副題に「太平洋戦争70年目の真実」真実となっているので歴史のどこを再評価したのかに関心を持った。単なる戦争映画ではないと思ったからだ。山本五十六についてはこれまでもどの歴史書を見ても、知米派で開戦には反対で、自分の意志に反して開戦しても早期講話を主張していた。
映画の前半は三国同盟締結を主張する陸軍に断固として反対した海軍大臣米内、次官山本ら海軍首脳に対して、マスコミが世論を煽り、国民の多くが強大なナチスの力に熱狂し、山本暗殺の企みも噂された。開戦へのマスコミの役割が大きかったことが70年目の真実なのであろうか、映画では2人の新聞記者を登場させ、山本に三国同盟を迫り、後には日米開戦が世論だと迫る。
山本は日本がドイツと結べば必ずやアメリカとの戦争になる。10倍の国力を持つアメリカとの戦は何としても避けなければならない。日本が戦場になることは避けなければならないと記者に説く。そして「記者は自分の目と耳そして心で世界をしっかり見ろ」と諭す。しかし、マスコミは聞かず、大本営発表を記事にする。
後半、連合艦隊司令長官に任命された山本五十六は、講和に持ち込むには米国太平洋艦隊を壊滅するしかないと考える。真珠湾奇襲も米空母を捕捉出来ずかつ先制攻撃が宣戦布告1時間前にだったことを知り、大失策だと葛藤する。一方、国内ではマスコミが山本を英雄として書き立て、国民は戦勝気分に沸く。
悩む山本は起死回生を狙いミッドウェイ作戦をたてるが、南雲艦隊参謀の独断で米軍を過小評価し米艦載機の攻撃で虎の子の四空母を失い制空権を奪われる。この辺はこれまで南雲艦隊が米空母を撃沈する使命をおびていたにも拘わらず艦載機には陸上攻撃用の爆弾を装備させていたことが敗因としてあげ、何故そうなったかについては触れてこなかった。国内ではマスコミがミッドウェイ大勝利として報道するが、初めて転進という言葉が登場し、山本から薫陶を受けた記者は言葉でごまかすことに疑問を感じる。
戦争が終わり、同じ新聞社の壁には「米国から民主主義を学ぼう」というスローガンが貼られている。この映画の真実はマスコミの戦時下の行動に焦点を当てたことだ。