テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

根っ子が、支える。

2016-07-01 22:06:00 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ねんにィいちどのォ、つーるゥ!なのでス!」
「がるる!ぐるるー!」(←訳:虎です!開幕だー!)

 こんにちは、ネーさです。
 祝!2016ツール・ド・フランス開幕!
 今年はフランス国内のモンサンミシェルが出発地となり、
 7月24日に最終地・パリに凱旋する予定ですよ♪
 既にチームプレゼンテーションも行われ、
 明日7月2日のスタートを待つばかり。
 今回はどんなレースが、ドラマが展開するのか楽しみにしながら、
 本日の読書タイムも、さあ、どうぞ~!
 
  



        ―― 豊田章男が愛したテストドライバー ――



 著者は稲泉連(いないずみ・れん)さん、2016年3月に発行されました。
 或る《現場のひと》の生涯を追う、
 ノンフィクション作品です。

「ふむむゥ! ひょうしのォ、おしゃしんのッ?」
「ぐるるがる?」(←訳:右側のひと?)

 ええ、御本の表紙になっているお写真の、
 向かって右側が、
 成瀬弘(なるせ・ひろし)さん。

 そして、向かって左側には、
 豊田章男(とよだ・あきお)さん。

 では、このお写真は、
 いわずと知れた世界最大の自動車メーカーの社長さんと
 トヨタの社員さんを写したものなのかというと、
 雰囲気からもお分かりのように、
 もちろん違うのです。

 成瀬さんは先生でした。
 そして豊田章男さんは生徒でした。

 師匠と弟子――
 ふたりを結び付けたものは、クルマです。

「だいきぎょうのォしゃちょうさんがァ??」
「がるるぐる??」(←訳:お弟子さん??)

 およそ15年前、
 豊田章男さんは成瀬さんに出逢い、
 こんな言葉を叩きつけられました。

  《運転のことも分からない人に、
   クルマのことをああだこうだと言われたくない》

「わわッ! しゃちょうさんにィ、そんなことをォ?」
「ぐるるるぅ!」(←訳:怒られるぅ!)

 怒りませんでした、豊田さんは。
 いえ、むしろ

   《不思議と嫌な気はしなかったんだ》

 のだそうです。
 そうして、豊田章男さんは成瀬さんのお弟子さんになりました。

   《月に一度でもいい、もしその気があるなら
    俺が運転を教えるよ》

 という言葉に誘われて。

「ふわわァ~! だいけつだんッ、なのでスゥ!」
「がるるぐる!」(←訳:大冒険かも!)

 大自動車メーカーの“えらいひと”が、
 自社のテストドライバーさんから、
 ドライビングのイロハを習う――

 趣味だったゴルフをやめ、
 テストコースでハンドルを握る。

 それはやはり、リスクであったことでしょう。
 豊田さんにとって、
 また成瀬さんにとっても。

 けれどまた、幸福な時間でもあったことでしょう。
 こころをひとつに、
 師弟は、目標に向かってひた走る――

 クルマとは何か、
 良いクルマとは、
 良い走りとは、
 良いクルマを作り上げる一助となる現場とは、
 どう在るべきか。

 大組織の只中にいれば、
 軋轢はある、
 戦いもある、
 失敗も、迷いも、全部コミで、
 それでも良いクルマを、良い物を、
 世界に送り出したくて、
 必死に足掻く現場。

「しりませんでしたでスゥ~…」
「ぐるるがるぐるるるる……!」(←訳:すごいことしてるんだ……!)

 成瀬さんがこの世を去ってのちも、
 クルマは走り続けます。

 つい先日、
 ル・マン24時間耐久レースで
 首位を走っていたトヨタTS050は
 初優勝まであとわずか、というところで
 車両トラブルを起こして停止、
 そのまま失格になってしまいました。

「あとさんぷんッ!」
「がっるぐるがっるるる!」(←訳:たった3分だったのに!)

 いつか、その3分を埋めるために。
 超えるために。

 いまや日本の基幹産業である自動車産業、
 その基幹の、
 さらに基幹を支える人びとのドキュメントを、
 皆さま、ぜひ。
 
 
コメント
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