本日も、漢方市民講座で、張琪氏の糖尿病性腎症の弁証論治をご紹介します。漢方治療の実際をご覧になって下さい。( )内に随時、コメントを入れます。医案に進みましょう。
患者:*某 68歳 男性 某庁幹部
初診年月日:2004年3月11日
病歴:
当該患者の糖尿病歴十余年、近日、眼瞼と下腿に軽度浮腫が出現、ハルピン市赤十字病院で検査:尿蛋白3+、糖尿病性腎症と診断され、経口糖尿病薬投与を受けるが、蛋白尿3+と持続。
初診時所見:
全身乏力、眼瞼及び下腿に軽度浮腫、便秘、舌紅少苔、脈弦有力。空腹時血糖8.0mmol/L(144mg/dL)、尿蛋白3+、Cre105μmol/L(1.18mg/dL)、BUN6.0mmol/L(36mg/dL)、血圧高。
中医弁証:虚労、腎陰虚兼血瘀証
西医診断:糖尿病性腎症
治法:益気補腎滋陰 活血法を補佐とする。
方薬:
生地黄20g 熟地黄20g 山茱萸20g 生山薬30g 枸杞子20g 女貞子20g 玉竹20g 菟絲子20g 玄参20g 天門冬15g 太子参20g 五味子15g 桃仁15g 丹参20g 赤芍15g 葛根15g 牡丹皮15g 生黄耆20g 大黄7g 白芍20g
水煎服用、毎日2回に分服
(生黄耆20g 太子参20gで参耆となり、益気生津固摂になります。参蓍地黄湯加味方になっていますね。葛根は氏の場合には活血薬としての側面があります。勿論、舒筋作用もありますが、初診で外感は無関係ですので、やはり活血舒筋ですか。方薬全体では益気養陰が主体で、菟絲子の補陽、五味子の斂陰消蛋白、赤芍、葛根、丹参等の活血薬群、初診時の所見に便秘があったのかどうかは不明ですが活血通腑泄濁瀉下剤の大黄7gの配伍など、深謀遠慮の配伍といえるでしょう。但し、浮腫が存在するのに清熱利水薬の車前子や澤瀉などの配伍がないですね。活血利水薬の益母草とかも見当たりません。何故でしょうか。)
二診:2004年6月15日
上薬服用後、全身乏力減軽、眼瞼、下肢に軽度浮腫有り、便秘、舌紅少苔、脈滑、尿蛋白2+。病情緩解、前方加減参耆地黄湯加味治療を継続。
方薬:
生黄耆30g 太子参20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15