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80年代Cafe

80年代を中心に、70年代後半~90年代位の懐かしいもの置いてます。
あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

海外のゲーム&パソコン ガイドブック・オークラ出版

2016-07-04 14:50:16 | 書籍・漫画

 こちらは、2015年にオークラ出版より発売された海外のゲーム&パソコン ガイドブック。著者は、コナミ出身の前田尋之氏。


 前田尋之氏は、2014年に家庭用ゲーム機興亡史、ホビーパソコン興亡史、懐かしのホビーパソコン ガイドブックという、懐かしのパソコンやホビーゲーム機を題材とした研究本を出版されており、この本はそれらに続いて出されたレトロハードの資料もの。


 国内ではあまり語られることの少ない海外のホビーパソコン、ホビーゲーム機について、カラー写真とともに解説されているというかなり珍しい書籍です。おなじみの有名どころから、初めて見るような機種まで300機種以上が収められています。


 家庭用ホビーパソコンの金字塔とも言えるAppleⅡ。アップル社が1977年に発売した個人向けに大量生産されたパソコンとしては初めてのもの。アメリカでは1977年6月10日に1298ドル(当時の日本円で30万円ほど)の価格で発売されたが、日本だと本体のみで50万以上したため高嶺の花だった。個人的には、よく通っていたデパートの家電PC売り場に置いてあるはずもなく、ログイン等の雑誌で知っていたのみだった。


 コモドール社が1985年に発売したAmiga(アミーガ)。アメリカより欧州で爆発的なヒットとなった。特徴としては廉価なパソコンにもかかわらずCG・映像製作に特化したパソコンだった点。テレビ番組ウゴウゴルーガのCGもこれで作られていたことが話題となった。当然、ゲーム用途にも向いていて、日本だとシャープのX68000が同じような位置にあった。こちらも、個人的にはBeep誌などの特集で知るのみで、実機は見たこともなかった。


 こちらは、コモドール社が1980年に発売したVIC-20。日本では、1981年にVIC-1001(ビック-1001)として売られた。これは何かというと、これの低価格廉価版がマックスマシーン(MAX MACHINE)で、マックスマシーンは家庭用のホビーパソコンとして日本でのみ売られていた。34,800円という子供にもわりと現実的な価格で、トミーのぴゅう太と並んでもしかしたら家庭用パソコンが手に入るかもという淡い期待を抱かせた夢のマシーン。どちらも手に入ることはなかったですが。


 アタリ社が1977年に発売したアタリ2600。ファミコン登場以前に、家庭用ゲーム機として広く普及し、アタリショックの主役ともなった伝説のゲーム機。日本では数社が輸入販売を行ったが、9万円前後という高価格だった。79年にはエポック社がカセットTVゲームという名称で発売し4万円ほどで売られたが、やはり高価だったため普及しなかった。これも、当時よく行ったデパートの玩具売り場にはおいてあるはずもなく、見たこともないどころか存在すら知らなかった。


 アタリの次世代機アタリジャガーと携帯機リンクス。アタリジャガーは1993年(日本では94年)に発売されたプレイステーションやセガサターンなどと同世代機。アタリリンクスの方は、1989年に発売されたゲームボーイやゲームギアなどと同世代の携帯機だった。この頃だと日本製ゲーム機の方が、価格的にも性能的にも優れており、日本ではまったくといっていいほど普及しなかった。個人的には、リンクスは電気店で中古品が売られているのを見た程度で、アタリジャガーに至っては見たことがなかった。リンクスの中古品は、その当時(90年代初頭)で8,000円くらいで、買うかどうか迷ったが買わなかった思い出がある。


 海外で製造されたものだけではなく、日本製でも海外で売られていた著名なものや主要なものは収められています。


 日本で書かれた海外製コンピュータやゲーム機ハードの本というのは非常に少なくて、あってもほとんど専門書の部類に入る。こちらは2004年に毎日コミュニケーションズより発行されていたApple2 1976‐1986


 洋書だとたくさんあると思われますが、ピンきりで値段も高いためなかなか敷居が高い。こちらは、2006年に日本語に翻訳されて出版されたため、わりと入手しやすいCOLLECTABLE TECHNOLOGY


 コンピュータ、ゲーム機に限らず、電卓や携帯テレビなど電子のガジェットを紹介している写真集。


 こちらは、翻訳はされてませんが日本のアマゾンでも売っているため、わりと入手しやすいElectronic Plastic


 海外の電子ゲームマニアがまとめた電子ゲームに特化した本。


 日本製のハードであれば、2013年、14年に続けて主婦の友社より発行された携帯用ゲーム機コンプリートガイド、家庭用ゲーム機コンプリートガイドが手に入れやすい。こちらも1,000円ちょっとの書籍としては出色の出来。


 日本製電子ゲーム本としては、2000年にオークラ出版より発売された電子ゲーム70’s & 80’sコレクションが定番。海外製、日本製問わず収録されている。ちょっとですがテレビゲームも載っている。


 ということで、日本で出版された書籍としてはなかなか他に類を見ない貴重な一冊と言えるでしょう。80年代~90年代初頭頃までは、日本でもNECのPC-98や88、シャープのX1、MZ、富士通のFM-7とメーカーごとに製品を作っていてウィンドウズの時代のように統一されていなかった。それは欧州など海外でも同じで、イギリスやオランダなど各地のメーカーがそれぞれ思い思いの製品を作って売っていた。コンピュータに個性がみなぎっていた黎明期がちょっとだけうかがえる、そんな一冊です。レトロゲーム好き、ゲームハード好き、全てのホビーパソコンマニアの人にお勧め。



参考:海外のゲーム&パソコン ガイドブック/オークラ出版、Wiki AppleⅡ、Amiga、CVC-1001、マックスマシーン、ATARI2600、Atari Jaguar、Atari Lynxの項、COLLECTABLE TECHNOLOGY/トランスワールドジャパン、Electronic Plastic/Die Gestalten Verlag

ダンジョン飯/九井諒子・KADOKAWA/エンターブレイン

2016-06-27 17:22:44 | 書籍・漫画

 ダンジョン飯は、2014年からKADOKAWA エンターブレイン系列の雑誌に連載されている九井諒子氏作のファンタジー漫画。ビームコミックスレーベルより、既刊2巻が発売されている。


 ダンジョン飯という奇抜なタイトル通り、ファンタジーRPGに出てくるような架空の世界での冒険者たちの食に焦点を当てた作品。空腹、食料という概念は古くはウルティマから、ザナドゥ、ハイドライド3などコンピュータRPGの世界では基本となるパラメーターのひとつだった。ただウィザードリィやその他の多くのRPGでは省略されていたり、ドラゴンクエストでも取り入れられることはなかった。これは当時のコンピュータの表現力や容量の制限の問題もあって省略せざる得ない場合も多かっただろうし、食事をしないとスタミナが減ったり、ヒットポイントが減るなどプレイヤー側への足枷や制限となって、ゲームに組み込んでもあまり面白くならないという事情があったのかもしれない。とにかく、この作品ではその省略されてしまいがちな冒険者たちの食生活についてスポットを当てて細かく描いている。


 物語は、主人公の戦士(剣士)ライオスのパーティが、狂乱の魔術師の支配する迷宮の奥深くを探索するところより始まる。迷宮の奥深くでレッドドラゴンに襲われ、ライオスの妹である僧侶のファリンがパーティをかばって喰われてしまう。ファリンの死の直前の帰還魔法によりからくも迷宮を脱出できた一行は、ファリン救出のため再度迷宮に挑むことになる。しかし装備、食料を置き去りにしてきた上に、仲間の脱退もあり資金難に陥ってしまう。節約のため、迷宮内で食料を確保することにしたライオス一行であったが・・・。


 パーティのメンバーは、冒険者のリーダーであり物語の主人公でもある戦士(剣士)ライオス。前々からモンスターを食べてみたいという密かな欲求を抱いていたりとマニアックな嗜好を持つ。次に本作のヒロインでもあり、少し神経質で潔癖症ぎみなエルフの女魔術師マルシェル。常識人であり、パーティのつっこみ担当でもある。罠や鍵の解除を担当し、少し冷静な視点でパーティを眺めるハーフフットのチルチャック。中立的であり、個性的なメンバーのクッション的役割も果たす。モンスターを調理し、若き一行を導く役割を果たす戦士(ドワーフ?)のセンシ。この人は料理のレシピの解説も行い、クッキングパパみたいな役割を果たす。これ以外に、ドラゴンに喰われてしまって、現在はドラゴンの腹の中にいる僧侶のファリンがいる。ダンジョンズ&ドラゴンズやウィザードリィに倣って能力別の職業わけがなされているだけでなく、キャラクターの性格付けも明確に分かれており、これが本作の物語を引っ張っていく。


