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ネフローゼ症候群 栝萋瞿麦丸(かろくばくがん)加減治療 張琪氏漢方治療3(腎病漢方治療252報)

2014-01-31 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:劉某 31歳 男性

初診年月日1992911

主訴:浮腫軽重を繰り返すこと1年余

病歴

ネフローゼ症候群病歴1年余、かつて中西薬治療効果不十分。水腫は軽重を繰り返し不消失、尿蛋白2~4+。近日外感に因り病情加重、現地でペニシリン及び中薬治療1月余の治療を受けるが、浮腫不消失。

初診時所見

双下肢浮腫、尿少、尿量400500/24時間、腰酸乏力、面色晦黄無華、下肢冷畏寒、口干咽干、時に咽痛、舌質紅苔白、脈滑無力、尿蛋白4+。

(付記 面色晦黄無華とは顔色が暗い黄色で艶が無いという意味です。)

中医弁証:肺胃熱、脾腎虚寒、上熱下寒、寒熱錯雑証

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清上温下利水

方薬栝萋瞿麦丸

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 生黄耆15g 甘草10g 

250案では清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gが加味されていましたが、251案では便溏、少腹痛を意識して健脾燥湿、温裏散寒の炮姜が加味されていますね。本案では黄蓍15g→生黄蓍30gに強化増量されています)

七剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 1992912

尿量は明らかに増加、1500ml~2000ml/24h、浮腫は著明に減軽、咽干咽痛は好転、下肢はまだ冷える。前方に党参20gを加え、補気健腎を図る。

方薬:栝萋瞿麦丸:前方加味党参20

十剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 1992928

浮腫消失、下肢冷および乏力好転、尿蛋白2+、この後、益気健脾清熱利湿の剤による治療3ヶ月で症状消失、尿蛋白±~+、病情穏定、半年後まで追跡調査、ネフローゼ症候群の再発は無い。

ドクター康仁の印象

「張琪氏の栝萋瞿麦丸」の方薬組成

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10

の加減治療はほぼご理解いだけたでしょうか?

方証は、全身水腫、口干咽燥、小便不利、胸中煩熱、手足心熱、腰痛畏寒の上熱下寒証ですが、乏力など気虚症状が強ければ最初は黄蓍の増量、次に党参加味、咽痛が強ければ清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gの加味、便溏、少腹痛を伴えば健脾燥湿の白朮、温裏散寒の炮姜などを加味ということになりますね。

本案は1990年代初頭の医案ですので、西洋医学的データは記載がありませんね。

ともかくも、治療結果は見事なものでした。

個人的には本案 三診の記載「尿蛋白2+、この後、益気健脾清熱利湿の剤による治療3ヶ月で症状消失、尿蛋白±~+」の益気健脾清熱利湿の剤の組成が知りたいものです。

理解しにくく、読みにくいのは解りますが、これ以上簡単にお話しするのは難しいのです。飽きないでお付き合いしていただければ幸いです。

20141月31日(金)


ネフローゼ症候群 栝萋瞿麦丸(かろくばくがん)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療251報)

2014-01-30 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:張某 48歳 男性

初診年月日:2002109

主訴:反復性浮腫半年余

病歴

ネフローゼ症候群病歴半年余、ステロイド、シクロフォスファミド、中薬補腎薬効果不十分。

初診時所見

全身水腫、小便不利、口干咽痛、胸中煩熱、手心熱、腰痛畏寒、少腹痛喜按、大便溏、舌質紅少津、脈滑。尿蛋白3~4+、尿RBC57/HPCre259μmol/L2.93mg/dL)、BUN105mmol/L630mg/dL:異常に高すぎますので10.5mmol/Lの誤植でしょう。63mg/dLでしょう。)

中医弁証:肺胃熱、脾腎虚寒、上熱下寒、寒熱錯雑証

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清上温下利水

方薬:栝萋瞿麦丸:

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g 白朮30g 炮姜(乾姜を炮じて炭化したもの、温裏効果は乾姜に劣るが、温経止血作用がある)10g

(前案では清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gが加味されていましたが、本案では便溏、少腹痛を意識して健脾燥湿の白朮、温裏散寒の炮姜が加味されていますね。)

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 20021023日。

口干および下腹痛、便溏は均しく好転した、但し尿蛋白3+、尿RBC0~1個/HP、継服前方。

方薬:栝萋瞿麦丸:前方に同じ

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 2002117日。

症状は顕著に好転、全身有力、舌潤、五心煩熱も軽減。前方を継続服用するように言う。

方薬:栝萋瞿麦丸:前方に同じ

60剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

四診 200317

尿蛋白3回検査皆陰性、尿RBC(-)、Cre150μmol/L1.69mg/dL)、BUN9.56mmol/L57.4mg/dL)。この後、患者は上記基本方加減にてCreBUNも皆下降し正常域に至った。追跡調査:病は癒えて職場に復帰5年余再発はない。

