杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

花のかみかざり

2012年02月21日 | 
いもとようこ 著 / 岩崎書店 刊

死の床で、あたなはなにを願いますか?看護師のうさぎさんには後悔することがありました。ずっと前に狼のおばあさんの最後の願いをかなえてあげられなかったのです。その願いとはいったい何だったのでしょうか? (内容紹介より)

絵本です。
大人が読んでもだったと言う人がいて興味を惹かれたので借りました。
車椅子のネズミのおばあさんに「いつも優しくしてくれてありがとう」と言われて思わず泣いてしまったうさぎの看護師。その理由は以前勤めていた病院で偏屈で恐いと思っていた狼のおばあさんが死ぬ間際に「抱きしめておくれ」とうさぎに頼んだのに、その恐いまでの雰囲気に気圧されて逃げ出してしまったことへの後悔と罪悪感でした。

赤ちゃんを抱いてあやすうさぎの看護師を睨みつけるように見ていた狼のおばあさんは、本当は自分も優しく抱きしめて欲しかったのです。おばあさんが亡くなって初めて彼女の思いに気付いたうさぎさんは、取り返しのつかない後悔を抱えてしまったのでした。

ネズミのおばあさんは、では代わりに今私を抱きしめてと優しくうさぎさんを慰めます。
悲しみは慈しみの心で洗われて、うさぎさんは「明日」を見つめて新たに進んでいけそうです。

とまぁ、そんなお話なのですが、実はこのストーリーを読んで思い出したのがTVドラマ「白い影」で竹内結子演じる倫子が末期がんの石倉老人に抱いてくれと言われて逃げ出すシーンです。あの時の石倉老人の思いを絵本が解き明かしてくれたように思えました

とても可愛らしい絵柄で子供が喜びそうだけど、読んであげる大人の胸にも響くお話です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陽だまりの彼女

2012年02月21日 | 
越谷 オサム 著 / 新潮社文庫

幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで──その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさも、すべてつまった完全無欠の恋愛小説。

新聞の書評を読んで気になった作品。単なる恋愛小説なら気に留めなかったと思うけど、そこにミステリーの味付けをしたファンタジーとなれば別です

文庫本の表紙デザインは西島大介という人が描いてますが、昔のマンガに出てくるようなちょっとキュートで愛らしい女の子が描かれた黄色の表紙にまず目を引かれました。

物語の内容は、中学時代、共に周囲から浮いていたため、自然に二人で過ごす時間が多くなり淡い恋を感じていたのに転校で離れてしまったのが、大人になって再会して短期間に恋に落ち・・・という恋愛小説の王道パターンです。

違うのは、ヒロイン(渡来真緒)のキャラがかなり特異なことで、だけどちっとも嫌な感じじゃないの。中学の頃、小学生の算数程度の問題も解けない学年一のバカ呼ばわりされていて、協調性に乏しく、自分が思った通りに行動し、気まぐれ・・となると欠点だらけの嫌な子のように見えますが、主人公の奥田浩介君(と読者)の目に映る彼女は、とても愛らしく憎めない女性なのです。離れていた10年間で、真緒は必死に勉強し、有名女子大に入り、これから伸びていく会社でバリバリ仕事のできるイイ女に変身しているのですからなおさらです。

再会して交際を始めた二人は、真緒の両親に彼女の過去を理由に反対されて逆に気持が燃え上がり駆け落ち状態で籍を入れてしまいます。(真緒は推定13歳の時、突然裸で現れて今の両親の里子から養子になったけれど、それ以前の記憶がないという設定。けれど浩介は彼女の生い立ちに拘りません。)おいおい!そりゃ短絡過ぎじゃないの?と思いながら読み進めていくと、実にラブラブな新婚生活をこれでもかというほど見せつけられるのですだけど、それが嫌みにならないのは作者の文章力の成せる技なのかな?


その中に、終局での大どんでん返しの伏線となる隣家との交流と、真緒が口座から大金を下す場面が出てきます。お金が絡むと「お!ここからミステリーか」とちょっと期待してしまうのですが、最後まで読むとそうではないことがわかります。

隣家の幼児を助けたあたりから「ん~~これはもしかして・・」と結末が頭に浮かぶようになるのです。そして、それと察すれば、今までの真緒の行動は実に「らしい」ことに気付きます。ある種の動物好きにはもうたまらないかも陽だまりの和室でゴロゴロする真緒やくすぐりっこを喜んだり、背中をすりすりしてきたり・・・彼女の行動全てがぴたりと当てはまるのですもの。

謎が解けてみると、改めてもう一度読み直したくなる、そんな本です
結末をハッピーエンドと呼ぶかは読んだ者の感覚に任されますが、浩介の素直で誠実で、大らかで温かい人柄を思うと、ハッピーエンドで良いかもと思ってしまいました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする