80年代Cafe

80年代を中心に、70年代後半~90年代位の懐かしいもの置いてます。
あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

トンネルズ&トロールズ カザンの戦士たち・New World Computing/スタークラフト

2018-12-02 17:28:21 | RPGゲームReview

 トンネルズ&トロールズ カザンの戦士たちは、トンネルズ&トロールズのコンピュータゲーム版として、1989年にNew World Computing社が製作したTunnels & Trolls: Crusaders of Khazanを、日本ではスタークラフト社が移植したもの。PC-98、X68000、FM TOWNSなどの他、8ビットのPC-88版、FM-7版、X1版等に移植されていた。


 物語は、ドラゴン大陸に存在するカザン帝国では何世紀にわたって絶え間ない戦闘、流血の日々が続いてきた。それは女帝レロトラーの無法な即位を受けてより加速していた。そして有史以来一千年の節目が迫ろうとしてきている今、賢者たちは人間界に頻発する不思議な出来事にも頭を悩ませていた。一千年までに人の住める地はすべて支配するとするレロトラー。この世に大魔術師カザンの再来を見ない限り、それは現実のものとなるだろう・・・。


 なぜこれを手に入れたかというと、ダンジョンズ&ドラゴンズやクトゥルフ神話の世界観やシステムを採用したゲームというのは多いけれど、トンネルズ&トロールズに関しては、その知名度に反してこれ一作のみということ。もうひとつは、この頃に多くの海外からの移植作品を手がけていたスタークラフト社の作品を手に入れたかったから。


 9,800円という価格が書かれていますが、この頃のスタークラフト社(海外作品)の価格というのは、とにかく高かった。ウルティマシリーズなんて15,000円とかしていた。価格を2,980円とかに抑えた廉価版などもあったのですが、それもあまりショップに置いてないなどなかなか敷居が高かった。


 ボックス開封時。この硬いボックスもスタークラフト社だと感じる。


 マニュアル。海外製のものはロゴがかっこいい。ブランド化というものをよくわかっているんでしょう。


 この時期のパソコンゲームだとコピーして閉じたような簡単な作りのマニュアルもまだあったと思いますが、きちんとしたマニュアルが付いている。もっとも、この作品は攻略本も存在するのですが、攻略本を見ても解けないと言われるほど難解な作品のため、詳細なマニュアルも付いてて当然か。


 キャラクターシートやマッピングシート。高価だった分、このような付属品が充実していたのもスタークラフト社の特徴。ウルティマだと布製のマップや鉄製のアンクなどが付いていた。


 ゲーム起動の仕方。X68000版はフロッピー3枚組み。FM TOWNS版はCD-ROMだったようですが、PC-88などの8ビット版はフロッピー12枚組みだった模様。


 スタークラフト社宛のアンケート葉書も付いてきた。


 これは起動不可ということだったのですが、起動不可もなにもX68000自体を持っていませんから、どちらでも良いのですけど。10年位前、リサイクルショップにモニター込み29,800円くらいで置いてあって購入のチャンスがあったのだが、スルーしてしまった。今考えると泣きそう。


 PC-88版などの12枚組みは凄まじかった模様。店に入ったら読み込み、ディスク入れ替え、戦闘に入ったら読み込み、ディスク入れ替え、戦闘が終了したらまた入れ替えなど。


 トンネルズ&トロールズ オーナーカードが付いていた。これとは別に証明を添えて申し込めば終了証がもらえたみたい。ゲームの終了認定とは、難解なゲームが多かったこの当時のゲームにはある意味お約束のひとつでした。


 内容物一覧。実は、これにマップが付属してくるのだが付いていなかった。起動不可ということと、マップが付いていないため格安だった。ショップだと5千円~1万円前後するため、ネタとして紹介する都合上マップ無しは辛いけど740円(+送料)という廉価なので仕方ない。


 トンネルズ&トロールズのソロシナリオの中では、カザンの闘技場が同じカザンを舞台としており近い。カザンの闘技場は、ひたすら戦闘を繰り返すのみのシナリオで、レロトラーは物語背景の説明にのみ登場するだけでカザンの謎を解き明かしたり、レロトラーを倒したりという展開にはならない。そういう意味では、カザンの謎を解き明かし、レロトラーを倒すことが最終目的というこの作品の世界観は、トンネルズ&トロールズを知る人にとっては魅力的。トンネルズ&トロールズの世界観の中ではレロトラーというのは、かなりのビックネームなのです。しかし、そこには問題点が。上述のディスク12枚組みの頻雑な入れ替えを含めて、致命的なバク、海外ゲーム特有の理不尽なゲームバランスなど、攻略本があっても最後まで解き終えるのが困難といういわくつきの作品だったりします。


