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スウェーデンの「脱原発政策の歩み」21(最終回) 「国会決議」、「国会の承認」

2007-11-19 05:20:27 | 原発/エネルギー/資源
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皆さんへのお願い:10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思う)がカバーする範囲は、1960年代から1990年頃までです。その頃を振り返りながら読んでください。その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。 
 

スウェーデンの民主主義政治にとって最も重要なのは国会です。この国の政策決定プロセス(レミス手続) の中で重要なことは、日本の政策決定システムと違って、各省がその所管事項に関する政策を独自に決定できない仕組みになっていることです。

国の基本的な政策はすべて政府(日本で言えば「内閣」)が立案し(ただし、実際の事務作業はその担当省が中心となります)、政策案を国会に上程して、その承認を受けなければなりません。政府は承認された政策を遂行する責任を国会に対して持つことになります。ですから、「国会(の)決議」「国会(の)承認」はこの国の政策決定の上で最も重要な意味を持つものです。

日本にも、スウェーデンにも「国会決議」と呼ばれるものがあります。同じ「国会決議」という言葉を使いながら、その言葉の意味するところが同じではないことは「福祉」や「国民投票」のところで述べました。

「国会決議」という言葉にも、日本とスウェーデンでは、その重要性の程度に相違があります。日本の「国会決議」には法的拘束力がありませんが、スウェーデンの国会決議は政府を法的に拘束する力を持っています。

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このような国会決議に基づいて、スウェーデン政府は「環境政策」や「エネルギー政策」を進めているわけですから、もし将来、さまざまな理由により予定どうりの行動計画の実施が難しいと判断された場合には、政府は国会に対して必要な手続きを経て、計画変更の承認を取りつけることになります。 

この具体的な例の一つが1990年秋から1991年春にかけての「早期原子炉廃棄の延期」に関する与野党間の交渉(社民党大会での結論とそれに基づく三党合意)であり、その合意に基づくエネルギー政策案の国会上程です。このように見てくると、同じ「国会決議」という言葉を用いながらも、その意味するところは両国で大きく相違することがご理解いただけるでしょう。

同時に、国の意思決定における国会の役割と政府の役割、言い換えれば、国会と政府の力関係の上でも両国間に相違のあることがおわかりいただけるでしょう。



10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(1960年代から1990年頃まで)は今日が最終回です。いかがでしたか。
その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。







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