ドクター康仁の印象

2000年代にはいるとBUNCre値などが出現してきますね。栝萋瞿麦飲の方証は、全身水腫、口干咽燥、小便不利、胸中煩熱、手足心熱、腰痛畏寒の上熱下寒証ですが、便秘結ではなく便溏だということになりますね。

難しいですか?明日も栝萋瞿麦丸の症例を報告します。

20141月30日(木)


ネフローゼ症候群 栝萋瞿麦丸(かろくばくがん)加減治療 張琪氏漢方治療1(腎病漢方治療250報)

2014-01-29 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

始めに栝萋(かろ)の読み方と、栝楼、瓜荽と記載されていることもありますのでご注意ください。張琪氏の医案では栝萋は天花粉を指していますので、栝萋根をすり潰して乾燥させたものになります。以前に要薬としてご紹介しましたので以下の記事をご参照ください。

要薬考 No6 栝萋或いは栝楼、天花粉と薤白

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121108

要薬 考 No7 天花粉の臨床

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121109

瞿麦(くばく)は利水通淋の作用が有りますが、活血作用もあるようです。活血利水通淋と覚えましょう。

栝萋瞿麦も薬性は共に寒ですが氏の栝萋瞿麦丸には附子(熱)が配伍されていますので、天花粉瞿麦附子甘草茯苓湯とそのまま覚えた方が、記憶が確かになります。

附子(大熱)は改めて説明する必要は無いと思いますが、記憶を整理するために、以前の記事をご参照ください。

要薬考 No8 附子 肉桂 連翹 藿香 佩蘭

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121110

患者:呼某 38歳 女性

初診年月日:1999年10月3日

主訴:反復浮腫8年

病歴

ネフローゼ症候群歴8年、プレソニゾン、公藤?苷及び益気補腎清熱の中薬治療を受けたが全て無効。嘗てプレソニゾン、シクロフォスファミドの治療を受けるが、効果は不明確、難治性ネフローゼ症候群と診断されていた。

初診時所見

眼瞼及び双下肢の浮腫不消、口干咽痛、午後低熱37.8℃程度、尿少腰痛、畏寒面白、舌燥質紅、脈沈滑。尿蛋白3+~4+、尿RBC5~7/HP、血清総蛋白6.2/dL、アルブミン2.8/dL、グロブリン3.4/dL、総コレステロール、トリグリセリドは正常域の上限。

中医弁証:肺熱脾虚腎寒証

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清上温下利水

方薬:栝萋瞿麦丸:

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g 山豆根20g 重楼30

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 19991017

体温は36.7℃に転じ、尿量増多、24時間2000ml程度に達し、浮腫は著明に減軽、尿蛋白2+~3+、方薬を変えず前方を継服。

方薬:栝萋瞿麦丸:前方に同じ

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 199911

浮腫消退、口干咽痛大減、尿蛋白+~2+、この方薬を加減して50余剤、諸症は皆除かれ、尿蛋白マイナス~±、血清蛋白正常、かくして緩解した。

ドクター康仁の印象

さて「栝萋瞿麦丸」の原典は金匱要略で「消渇小便不利脈証併治編」であり、条文は「小便不利者、有水気、其人若渇、栝萋瞿麦丸主之」であり、原方は栝萋根瞿麦附子山薬茯苓の組成です。張琪氏は澤瀉20g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g 山豆根20g 重楼30gを加味しています

「張琪氏の栝萋瞿麦丸」の方薬組成は

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10gが基本となります。

重楼、?麦、山豆根の清熱解毒利湿利咽の手法は、氏の得意とするところです。氏の加味方は、陰虚内熱を意識した知母と麦門冬、澤瀉を加味した利水強化、桂枝を加味し、附子の温陽利水の効果を通陽利水で補助し、且つ、黄蓍で益気するという治療法になっているようです。

古典的な中医論で説明すると、反って理解しにくい組成です。以下は私流の解析ですから、もし不備があればコメントでご指摘いただきたく思います。

ステロイド治療を長く行っている症例では「陰虚証」が生じてきます。勿論、慢性病ですから耗気も生じます。つまり気陰両虚です。

口干、舌燥質紅は陰虚を示しています。そこで、栝萋、麦門冬、知母で養陰潤燥となります。舌苔の記載も欲しかったですね。

午後低熱37.8℃程度を陰虚火旺と判断すれば、なおのこと麦門冬、知母の配伍が納得できます。本案には便秘結がありません。37.8℃程度を気虚発熱と判断すれば、耗気からのものと考えて、黄蓍の加味も理解できます。

