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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 探すほどに、見つからぬもの ~

2016-06-14 21:57:15 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッス!
 かかかッ、かッちゃいましたでスゥ!」
「がるる!ぐるがるぅ!」(←訳:虎です!快勝だよぅ!)

 こんにちは、ネーさです。
 開催中のEURO2016、
 イタリアはみごとベルギー(FIFA世界ランク2位)に勝利しました。
 やったわ~♪と浮かれてしまった一日の締め括りは、
 はい、読書タイムですよ。
 本日は、こちらの絵本作品を、どうぞ~!
 
  


          ―― まよいが ――


 原作は柳田国男(やなぎだ・くにお)さん、
 文は京極夏彦(きょうごく・なつひこ)さん、絵は近藤薫美子(こんどう・くみこ)さん、
 2016年4月に発行されました。
 『えほん遠野物語』と副題が付されていることからもお分かりのように、
 民俗学者・柳田国男さんの代表作として名高い
 『遠野物語』に収録されているエピソードを
 絵本化したものです。

「ふァいッ!テディちゃ、しッてるでス!
 かッぱさんのォ、おはなしィ、でスよッ!」
「ぐるるるるる!」(←訳:オシラサマも!)

 河童さんに関する伝説・伝承は全国に多く、
 また、蚕の神さま、馬の神さまとも謂われるオシラサマも、
 主に東北地方で信仰されている神さま(福の神さま)ですね。

 が、この御本では。

 主役は、或るお家です。

 題名は『まよいが』と平仮名になっていますけれど、
 『迷い家』もしくは『迷家』『マヨヒガ』とも表記される、
 山の奥の、ふしぎなお家のものがたり。

「なんだかァ、だんだんッ」
「がるる~…」(←訳:背筋が~…)

    遠野あたりの山では、
    不思議なことがよく起きる。

 こんな出だしから、
 京極夏彦さんが私たち読み手を連れてゆくのは、
 小国村(おくにむら)の、小川のほとり。

 三浦(みうら)という、
 貧しい家の女房が、
 家の外の洗い場を流れる小川に沿って、
 ふきを採りに出かけたら――

「うわッ、やまおくゥでス!」
「ぐるるがる~?」(←訳:フキはどこ~?)

 探せども探せども、
 良いふきがない。

 小川の上流の方へ、
 つい歩みを進めてゆく彼女が。

 ふと見ると。

「あわわわッ??」
「がるるっ?」(←訳:これはっ?)

 立派な、黒い門。

 庭に花が咲き乱れ、
 そのむこうには、
 たいそうな御屋敷も見える――

「こッ、ここはァ、ほんとにィ??」
「ぐるる??」(←訳:山の中??)

 ふらふら、ふらり、と
 門をくぐった女房が、
 そこで出逢ったものは。

 あるいは、出逢わなかったもの、とは。

「やッ、やまではァ、やぱりィ~…!」
「がるるるるるるぐるるるる!」(←訳:不思議なことが起こるんだ!)

 『遠野物語』の中では、
 あまり毒気がない――
 いえ、
 毒気がないように見えて、
 実は最も狂おしい切望を秘めているエピソードを、
 京極さんが新たに仕立て直し、
 近藤薫美子さんが可愛らしくも大胆な画で、
 絵本に組み上げました。

 本家『遠野物語』をよく御存知の活字マニアさんも、
 この絵本のページを、
 一枚また一枚と捲ってゆけば
 また別の感慨を抱かれることでしょう。

 山の奥から、持ち帰ったもの、
 やって来たもの。

 音もたてずに、忍びよるもの……。

「ひッそりとォ~…」
「ぐっるるる~…」(←訳:やってくる~…)

 こんなお話は、日本ならでは?
 
 いえいえ、
 おそらくは世界に通用する、世界中で共通し得る、
 不思議な物語を、
 皆さまも、ぜひ。

「ほんやさんのォ、えほんこーなーでッ!」
「がるるぐるる~る♪」(←訳:お探しくださ~い♪)