患者:劉某 31歳 男性
初診年月日:1992年9月11日
主訴:浮腫軽重を繰り返すこと1年余
病歴:
ネフローゼ症候群病歴1年余、かつて中西薬治療効果不十分。水腫は軽重を繰り返し不消失、尿蛋白2~4+。近日外感に因り病情加重、現地でペニシリン及び中薬治療1月余の治療を受けるが、浮腫不消失。
初診時所見:
双下肢浮腫、尿少、尿量400~500/24時間、腰酸乏力、面色晦黄無華、下肢冷畏寒、口干咽干、時に咽痛、舌質紅苔白、脈滑無力、尿蛋白4+。
(付記 面色晦黄無華とは顔色が暗い黄色で艶が無いという意味です。)
中医弁証:肺胃熱、脾腎虚寒、上熱下寒、寒熱錯雑証
西医診断:ネフローゼ症候群
治法:清上温下利水
方薬:栝萋瞿麦丸:
天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 生黄耆15g 甘草10g
(250案では清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gが加味されていましたが、251案では便溏、少腹痛を意識して健脾燥湿、温裏散寒の炮姜が加味されていますね。本案では黄蓍15g→生黄蓍30gに強化増量されています)
七剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
二診 1992年9月12日
尿量は明らかに増加、1500ml~2000ml/24h、浮腫は著明に減軽、咽干咽痛は好転、下肢はまだ冷える。前方に党参20gを加え、補気健腎を図る。
方薬:栝萋瞿麦丸:前方加味党参20g
十剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
三診 1992年9月28日
浮腫消失、下肢冷および乏力好転、尿蛋白2+、この後、益気健脾清熱利湿の剤による治療3ヶ月で症状消失、尿蛋白±~+、病情穏定、半年後まで追跡調査、ネフローゼ症候群の再発は無い。
ドクター康仁の印象
「張琪氏の栝萋瞿麦丸」の方薬組成
天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g
の加減治療はほぼご理解いだけたでしょうか?
方証は、全身水腫、口干咽燥、小便不利、胸中煩熱、手足心熱、腰痛畏寒の上熱下寒証ですが、乏力など気虚症状が強ければ最初は黄蓍の増量、次に党参加味、咽痛が強ければ清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gの加味、便溏、少腹痛を伴えば健脾燥湿の白朮、温裏散寒の炮姜などを加味ということになりますね。
本案は1990年代初頭の医案ですので、西洋医学的データは記載がありませんね。
ともかくも、治療結果は見事なものでした。
個人的には本案 三診の記載「尿蛋白2+、この後、益気健脾清熱利湿の剤による治療3ヶ月で症状消失、尿蛋白±~+」の益気健脾清熱利湿の剤の組成が知りたいものです。
理解しにくく、読みにくいのは解りますが、これ以上簡単にお話しするのは難しいのです。飽きないでお付き合いしていただければ幸いです。
2014年1月31日(金)