民講座

本日も、漢方市民講座で、張琪氏の糖尿病性腎症の弁証論治をご紹介します。漢方治療の実際をご覧になって下さい。( )内に随時、コメントを入れます。医案に進みましょう。

患者*某 68歳 男性 某庁幹部

初診年月日:2004311

病歴:

当該患者の糖尿病歴十余年、近日、眼瞼と下腿に軽度浮腫が出現、ハルピン市赤十字病院で検査:尿蛋白3+、糖尿病性腎症と診断され、経口糖尿病薬投与を受けるが、蛋白尿3+と持続。

初診時所見:

全身乏力、眼瞼及び下腿に軽度浮腫、便秘、舌紅少苔、脈弦有力。空腹時血糖8.0mmol/L144mg/dL)、尿蛋白3+、Cre105μmol/L1.18mg/dL)、BUN6.0mmol/L36mg/dL)、血圧高。

中医弁証:虚労、腎陰虚兼血瘀証

西医診断:糖尿病性腎症

治法:益気補腎滋陰 活血法を補佐とする。

方薬:

生地黄20g 熟地黄20g 山茱萸20g 生山薬30g 枸杞子20g 女貞子20g 玉竹20g 菟絲子20g 玄参20g 天門冬15g 太子参20g 五味子15g 桃仁15g 丹参20g 赤芍15g 葛根15g 牡丹皮15g 生黄耆20g 大黄7g 白芍20

水煎服用、毎日2回に分服

生黄耆20g 太子参20gで参耆となり、益気生津固摂になります。参蓍地黄湯加味方になっていますね。葛根は氏の場合には活血薬としての側面があります。勿論、舒筋作用もありますが、初診で外感は無関係ですので、やはり活血舒筋ですか。方薬全体では益気養陰が主体で、菟絲子の補陽、五味子の斂陰消蛋白、赤芍、葛根、丹参等の活血薬群、初診時の所見に便秘があったのかどうかは不明ですが活血通腑泄濁瀉下剤の大黄7gの配伍など、深謀遠慮の配伍といえるでしょう。但し、浮腫が存在するのに清熱利水薬の車前子や澤瀉などの配伍がないですね。活血利水薬の益母草とかも見当たりません。何故でしょうか。)

二診:2004615

上薬服用後、全身乏力減軽、眼瞼、下肢に軽度浮腫有り、便秘、舌紅少苔、脈滑、尿蛋白2+。病情緩解、前方加減参耆地黄湯加味治療を継続。

方薬:

生黄耆30g 太子参20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15


糖尿病性腎症 補腎活血法 張琪氏弁証論治2.(腎病漢方治療295報)

2014-03-15 00:15:00 | 漢方市民講座

今回の漢方市民講座では、張琪氏に絞っての糖尿病性腎症の弁証論治をご紹介しています。漢方治療の実際をご覧になって下さい。( )内に随時、コメントを入れます。医案に進みましょう。

患者張某 68歳 男性

初診年月日:2002911

病歴:

糖尿病歴13年、尿蛋白が出現して3年、ここ2年間はインスリン注射にて空腹時血糖9.4mmol/L169.2mg/dL)程度にコントロールされ、尿蛋白は±~2+、腎機能は正常、血中脂質正常、乏力多汗十余年、動くとすぐに汗が出て、乏力が生じる。遂に治療を求め氏を受診。

初診時所見:

多汗、倦怠乏力、動則更甚、舌質紅干、無苔、脈弦細数。

中医弁証:

自汗、腎気陰両虚、腎気虚則固摂失職、上は表虚自汗、下は精微外泄と弁証

西医診断:糖尿病性腎症

治法:補腎益気養陰、活血化瘀 

方薬

熟地黄20g 天門冬20g 玄参15g 山茱萸15g 枸杞子20g 菟絲子20g 女貞子20g 旱蓮草20g 益母草30g 天花粉20g 黄耆(益気)30g 党参(益気養陰)20g 赤芍15g 紅花15g 草决明(决明子に同じ、清肝明目、潤腸通便)20

水煎服用、毎日2回に分服

(参耆地黄湯加減方ですね。黄耆(益気、固表止汗)30g 党参(益気養陰)20gで参耆(益気固摂養陰)、熟地黄20g 天門冬20g 玄参15g 山茱萸15g 枸杞子20g 女貞子20g 旱蓮草20g 天花粉20gと、菟絲子(補腎陽)は補腎養陰のグループ、赤芍15g 紅花15gは活血祛瘀、益母草30gは活血利水消腫、残りは配伍理由が不明な草决明となります。)

二診:2002年 925

服薬後症状変化不明確、多汗まだ有り、倦怠乏力、動則更甚、舌質紅干、無苔、脈弦細数、血圧正常。

方薬

黄耆


糖尿病性腎症 補腎活血法 張琪氏弁証論治1.(腎病漢方治療294報)

2014-03-14 00:15:00 | 漢方市民講座

糖尿病性腎症については、過去の165報~176報で、大まかな漢方治療をご紹介しましたが。今回の漢方市民講座では、張琪氏の弁証論治をご紹介したいと思います。腎不全から人工透析に導入される基礎疾患として糖尿病性腎症は近年ますます増加しており、基礎疾患の第一位になってきました。

