夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

残念な…。

2017-08-11 23:13:41 | 日記
先日の期末試験では、内田樹(うちだ・たつる)の評論「働くことの意味」から出題した。
労働の本質は「贈与」にあることを、豊富な具体例を交えつつ説いた好論である。

・その仕事を通じて、他者に何をどのように贈るかを決められるのは自分だけである。
・よい働き手は、自分の仕事がすべての人に感謝されなくても、自分のサービスや工夫を受け取ってくれる他者を想像するだけで満足であり、それがまた、自らの仕事に対する動機づけとなっている。
・私たちは、労働を通して他者からの承認を得、それによって自分の存在意味を確認している。

といった、説得力ある主張が随所に見られ、授業の時は、近い将来、社会に出て働くことになる学生たちに、きっと役立つだろうと考え、いつもより熱心に教えた。学生の反応もよかったのだが、試験で理解度を確認したところ、授業中に口頭で発問・説明しただけのところや、試験にあたって独自に作成した問題などは、出来が悪かった。
その中でも特に学生の解答が振るわなかったのが、次の記述問題。

問 傍線部「皿洗いのバイト」とあるが、皿洗いは一般的に、人々からどのような仕事として認識されていると思われるか。「~仕事」という形で三つ挙げよ。

いちおう、私が解答として用意していたのは、

・心身の疲労や苦痛を生じやすい仕事(労苦の多い仕事)
・誰にでもでき、創意工夫や熟練を必要としない仕事
・単純作業を繰り返すだけの退屈な仕事

であったが、実際に出て来た答えは、
・見習いの
・裏方の
・地味な
・楽しくない
・新人がする
・疲れる
・楽しくない
などであった。

いちおう、解答欄には、「~仕事」と、15~20字程度で答えられるようにスペースを設けていたので、あまりにも短い答えばかりなのに落胆したが、学生の現状と今後の問題点が明らかになったように思った。
今教えている学生たちは、意見を言わせればよくしゃべり、主張もできるが、反面、語彙力に乏しく、説得的な文章を書くのが苦手である。先の一単語だけの答えも、出題者の私としては、

・賃金が安く、価値の低い仕事
・面白みがなくやりがいを感じにくい仕事
・経験が浅く、未熟な人に与えられる仕事

といったように、事態を客観的・抽象的に捉え、ある程度文章化して答えてほしかった。
国語の現代文分野は、結局のところ、学生に論理的思考と客観的な読解力、説得的な表現力を身につけさせることが目標なので、色々と手を尽くしつつ、現代文的思考を浸透させていきたいと思っている。

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