トンネルズ・アンド・トロールズ カザンの戦士たち お試しプレイ (Tunnels & Trolls: Crusaders of Khazan, FM TOWNS, 1990)
 残念ながらX68000自体を持っていないのでプレイをする環境がない。なので参考としてはるしげ - HARUSHIGEさんという方が上げられている実況動画を紹介しておきます。日本語版を攻略しているサイトも紹介している動画も非常に少なく貴重なもの。アクション性はなくテキストが表示されて選択肢が出るという、TRPGのシナリオをそのままPCゲームの中に落としこんだような形。


 海外では、2005年に30周年記念版として第7版のルールブックやソロアドベンチャーとともに復刻版を納めたCD-ROMなどが発売された様ですが、日本では入手は難しいでしょう。Twitterでの安田均先生の回答によれば、元の会社がないためコンピュータゲームとしては難しいが、シナリオ部分ならば可能性はあるとのこと。ということなので、そちらを待つことにいたしましょう。

参考:Wiki トンネルズ&トロールズ、スタークラフト(ゲーム会社)の項、T&Tカザンの闘技場・社会思想社、The Wapentake トロールワールドの歴史(2)、トンネルズ・アンド・トロールズ カザンの戦士たち お試しプレイ (Tunnels & Trolls: Crusaders of Khazan, FM TOWNS, 1990)/はるしげ - HARUSHIGEさん

クトゥルフの呼び声 スタートセット・ホビージャパン/ケイオシアム

2018-10-14 18:09:37 | RPGゲームReview

 去る2018年10月11日にゲームデザイナーであり、ケイオシアム社の創業者でもあるグレッグ・スタフォード(Greg Stafford)氏がお亡くなりになった。テーブルトークRPGの歴史に多大な業績を残した著名なゲームデザイナーだった。ということで、氏の残したもののひとつクトゥルフの呼び声 スタートセットを紹介します。クトゥルフの呼び声 スタートセットとは、アメリカの作家ラヴクラフトが創造したクトゥルフ神話を題材としたテーブルトークRPG。


 ラヴクラフトとかクトゥルフ神話とか、よく聞くのだけれども何故かあんまり縁がなかった。ただ、ダンジョンズ&ドラゴンズやトンネルズ&トロールズなんかと並び超有名作であり、ホラーゲームの古典であるのでいつかは手に入れたかった。こちらは、アメリカのケイオシアム社が1981年に発売して日本では1986年にホビージャパン社が販売した、日本で最初に発売されたクトゥルフのTRPG。ちなみにクトゥルフ神話TRPGは、発売元がエンターブレインに変わって現在でも販売されている。


 開封時。クッション財は箱潰れ防止に販売者が入れてくれたもの。親和版ダンジョンズ&ドラゴンズより、一回りくらい大きい感じ。ボックスはかなりしっかりしている。


 箱の中は、このような感じ。一応、完品ということだった。


 TRPGにはお約束の多面体を含むダイス一式。それほど種類は多くない。


 こちらは、基本となるルールブック。日本版の第一版は、本国では1983年に発売された第二版(Second Edition)の翻訳だそう。ちなみ日本版の第二版(改訂版)からは書籍形式となった。現在のエンターブレイン版クトゥルフ神話TRPGも書籍形式なので、ボックス形式なのはこの第一版のみ。


 シナリオブックレット。Wikiによれば7種のシナリオが収録されている。ちなみに表紙に描かれている、このぬめぬめした海洋生物みたいなのがクトゥルフ(Cthulhu)。


 クトゥルフ神話とは、アメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトと、その信奉者や周囲の作家たちにより作り上げられた架空の神話体系。神秘的というか、秘教的というか、とにかく神格化され断片的に語られることが多いため、いったい何なのだろうと思うが、もともとはパルプ・マガジン(大衆娯楽誌)に掲載されたもの。