漢方治療の実際をご覧になって下さい。( )内に随時、コメントを入れます。

医案に進みましょう。

患者:劉某 52歳 男性 教師

初診年月日:19971012

病歴

2型糖尿病の病歴十余年、不規則に血糖降下薬を服用していた。半年前、腰痛、乏力症状が出現、休息後に症状は好転した。1ヶ月前、尿少、浮腫、納差腹張、全身乏力が出現。現地の医院での治療は無効、遂に治療を求め氏を受診した。

初診時所見:

面色皓白、肢体軽度浮腫、脘腹張悶、不思飲食、口臭あり、大便秘結、大便は34日に一回、腰膝酸軟、夜間頻尿、脈沈細。血圧173/90mmHg、尿蛋白2+~3+、ヘモグロビン値7.0/dL(貧血が進んでいますね)、BUN28mmol/L168mg/dL)、Cre489μmol/L5.53mg/dL)、二酸化炭素結合力17mmol/L(正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%。(代謝性アシドーシスも進んできましたね)

中医弁証:脾腎陽虚、湿濁、血瘀互結

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全

治法:補脾腎、温陽、活血泄濁法

方薬:

紅参15g 生山薬15g 淫羊藿15g 桃仁15g 紅花15g 赤芍15g 甘草15g 白朮20g 茯苓15g 何首烏20g 丹参20g 菟絲子20g 黄連10g 草果仁10g 半夏10g 大黄7

水煎服用、毎日2回に分服

二診:

上方服用14剤後、大便一回/日、食欲増進、脘腹張悶消除、全身は前に比べ有力、但しまだ腰痛、夜間頻尿あるも治療前と比較し大幅に減少、脈沈滑。

三診:

上方40剤連続服用後、諸症は除かれた。血圧158/86mmHg、尿蛋白+、ヘモグロビン9.0/dL、腎機能:BUN8.5mmol/L51mg/dL)、Cre224μmol/L、二酸化炭素結合力23mmol/L

経過

上方加減継続治療6ヶ月後、ヘモグロビン10.5/dL(上昇してきました)、BUN9.6mmol/L57.6mg/dL)、Cre183mmol/L2.06mg/dL)、二酸化炭素結合力25mmol/L(酸塩基平衡はバランスを取り戻しました)、精神体力ともに健常人のようになった。

ドクター康仁の印象

糖尿病性腎症の晩期は、虚実挟雑が多く、脾腎両虚、陰陽倶虚、湿毒貯留、血瘀互結となるのは臨床上、よく経験するものです。従って、補脾腎、瀉湿濁、解毒活血の治療法になるわけです。補と瀉に関しては、扶正して邪をとどめず、袪邪して正気を傷つけずという原則があります。これは腎不全に限りません。方中の紅参、白朮、茯苓、甘草は四君子湯であり、益気健脾であり気血生化の源を助けます。何首烏、菟絲子、淫羊藿は補腎陽益精養血に、黄連、大黄、草果仁、半夏は解毒瀉熱化濁に作用し、紅花、桃仁、丹参、赤芍は活血化瘀に働き、大黄は活血通腑泄濁に働きます。このタイプの患者は多く、張琪氏の上記方薬加減は治療効果が非常に良いと認識しています。

何首烏は熟地黄と異なり胃にもたれませんから最初に投与すべき薬剤の一つです。

中国人の食生活習慣などから考えて、BUN28mmol/L168mg/dL)→40剤後にBUN8.5mmol/L51mg/dL)の改善は食習慣と治療が不規則という面から、うなずけますが、Cre489μmol/L5.53mg/dL)→Cre183mmol/L2.06mg/dL)の改善は、やはり、氏の中薬治療の見事さを証明しているものです。Creレベルを3mg/dL以上改善させるのは難しいものです。

残存腎機能がある程度残っている場合には、漢方治療により、人工透析を回避できる可能性を示しています。

2014年 3月14日(金)


慢性腎炎 茯苓導水湯(ぶくりょうどうすいとう)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療293報)

2014-03-13 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

記憶力の良い読者でしたら、ネフローゼ症候群 茯苓利水湯加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療257報)2000年の医案でしたが、医案中の

茯苓利水湯」を思い出したでしょう。

中医弁証:脾虚不運、気滞水蓄に対する健脾行気利水法として、茯苓利水湯:組成は、木香10g 檳榔25g 青皮10g 陳皮15g 紫蘇15g 茯苓40g 白朮30g 党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30

でした。私のコメントとして、再度記載しますが、

茯苓利水湯の出典は「医宗金鑑」で原方は茯苓30g 猪苓20g 木瓜(酸/温 行気止痛、健脾消食、止瀉、平肝舒筋、和中袪湿)10g 澤瀉20g 檳榔20g 党参20g 白朮20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15g 陳皮15g 麦門冬15gです。本案(257報)では木瓜、麦門冬は配伍されていません。

