Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

本「天使と悪魔」

2009-11-02 | 
 映画「天使と悪魔」を見たのは、6月だったか?「ダ・ヴィンチ・コー
ド」の第2弾と言う前評判で早々と見に行った。
 その後すぐ図書館に本を予約、3ヶ月ほど待って上巻を読んだの
が9月、下巻を予約し、先日一気に読み終えたが、結末が映画とまっ
たく違っておりびっくりした。読後感が映画とはぜんぜん違うのだ。

 原作はダン・ブラウン、訳が越前敏弥、角川書店の本(文庫本も)。
上下巻700ページの大長編だが、たった1日の出来事である。

 スイスのセルン(欧州原子核研究機構)で科学者レオナルド・ヴェ
トラが、核エネルギーを上回る反物質の生成に成功する。ところが、
彼は何者かに殺され、反物質は盗まれてしまった。セルンの所長の
コーラの依頼で、ハーバード大学のロバート・ラングドン教授が、ヴェ
トラの娘で共同研究者のヴィットリアとともにローマに向かう。
 ローマ、ヴァチカン市国では、新しい教皇を選出するコンクラーベ
の真っ最中。だが、新教皇の有力候補4人が失踪しており、亡くなっ
た前教皇の侍従、カルロのもとにイルミナティを名乗る者から電話が
あり、かつて科学者を弾圧したキリスト教会に復讐するため、1時間
に1人ずつ、拉致した新教皇候補を殺害してゆくと言う。
 しかも、盗まれた反物質はヴァチカン市国のどこかにあり、放置し
ておくと大爆発を起こし、ローマは吹っ飛んでしまう。 

 殺害場所を示すヒントに気付いたラングドン教授は、殺害を阻止
すべく推理と追跡を開始する。
 そのヒントはベルニーニの彫刻や建築物にあり、彼が、ローマ市
内の教会、墓所、美術館、地下道をあちこち走り回るのが興味深い。
が、彼の活躍も空しく、候補者達は次々と無残な遺体で発見される。

 この辺りまでは映画も原作とほぼ同じ。前回の映画紹介のブログ
にも書いたが、映画では、推理とアクションにドキドキし、ローマの
美術品やコンクラーベと言うヴァチカンの珍しい行事にワクワクした。

 『宗教と科学』の対立がメインテーマだ。大量破壊兵器を生み出す
研究に対しキリスト教を土台にした科学研究に前教皇が賛同する場
面や、カルロがTVを通して、ローマ市内、いや全世界に向かい、宗
教は、科学はどうあるべきかを訴えスピーチをする場面があり、原作
では、テーマを具体的に取り上げている。

 何よりも、映画では原作の最後の人間ドラマが削られてしまってい
た。当時、結末が軽い、と思ったのはそのせいだろう。
 カルロの厚い信仰心と科学を憎む気持は、子どもの頃母親を爆弾
テロで失っていることに由来する。彼は父親を知らない。育て慈しん
でくれた前教皇を父同然に信頼し尊敬していた。教皇が若い頃科学
の恩恵を蒙り、子供を授かった、と告白始めた途端、立派な聖職者と
信じていたのに裏切られた思いから、教皇を殺してしまう。そして更
に、科学に傾倒しようとする教会を元に戻そうと一連の犯行を…。
 しかし、カルロこそが、前教皇が科学から受けた恩恵(すなわち
人工授精)により、愛する尼僧(母)との間に授かった子供だった。

 セルンの所長のコーラが子供の頃、大病を患い、親が信仰の強さ
のあまり科学による治療を拒否したため、車椅子の生活を強いら
れ、親への憎悪もあり科学の道を選んだこと、セルンで共同研究を
しているヴィットリアの父への信頼感…などが盛り込まれ、私流に
言うならば、親子の情愛が底流に描かれている、と思った。

 映画を見ておられない方には、ゴチャゴチャと余計なことだし、今
から原作を読む方にはネタバレになり申し訳ありません。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2009-11-03 01:34:44
なが~い本の内容を良くまとめましたね。
映画を見た者にとっては、よーく分かるようになっています。
端おると、どこかでつじつまを合わせたり、書ききれないところが、軽くなったりするのでしょうね。
実は、私も映画を見たのですが、宗教と絡まったり、外国人の名前の覚えにくいのに加え、複雑なので、私の文章力のおよぶところではないと、あきらめたのです。
返信する
Unknown (清姫)
2009-11-03 07:35:15
姫ちゃん
はい、ありがとうございます。
とても苦労しました。喋ってもまとめにくいのに…。
でも、ネットで検索すると、原作との違いだけを取り上げるブログがあったり、読み違えているブログがあったりで面白いです。
それだけファンが多いのでしょうね。
返信する
Unknown (風子)
2009-11-03 21:03:43
清姫さん
十分面白さが伝わりました。
宗教と科学の対立と言うものの、個人的感情も
根底にはあるんですね。
返信する
Unknown (清姫)
2009-11-03 23:14:05
風子さん
そうなのです。
映画は、ただ推理と犯人探しに終始していました。
原作では、真実を知ったカルロの苦悩や、コンクラーベの進行役の枢機卿が、息子カルロの遺灰をそっと、墓所の前教皇(父)の遺体の傍に置く優しさが、きめ細かく書かれています。
返信する

コメントを投稿