 クトゥルフの呼び声自体が1920年代を舞台としているため、1920年代に関する資料集という冊子が付いている。


 こちらは、広げるとかなり大きなものとなる世界地図。しっかり日本やTokyoも入っている。


 ホビージャパンからのアンケート葉書も入っていた。1986年製のものということを考えると、こういうものまで残っているというのは貴重。


 紙製のキャラクター・フィギュア。この時代だとメタルフィギュアが一般的だったと思いますが、クトゥルフ神話の世界には、ゴブリンやオークなどは登場しませんので、ペーパーフィギュアで代用するというのが一般的だったのかも。


 キャラクターシート。最も特徴的なのが正気度という項目があり、これらはSAN値として表される。SAN値とは恐怖に囚われたり、恐ろしいものに出会ってしまった時などに減少し、これが0になると発狂してしまう。これ以外にも探求者の技能という項目があり、超能力や心理学、天文学、薬学などそれらしいものと並んで、自動車運転や写真、経理、値切りなど、他のRPGでは見慣れない項目が並ぶ。それ以外にも基本能力の欄に学校、学位なんてものもある。


 最初、帯が付いておらず、それは残念だなと思っていたのだけれども、中に保管してあった。外に付けられたままだったとしたら、ここまで残っているということはまずないので、これは元のオーナーさんが物持ちの良い方だったのでしょう。4,500円という当時価格が記載されている。


 クトゥルフ神話をどこで知ったかといえば、80年代のパソコン誌上ではダンジョンズ&ドラゴンズやトンネルズ&トロールズなんかと並んで名前がよく出る作品だった。ゲームブックやTRPGの翻訳を手がけていた安田均氏が、このころクトゥルフ神話をモチーフにしたラプラスの魔というホラーゲームを製作しており、それ以外にもdbソフトのプロデュース、映画を基にしたカプコンのスウィートホーム(バイオハザードの原型とも言われる)など、ホラーゲームが大流行だった。安田均氏が翻訳を手がけたゲームブック地獄の館にも恐怖点というSAN値を参考にしたようなパラメータがあり、これがなくなると発狂した。あとがきの解説でもクトゥルフ神話について言及している。また、東京創元社からはクトゥルフ神話を直接題材にした暗黒教団の陰謀—輝くトラペゾヘドロンという作品も出ていた。


 そんな感じで、80年代のパソコン誌やゲームブック関連の本などで散々見かけたため、実際に遊んだことはなかったのだけれど、妙に懐かしい感じがします。クトゥルフ神話TRPGは現在も続いているわけですが、ボックスセットになっているのは、この1986年のホビージャパンの初版のみで、これが何ともいえないいい味を出している。この不気味な洋館を前にしたボックスアートも、同時代のホラーゲーム、地獄の館、スプラッターハウス、少し後のバイオハザードなど、あるいは小説、映画など様々な作品に有形無形の影響を与え続けているように感じます。

参考:Wiki クトゥルフの呼び声 (TRPG)、グレッグ・スタフォードの項、地獄の館/解説・社会思想社、ひろせ堂めいど商会、建築家・間宮一郎、シミルボン 暗黒教団の陰謀 輝くトラペゾヘドロン

Dungeons & Dragons Basic Rules Set 1(赤箱)・新和/TSR

2018-10-03 19:38:52 | RPGゲームReview

 Dungeons & Dragons Basic Rules Set 1は、1985年に新和より発売された日本で最初のDungeons & Dragons。そのBOXの色から、通称赤箱と呼ばれています。


 販売元はホビージャパンに変わっていますが、現在でもDungeons & Dragonsは販売されており、実は2010年頃にも赤箱は復活している。これは元の赤箱の復刻ではなく、その時点での最新のD&D第四版を赤箱として登場させたもの。それは通常のスターターセットにカラーマップ、厚紙トークン、パワー・カードもセットになった豪華なものだった。そのため、増版や再生産ができず、生産分のみという限定品だった。そのためあっという間に売り切れてしまったよう。こちらで紹介するのは、その復活版ではなく1985年発売のオリジナル版。


 ボックスを開けたところ。衝緩材はオリジナルではなく、箱潰れ防止にショップが入れてくれてたもの。


 これが、新和オリジナルDungeons & Dragons Basic Rules Setの中身。つい最近になって手に入れて、売られているものやオークションに出てくるものにはダイスが紛失というものが多いのだけれど、しっかり付いていた。


