夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

カモメになったペンギン

2013-11-07 23:24:46 | 

昨年、本校の経営者から課題図書として指示され、読んだことを思い出した。

『カモメになったペンギン』は、それまで暮らしていた氷山が溶けて崩れる危機に直面したペンギンたちが、新しい安全なコロニーを求めて氷山を移動するという困難な目標を達成する顛末を描いた寓話である。

一羽のペンギンが危機を発見するところから始まり、リーダーとなるペンギンたちも危機を悟り、全体集会を開いて、「変化」に慣れていないコロニーの仲間たちに現状への甘えを手放させ、危機意識を高めさせていく。そして、変革を指揮するために、チームを形成し、メンバーが新しい未来、ふさわしいビジョンを創り出し、仲間たちに新しいビジョンを伝え、実践していく。もちろん、その過程では抵抗勢力が現れたり、人々(ペンギンたちだが)の無知や偏見が障害となったりするが、仲間たちを窮地から救い出したいと願うリーダーやチームのメンバーたちの真摯な言動が変革のうねりを生み出し、素晴らしい未来のためにみんなで協力して挑戦し、成功をたぐり寄せていく。

翻って、人間社会を思うとき、どんな組織も固有の問題点を多く抱えている。それらは一見、複雑で解決に時間がかかるように見え、あるいはどこから着手してよいかがつかみにくいために、出口が見えないように思ってしまう。また、危機意識を持っている者も、それぞれの立場から意見を表明するため、同じ意識が全体に共有されないどころか、かえって反感と対立の種になってしまったりする。

しかし、だからこそ、自分たちが置かれている危機の本質を正確に理解し、異なる価値観を摺り合わせ、どのような解決案がもっとも適切であるか、また、組織にとって望ましい将来像は何かを考え、示し、全体が協調して挑戦し、努力することの大切さを、この本は教えてくれたように思う。

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