 物語の舞台となるのは、狂乱の魔術師の支配する迷宮であり、モンスターに倒されても即死ではなく、死からの回復の手段も残されており、迷宮の奥深くで遭難したパーティを探索隊を作って回収に行くことができるなど、ベースとなる世界観はウィザードリからの影響を色濃く受けている。宝箱には鍵や罠が仕掛けられており、その解除が必要だったり、帰還魔法ではアイテムを持ち運べなかったりと、随所にウィザードリィからの影響が見られる。


 モンスターを食するという部分では、やはりダンジョンマスターからの影響が強く感じられる。ダンジョンマスターは、アメリカのFTL Games社が1987年に発表した作品で、リアルタイムで動くモンスターやダンジョン内に経過する時間にスポットを当てた、リアルタイムRPGとして最初期のもの。時間の経過やアイテムの重量、食料や空腹などリアルさを売りとしたゲームだった。ともすれば足枷になりがちな空腹、食事という部分を、上手くゲームの中に落とし込んだ一例といえるかも知れない。


 プレイヤーはダンジョン内に閉じ込められており、この作品にはアイテムとしてのコインはあるが商店や通貨の概念はないため、食料はダンジョン内で調達することになる。先行する他の冒険者が落としたものなのか、ダンジョン内にはリンゴやとうもろこし、パン、チーズ、もも肉といった食料が落ちている。また人型のモンスターを倒すと、まれに食料を持っていることもある。


 ただし、落ちている食料だけでは足りないため、食べられるモンスターを倒して食料とする。これは、スクリーマーという植物か動物かわからないモンスター。倒すとブロッコリーみたいな肉片になる。


 ダンジョン飯だと、このような描写。


 こちらは、名前もそのままにワーム。ダンジョンマスター中盤の強敵。ちなみに毒も持っている。


 倒すとこのようなカラフルな肉片を落とす。これを焼かないで(調理しないで)、そのまま食べる。なんかプリプリしてて、噛むと肉汁も出てきそう。


 リアルに考えるとこうなるわけで、これらのゲテモノ喰いを、それらしく調理して料理に持っていくというところに、この漫画の面白さがある。


 扉絵では、そのまんま方眼紙に書かれた手製のマップという趣が演出されており、オールドRPGを楽しんできた読者には刺さる仕掛けがたくさんされている。それだけではなく、罠の解除の手順が詳細に描写されていたり、スライムがなまこやほやみたいな生き物だったり、宝箱に擬態するミミックがヤドカリみたいな生き物だったり、ゴーレムを畑として利用してみたりと、コンピュータRPGでは省略されていた部分への独自の解釈が楽しい。それ以外にも、迷宮内に店舗があり街があってたくさんの他の冒険者も描かれているため、最近のMMORPGからのネタも入っていると思われる。迷宮内にオークの集落があり、そこを訪れる描写などあるので、ウルティマアンダーワールドからの影響もあるのかもしれない。


 グルメ部分だけに焦点が当たっているというより、迷宮での排泄やトイレの管理はどうなっているか、行き倒れた冒険者はどうなるのか、植物や生き物の生態系はどうなっているかなど、ゲームでは省略されてしまっている部分を、深く考察して独自の解釈を与えリアリズムを追求している点が興味深い。8ビットのコンピュータやファミコンでは、容量や表現力の問題からダンジョン内での生活は大幅に省略、簡略化されており、プレイヤー自身がその空白を想像で埋めることによって、それぞれにリアルな冒険を楽しんでいた。この作品は、その空白の部分を埋めていくというところに作者の情熱が注がれているようにも見える。


 物語を引っ張っていく、それぞれのキャラクターの性格付けも良く出来ていて、それぞれが大変魅力的なキャラクターになっている。 ということで、ウィザードリィやダンジョンマスターなどのオールドダンジョンRPG好き、ファイティングファンタジーなどのゲームブック好きには、なかなかのお勧めの作品になっていると思います。

参考:ダンジョン飯/九井諒子・KADOKAWA/エンターブレイン、Wiki ダンジョン飯、ダンジョンマスターの項、Dungeon Master - Return To Chaos

日本懐かし10円ゲーム大全/岸昭仁・辰巳出版

2015-07-04 16:06:38 | 書籍・漫画

こちらは、辰巳出版よりタツミムックとして2015年6月に発売された日本懐かし10円ゲーム大全


 著者は、駄菓子屋ゲーム博物館の館長である岸昭仁氏。この方、テレビやマスコミなどにもよく登場しますので、おなじみだと思います。駄菓子屋やデパートの屋上、寂れた観光施設などに置いてあった、10円玉やコインを使用して遊ぶエレメカ系のゲーム機を集めた一冊。帯の推薦文は、よゐこの有野氏。この本、出る前から、結構あちらこちらで話題になっていました。


