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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

名戯曲の、裏のウラには。

2018-03-05 22:16:45 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ええェッ? もうゥ、つゆゥ??」
「がるる!ぐるるるるがる~?」(←訳:虎です!3月なのに梅雨~?)

 こんにちは、ネーさです。
 梅雨は梅雨でも、
 菜の花の季節の梅雨――菜種梅雨が来ちゃったみたいですね。
 これも春の風物詩のひとつということにして、
 ならば今日は晴耕雨読の読書タイムを、
 こちらの御本で、どうぞ~♪
 
  



     ―― 分かったで済むなら、名探偵はいらない ――



 著者は林康広(はやし・やすひろ)さん、2017年12月に発行されました。
 プロローグとエピソードに挟まれた7篇の短編作品で構成される
 連作ミステリ作品であり……
 またの名を変調“居酒屋ミステリ”!

「ふァ? いざかやさんッ?」
「ぐるっる??」(←訳:変調って??)

 バーを舞台にしたミステリって、
 ええ、ミステリ好きさんにはお馴染みですよね。

 カクテルを傾けながら、
 ぽつぽつと打ち明け話をしたり、
 相談事をするうちに
 《謎》の真相が見えてくる――

 この御本では、それがバーではなく、
 居酒屋さんになっています。

 『ロミオとジュリエット』という名の。

「いッ、いざかやさんにィ~??」
「がるぐーるるる??」(←訳:そのネーミング??)

 そうよね、居酒屋さんなんですから、
 もっとこう、お気楽な、
 ワイワイ楽しく飲んで食べて♪な名前であっても
 良さそうなものですが。

 『ロミオとジュリエット』なる名のせいで、
 時折り、お客さんたちの間で
 奇妙奇っ怪な議論が巻き起こるんですから、
 侮れません。

 例えば、
 プロローグの次に収録されている、
 『106は頑張ってる』という作品では、
 お客さんのひとりが
 こんなことを言い出します。

  ―― おれはいつもこの場面で、
    キャピュレットに同情して泣くんだ ――

「ふァ??」
「ぐるっ??」

 キャピュレットとは、
 いうまでもなく戯曲『ロミオとジュリエット』の、
 ジュリエットさんのお家ですね。
 つまり、キャピュレット家の当主を名指し、
 可哀想だ、泣かされる、と嘆きながら
 お客さんはビールをぐっと飲み干すのでした。

 え?
 と思ったのは、
 隣のテーブルで冷奴を口に運んでいた
 語り手の《俺》さんです。

 キャピュレットが、可哀想って?
 可哀想なのは
 ロミオくんとジュリエットさんじゃないのか?

「そうでスよねッ!」
「がるぐるるる!」(←訳:悲劇だもんね!)

 なぜ、お客さんはキャピュレットさんを推すのか?
 若い恋人ふたりではなく?

 実は刑事さんである《俺》、
 或る事件の解釈について悩んでいたのですが、
 お客さんの話に耳を澄ますに従い、
 新たな想いが浮かんできます。

 事件の真相――深層には、
 もしかしたら別の一面が?

「なんだかァ、しぇいくすぴあさんがァ~…」
「ぐるるがる?」(←訳:可哀想かも?)

 『ロミオとジュリエット』を徹底的に活用しまくり、
 《謎》の奥底へ肉迫するユニークな
 安楽椅子探偵型連作ミステリ、
 シャレが解るミステリマニアさんにおすすめです。
 あ、もちろん、シェイクスピアさんのファンの方々も
 ぜひ、一読してみてくださいね~♪