姐さん方は、その包みの中のものに、早くもその目を輝かせています。小雪は、喜智さまからのそのお文を、愛しい人をみ胸にそっと抱え込むように優しく手に持ってしばらくその場にたたずんだままで居ました。
『年年歳歳人同じからずと昔人は春花に思いをいたし候とか申し候。一瞥このかたいとど御機嫌うるわしゅう渡らせ給ふらんと御嬉しく存知候、此ほど・・・・』と、倉敷の林さまとご一緒したあの折の御礼をと、心に気を揉んでいたのですが、その折が無く失礼しました、と、ご丁重な無礼をわびる御文でした。取り寄せた京のこの呉服を身にして、また、あなたのその笑顔を見せて欲しいとか何か小雪の身をさも案じるているようなお優しいお心がその見事な女手を通して伝わってきます。
「いい?」と、姐さん方は畳紙の中身を一刻も早く見たくてうずうずとしたように、小雪のほうを見ます。ゆっくりと一人でと、思ったのですが、平生何くれ無くとなく気遣い、よく世話をかけている姐さんたちからです、そう無碍に断ることもできません。早速、畳紙を小雪は開きました。友禅です。部屋の片隅に置かれてあった衣桁をとりだして、ゆっくりと挿し込み、敷居框に吊るすのでした。
ぱっと、急に、その部屋全体に何か華やかさが漂うったように感じられます。鶴が羽を一杯に拡げながら、群れなして、左下の裾からから右上の肩にかけて金銀の小模様の中を飛翔する図柄が現れて来ました。小雪の好きな鶴です。くっきりと大空めがけて、あの夕陽の日差しのお山に向って舞い飛んだ小雪の天女のように染め上げられています。
「うあーきれい」とか、「すてき」とか、姐さん方の、思いもよらない、突然に降って湧いてきたような目の前にある現実に、小雪自身よりも早く、ただただ驚いているようでした。
「どうしてこんな着物、小雪は貰うの。早やう、着て見せて。」「小雪さんによく似合うは、はよ、はよう」
いつの間に、かお粂母さんも入ってきています。しばらく小雪も黙って、その3人のてんでな想像話に耳を傾けていました。
『年年歳歳人同じからずと昔人は春花に思いをいたし候とか申し候。一瞥このかたいとど御機嫌うるわしゅう渡らせ給ふらんと御嬉しく存知候、此ほど・・・・』と、倉敷の林さまとご一緒したあの折の御礼をと、心に気を揉んでいたのですが、その折が無く失礼しました、と、ご丁重な無礼をわびる御文でした。取り寄せた京のこの呉服を身にして、また、あなたのその笑顔を見せて欲しいとか何か小雪の身をさも案じるているようなお優しいお心がその見事な女手を通して伝わってきます。
「いい?」と、姐さん方は畳紙の中身を一刻も早く見たくてうずうずとしたように、小雪のほうを見ます。ゆっくりと一人でと、思ったのですが、平生何くれ無くとなく気遣い、よく世話をかけている姐さんたちからです、そう無碍に断ることもできません。早速、畳紙を小雪は開きました。友禅です。部屋の片隅に置かれてあった衣桁をとりだして、ゆっくりと挿し込み、敷居框に吊るすのでした。
ぱっと、急に、その部屋全体に何か華やかさが漂うったように感じられます。鶴が羽を一杯に拡げながら、群れなして、左下の裾からから右上の肩にかけて金銀の小模様の中を飛翔する図柄が現れて来ました。小雪の好きな鶴です。くっきりと大空めがけて、あの夕陽の日差しのお山に向って舞い飛んだ小雪の天女のように染め上げられています。
「うあーきれい」とか、「すてき」とか、姐さん方の、思いもよらない、突然に降って湧いてきたような目の前にある現実に、小雪自身よりも早く、ただただ驚いているようでした。
「どうしてこんな着物、小雪は貰うの。早やう、着て見せて。」「小雪さんによく似合うは、はよ、はよう」
いつの間に、かお粂母さんも入ってきています。しばらく小雪も黙って、その3人のてんでな想像話に耳を傾けていました。