▼いかにも差別的な名称の、北海道旧土人保護法。1899年(明治32年)に制定され、約100年間効力を発した。保護法とはいえ、帝国主義的同化政策の推進だと評価されている。
▼1・アイヌの土地没収
2・収入源である漁業・狩猟の禁止
3・アイヌ固有の習慣風習の禁止
4・日本語使用の義務
5・日本国氏名への改名による戸籍への編入
▼これらが保護法の特徴だ。まるで植民地化政策だ。道民から改正運動が起きなかったのも「無意識下の差別」があったという証左に違いない。
▼今年4月にオープンするウポポイ「民族共生象徴空間」の建設と、IR「統合型リゾート」の誘致で、アイヌ民族の存在がクローズアップされ、ようやく学ぼうと思った道民の私自身も「無意識下の差別」をしていた一人だ。
▼2019年に「アイヌ新法」が施行されたが、その成立時に行なったパブリックコメントには、6305件が寄せられた。その中の98%が、アイヌ民族の存在を否定する差別的内容だったので、公表の対象外としたという。(道新令和2年1月18日掲載)。
▼いまだに旧土人法さえも認めない、人種がいるようだ。もしかしたら、これらの人種が、縄文後期に日本にやってきて、先住民族を蹴散らし、自分たちが正統な日本人だと自負している渡来民族の末裔かもしれない。
▼そうであれば、それらの末裔が明治時代に北海道にやってきて、先住民族を圧迫し、中には「アイヌ民族など存在しない」と発言する、和人と称する種族なのだろう。
▼などと、いつもの妄想の世界に、早くも入ってしまう。そんな人種差別の種族の正体を明らかにするためにも、98%の純粋な差別意見を公開してもらいたいものだ。
▼そのアイヌ新法だが、先住民族と記しているが、先住民族の権利保障の記載がないとして、アイヌ民族が国に訴えている。この国の政府が、はたしてアイヌ民族の人権にどんな理解を示しているのだろうか。
▼故中曽根総理(大勲位菊花章頸飾=天皇と同じ)や元総理で現副総理麻生太郎は、我が国は「単一民族」だと主張する。これではアイヌ新法も「仏作って魂入れず」ではないか。
▼沖縄は米軍基地が集積し、いまだ占領地状態だ。それに対する政府への不満は大きい。そんな沖縄を、政府はことさら無視し、沖縄の人権など軽視する有様だ。
▼そんな政府だ。アイヌ新法などを作っても、アイヌ民族の人権など容易に認めるはずがない。沖縄も北海道も共に「土人が住む土地」という認識しかないに違いない。
▼1月22日からは、北海道で沖縄の米軍海兵隊が、道民の反対を無視し、陸自と戦後最大規模の共同訓練を行っている。現在に至っても、沖縄と北海道は「土人」が住む島との認識しかないようだ。
▼政府が建てた「ウポポイ」が、果たしてアイヌ民族自立の砦となるか、それとも、日本政府の「北海道大構造計画」の新たな砦になるか、道民一人一人がアイヌ民族を理解する中で、見定めていくことが必要になってくるようだ。
▼アイヌ民族で言語学者の知里真志保は【アイヌ及びアイヌの文化の内容が、今まで考えられていたよりはるかに複雑であり、豊富であり・・・そこから北海道の先史時代の人と生活を明らかにする鍵を、いくらでも摑み出してくることができるのだという印象を、皆さんに持っていただくことが出来ましたなら、私の目的は達せられるのであります】と述べている。
▼アイヌ民族は文字を持たなかったゆえに、差別の対象とされた。しかし、天皇を主軸とする神道にも、体系的な教義も深遠な哲学もそれどころか、文字で書かれた経典さえないという。
▼明治の日本で暮らしたラフカディオ・ハーンは、神道をこう解説する。【学者たちがなかなか神道を解きあかせないのも、畢竟、彼らが神道の源泉を書物ばかりに求めているからである。・・・本居宣長や平田篤胤の注釈に頼りきったためだ。しかし、現実の神道は書物の中に生きているのではない。儀式や戒律の中でもない。あくまで国民の心の裡に息づいているのである。そして、その国民の信仰心の最も純粋な発露、決して滅びず、決して古びることのない表象が、神道だ】という。
▼さらにカーンは、文字で書かれた教義が「無い」ことこそが、神道の強靭さの要諦でもあり、怒涛のような西洋思想の来襲にも、日本が東洋で唯一対抗し得た由縁であると看破している。
▼そうであれば文字が無かったアイヌ民族にも、計り知れぬ魅力が隠されているのではないか。アイヌ文化を学ぶことで、北海道の未来が見えてくるのかもしれない。
▼『オキナワ』と『アイヌ』は、同じ民族ではないかと私は「仮想」している。だから、アベ政権と緊密な鈴木北海道知事がとても気になる。アベ政権が北海道に対する政策が、私の考えているものと一致するのではないかと危惧するからだ。
▼「アイヌモシリ=人間の静かな大地」を、IRや沖縄の米軍の騒音で、破壊させてはならない。