 最初にこちらから読んでくださいという指示のあるプレイヤーズマニュアル。


 こちらは、ダンジョンマスターズルールブック。どちらもペーパーバックとも言えないほどの薄い書籍。


 それにダイスが6個。これだけで当時4,800円した。ボックスの中はすかすかで、TRPGというものを理解できない人が見たら、なんて高価なんだろうと感じるようなもの。ただし、これはTSRで発売された米国のオリジナル版に忠実に準拠しているらしい。コンピュータ誌やゲーム雑誌でRPGの元祖という時には、必ずといってよいほどこの赤箱が登場するが、1974年に発売されたOriginal Dungeons & Dragonsは、白い箱に入っていた。日本に初めて登場したのは1983年発売の第4板。つまりDungeons & Dragonsの元祖が赤箱のイメージなのは、日本だけということなんですね。


 広告やアンケートなども入っていた。ある意味冊子よりこちらの方が貴重かもしれない。


 富士見書房のファンタジー小説やゲームブックなど、Dungeons & Dragons関連商品のちらし。裏面は新和の広告。


 こちらは、新和からの購入者へのアンケート。このボックスは高価ということもありますが、通常の玩具店や書店では扱っておらず、田舎の住人には入手しにくいものだった。プレイヤー諸君へ!!という呼びかけが、このボックスセットを手に入れたオーナーのわくわく感を表しているような気もします。


 パソコン誌やゲーム雑誌の紹介では、必ずといってよいほどドラゴンクエストが参考にしたウィザードリィ、ウルティマはこのDungeons & Dragonsを基にして生まれたと、赤い箱とともに紹介されていたため、この赤箱を手に入れればDungeons & Dragonsが満喫できると考えてしまいがちですが、これはベーシックセットにすぎず1〜3レベルのキャラクターとダンジョンでの冒険でしか遊べないもの。この後もレベルに応じて「青箱」「縁箱」「黒箱」とそろえる必要があるという、非常にお金のかかる遊びでした。


 こちらは、権利関係がWizards of the Coast社に移ってからの2000年に発売されたDungeons & Dragons第3版。新和版の冊子のぺらぺらさがよくわかると思います。Dungeons & Dragonsには、オリジナルとは別物の上級者向けAdvanced Dungeons & Dragonsという系統もあって、小説、ゲームブック、コンピュータゲームなどの多くは、このAD&Dを基にしており、あのウィザードリィもこのAD&Dを基にしている。日本では、新和から発売されたのだけれど売れなかったため、AD&Dの方は遊んだことのある人は少ないよう。ちなみに現在ホビージャパンより発売されていいる今のDungeons & Dragonsは、このAdvanced Dungeons & Dragonsからの流れを汲んでいる。


 90年代に新和から製品が出なくなり、日本では3年ほど空白の期間が空いた。1994年からは発売元が新和からメディアワークスへと移り、第5版が翻訳された。この時の展開は、なんと文庫版。これは、この時期の日本製のTRPGのほとんどが文庫で展開しており、ルールブック、リプレイ、小説、アニメなどメディアミックスされていたことから、この形になったらしい。安く入手できるのは良いけれど、有難みが薄いような。


 個人的な思い出というと、実物を見たり手に取ったのは今回が初めて。田舎の子供にはあまりに入手し難いものでした。自宅近くの市内で一番大きなホビーショップには、ホビージャパンのボードゲームなどが置いてあったので、ひょっとしたらそこなら手に入ったかも。90年代になって都市部のデパートのテナントにアナログゲームショップが入って、そこで初めてメタルフィギュアとかTRPGのセットを見ることができた程度でした。実際に当時遊んだ方の回想としては、落語家の三遊亭 楽天さんがブログで詳しく語られている。三遊亭 圓丈師匠のようにゲームを得意とする噺家さんが現れたか、という懐かしい驚きがあります。


 今、ツイッター上では、日本のRPGの歴史の話で盛り上がっており、その話にも参加したかったのですが、ちょっと一度には無理。また次回以降に。ちなみに今現在は、Amazonでスターターセットが3,000円ほどで入手可能となっており、いい時代になったものです。

参考:Wiki ダンジョンズ&ドラゴンズの項、ホビージャパン公式サイト、三遊亭楽天のブログ、RPG Reference

レリクスアンソロジー RELICS Anthology・ボーステック/D4エンタープライズ/エレクトロニック・アーツ

2015-05-01 14:01:24 | RPGゲームReview

 レリクス RELICSは、1986年にボーステックより発売されたPCゲーム。レリクスアンソロジー RELICS Anthologyは、プロジェクトEGG内でダウンロード販売されていた各機種版のレリクスを、Windows版としてひとつにまとめてパッケージングして2003年に発売したもの。