 日本懐かし自販機大全が好評だったことから、タツミムックより続編的な位置付けで発売されたみたいです。この他にも、日本カセットテープ大全だとか、日本懐かしアイス大全だとか、シリーズ化する予定のよう。今はネットで情報が簡単に取れますから、雑誌が売れないといわれる時代になっていますが、このようなディープなネタは、ネットだけでは集められません。また、ネット上の情報は、いつかは消えてしまいますので、保管しておきたいというニーズにも合致しているのかもしれません。辰巳出版さん、良い所を突いてきます。


 駄菓子屋ゲームの代名詞といわれる新幹線ゲームの紹介から。貴重な内部の構造まで紹介されています。これ、景品の払い戻しのための機構を動かすために、実は電気使うんですね。岸昭仁氏は、探偵ナイトスクープで子供が新幹線ゲームを自作したいというネタの回にも出演されて、内部構造を解説されていました。


 こちらは、同じく岸昭仁氏が監修を務め、バンダイより2010年に発売された駄菓子屋ゲーム貯金箱。新幹線ゲームを遊べる貯金箱に仕立てています。販売中は2,980円くらいの玩具でしたが、生産中止になってからは10,000円近い値段で取引されている。


 メダルゲームの代名詞、コナミのピカデリーサーカス。こちらはコナミ工業の製造で、レジャック株式会社より販売された。ピカデリーサーカスにも、貯金箱は存在した。コナミ自らの手によって作られているため(株式会社コナミデジタルエンタテインメント 2007年発売)、えらく出来がよい。同じくコナミのメダルゲームである国盗り合戦貯金箱も出る予定で、試作品までお披露目されていたのだが、ピカデリーサーカス貯金箱が思うように売れなかったのか発売中止になってしまった。こちらも、今では10,000円近い値を付けている。


 書籍には、これらの有名なものだけでなく、一般的には見たことも無いようなマイナーなものまで網羅されている。読んだ感想としては、この本も立ち位置的には日本懐かし自動販売機大全と同じような匂いのする一冊だと思います。昔にぎやかだったけど、今は忘れ去れて寂しい場所という共通点がある。


 駄菓子屋ゲーム博物館の館長の手によるものなので、10円ゲームのハード本体や、業務用ゲーム機のカタログなどは、かなり見ごたえがある。これらは歴史(記録)には残らず、じきに埋もれて消えていくものなので、資料として残したいというのが、この本を書かれた動機のようです。考現学的な意味合いからは、時代の風俗資料のひとつとして残す価値があると思うのですが、10円ゲームに特化してまとまった形で残るというのが、特に大きいよう思います。メーカー自体も小さなところが多いので、このような本がなければ、これらの記憶は失われてしまう。


 またゲーム機だけではなく、駄菓子屋、デパートの屋上、行楽地の遊戯施設など、この種のゲームがおかれていた場所も紹介されていて、施設オーナーへのインタビューや著者との対談記事もある。これらの場所も、ゲーム機と同じく、静かに消えていこうとしている。これらの場所は、記憶には残るけれど記録には残らない。それを記録し、保存するための資料という意味でも、たいへん貴重な一冊だと思います。辰巳出版さんには、日本懐かしデパートの屋上大全とか、日本懐かしエレメカ大全とかを期待したい。


 ということで、駄菓子屋好き、デパートの屋上好きだった昔の自分に送りたい一冊、日本懐かし10円ゲーム大全でした。


 これも10円ゲームの代表格、こまやが1981年に発売した山登りゲーム。

参考:日本懐かし10円ゲーム大全/岸昭仁・辰巳出版

OLD GAMERS HISTORY ロールプレイングゲーム創世記編・メディアパル

2015-05-25 05:12:49 | 書籍・漫画

 こちらは、2013年にメディアパル社より出版された、コンピュータゲームの歴史を俯瞰して紹介したOLD GAMERS HISTORY ロールプレイイングゲーム創世記編


 
 このシリーズは、簡単な解説とともにレトロゲームの歴史を俯瞰できるものとして出版されているムック本で、これまでにもオールドゲーマーズ白書 VOL1~5、オールドゲーマーズSAGA VOL1~4、アーケードゲーマーズ白書 VOL1~2、アクションゲームアーカイブス、そしてこのオールドゲーマーズ ヒストリーと発売されまくっています。このようなライトめのレトロゲームのムック本の場合だと、たいていファミコンを起点としているものが多く、ファミコン前史は抜け落ちている場合が多い。このオールドゲーマーズヒストリー ロールプレイイングゲーム創世記編では、この手の書籍としては珍しくPCのゲームまで網羅されていて、なかなか読み応えのあるものになっています。


