環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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世界の科学研究の動向調査:存在感が薄い日本の「環境分野」

2007-06-29 17:07:28 | Weblog
 

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3日前の6月26日の朝日新聞が科学の欄で、日本、「環境」「宇宙」が手薄という、私には大変納得のいく調査結果を報じています。

●日本は物理学やナノテクノロジー・材料科学の研究で世界をリードしているが、環境・生態学・宇宙科学では存在感が薄いことが、文部科学省科学技術政策研究所が世界の科学研究の動向を調査した「サイエンスマップ」でわかった。

●この調査は米トムソンサイエンティフィック社のデータベースを基に、99~04年の6年間に発行された論文のうち、他の論文での引用数の多さが上位1%という、注目度が高い約4万7千の論文を分析した。

●環境・生態学や宇宙科学の分野では主要論文に占める日本の論文の割合が高い研究領域がなく、社会科学や精神医学・心理学では存在感がほとんどなかった。


私はこの記事を読んで、10数年前のことを思い出しました。

★IPCCへの貢献

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、WMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)が各国政府に呼びかけて、気候変動問題に関する科学的な情報を各国政府に提供することを目的に、1988年に設立されたものです。1995年当時1000人以上の科学者とWMOおよびUNEP加盟の約180か国がIPCCの活動に参加していました。

IPCCには次のような作業部会があります。
第1作業部会……科学的評価を行う。
第2作業部会……影響予測評価と対応戦略を行う。
第3作業部会……社会経済、防止策および適応策の費用便益、および将来の排出シナリオを検討する。

第1作業部会は温暖化問題を科学的に評価する最も重要な作業部会ですが、地球温暖化の分野の専門家であられる国立環境研究所の西岡秀三さん は公害対策同友会の月刊誌『資源環境対策』の1992年7月号で「温暖化問題に関して、科学面での日本の国際的貢献はとても十分とは言えない状況にある。その一例として、IPCC第1作業部会報告において引用された論文1200のうち日本からのものは8編に過ぎない ことが示している。このような状況は基礎科学の面で諸外国に遅れていることを示すのみならず、世界との交流の面でも遅れをとっている状況を見せているわけである」と書いておられます。

★日本学術会議の報告書     

また、同じようなことが日本学術会議の報告書でも述べられています。同会議の地球化学宇宙化学研究連絡委員会は「日本における地球化学の研究教育体制の確立について:平成6年6月27日」と題する同委員会報告を公表しました。この報告は、第15期日本学術会議地球化学宇宙化学研究連絡委員会の審議結果をとりまとめたもので、「1 はじめに」の中に次のような記述があります。
      
……地球化学(著者注 “地球科学”ではない)は、生物系の科学と物理系の科学をつなぐ要の位置にあって中心的役割を果たしている。このように地球化学は、学問として重要なものであり、国外では多数の研究者によって押し進められ、その責務を果たしている。ところが、後述するように、日本の現状はこれと全く異なったものである。特に、大学において、地球化学の講座がほとんどなく、地球化学者育成の点で危機的状況に陥っている。この結果が、最近は、研究面にも波及している。例えば、
      
1990年のIPCC(政府間気候問題パネル)の自然環境に関する第1作業部会の報告書中に日本の地球化学の貢献はほとんどみられない。この状況を解消し、地質科学や地球物理学とバランスのとれた地球化学をつくることは、日本における地球科学全体の発展のために必須の条件である。そこで、このような状態になってしまった原因を解析し、それを解消するための方策を提言する。

★学術審議会部会の報告書
 
1995年4月19日付けの日本経済新聞によりますと、文相の諮問機関、学術審議会の地球環境科学部会(部会長・中根千枝東大名誉教授)は18日までに「地球環境科学」研究の推進を求める建議をまとめ、与謝野文相に報告を出したそうです。建議によると、地球環境問題は「限りある自然と人類文明の発展が相いれないという基本的な問題」と指摘。建議ではこのような観点から、地球環境科学を「人類の生存基盤である地球環境の理解を深め、人間活動の影響で損なわれた地球環境の維持・回復に関する諸問題の解決のための総合的・学際的科学」と定義付けた。

とのことですが、何をいまさらという感が拭い切れません。あまりにも、遅すぎると言わざるをえません。それでも、当時 私はこの建議に期待をしたのですが、12年後の6月22日の調査結果を見ますと、やっぱりね!、という思いがしてなりません。

しかも、環境分野で日本の存在感が薄いのは科学研究の分野だけではありません。政治の分野も行政の分野もです。つまり、日本政府自体の関心が薄かったのです。

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