 オリジナル版レリクスは、1986年にPC-98用のゲームとして発売され、PC-88版、FM7版、X1版、MSX版、MSX2版、MZ-2500版、X68000版と当時の主要な機種を網羅する形で移植された。翌87年にはファミリーコンピュータディスクシステム用として、レリクス暗黒要塞が発売された。自分が誰だか記憶すらも定かでない影のような精神体となって、海上に浮かび上がった遺跡を舞台に、謎を解き明かすというアクション型のアドベンチャーだった。PC版では、詳しい設定などはほとんど明らかにされておらず、光と闇が交錯するぼんやりとした背景と、操作方法を書いたマニュアルのみが付属していた。プレイヤーは影となって、遺跡内にうごめく住人に乗り移り、相手を倒すことでより強い身体を手に入れることができる。経験値の代わりに新たな体を入手することで強くなれるということで、当時はRPGに分類されることもあった。この時期の作品としては、まだ珍しかったOPとEDが用意され、クリスタルキングが音楽を担当した。


 倒した相手の体に乗り移ることで強くなるという当時としては斬新な設定や、体の各パーツを別々に作って大きなキャラクターを滑らかに動かすという技術が使われており、PC雑誌に広告が打たれてから発売までに2年ほどかかったということで、いやがおうにも期待が盛り上がった。またSAVE機能が付いておらず、最初は何をすればよいのかというヒントらしいヒントもなかったため手探りでゲームを進めていく必要があった。それでも、エイリアンのH・R・ギーガーに影響を受けたグラフィックや徹底的に作りこまれた世界観、発泡スチロール製のパッケージがエイリアンが掘り込まれたレリーフになっていたりと、いろんな意味で話題になり、多くの人の記憶に残った作品だった。


 このレリクスアンソロジー RELICS Anthologyには、X68000版を除くPC-98版、PC-88版、FM7版、X1版、MSX版、MSX2版、ファミリーコンピュータ版レリクス暗黒要塞が収められている。ちなみに、後にプロジェクトEGGの通販特典用の非売品として、X68000版も収録したレリクスアンソロジーLiteが出ている。


 最初に発売されたPC-98版がオリジナルで、スクロールから画面切り替えになり空が夕焼けになったPC-88版、FM7版、X1版、スプライトによりキャラクターを表現し解像度を落とすことで移植されたたMSX版、オープニングがカットされたもののROMカセットのため高速に動きスクロールも実現していたMSX2版、PC-98版用のグラフィックを流用したX68000版など、各機種ごとの違いや特性が分かって楽しい。ほとんど内容は同じだが、各機種ごとに微妙にな違いがある。当時オーナーだった機種、あこがれて欲しかった機種などに、思いを寄せて遊ぶのが、これの正しい楽しみ方だと思う。


 PC-98版では、最初に出てくるウサギ(セム Semb)に乗り移ると、アイテムが持てなかったり、相手に倒されるとそこで終わってしまうこともあり、ある種のトラップだった。MSX版では、セムのまま地下水路を抜けてドラゴンを通り抜けKINGへと憑依して、そこからまた寺院内に戻ったりできる。


 X-BOXで開発中だった、ポリゴンでリメイクされたレリクスも特典映像として収録されている。残念ながら発売はされなかった。


 開封時。オリジナルのレリクスも、エイリアンの彫られた発泡スチロール製のレリーフになっていたりと凝っていましたが、アンソロジー版も趣があります。


 CD-ROM。プロジェクトEGGのNO.0001となっており、最初のパッケージソフトだった。その後も、スターアーサー三部作やDIVA全機種版、夢幻戦士 ヴァリス コンプリート、ソーサリアンコンプリート、ドラゴンスレイヤークロニクルなど、マニアな企画が続いている。これらのパッケージ商品は、販売が終了してしまうとすぐにプレミア化してしまう。レリクスは、プレミア付いていない方だが、それでもアマゾンだと一万円ほどする。ちなみに発売時の定価は4,800円。


 このイラストは、最初に出てくるMARX軍の兵士なんでしょうか。


 このソフトの特典。MARX兵士のフィギュア付き。この2000年頃は、海洋堂などのブームの影響か食玩なども大人気で、フィギュアの特典付きというのが多かった。レリクスのソフト自体は、昔はボーステックのサイトで無料で配布されていたり、プロジェクトEGGでも会員サービスで無償提供されたりしているので、このフィギュアがメインなのかも。フィギュアの造形は、2003年の時点の新解釈で作られたかと思いきや、映像特典として当時の広告が付いていて、当時の広告に使われていたものを再現しているみたい。極一部の人しか喜ばないだろうフィギュアですが、これが付いてないと中古価格的にはあまり付かないはず。酸素ボンベみたいなランドセルみたいなものを背負っている。


