環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「地デジへの移行」 のもう一つの難問 「アナログTVの廃棄物化への対応」 に問題はないか!

2010-03-20 20:57:35 | 廃棄物

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2011年7月24日の地上デジタル放送の完全移行までに3月11日で、ちょうど残り500日となったそうです。そこで、今日は私が2000年頃からずっと懸念してきた「地上デジタル放送の完全移行」に必然的に伴う「使用済みの膨大な量のアナログTV受信機への対応」を取り上げてみます。

まず、今朝の朝日新聞に掲載された次の記事をご覧下さい。


10日前の3月11日の朝日新聞には「地デジ移行 まだ難問 あと500日 難視聴地区・ビル陰」という解説記事があり、「地デジ完全移行で必要な対策」と題するわかり易い図が添えられています。

これら2つの記事はいずれも、デジタル放送の導入に対するインフラ整備の話ですが、もう一つの難問である「使用済みの膨大な量のアナログTV受信機への対応」にはまったく触れていません。この大問題への解決は、インフラ整備と並行して着々と進んでいるのでしょうか。

突然ですが、ここで10年前にタイムスリップします。2000年12月1日(金)に、私はNHKラジオ第1放送のスタジオに待機していました。18:20から始まる生放送「ラジオ夕刊」のトーク番組「IT革命と環境負荷」に出演するためです。司会と進行は「ラジオ夕刊」の編集長の吉村秀実さんとパートナーの長谷川尚子さんです。

この日は偶然にも、NHKの「BSデジタル放送開局記念日」で、その意味ではグッドタイミングでした。




12月、クリスマスの月ですから、軽快な「ルドルフ・赤鼻のとなかい」(演奏:ピュア・ハート、フォアストリングス)のリズムに乗って、トーク番組がはじまりました。要旨は次のようです。

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                         ラジオ夕刊 「IT革命と環境負荷」

吉村編集長(司会・進行)
21世紀に向けての日本の経済再生は、「IT革命」こそが起爆剤になると言われ、来年度の予算要求を見ても、まさに「IT関連」ラッシュという感じです。しかし、その一方で「ITならば何でもありか」といった批判も出始めています。

そこで今晩は、元在日本スウェーデン大使館科学担当官(環境・エネルギー問題担当)で、現在、環境問題スペシャリストとして、静岡県立大学などで教鞭をとっておられる小沢徳太郎さんにスタジオにお越しいただき、「IT革命が環境に与える影響」などについてお話を伺います。

小沢さん、ITと言いますと、インフォメーション・テクノロジーの略語で、日本語で言えば、「情報技術」という何の変哲もない言葉になるわけで、初めから「情報技術革命」と言っていたら、こんなブームになっただろうかと思うんですが。

小沢
確かに、ITへの傾倒ぶりは呆れるばかり。
21世紀に向けての日本は今、「現行経済の持続的拡大」を暗黙の前提として、
     ★廃棄物対策としての「循環型社会」
     ★「景気刺激策」や「経済発展の起爆剤」としてのIT(情報技術)革命
などを構想し、ISO14000シリーズに代表されるような“輸入概念による環境対策”を実施しようとしています。
このような状況下で、「メガ・コンペティション」なる言葉と共に、「グローバリゼーション」と「IT革命」が経済学者やエコノミストによってもてはやされています。

吉村編集長
IT革命によって、世の中はどう変わるんでしょうか。

小沢
ITの最大の特徴は、物理的な「距離」とか「時間」を感覚上ほとんどゼロに変えてしまうことにあります。ですから経済学者やエコノミストは、「IT革命を“取引コスト”を限りなくゼロに近づける革命」と理解しています。

しかし、ITというツール(道具、手段)には、相反する2つの特性が混在していて、導入の仕方によっては、異なる効果が誘発されることになります。

★効率化や省資源・省エネ化を促進する可能性を秘めた技術
★モノや人の移動、サービスの増加を助長し、それに伴う資源やエネルギーの消費、環境への人為的な負荷の増大を誘発する可能性が高い技術

