テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

昔の《声》、発掘。

2016-07-07 22:10:07 | ブックス
「こんにちわァ、テディちゃでス! 
 きょうはァ、たなばたァでスよゥ~!」
「がるる!ぐるるがるがる~♪」(←訳:虎です!笹の葉さらさら~♪)

 こんにちは、ネーさです。
 EURO2016……4強で力尽きましたが、
 小国ウェールズの健闘に心からの拍手を送りつつ、
 七夕の今日も読書タイムとまいりましょう。
 さあ、こちらの御本を、どうぞ~!
 
  



         ―― カラヴァッジョ伝記集 ――



 編訳者は石鍋真澄(いしなべ・ますみ)さん、2016年3月に発行されました。
 『Caravaggio』と伊語題名が付されています。

 先日は、宮下規久朗さん著『闇の美術史』を御紹介いたしました。
 そして今回も、はい、しつこくですみません、
 またもカラヴァッジョさんです。

「こまッたおじさんッ、でスねッ!」
「ぐるるがるるぐる!」(←訳:破滅型芸術家さん!)

 絵画史に於ける功績とは別に、
 とかくアレコレ言われちゃうのが、
 カラヴァッジョさんの“生き方”でしょう。

 裁判沙汰、警察沙汰は日常茶飯事、
 あっちでドカン、
 こっちでドシン、と
 喧嘩を売りまくっての、
 悲劇的な最期……。

「でんせつのォ、わるいやつゥ?」
「がるるぐるるる!」(←訳:懲りてないよね!)

 その《悪》の伝説は、
 創られたモノ、なのでしょうか?
 噂や伝聞がひとり歩きした挙句の、
 一種の虚像なのかしら?

「しらべてェみないとォ!」
「ぐるがるる!」(←訳:昔の記録を!)

 編訳者・石鍋さんがこの御本で取り上げたのは、
 まさにその、昔の記録です。

 カラヴァッジョさんこと、
 ミケランジェロ・メリージさん(1571~1610)と、
 ほぼ同時代人の、
 ジュリオ・マンチーニさん(1559~1630)、
 ジョヴァンニ・パリオーネさん(1566~1643)、
 ジョヴァンニ・ピエトロ・ベッローリさん(1613~1696)、
 カレル・ファン・マンデルさん(1548~1606)、
 ヨアキム・フォン・ザンドラルトさん(1606~1688)、
 フランチェスコ・スジンノ(1670頃~1730頃)
 といった当時の画家さん・美術家の目には
 どう捉えられ、評されていたのか。

 世間は、どんなふうにカラヴァッジョさんを見ていたのか。

「そのころからァ、もうゥ!」
「がるぐる?」(←訳:悪評高し?)

 そうなのよねえ……
 1620年に書かれた『カラヴァッジョ伝』では、既に
 《はなはだ常軌を逸した人物》であり、
 1642年頃の『カラヴァッジョ伝』でも
 《皮肉屋で尊大》な《自分の首を折》る男。
 
 さらには、
 《乱闘や口論を起こしやすい性格》、
 《野蛮で乱暴》と言われ、
 それでいて、
 《芸術のために大きな貢献をした》
 《彼の描く肖像画は他の画家の歴史画より高く取引された》
 という、賞賛の声もあり、と……

「やぱりィ、むちゃくちゃッ!」
「ぐっるがる~…」(←訳:困った人だ~…)

 しかし。
 編訳者・石鍋さんは、
 御本後半の『カラヴァッジョの真実』で、
 新しい観方を提案しています。

 彼は、変わり者で
 激しやすかったかもしれない、
 敵に対しては。

 けれど、後援してくれるものに対しては従順で、
 親しい仲間に対しては審議を守る、
 つまり、
 古い伝統的な価値観に生きた人だった――

「こふうゥ??」
「がるるぅ~…」(←訳:そうかぁ~…)

 御本の冒頭には、
 モノクロではありますが、
 カラヴァッジョさんの作品が多数掲載されています。

 それらを眺めて思うのは、
 ああ、この人は平和を描かなかったのだなぁ、と
 しんみりさせられます。
 穏やか、という言葉が似合う画は、一枚もない……。

「もしィ、えがいてェいたらァ?」
「ぐるるがっるぐる?」(←訳:どんなだったかな?)

 はるか昔の《声》が響く労作、
 アート好きさんにおすすめです。
 中世史マニアさんも、ぜひ!
 


 
コメント
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