 この本では、RPGの起点として、ウルティマの作者リチャード・ギャリオット氏が1979年の高校生の時に開発したAkalabethを持ってきている。Akalabethは、ウルティマ0とも呼ばれウルティマの原点になった作品。もっと突き詰めてRPGの源流ということになると、イギリスのJ・R・R・トールキンによって書かれた1937年のホビットの冒険、54年の指輪物語という小説が発表されたところにまで遡れる。このトールキン氏の世界観を元にして74年にTRPGの元祖であるダンジョンズ&ドラゴンズが登場。このダンジョンズ&ドラゴンズをコンピュータで再現しようとしたところからコンピュータRPGの歴史が始まった。現存する最古のRPGとしては、75年のpedit5だと言われる。76年には、世界最初期のRPGと言われるダンジョン、アドベンチャーゲームの元となったコロッサル・ケーブ・アドベンチャーなどが開発される。TRPGの成長や戦闘の部分をコンピュータ上で再現したものがRPGとなり、謎解きやダンジョンマスターとのやりとり部分を再現したものがアドベンチャーゲームとなって、これら2大ジャンルの源流は同じものだった。ただし、これらは大学など専門機関の大型コンピュータ上で動いており、一般に広く知られたものではなかった。Akalabethは、パーソナルコンピュータとして広く一般に普及したAppleⅡ上で動いており、そういった意味でこのAkalabethがRPGの原点のひとつとして位置づけられる。


 Akalabethは、海外版ウルティマコレクションに収録されているがもはや伝説と言ってよく、コンピュータRPGの原点として一般的なのは、ウルティマ、ローグ、ウイザードリィの3作品から。ローグは、この中ではもっとも早く1980年に登場している。それまでテキストで表現されていたコンピュータRPGに、キャラクター(といってもアルファベットや記号)が持ち込まれ、自動でダンジョンが生成されるところが画期的だった。ローグの日本語版が発売されたのは、相当に遅くてアスキーから86年。対してオリジナルのウルティマⅠは、81年に発売された。この時、リチャード氏はまだ大学生だった。


 コンピュータRPGの原点のひとつとして知られるウルティマですが、日本製PCにウルティマが移植されて遊べるようになったのは、スタークラフト社の手による1985年の発売とこちらも相当遅い。しかもウルティマⅠをすっ飛ばしてⅡから発売された。87年のUltima Ⅳからは、ポニーキャニオンに権利が移ってファミコンにも移植されて一般にも広く知られるようになった。この時にウルティマⅠからⅢまでもグラフィックが綺麗になったIBM-PC版が再度移植されなおして、再発売されている。


 もうひとつの源流、ウィザードリィ。81年にAppleⅡ向けに開発された。製作したのは、ロバート・ウッドヘッド氏とアンドリュー・グリーンバーグ氏の2人。彼らもまたこの時コーネル大の学生だった。日本語版は、アスキーより発売されたPC版が85年、遠藤雅伸氏率いるゲームスタジオが移植したファミコン版が87年に登場している。


 本シリーズは、オリジナル開発元の米国のサーテック社が倒産してしまったため、98年のウィザードリィ8でストップしている。またオリジナル製作者のアンドリュー・グリーンバーグ氏とロバート・ウッドヘッド氏ともそれぞれⅣとⅤまでしか関わっていない。日本で非常に人気が出たため、日本独自の外伝が何本も作られ、オンライン化もされるなど独自の発展を遂げている。Ⅵ以降からは、オリジナル製作者の2人が抜け、リルガミンの街が廃止され、呪文系統が変わるなど大幅に変化していて、新WIZとも呼ばれている。現在Ⅵ~8までの権利を持っているのは、実は日本の会社だったりする。


 ドラクエの鳥山明氏、すぎやまこういち氏に対して、コンシューマ版ではイラストに末弥純氏、音楽を羽田健太郎氏と、スタッフを固定したことも日本での一貫したイメージ作りに幸いしたのかもしれない。 ウルティマⅢ恐怖のエクソダスでは、台詞監修が秋元康氏、音楽担当は後藤次利氏と、おにゃん子コンビだった。


 ウルティマ、ウィザードリィに影響されて、海外では85年にバーズテール、87年にマイト&マジックというシリーズも開発されて人気を博している。当時、これらはどちらもウルティマ、ウィザードリィとあわせて、世界3大RPGに数えられていた。バーズテールの開発にはスカラブレイ出身の忍者ホークウィンドことロー・アダムスIII世氏が関わっており、氏はウルティマ、ウィザードリィの双方にも関与していた。他には、85年にSSIからファンタジーというシリーズも発売された。


