各国の緊縮財政で景気後退は判るが、更に悪化する要因が欧州の銀行にある。欧州銀行の巨額不良資産は2つのことから積み上がった。一つは米国のバブル後遺症で、米国のサブプライム・ローンを組み込んだ債券をいまだ抱えていることで、もう一つはスペインやハンガリー、スロベニア等のヨーロッパ・バブルの後遺症だ。例えばスペインの銀行は2008年2月には不良債権が総資産の1%未満だったのが2009年には7.5%へ急増した。
10年前の日本の銀行で起きた現象がそのままユーロ圏で起きており、銀行間相互不信と市場麻痺でインターバンクの貸し出しはゼロになっている。最も恐れるのは銀行による貸しはがしだ。今、欧州では年間2兆ユーロの貸しはがしが行われて、預貸率は120%から70%になっているもようだ。
対策として日本もかつて実行した銀行への資本注入だが、この状態だと景気後退が悪化することは避けられない。預金の流出、取り付け騒ぎなどが発生しないようにするのが精一杯だ。
欧州のエリート達はこの危機をかなり思い切った政策で乗りきることを考えるだろう。先ず欧州共同債の発行で「インフラ整備に使う」と国民に説明することだろう。そして、財政政策の統合へと向かうことを目指すだろう。リスクは民族主義の台頭で、その意味でもフランスの選挙が鍵を握る。