夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「ベティ・ブルー~愛と激情の日々~」(その2)

2012-09-17 16:16:11 | 映画
感想

この映画はいろいろな見方ができると思うが、私はベティのゾルグに寄せるひたむきな愛情と、信じる力の強さがいちばん心に残った。ベティの信じる力が、ゾルグを小説家として世に出したのだ。

ベティと出会ったとき、ゾルグは以前小説を書いたことはあっても、散漫な出来のもので、本人はこんなものはダメだと思っていた。しかし、ベティは、段ボールに放り込まれていたゾルグの小説ノートを発見すると、数10冊あったそれらを1昼夜不眠で読み通してしまう。しかもその後で、ゾルグのために七面鳥を焼き、「すばらしい才能だわ」と祝ってやる(写真)。

リザの家に移ると、ベティは慣れない手つきで(左右とも1本指で!)タイプライターを操作し、ゾルグの小説をノートから活字に起こしてくれる。そして、パリ中の出版社を全てリストアップし、本人の同意も求めず原稿を郵送してしまう。

ゾルグの小説を酷評した作家には、自宅に押しかけて苦情を言う。ゾルグに対しても、
「ペンキ塗りなんて才能のムダ遣いよ」
「屁理屈を言うより、小説を書いたら」
「本が出版される夢を見たわ」
などと、小説家になることは最初からあきらめて、ベティと一緒に暮らせることだけで満足しているゾルグを叱咤したり、励ましたり、本来の才能を大事にすべきだと訴えようとしている。

それだけに、ゾルグがようやく本気になって小説を書き上げ、出版社に認められて本にしてもらえるという朗報を、真っ先にベティに告げようとしたときには、ベティはすでに狂気に冒され、ゾルグの言葉も届かない、という場面がたまらなく悲しかった。その前にゾルグは、「ツキが回ってきた。次の作品を書いている。君のために」と思っていたが、ベティのためにはもう遅かったのだ。

……その言葉が、自分を信じ、その可能性を引き出そうと真剣になってくれる人のものであれば、自分も真剣に向かい合わなければきっと後悔すると思った。

激しい愛欲シーンもあるので、そういうのが苦手な人にはおすすめできないのだが、映画らしい映画を観た、という気分になる。この写真のベティのワンピースのように、80年代ファッションもおしゃれなので、そうした楽しみ方もできると思う。

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