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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

たたかう《本》たち。

2016-07-24 22:09:36 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きょうはァ、みんなでェごーるゥでス!」
「がるる!ぐるるがる~!」(←訳:虎です!パリに到着~!)

 こんにちは、ネーさです。
 2016年のツール・ド・フランスも、
 いよいよ今日24日が最終ステージとなりました。
 いつものように華やかにシャンゼリゼで周回レース!
 と行きたいところですが、
 警備の関係でコースが変更になるかもしれません……
 ともあれ、3週間の熱戦を乗り切った選手さんたちに拍手を送りつつ、
 さあ、読書タイムですよ。
 本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~♪
 
  



          ―― 戦地の図書館 ――



 著者はモリー・グプティル・マニングさん、
 原著は2014年に、↑画像の日本語版は2016年5月に発行されました。
 英語原題は『When Books Went to War:The Stories That Helped Us Win World WarⅡ』、
 『海を越えた一億四千万冊』と日本語副題が付されています。

 多くの活字マニアさんは、
 とりわけミステリマニアさんは御存知でしょう、
 第二次世界大戦中、
 英国ではアガサ・クリスティーさんの新作ミステリが
 戦争なんかに屈さないぞ!とばかり、
 毅然と刊行されていたことを。

「くりすますにィ、くりすていィをォ!」
「ぐるがるぐるるる!」(←訳:戦下でもミステリ!)

 一方、英国の敵国であるナチス政権下のドイツでは
 何が起こっていたか、というと――

 焚書でした。

 1933年5月、ベルリンのベーベル広場で
 “非ドイツ的”な書籍と文書が炎の中へ投げ込まれ、
 この出来事以降、本格的な言論・思想統制が
 ドイツ社会を覆います。

 文学、報道、ラジオ、演劇、音楽、芸術、絵画や映画、
 あらゆる芸術活動は
 宣伝大臣ゲッペルスの監視を受ける事態となりました……

「ひィどォいィ~ッ!」
「がるるるぅっ!」(←訳:許さないぃっ!)

 なんてことするんだー!と怒りの声を上げたのは
 現代の私たちだけではありません。

 当時の英国で、そして米国でも、
 焚書に対する抗議運動が展開されました。
 焚書、赦すまじ!

 その勢いと決意は、
 一見しただけではあまり目立たない、
 けれど長期的に俯瞰するならば
 大きなうねりとなって世界のあちこちに実を結びます。

 戦地の兵士たちに、本を。

 陸軍、海軍、
 ヨーロッパの戦線にもアジアの戦線にも、
 本を、幾万冊もの本を届けよう――

「いろんなァ、しょもつゥ!」
「ぐぅるるるがるがる!」(←訳:ジャンルもとりどり!)

 米国の図書館員さんたちは、
 全国から寄付された書物を兵士に送る図書運動を始め、
 運動はやがて《兵隊文庫》の発行へと変化してゆきます。

 兵士用に作られたペーパーバックは
 タバコやお菓子よりも高い人気を得て、
 つらい日々を送る兵士たちを力付け、
 心の支えとなった――

「やぱりィ、ほんはァもやしちゃだめェでスゥ!」
「がるるる!」(←訳:守ろう本!)

 《兵隊文庫》発行の経緯、
 兵士たちがどれほど本を必要としていたか、
 どんな本が好まれたのか、
 《兵隊文庫》に規制や検閲はあったのか、
 戦争中だけでなく戦後も
 本を活用してゆこうという試みまで、
 著者・マニングさんは綴ります。

 焚書によって葬り去られた書籍の数より、
 もっと多くの、たくさんの書籍を、世界に。

 本を燃やす、
 そんな暴挙のない世界へ。 
 
「にどとォ、おこらないィようにィ!」
「ぐるるがるぐる!」(←訳:戦争も焚書もね!)

 巻末には、
 第二次世界大戦中のドイツで焚書に指定された書籍の著者リスト、
 《兵隊文庫》の書名・著者リストも掲載されています。
 
 本の在りかたを考える、
 本を愛するすべての方々、
 どうか、ぜひ、一読を。