 日本でのRPGの歴史としては、歴史シュミレーションで有名になった光栄より82年にドラゴン&プリンセス、83年にクフ王の秘密、ダンジョン剣と魔法、84年に日本ファルコムよりぱのらま島などが発売されている。ぱのらま島の作者は、ドラゴンスレイヤー、ザナドゥの木屋善夫氏。これらの作品は、RPGの要素を取り入れてはいるが、まだ完全にRPGだとは言えなかった。83年12月に、ヘンク・ロジャース氏が設立したBPSよりザ・ブラックオニキスが発売されている。この作品は、学生時代からTRPGを遊びつくしてRPGに精通していた米国人の手による作品で、容量の問題やRPGに不慣れな日本人にあわせて大幅に簡略化されてはいたものの完成度が高く、この作品が日本で最初の本格的なRPGと言われることが多い。


 84年には、ゼビウスで一躍有名になった遠藤雅伸氏の手により、アーケードゲームにRPGの要素を取り入れたドルアーガの塔が発表されている。これは、アーケードゲームという性質上、経験値ではなくアイテムや装備を入手することで主人公が成長するようになっていた。大手のナムコからアーケードゲームという場で発表されたことで、一般にファンタジーやRPGが広く知られるようになったのは、これが最初と言えるかもしれない。ナムコからは、85年にファンタジーやRPGの要素を取り入れたドラゴンバスター、86年に経験値とパスワードを取り入れたドルアーガの塔の続編イシターの復活も登場している。他に4人での同時プレイとパーティプレイを再現した85年のアタリ社のガントレット、よりRPGの要素を取り入れたアーケード作品としては、90年のデーターイーストのダークシール、91年タイトーのカダッシュなどがある。


 84年には、ドルアーガの塔やブラックオニキスの影響を受けて製作された内藤時浩氏のハイドライドがT&Eソフトから、ぱのらま島の木屋善夫氏の手によるドラゴンスレイヤーが日本ファルコムより発表されて、アクションRPGという新しい潮流が生まれた。翌85年には、続編のハイドライドⅡ、ドラゴンスレイヤーⅡであるザナドゥが発売され、PC誌のランキングで年間を通してベスト10圏内に入り続けるという現象がみられるようになり、PCの世界では一足先にRPGのブームが花開いていた。


 当時の8ビットPCでは、ファミコンより一足先に82~83年頃からゲーム市場と呼べるようなものが誕生していた。そのゲーム市場に続々と日本製RPGが登場してきた。こちらは、85年にローレゾ機種向けに開発されたクリスタルソフトのリザード。


 ウィザードリィ風のワイヤーフレームのダンジョンとウルティマⅢ風のタクティカルコンバットを導入した、同じ85年でクリスタルソフトのファンタジアン。


 ドラクエの元ネタになったとも言われる、同じく85年でクリスタルソフトの夢幻の心臓Ⅱ。これら以外にも、サイバーパンク調の世界観をもつザ・スクリーマー、ザ・ブラックオニキスの続編ファイアークリスタル、ドラゴンバスターとハイドライドの影響を受けたザインソフトのトリトーンなど、続々とRPGが作られていた。


 82年(日本での発売は84年)には、電源を使わない書籍の分野でも、ゲームブックという新しい潮流が生まれている。読者に選択肢を選ばせて自由に物語を組み立てられる、もともとあったゲームブックという形式の本に、TRPGのソロクエストをヒントにRPGの要素をとりれたファイティングファンタジーというシリーズが、イギリスで新たに誕生する。その第1作目となった火吹山の魔法使いは、世界的な大ヒットとなり、当時日本でも300万部を売り上げるという大ベストセラーになった。


 そしてついに86年にファミリーコンピュタでドラゴンクエストが発売される。最初は、ROMカセットという容量の問題からファミコンのユーザーである子供達にRPGという新しい遊びを受け入れてもらおうという提案から始まった。作者の堀井雄二氏は、PCで発表していたポートピア連続殺人事件、オホーツクに消ゆというAVGをファミコンに移植して好評を博しており、次はPCで流行っていたRPGを持ってこようということだったらしい。最初は、子供向けというイメージだったが、ROMカセットの容量が増えてフロッピーにも負けない大きなデータを扱えるようになったことから、徐々に高度化していき、独自の進化を遂げた日本製RPGの文化を生み出すこととなった。テレビや新聞に社会現象として取り上げられるようになり、RPGという遊びがゲームに関心のない一般にも広く知られることとなった。


