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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― ヴィクトリアンの森へ ―

2017-02-17 22:03:18 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ぱふふゥ! すなァあらしィ~!」
「がるる!ぐるるる~!」(←訳:虎です!春一番だ~!)

 こんにちは、ネーさです。
 強風のせいで髪がグシャグシャになった金曜日ですが、
 お家に帰ってリラックスしたら、
 さあ、週末の読書タイムです。
 本日は、こちらのアート系ノンフィクション作品を、どうぞ~♪
 
  



      ―― ウィリアム・モリスの遺したもの ――



 著者は川端康雄(かわばた・やすお)さん、2016年12月に発行されました。
 『William Morris and His Legacy』と英語題名が、
 『デザイン・社会主義・手しごと・文学』と日本語副題が付されています。

「あはァ! でざいなーさんッ!」
「ぐるるるるるがるるる!」(←訳:デザイン界の巨匠さん!)

 ウィリアム・モリスさん(1834~1896)を、
 はて、どう形容すべきでしょうか。

 グラフィックデザイナーさん?
 テキスタイルデザイナーさん?
 詩人であり、文学者であり、
 “世界で最も美しい”と評される書籍を作り、
 政治運動にも参加した19世紀英国のアーティストさん?

「どのォおしごともォ、ぜんりょくゥとうきゅうゥ!」
「がるるぐる!」(←訳:手抜きなし!)

 ひとつ名言できるのは、
 100年以上も前の19世紀人でありながら、
 モリスさんのお仕事は現役である、ということです。

 ロンドンのリバティ百貨店へ行けば、
 V&A美術館へ行けば、
 モリスさんがデザインした布地や壁紙が今でも売られていますし、
 日本のデパートでもライセンス製品が販売されていますね。

 100年経っても古びない。
 
 いえ、100年経ってもますます人気沸騰中。

「それッてェ、すごいィでス!」
「ぐるがる!」(←訳:ほぼ奇跡!)

 飄々と奇跡を実現させているひと=モリスさんとは、
 いったどんな人物なのか。

 著者・川端さんは日本人ならではの知識・視点から
 モリスさんが多分野に残した《遺産》をつなげてゆき、
 また、モリスさんが日本文化に及ぼした影響についても
 丁寧に追跡して行きます。

「えッ? にほんにィ?」
「がるるるっる!」(←訳:知らなかった!)

 この御本は大きく三つのパートに分かれています。

   第Ⅰ部『タペストリーの詩人』
   第Ⅱ部『日本への波動』
   第Ⅲ部『ヴィクトリア朝と現代』

 という構成ですが、
 注目すべきは、第Ⅱ部!
 ここで“主役”になっているのは、

  《あまりにもモリスさんの仕事に感化されちゃった或る日本人》。

 お名前を御木本隆三(みきもと・りゅうぞう)さん、と記したなら、
 分かる御方には分かるでしょうか……

「みきもとォさんッ??」
「ぐるるっ?」(←訳:もしやっ?)

 御木本隆三さんは、
 ええ、苗字から察したアートマニアさんもおられるでしょう、
 《真珠王》と称された、
 御木本幸吉さんの息子さんです。

 御木本幸吉さん(1858~1954)の長男として生まれた
 隆三さん(1893~1971)は英国文学者であり、
 著書の殆どがモリスさんも参加した
 《アーツ&クラフツ運動》関連のものなんです。

 隆三さんの生涯がどれほど“モリス”色に染まっていたか、
 モリスさんと親しかった
 美術評論家J・ラスキンさんの思想に影響されていたのか、
 それゆえに困難な生涯を送らねばならなかったかを
 遠く見送るかのようなこの章は、
 静かな朗読を想わせます。

「こんなァれきしがァ~…」
「がっるるる!」(←訳:あったんだ!)

 古びた遺産ではなく、
 今もなお活き活きと産み出され続ける
 モリスさんのデザイン。

 その前後の、背後の、
 モリスさんとモリスさんを囲む人びとの息づかい。

 英国のアートが好きな御方にも
 近代史好きな活字マニアさんにも
 おすすめの作品です。
 できれば、モリスさんのデザイン図集を傍らに、
 ぜひ、一読を♪