 PDFで当時の広告やマニュアルなどいくつか特典が付いているのですが、レリクス暗黒要塞に付いていたカラーのモンスターマニュアルも特典として復刻されている。これもよいのだけれど、PC版のマニュアルも三つ折の紙一枚だけのシンプルなものなのだから、実際のものを特典としてつけて欲しかった。背景などの説明もほとんどないという、すごく抽象的だけど、気分を盛り上げてくれるよいマニュアルだった。


 レリクス暗黒要塞に思い出(思い入れ)がある層には、あのローディング地獄のない快適な仕様になっている。レリクス暗黒要塞の記事は、こちら


 レリクスアンソロジー本体の方は、各機種まとめて起動したりできる。個人的な思い出としては、当時雑誌広告で期待して、友達の家のPC-98版で遊び、発売されたばかりのMSXのTAPE版で遊びました。90年代に入った頃には、学校近くのリサイクル店で中古のMSX2とMSX2版のレリクスを手に入れて再び遊んだ。ネット上には思い出として、暗黒要塞のロードが頻繁だったことが話題になっているが、MSXのTAPE版ではロードが始まるとカセットテープで5~10分ほど読み込みを始める仕様だった。おまけに専用モニターなどないMSXで、個人ごとのテレビも一般的でない時代だったので、これを茶の間で無理やり遊んだ。親父が飯を食いながら、その様子を眺めていたりと、なんとも牧歌的な時代でした。また、クリスタルキングの幻想的な主題曲も世界観を深めるのに大きな役割を果たしていた。この主題曲Womanとエンディング曲Smile Againに歌詞が付いていると知ったのは、ネット時代になってから。個人的には、大都会、愛をとりもどせ!!と並ぶクリスタルキングの代表曲だと思う。


 1999年には、Win版としてRELICS -The recur of "ORIGIN"がリメイクされ、2001年に正式な続編RELICS -The 2nd BIRTHが作られた。2005年には実質的な続編と言えるRINNEが、日本ファルコムの開発、ソフトバンクBBの販売で発売されたが、ボーステック社は残念ながら倒産していた。ここを書くために調べてみるまで、ボーステックがなくなっていることすら知らなかった。ちなみにRELICS -The recur of "ORIGIN"は、続編ではなくオリジナルのレリクスを拡張したような内容だった。オリジナルでは、大帝HELLはエンディングのエピローグにしか登場しないが、こちらではHELLもHEAVENも遺跡内に登場している。でも、世界観や雰囲気は悪くない。


 プロジェクトEGGも元々は、ボーステックのSoft-City内のコンテンツとして始まった。2003年発行の公式ガイドブックでは、ボーステックの社長や現在の運営会社であるD4エンタープライズの代表などの座談会が収録されている。このWin版RELICS -The recur of "ORIGIN"の発売時期やプロジェクトEGGの立ち上げの前後には、ボーステックのサイトでPC-98版のレリクスが無償配布されていた。外部のサイトでWindowsに対応した全機種版が配布されていたり、2000年前後には、雑誌の付録や書籍にもレリクスが収録されていた。レリクスは、ある意味ボーステックやプロジェクトEGG、レトロゲーム復刻の象徴なのだと思います。この頃には、それらの動きに影響されてか、雑誌やムックなどでもMSXマガジン復刻版や蘇るPC-88伝説など、レトロゲームにエミュレータをセットした復刻企画が多かった。昔の作品をエミュレータにより再現したウルティマコレクション、ウィザードリィコレクションなどもこの時期です。このような流れが、Wiiのバーチャルコンソールなどに結びついていったのでしょう。2003年頃には、レリクスなんて懐かしい~と思って復刻されたこれらの作品群を見ていましたが、もうすでに12年も前ですし、今となってはこの時期すら懐かしいように思います。ボーステック社はなくなってしまいましたが、またいつかこのような記憶に残るムーブメントを起こして欲しいと願います。


