Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

金子三勇士@CHANEL Pygmalion Days Grand Finale 2009

2009-12-17 00:04:08 | ピアニスト 金子三勇士
若手のアーティストを支援する場として開催されているピグマリオンデイズ。
銀座シャネルのネクサスホールで2005年から行われているこのプロジェクト。
2009年度のアーティスト6名が12/15、勢揃いし本年度最終回になる演奏を行った。

杉並 千花(ヴァイオリン)
ラヴェル  ツィガーヌ

平野 玲音(チェロ)
フックス  幻想小曲集 作品78

鳥山 明日香(ピアノ)
バッハ   平均律クラヴィーア曲集第一巻 前奏曲とフーガ第8番
ショパン  幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66

印田 千裕(ヴァイオリン)
幸田延   ヴァイオリンソナタ第2番
サラサーテ 序奏とタランテラ作品43

金子 三勇士(ピアノ)
リスト   スペイン狂詩曲

小川 里美(ソプラノ)
プーランク 愛の小径
ヴェルディ 椿姫「そはかの人か 花から花へ」

6:30開演。
CHANEL Japanの社長、コラス氏がまず壇上に紹介された。
フランス語の挨拶に通訳が入るのかと思いきや、流暢な日本語を話された。
YCA「ヤング・コンサート・アーティスツ」、才能ある若手アーティストを育てる非営利団体、
メンバーであり、指揮者、演奏者、プロデューサーでもある大山平一郎、
そしてピグマリオンデイズの音楽プロデューサー、坂田康太郎が紹介された。

話は少し横道にそれるが、日本に進出している海外有名ブランドの中で、
アパレルの傘下ではなく、直営店を構えるのは、シャネル、アルマーニ、エルメスだそうだ。
その中でもシャネルはフランス本国に絶対的な顧客を抱えているために、
ブランドとして強い底力を持つと聞いた。
ブランドの大きな受け皿にに支えられてファウンダー、ココ・シャネルのスピリットに基づく
若手のアーティストを支援するピグマリオンデイズが成り立つ。

杉並 千花は華やかにオープニングを飾った。
これから始る演奏会の口火を楽しげにカットした。

平野 玲音、ゆったりとしたチェロの音色に気持ちが穏やかになる。

鳥山 明日香、サロンコンサートに相応しい室内楽の調べ。

休憩の後、印田 千裕、幸田露伴の妹、幸田延のヴァイオリンソナタ。
明治時代の女性作曲家の曲。明治大正浪漫を感じさせる情感豊かな曲。

そして、われらが金子三勇士の登場。
この日のコンサート、シャネルの社長、そしてスタンウェイの社長も立ち会っていた。
三勇士は、このプロジェクトに選ばれたことへの感謝を言葉にした。
「ヨーロッパに育った自分にとって、ヨーロッパ最高のブランド、シャネルで演奏させていただき、
世界で最も素晴らしいピアノ、スタンウェイを弾くことができて、ほんとうに幸せだと思っています。」
文章にするとまっとうな話をしているのだが、聞いていて三勇士の誠実な人柄、
お世話になっているところの社長さんがみえているんだから、
日頃の感謝の気持ちを精一杯表現したい、と必死になっている気持ちが手に取るようにわかり、
会場の人々の微笑みを誘った。
なぜ笑いをとったのかわからず、本人が不思議そうにした様子に、また更に好感度が上がる。

曲はリスト「スペイン狂詩曲」
2008年の東京音大付属高校卒業演奏会で三勇士はこの曲を披露している。
激しく力強い曲を演奏した後は、しばらく手に振動が残り、
心もその曲の中から、容易には戻ってこられないことを、その時知った。
1年半振りに聴くスパニッシュラプソディー、大きな進歩が著しい。
始った途端、ハートを鷲掴みにされた気がした。
ピアノから、そして演奏者から出る気、譜面の記号が、大きなエネルギーが室内を一杯に満たした。
ここのところ、金子三勇士のショパン、またハンガリーの民族音楽的なピースに馴染んできて、
今回は久々にラテン調、しかしハンガリー人であるリストの生み出したスパンガリアン。
ラプソディー エスパニョールに、観客たちは酔った。
リストは『ピアノの魔術師』と言われたが、金子三勇士にも、この称号はぴったりだ。

小川 里美、日本でも人気の高いフランスの戯曲家アヌイの詩によるプーラングの曲。
フランス語の曲が意外性とともに、ブランドへの敬意を表している。
エンディングもドラマティックだった。

全体を通して聴いてみて、楽曲、楽器、演奏者のコンビネーション、
バラエティーに富んだ素晴らしい演奏会だった。
6人とも一年の間に大きな成長への糧となったこのホールでのコンサート。
来年は新しい6人のアーティストが既に決まっている。

コンサートの後、シャネルからアーティスト達一人づつに大きな箱が手渡された。
どこまでも太っ腹なシャネル。男性も女性も同じ箱。

このホールでの演奏会、この日を入れてトータルで9回、立ち会わさせていただいた。
金子三勇士の成長を見守るとともに、自分にとって、いろいろあったこの一年、
シャネルのコンサートの日が毎回、とても楽しみでもあった。

やはりシャネルとスタンウェイに感謝。
そして金子三勇士に!