畏寒面色皓白で水腫となれば腎陽不足つまり腎寒証となるでしょう。そこで温腎補火の附子が配伍されてきます。しかし、蛋白尿、血尿の特に血尿は腎寒証ではありません。

口干咽痛の咽痛を実熱証、それも肺熱と直結すると考えれば、天花粉、山豆根、重楼の清肺熱清熱解毒利咽も納得がいくわけです。

患者を実際に診て見ないと、畏寒面白、舌燥質紅の色の程度が解りません。色は主観的なものだからです。

2014129日(水)


ネフローゼ症候群 疏鑿飲子(そさくいんし)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療249報)

2014-01-28 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:呉某 23歳 男性

初診年月日:1994年5月10日

主訴:断続性浮腫1年

病歴

ネフローゼ症候群歴1年、20日前、外感後に頭部顔面から全身性の高度な浮腫が出現、腹部膨隆、尿黄赤、尿少、24時間尿量400~500ml、フロセミド等の利尿剤効果不明確。

初診時所見

頭部顔面から全身性の高度な浮腫、腹部膨隆、尿黄赤、尿少、24時間尿量400~500ml、口干口苦を伴う、脈沈滑、舌苔厚膩。

中医弁証:脾胃湿熱壅盛、三焦熱壅滞の陽水

西医診断ネフローゼ症候群

治法:発汗瀉下利尿、表裏内外分消

方薬加味疏鑿飲子

檳榔(行気利水消積殺虫)20g 商陸(苦寒/有毒 行水退腫、散結消腫)15g

茯苓(健脾利水滲湿)15g 大腹皮下気寛中、行水消腫、止瀉)15g

(温中燥湿)15g 赤小豆(利水消腫、解毒排膿)30g

秦艽(祛風湿、舒筋絡、退虚熱)15g 羌活(解表散寒、祛風勝湿、止痛)15g

木通15g 澤瀉15g 車前子15g 萹蓄(利水通淋)15g

二剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 1994年5月12日

2剤服用にて尿量増多、24時間尿量1000ml程度。継続前方とする。

方薬:加味疏鑿飲子:前方に同じ。

六剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 1994年5月18日

6剤服用にて24時間尿量は1500mlを越えた。浮腫は顕著に消退、その他の諸症減軽、ただ大便やや不爽あり、加味 大黄7.5g通腑泄熱、継続3剤

方薬:加味疏鑿飲子:前方大黄7.5g加味

三剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

四診 1994521

大便通暢、尿量24時間量2500mlを超えた。水腫は基本的に消退、尿色淡黄、舌苔転薄、尿蛋白+~2+、継続して益気養陰、清利湿熱治療3ヶ月、尿蛋白は転陰、臨床的に治癒した。

ドクター康仁の印象

1994年の症例で、前案より4年前ですね。前案では木通は腎毒性が注目されて除かれていましたが、本案では配伍されています。

疏鑿飲子の治療対象は感覚的に把握できましたか?

さて、四診の「継続して益気養陰、清利湿熱治療3ヶ月、尿蛋白は転陰」の記載は氏が一段落した後の蛋白尿の残存する患者を診て、気陰両虚、湿熱下注、あるいは湿熱内蘊と弁証した結果としての治法なのですね。

思い出しましたか?そうです、清心蓮子飲(参蓍茯車麦冬黄芩地骨石蓮子(さんぎぶくしゃ ばくとうおうごん じこつせきれんし)を思い出して下さい。果たして、本患者では柴胡が加味されたでしょうか。(腎病漢方治療247報)に再度戻ってご覧下さい

本案も前案も治療結果は素晴らしいものでしたが、西洋医を納得させるにはデータが不足していることは否めませんね。

20141月28日(火)


ネフローゼ症候群 疏鑿飲子(そさくいんし)加減治療 張琪氏漢方治療1(腎病漢方治療248報)

2014-01-27 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

まずの読み方から始めましょう。音読みで「さく」、訓読みで「のみ」で石や金属、木材をうがつ、彫る「のみ」のことです。疏(そ)は疏肝理気などの中医学用語が有りますが、「ふさがっているものを除いて通りをよくする」という意味です。平たく言えば、小便が出ない、大便もでない、全身が浮腫んでいる状態を削り取って通りを改善するのが疏鑿飲子であると連想してもいいでしょう。

患者某 47歳 男性

初診年月日:1998年8月12日

主訴:浮腫1年余

病歴

ネフローゼ症候群病歴1年余、全身水腫、腹膨大、小便不利、尿色黄、大便秘結、口苦干燥、尿蛋白2+、嘗てプレドニゾン、フロセミドの治療を受けたが明らかな効果無し。

初診時所見

全身水腫、腹膨大、小便不利、尿色黄、大便秘結、口苦干燥、舌苔厚膩、脈沈滑数、尿蛋白2+、血清蛋白及び脂質は正常

中医弁証:脾胃湿熱壅盛、水熱壅結三焦の陽水

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:発汗瀉下利尿、上下内外分消

方薬加味疏鑿飲子

檳榔(行気利水消積殺虫)20g 商陸(苦寒/有毒15g 行水退腫、散結消腫)

茯苓皮(利水滲湿)15g 大腹皮下気寛中、行水消腫、止瀉)15g

川椒(温中燥湿)15g 赤小豆(利水消腫、解毒排膿)30g

秦艽(祛風湿、舒筋絡、退虚熱)15g 羌活(解表散寒、祛風勝湿、止痛)15g

玉米須(ぎょくべいしゅ 利水消腫 退黄)50g 西瓜皮(解暑止渇利小便)25g

二丑(牽牛子:黒白共に逐水瀉下 袪積殺虫に働く、峻下利水薬)各30g

海藻(消痰軟堅 利水退腫)30g            

七剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 1998819日。

服薬7剤で尿量増加、24時間尿量は1500mlを越えた。継続服用とした。

方薬加味疏鑿飲子上方に同じ。

十剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 1998829日。

連続服用10剤、24時間尿量は3000mlに増加した。発汗瀉下利尿、表裏内外分消水熱を継続し、益気を補佐として黄蓍30gを加味した。

方薬:加味疏鑿飲子:上方加味黄蓍30g

十剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

(付記:ここで瀉剤のみの疏鑿飲子に補気薬の黄耆が加えられたことになりますね)

四診 199899日。

水腫消退、尿蛋白2+、清利湿熱 益気健脾の剤治療3ヶ月、尿蛋白は陰転し、病は癒えて退院となった。

ドクター康仁の印象

以前に、ネフローゼ症候群の漢方弁証論治 腎炎、腎不全の漢方治療127報と128報で中医の弁証論治を総括したつもりです。

127報では宣肺利水法 温陽利水法 活血利水法 滋補肝腎 清化水湿法

128報では益気養陰法 行気利水法 分利湿熱法をご紹介しました。本案の疏鑿飲子は分利湿熱法に属します。

原方の疏鑿飲子(世医得効方)の組成は以下になります。

羌活 秦艽 大腹皮 茯苓皮 生姜 澤瀉 木通 椒目 赤小豆 商陸 檳榔

処方中の羌活、秦艽は疏風透表に働き、表にある水気を汗にさせて疏解する。大腹皮、茯苓皮、生姜は羌活、秦艽に協力して、肌膚の水を取り除く。澤瀉、木通、椒目、赤小豆を用い、商陸、檳榔と協同して、二便を通利し、裏にある水邪を下せる。全身水腫の治療方剤です。

大便不暢の原因を津欠腸燥とする説や、三焦の気機が閉塞されて二便が不通になるという理解しにくい説もあります。治療は表裏分消の法となります。表裏分消を説明すると、

商陸は瀉下逐水で、二便を通利し(大便 小便)、檳榔、大腹皮は行気導水し(小便)、茯苓皮、沢瀉、木通(最近は腎毒性のために使用されません)、山椒、赤小豆は利水袪湿で、裏の水が二便から除かれる。
羌活、秦艽、生姜は疏風発表で、水湿を肌膚から排泄する。
諸薬は協同して表裏の水湿を体表と小便、大便から除去するという意味が表裏分消です。

皮膚瘡瘍が熱を持ち腫れている者には金銀花 地膚子を加える。

大便乾燥不通者には大黄を倍量にして火麻仁を加える。

商陸に関しては以前の記事を参照してください。

峻下逐水薬に分類されます。商陸は大小便を通暢させことで、水湿を除きます。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130309

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130227

張琪氏の加味疏鑿飲子は原方より、澤瀉、木通、生姜を除き、玉米須(ぎょくべいしゅ 利水消腫 退黄)50g 西瓜皮(解暑止渇利小便)25g、二丑(牽牛子:黒白共に逐水瀉下 袪積殺虫に働く、峻下利水薬)各30g 海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gを加味したものになっています。

四診 199899日。

水腫消退、尿蛋白2+、清利湿熱 益気健脾の剤治療3ヶ月の治療内容を具体的に知りたいですね。補腎の用語が一切出てこないのが反って素晴らしいかもしれません。

それにしても、

尿蛋白定性2+、血清蛋白及び脂質は正常のネフローゼ症候群があるのや否や?疑問は残ります。

20141月27日(月)