オリンパスの不正を追及し、再建したいとしていた元社長マイケル・ウッドフォード氏が委任状争奪戦を断念して帰国した。オリンパスの株を6割保有する安定株主である銀行や保険会社の協力を得られなかったためだ。元社長は「不思議の国のアリス」と表現した。あまりにも日本的な島国根性丸出しの結果で日本企業への信頼感は後戻りし、同社株3割を保有する外国人株主の期待を裏切ることとなった。
東京証券市場の取引の6割は外国人が顧客で、日本株の低迷は更に続くことになるだろう。改めて会社は誰のものか、ステークホルダーへの責任はどうなるのか古くて新しい日本企業の課題だ。
第三者委員会の結論でも張本人の元経営陣だけでなく見過ごした現経営陣の高山社長をはじめ何人かの役員の責任を追及し損害賠償請求をするとしている。オリンパスを再建するには、今回の事件に関与しただけでなく、見過ごした取締役全てに責任があり、この事件を告発し、解任されたウッドフォード元社長を中心に新経営陣が当たると考えるのが常識だ。
株主総会で現経営陣の中から新体制を選出することを安定株主は支持しているようだが、金融機関自身が今回の事件で株価の下落により大きな損害を被ったことに対する責任追及はしないのであろうか?何故ウッドフォード氏を選ばなかったのか?各金融機関は自身の株主総会で説明をする必要がある。
事件の内容は捜査が進むにつれ明らかにされようが、新経営陣選出の問題はうやむやにされる恐れがある。これでは株主総会が機能しないがためにワンマン経営者がのさばった企業統治に関わる構造問題が残されたままだ。ステークホルダーの内、従業員特に労働組合はこういう危機のときこそ動くことを期待したい。かつて、ヤマハで労働組合が先頭に立ってワンマン経営者を追放したことを思い出した。