茯苓30g 猪苓20g 澤瀉20gは利水、檳榔20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15gは理気(行気)であり、気滞は水停を起こし、気がめぐれば水行する、という中医理論から、行気と利水を同時に行った訳ですね。海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gの配伍は腹水があるばあいに張琪氏は愛用するようです。黄耆、党参、白朮、茯苓は益気健脾利水の効果で祛邪(利水)と補益を兼ねるものです。二診では既に浮腫が全消したのですから、行気利水の木香 檳榔 青皮を除き、舌紅、咽赤に対して金銀花 連翹の清熱解毒薬を加味しました。白花蛇舌草も清熱解毒利湿薬ですが、免疫調整という弁病的な考慮もあるかもしれません。乾姜を配伍した理由は氏がやや脾胃虚寒の印象を持ったのかも知れません。あくまで推測ですが。畏寒肢冷、便溏などの腎陽虚を兼ねる場合には附子を配伍するでしょう。

以上でした。

それでは、茯苓利水湯茯苓導水湯の違いはどこにあるのでしょうか?

医案に進みましょう。

患者:郭某、26歳 男性 工場労働者

初診年月日1982518

病歴

患者腎炎4ヶ月に及び、尿蛋白4+、顆粒円柱+、浮腫尿少、胃脘痛、かつて健脾行気、清利湿熱の治療を受けたが、効果不良。

初診時所見:尿蛋白3+、全身浮腫、脈沈舌紫

中医弁証:脾虚気滞水蓄

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:健脾 行気 利水

方薬茯苓導水湯加減

茯苓20g 檳榔20g 澤瀉20g 白朮15g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 陳皮15g 木香7.5g 萹畜20g 瞿麦20g 海藻(消痰軟堅 利水退腫)30

二診:1982年61

腫脹倶消、食欲増加、精神状態改善、尿蛋白±、顆粒円柱(-)、RBC0~1個/HP、WBC0~2個/HP

ドクター康仁の印象

1982年の症例ですから、西洋医学的なデータは全くありません。ネフローゼ症候群を示していたのかどうかも不明です。

さて、本題に戻って、

茯苓利水湯2000年度:木香10g 檳榔25g 青皮10g 陳皮15g 紫蘇15g 茯苓40g 白朮30g 党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30g(計315g)

茯苓導水湯1982年度:茯苓20g 檳榔20g 澤瀉20g 白朮15g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 陳皮15g 木香7.5g 萹畜20g 瞿麦20g 海藻30g(計202.5g)

海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gの配伍は腹水があるばあいに張琪氏は愛用するようです。

結論は同じものです。1982年度には黄蓍 党参の参耆(益気固摂)の組み合わせがありませんでしたが。萹畜(利水通淋)瞿麦(活血利水通淋)は2000年度には益母草(活血利水消腫)に変更されています。利水と導水と区別したのはやはり理由があったのでしょうが、漢文の講義では有りませんので、市民講座としては「同じ」ということで落着させていただきます。

弁証治療だけでも充分に効果が現れていますね!

2014年 3月13日(木)


慢性腎炎 加味地黄湯(かみじおうとう)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療292報)

2014-03-12 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

前案と同じ加味地黄湯加減治療ですが2003年の症例です。どのような組成でしょうか。

( )内に私のコメントを随時いれます。

医案に進みましょう。

患者:張某 十歳 女児

初診年月日20031231

病歴

顕微鏡学的血尿が4年間、尿蛋白2+、尿潜血±、RBC10~22個/HP

(尿潜血反応と沈渣RBCの乖離がまま氏の医案に出現します。)

初診時所見:腰痛 乏力 尿痛、舌質紅、苔薄白

中医弁証:脾気虚、腎陰欠乏の証

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:補腎滋陰、益気健脾固摂、清利湿熱

方薬加味地黄湯加減

黄蓍30g 太子参20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬15g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉10g 知母10g 黄柏10g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)15g 女貞子15g 旱蓮草20g 烏梅炭15g 側柏葉15g 甘草10g 白花蛇舌草20g 瞿麦(活血利水通淋)15g 萹畜(利水通淋)15

水煎服用 毎日2回に分服

(参耆知柏地黄湯加味であり烏梅炭は収斂止血、側柏葉は涼血止血、瞿麦と萹畜は排尿痛の対症療法であり、白花蛇舌草はやや弁病論からの配伍でしょう。)

二診2004114

11剤服薬後、尿蛋白±、尿潜血±、WBC満視野/HP、RBC6~8個/HP、RBC68/HP、セフトリアキソンNa セフェム系抗生物質の点滴静注3日後、尿WBC1~2個/HP、RBC3035/HP、尿潜血+、尿蛋白±。排尿痛あり、舌質紅舌苔白、脈細数。

(尿路感染は収まったが、血尿は悪化、それでも尿潜血は1+、排尿痛残存、はてどこかに本質が隠れていますが、、)

方薬

黄蓍30g 太子参20g 石蓮子15g 地骨皮15g 柴胡15g 茯苓15g 麦門冬15g 車前子15g(はて、清心蓮子飲になりましたね。益気養陰清利湿熱です。)蒲公英30g 金銀花30g 連翹20g 天花粉15g