 ドラクエが大ヒットしたことから、ファミコンでも爆発的なRPGのブームが訪れる。公式にはアドベンチャーゲームでRPGではない86年のゼルダの伝説も、アクションRPGとして認知され遊ばれていた。ナムコからは、同じく86年にアクションRPGのワルキューレの冒険が登場。スクエアのファイナルファンタジー、データイーストのヘラクレスの栄光、セガのファンシースター、アトラスの女神転生など、続々とRPGが製作されていった。


 海外では、モンスターが動き始め時間が経過するというリアルタイムのダンジョンが登場。FTL Gamesが87年に開発したダンジョンマスターはRPGのエポックメイキングな作品のひとつと言えるでしょう。89年には、初期のポリゴンをフィールドに採用して3Dのフィールドを自由に歩け回れるようになった、もうひとつの画期的な作品としてフランスのInfogrames社よりドラッケンも登場。この2作はスーパーファミコンに移植されたため、日本でも広く遊ばれていた。


 PCの方では、87年に難解さが売りであったRPGの世界に、謎解きメインではなく物語やシナリオを重視し、感動を持ちこんだイースという新しい流れが生まれる。また同87年には本体とシナリオ部分を分離して、追加シナリオという形で遊べるようにしたドラゴンスレイヤーシリーズの第5作目であるソーサリアンも日本ファルコムより登場している。この頃からメガドライブ、PC-エンジン、SFCとゲーム機の性能が、徐々にPCに追いついてきたことから、PCのゲーム市場は徐々に縮小を始め、ゲームの中心がコンシューマへと移ってゆく。


 これ以降は、シナリオや感動的な物語、ムービーシーンなどの見せる要素を重視した日本製RPGというひとつのジャンルを築くまでに発展していきます。


 ということで、駆け足でRPGの歴史を俯瞰してみました。このオールドゲーマーズヒストリー ロールプレイングゲーム創世記編は、1,000円程度の廉価な価格で入手できるライトなレトロゲーム本にしては、珍しく読み応えのある一冊と言えるように思います。



参考:Wiki ウルティマ、ウィザードリィ、ローグ、ダンジョン(コンピュータゲーム)、コロッサル・ケーブ・アドベンチャー、バーズテイル、マイト&マジック、ヘンク・ロジャースの項、顔面ソニーレイ+、ネット世代の雑評論 コンピューターRPGの歴史、個人的メモ、Nostalgia 迷路の色、古い男の部屋、ゲームレガシー、オールドゲーマーズヒストリー ロールプレイングゲーム創世記編/メディアパル

懐かしのホビーパソコン ガイドブック(OAK MOOK)/前田尋之監修・オークラ出版

2015-02-11 21:33:40 | 書籍・漫画

 こちらは、 昨年2014年の10月にオークラ出版より発売された、懐かしのホビーパソコン ガイドブック。監修を務める前田尋之氏の前著ホビーパソコン興亡史からの続編といった感じで、当時の主要なPCがカラーで紹介されている。


 ファミコン関連の回顧本は数多いですが、当時の8ビットや16ビットのホビーPCを扱った書籍は数がとても少ない。当時、ファミコンがブームになる少し前の80年代の初頭あたりから、PCの方で先行してちょっとしたブームが起きていた。トミーのぴゅう太やセガのSC-3000、コモドールのマックスマシーン、ソード(タカラ)のM5など、家庭用の安価なPCとしてもゲーム機としても使えるホビーPCが売られ始め、NECのPC-88、シャープのMZ、X1、富士通のFM-7など御三家と呼ばれる機種が登場してきて、PCゲームの市場が少しずつ形成されていた。これら以前は、PCゲームは主にカセットテープで供給され、ショップやメーカー製のおまけみたいな感じで売られており、まだゲーム市場と呼べるものは形成されていなかった。FCが登場してきてからも、アドベンチャーゲームやRPG、シミュレーションなどPCでしか遊べないものも多く、そのため高価なPCはちょっと知的で大人びた憧れの対象だった。特にRPGは、ドラクエが発売される少し前の84年頃からPCの方で先に話題になり始め、それが86年にファミコンに飛び火して一気に一般にも知られるようになった。


 これは、それらの熱いホビーPCの世界を垣間見せてくれる貴重な一冊。主要な機種が時系列順に並べられており、オールカラーで見開き1~2ページに一機種という構成になっている。反面薄い本なので、入れられる情報量には限りがあるため、それほど詳しい解説や情報が収められているわけではない。気軽に読める80年代のホビーPCのカタログ本といった作りになっている。


