環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

住環境① 住環境の充実こそが福祉の基本

2007-06-15 06:02:20 | 巨大構造物/都市/住環境


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昨日は携帯電話の話から、一気に20年前の剣持さんの電磁波への警告へ話が飛びましたが、今日もタイムスリップして20年近く前の「住環境」に関連した話を2つ紹介しましょう。ここでも、「予防志向の国」と「治療志向の国」の発想の違いを垣間見ることができます。


★スウェーデン王立工科大学のティーベィ教授の話

朝日新聞社の週刊誌『アエラ』(1989年1月17日号)は「スウェーデンは世界一の住環境を築くのに約60年の歳月をかけた。戦後の住宅政策に関与してきた重要人物の一人、王立工科大学のティーベィ教授はこんなふうに話す」という書き出しで、「住環境の充実こそ福祉の基本。住宅造りは利潤追求のタネにさせない政策が大切」という同教授の考えを次のように紹介しています。
    
●1920年代までのスウェーデンは気候の厳しさを考えたらヨーロッパでも最 も貧しい国。人々は貧弱な住宅で飢え、寒さ、病気などの脅威に悩みました。当時、貧農が中心の社民党が政治の主導権をとったのですが、党第一世代といわれる人々は「国民住宅」運動を起こしました。全国民が十分な住宅を持って心身健やかに生きなければ国の存立はあり得ないという考えです。

●国民は強く支持しましたが45年までは目覚ましい進展はなし。でも、戦火が国土に及ばなかったのは幸いでした。50~60年の経済大成長時代の時に政策は一気に花開きました。住宅こそ健康維持に最も欠かせないものという考えの正しさは国の調査でも証明されました。結論からいえば、収入、健康、教育の条件の悪い人ほど、良質の住環境を与えないとさらにだめになるのです。

●ある条件が整えばハンディはハンディでなくなる。子供は高いところに手が届かないが、踏み台が一つあれば、ことは解決します。ハンディは環境との関係の問題です。この思想がスウェーデンの哲学として定着してきたのです。 


★スウェーデン在住の建築家、田中 久さんの話

スウェーデン在住の建築家、田中 久さんは20年ぐらい前に読売新聞(日付不明)の「論点」へ「スウェーデンの住宅政策に学べ」と題した記事を投稿しています。この記事を要約すると次のようになります。
     
●スウェーデンの住宅政策は社会福祉政策の中の重要な部分であり、建築基準法はすべての国民に文化的生活の最低線を保障するため、住宅の質を規制する目的で作られている。

●わが国の基準法が主として家屋の構造、安全性や衛生など技術面に重点を置いているのに対し、スウェーデンでは、住宅の平面計画から、暖房、換気などの設備や台所の機能に至るまで総合的な居住性に関する基準を示している。したがって、これらの基準を満足させない計画の場合には建築許可が下りないことになる。

●例えば、設計計画の図面に流しとガス台が書き入れられていても、それだけでは台所とはみなされない(実験室かも知れない)。冷凍、冷蔵庫や食品の収納庫(戸棚)はもちろん、調理用の機器と住宅の広さに相当するダイニングテーブルとイスが置ける場所がなければ、台所の定義には当てはまらない。
      
●スウェーデンで、住宅地開発の主導権を握っているのは地主や開発業者ではなく、地方自治体である。自治体の都市計画家や建築家が民間の計画家と協力して、住宅地の基本計画からマンションや一戸建て住宅の設計図も製作する。開発に当たって地主の権限は、日本流に解釈すれば、全然考慮されないのと同じである。 
 

最後の「スウェーデンでの住宅地開発の主導権」については、私のブログでも前に少々触れたことがあります。次の2つをご覧ください。

5月28日のブログ:土地の公共利用権
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/278b63892928e5a90693eca9c51108ac

5月29日のブログ:伊藤 滋(都市政策の専門家)さんと幸田シャーミン(ジャーナリスト)の対話
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/e1400467db0ea318264b3cdc84761cb2



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