 レリクスに現れた影、精神体とは、プレイヤーの意識なんですね。確かにあの頃には、あの遺跡内を探索していたことを懐かしく思います。


 ということで、80年代と2000年代と、二重の意味で懐かしいレリクスアンソロジー RELICS Anthologyでした。



参考:Wiki レリクス、ボーステック、RINNEの項、プロジェクトEGG - アミューズメントセンター、プロジェクトEGG公式ガイドブック、楽しいMSXエミュレータ&ゲームス

ドラゴンクエストVI Dragon QuestVI 幻の大地・エニックス

2015-04-28 22:17:25 | RPGゲームReview

 ドラゴンクエストVI Dragon QuestVI 幻の大地は、1995年にエニックス(スクエア・エニックス)より発売された、ロールプレイングゲーム。


 スーパーファミコンで発売されたドラゴンクエストシリーズの第6番目の作品であり、SFC用のシリーズ本編としては最後の作品。ドラゴンクエストのⅠとIIをリメイクしたドラゴンクエストI・IIに続いて発売され、本作発売後にドラゴンクエストⅢのリメイクが行われた。ロトシリーズ三部作に代わって、Ⅳから展開された天空シリーズ三部作の最終章であり、天空の物語の起点となる話。この作品の根幹となるのは、幻の大地と呼ばれるパラレルワールドのような2つのマップが用意され、その2つの世界を行き来しながら物語を進めていくというところ。シナリオは堀井雄二氏、キャラデザインは鳥山明氏、音楽はすぎやまこういち氏と主要なスタッフは変わらないが、本作から開発が中村光一氏率いるチュンソフトから、ハートビートに変わっている。また2010年には、任天堂DS用ソフトとしてリメイクされている。


 物語は、山間の小さな村ライフコッドに妹ターニアと暮らす村人が主人公。オープニングでは、説明もなしにいきなり魔物との決戦の様子が挿入されており、それが主人公の見た夢だったと言うところから物語が始まる。ふもとのシエーナで年に一回行われるバザーに、村の民芸品である木彫り細工と絹織物を売ることを頼まれたことから村を出ることになる主人公。村の祭りに必要な物品を取りに行く途中で、大地の大穴から幻の大地と呼ばれている場所へと落ちてしまう。その場所と自分たちが暮らす世界を行き来するうちに、物語の謎が解き明かされてゆく・・・。


 前作ドラゴンクエストV天空の花嫁が、父と子を巡る親子三代に渡る壮大な物語であり、物語の途中で奴隷として子供時代を送ることになったり、花嫁を選択する展開があったりと、冒険物語としてはあまりに完成度が高かったためか、本作の人気や評価はそれほど高くはないようです。現実世界と夢の世界を行き来しながら進めていくのですが、あまりにもシナリオが複雑すぎて、どちらの世界を冒険しているのかわからなくなったり、ドラクエⅡで船を入手した後のように途中から自由度が高くなり、どこへ行ったらよいか分かりずらいということなどがあるようです。また発売が遅れて、発売されたのがPS登場以後となってしまったことからも、注目度が下がってしまったのだと思います。今の時点での人気という意味でも、ドラクエⅢやⅤには及ばないのでは。ただし価格が11,400円という高価格にもかかわらず、当時320万本を売り上げています。


 パッケージ、カセット本体、取扱説明書。スーパーファミコン時のゲームの価格は高かった。ただ、320万本も売り上げたためか、中古価格はかなり安め。プレミアがつきそうな気配もない。


 ファミコンのドラクエ時代に子供だった世代も、このくらいの頃になると大学生や社会人となっていた人が多かったのでは。


 取扱説明書。ファミコンの時代に比べても格段にシナリオが複雑になり、転職などシステムも複雑になったのに、この薄さにとどめているのは凄い。ただ11,400円もするのだから、もっとおまけを入れたりゴージャスな説明書にしても良かったのではという気も。


 上下の世界の白地図が同梱されている。この辺りもウルティマのように古地図の装飾が施された布製マップなど付けて欲しかったところ。ゲーム中の街や洞窟などを記入するという意味合いで付けられているのでしょうが。


 ファミコンで発売された天空シリーズのひとつⅣは、5章に分かれた章仕立てになっていた。ドラクエは、発売されるたびに何か新機軸というか、新しい試みが入れられている。


 1986年に発売されたドラゴンクエスト第1作目。たった512kbit(64KB)という容量の中に、当時PCで流行していたロールプレイングゲームをファミコンで再現するという試みから始まった。またロールプレイングに不慣れな子供たちにも遊んでもらえるよう、徹底して遊びやすく作られていた。