 有名どころだけではなく、松下電器のJRや日立のS1、ソニーのSMC-70/777、東芝のパソピア7など、家電各社がそれぞれ発売して主流にはなれなかった機種から、ファミリーベーシック、セガのSC-3000、ぴゅう太、ソード(タカラ)のM5、コモドールのマックスマシーンなど、主にホビーをメインにした機種、16ビットで度肝を抜いたX68000、長いこと国民機として君臨したPC-98、32ビットでCD-ROM搭載のFM TOWNSまで、ウィンドウズが登場してきてIBMのPC/AT互換機一色となるまでの国内PCの発展の過程を俯瞰できるようになっている。


 ずっと日本国内では、ビジネスシーンで使われるPCとしては主流だったPC-98。携帯より随分前に、ガラパゴス現象が起きていたんですな。


 松下電器が発売したJR-100。後に松下電器は、自社開発のものをあきらめMSX陣営に参加した。


 憧れの機種だったシャープのパソコンテレビX1。シャープのテレビ事業部が製造しており、同じシャープのパソコン事業部のMZとも競っていた。この頃は、機種が違ってしまえば同じメーカーのPCといえども互換性がなかった。


 NECの安価なホビーPC、PC-6001/6601シリーズ。音声合成が可能で、しかも音階が付けられて歌を歌わせることができた。今考えると、ボーカロイドなど時代を先取りしている。


 80年代8ビットPCの主流となった王者NECのPC-8801SR。FM音源を積んでおり、それまでの味気ないBeep音から流麗な音楽を奏でることができた。スプライトを持たないため、重ね合わせてスクロールさせるアクションゲームは苦手だった。


 MSXは、代表的な機種としてソニーのHITBIT HB-55を掲載。この55という型番は、ソニーの日本初のトランジスタラジオTR-55と同じであり、ここぞという商品に付けられる番号。当時のソニーの意気込みのほどがうかがえる。


 当時の代表的なPCの紹介とともに、当時のカタログも掲載されている。これは、4096色表示を可能とし総天然色PCと呼ばれたFM-77AVのもの。また、機種ごとにそのパソコンで動く代表的なゲームタイトルも紹介されている。


 近年発売されたもので路線が近いものといえば、当時のカタログ、雑誌の記事などから構成された永久保存版80年代マイコン大百科。惜しいことに、こちらはオールモノクロ写真で構成されている。


 10年ほど前に発売されたソフトバンクのBeep復刻版。当時は、LOGiNやマイコンBASICマガジン、テクノポリス、POPCOMなど、主にPCゲームに特化したホビーよりの雑誌が多数発行されていた。機種ごとの専門誌であるOh! PC、Oh! X1、Oh! MZや、技術やハード寄りのI/Oなど、住み分けができていた。このBeepを出版していた頃のソフトバンクといえば、まだPC関連の書籍を出していた、地味ないち出版社にすぎなかった。


 PC-8801のエミュレーターと当時のゲームを詰め込んだ、蘇るPC-8801伝説。この2002年頃に、このようなエミュレーター+当時のゲーム本がちょっと流行った。


 1992年の休刊から、10年の歳月をかけて2002年に復刊されたMSXマガジン永久保存版。好評だったため第三弾まで発行された。


 電波新聞社のマイコンBASICマガジンに連載されていた記事をまとめたチャレンジ!!パソコン AVG & RPG。大変な人気を博してVまでシリーズが発売された。こちらも2003年に復刻されている。


 PC-6001とMSXを題材に子供にも分かりやすく漫画で解説したプログラム入門本。すがやみつる氏のこんにちはマイコン。こちらも2002年にマイコン電児ランとあわせて、ゲームセンターあらし対マイコン電児ラン+こんにちはマイコン完全版として復刻されている。


 こちらは、当時のPCのバイヤーズガイドともいえるよいパソコン、悪いパソコン。これを見ると主要機種の陰に隠れて、まだまだ数多くの機種が埋もれていることが分かる。今ではプリンターメーカーのエプソン、キャノン製のPCや沖電気などの聞いたこともないような機種が数多く掲載されている。


 ということで、熱かったあの頃に一瞬でタイムスリップをさせてくれる貴重な一冊、懐かしのホビーパソコン ガイドブックでした。



参考:懐かしのホビーパソコン ガイドブック/前田尋之監修・オークラ出版、こんにちはマイコン/すがやみつる・小学館、よいパソコン、悪いパソコン・JICC出版局、チャレンジ!!パソコン AVG & RPG/山下章・小学館