長谷川(司会・進行)
経済学者の人たちのIT革命に関する本を読んだり、話を聞いても、経済再生や景気刺激のことばかりで、環境への悪影響など全く触れていませんが。

小沢
IT革命が「景気刺激」や「経済発展」の起爆剤になるのなら、それに伴う資源やエネルギーの消費、環境への悪影響は当然考えなければなりません。

契約や取引、配信、決済などは全てネット上で完結できるから効率化や省エネ化は図ることができますが、「モノの輸送」はネット化することができません。ですから、景気刺激策によって、輸送エネルギーがこれまで以上に増大する可能性があります。

長谷川
日本の経済学者やエコノミストたちは、IT革命によって、今の慢性的な交通渋滞なども解消できると期待しているようですが。

小沢
ETC(電子自動料金収受システム)、VICS(道路交通情報通信システム)、AHS(走行支援道路システム)など、ITS(高度道路交通システム)のような技術体系が物流を効率化したり、交通渋滞を解決する手段など、部分的な「効率化」や「省エネ」は図れるでしょうが、その上限を設定しない限り、モノやサービスのさらなる増加によってその効果が相殺されてしまうことに気付かなければなりません。
  
私達が認識しておかなければならないことは、IT革命がもたらす「電力消費の増大」、「既存の家電製品や電子機器の廃棄物の増加」、また、間接的な「一般廃棄物のさらなる増加」で、「環境負荷の増大」という視点を欠いてはなりません。そして、電力のシステム・ダウンによる社会の様々なリスクや混乱です。

吉村
IT革命は、「景気刺激」とか「経済再生」など、光の部分にばかり焦点が当てられているけれど、物事には全て光だけではなく、影もあるということですね。

小沢
「経済発展」という目標のツール(道具)として導入される限り、「電力消費の増大」、「環境への人為的負荷の増大」を誘発する可能性が高くなります。環境問題を十分に意識した「総合的な経済対策」がとられない限り、環境にやさしい地球など望めません。

「電力をはじめとするエネルギーの総消費量の増減」と「廃棄物の総排出量の増減」をIT革命の新たな指標とすべきだと思います。
  
日本のように、国民の間に「経済の持続的拡大」という暗黙の前提がある社会では、21世紀の社会を論ずる場合には、特に注意が必要です。議論の出発点は、“ゼロ”からではなく、“人や環境が許容限度に近づきつつある現状”から考えるべきです。
  
現行の経済システムの下でデジタル化がいかに進もうとも、21世紀を生きる私たちの「身体の機能」や「自然の営み」は、アナログ的時間に支配されていることを忘れたてはならなりません。ここに、「テクノストレス」が生ずる可能性があるのです。

吉村
ありがとうございました。今晩は「IT革命がもたらす環境への負荷」をテーマに、環境問題スペシャリストの小沢徳太郎さんにお話を伺いました。
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このトーク番組の中で、私は「放送のデジタル化に伴うアナログテレビ受像機(当然のことながらほとんどすべてブラウン管テレビです)の廃棄物問題」に触れました。前述したように、この日は偶然にも、BSデジタル放送開始の記念すべき日でした。

当時は通産省(現在の経産省)の担当官も、環境省の担当官も2001年4月から施行される「家電リサイクル法」への対応に忙しく、「10年先のデジタル化に伴うアナログテレビの廃棄物化」に対する私の疑問に答えられませんでした。あれから10年、現在の経産省や環境省の担当官は「500日後に迫ったこの大問題」をどう考えているのでしょうか。

次の記事は、私が懸念しているこの大問題が未だ解決されていない可能性を示唆していると思います。


 
国が実施する「放送インフラの政策」の変更に必然的に伴う「大量のアナログテレビの廃棄物化」に対して、はたして「国民が安心できる対応策」を、国は用意してくれているのでしょうか?

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