 シナリオもお姫様を救ってドラゴン退治をするというシンプルなもので、当時のロールプレイングゲームは、大体こんなものだった。


 一人旅だった1作目に対して、パーティ制を取り入れた第2作目。87年発売。ドラゴンクエストII 悪霊の神々と、ナンバリングとサブタイトルが付いた。1メガビット(約128キロバイト)と前作の倍の容量で、マップは前作(100×100)の6倍以上(256×256)になっている。当時のPCのロールプレイングはフロッピーで供給されていましたので、メガロムを使用することでそれらに負けないボリュームを手に入れている。


 1作目から続いたロトシリーズの完結編であり、88年の発売日には長蛇の列ができるなど社会現象にもなった第3作目ドラゴンクエストIII そして伝説へ…。容量は前作の倍の2メガビット(256キロバイト)。転職のシステムやパーティのメンバーを自由に入れ替えができるなど、先行していたPCのロールプレイングゲームの要素は、ほとんど取り入れられた。バッテリーバックアップ機能が付いて、パスワードによる記録からも開放された。


 物語を5つの章仕立てにして、最終章でそれぞれの章で育てたキャラクターが集結するという新機軸を取り入れた、90年発売のドラゴンクエストIV 導かれし者たち。ファミコン最後のシリーズ本編であり、ここから天空シリーズという新しい展開になる。容量は、前作より更に倍の4メガビット。プレイヤーキャラ以外のキャラクターをAI(人工知能)が操作するという、当時としては斬新な試みも。


 それで、このドラゴンクエストVIですが、自分が初プレイをしたのは2~3年前。DS版が発売されて話題になっていた頃だと思います。86年当時リアルタイムでドラクエⅠのみを体験していて、2000年代になってから5→3→4とプレイした後で遊んだ。最初の感想としては、それまでのシリーズと印象が変わって、なんだか遊びにくい(世界に没頭しにくい)と感じた。スライムの代わりにぶちスライムなんて出てきたりして、開発元が変わったことから世界観などの印象も変わったのかと思った。ネットには攻略サイトが溢れていますので、特に迷うことはなかったけれど、上の世界と下の世界を行き来するシナリオが複雑すぎて、今どちらの世界にいるのかわからなくなったり、中ボスであるムドーを倒してからは物語が見えなくなったりと、ドラクエV天空の花嫁みたいなドラマチックなシナリオを期待してプレイしていたので、物語がわかりにくいというのが最初の印象でした。ラストシーンまで(過ぎても)バーバラが、本作のヒロインだと気付かなかったり。ただ何度か遊んでいるうちに、いい作品だな、シナリオ表現などゲームがここまで行き着いたのかと考えるようになった。


 本作の上の世界とは、下の世界である地上の人々がこうあったらいいなとか、こうありたいと願う夢の世界。ぶちスライムも自分より弱いモンスターがいればよいなという最弱のモンスターであるスライムの願いが、具現化されたものという説がある。上の世界に存在しているものとは、老婆の若い頃の悔恨だったり、若々しくて気力が充実していた楽しい時期だったり、あるいは現実では死んでしまった子供の見た空を飛ぶ夢だったり。上の世界に対応するものが、必ず下の世界(現実の世界)にも存在している。上の世界からスタートするプレイヤーは、物語の進行を追いながら、下の世界にいる自分自身とそれを取り巻く人々の本当の姿と関係を探すという、ある種の自分探しの旅にもなっています。すべての謎が解明され、問題が解決された物語のクライマックスで夢の世界は消えて見えなくなり、現実の世界にはもう実体がないキャラとの別れなどもあって、本作のラストシーンはどこか少し寂しい感じの終わり方を迎えます。それはそれまでプレイしてきたドラゴンクエストVIという夢の世界の終わりも意味していて、そこにも一抹の寂しさを感じるのだと思います。夢や楽しかった頃の思い出とは、誰しもが普遍的に持っているものであり、映画や小説など表現のテーマとして採られることも多いと思いますが、ゲームでここまで表現できるとは。そんな風に感じました。


 ということで、8ビット機から始まったコンピュータロールプレイングゲームの表現(シナリオ)は、ここまで来たのかと思わせられたドラゴンクエストVI Dragon QuestVI 幻の大地でした。

参考:Wiki ドラゴンクエストVI、ドラゴンクエストシリーズ作品一覧、ドラゴンクエスト大辞典を作ろうぜ!!第三版 Wiki*