ヒンシュクの達人
ビートたけし
小学館新書
を読み終えた。
もっと信じられないのが、店の従業員にクレ
ームをつけて土下座で謝罪させて、それをネッ
ト上にアップするヤツだよ。
最近、「自分が勝った」と思った瞬間に、相手
をトコトン叩きのめしてやろうという感覚の人
間が増えたような気がする。自分のほうが有利
だとわかった瞬間に居丈高になるんだよな。
スキャンダルを起こした有名人をネットで批判
するヤツラもそうだ。絶対安全圏から、どん底に
落とすまで叩きまくる。「もうサンザンな目に遭っ
てるんだから、この辺でいいじゃないか」とか、
「もうこっちの勝ちは決まったから、それ以上ボ
コボコにする必要はない」なんて感覚はないんだ
よな。
人間、自分か圧倒的に優位な立場にいるときに、
相手にどう振る舞うかで品性みたいなものがわか
る。「溺れた犬は叩け」じゃないけど、弱ってる相
手、弱い立場の相手をへかさにかかっていじめる
のは、とにかく下品なんだよ。
一半汽直碁二万一倍返ししっていうのも考えも
んだよ。こっちの勝ちが決まってるのに、あえて
土下座までさせる必要はない。「倍にして返せ」つ
ていうのは、いわばヤクザの論理だからね。オイラ
はそうはなりたくないよね。
人間は、自分が圧倒的に優位な立場にいるときに、
相手にどう振る舞うかで品位みたいなものがわかる。
「溺れた犬は叩け」じゃないけど、弱っている相手、
弱い立場の相手をかさにかかっていじめるのは、と
にかく下品なんだよ。
以上。
水道橋博士の本を読んで、ビートたけしの本を
読むようになった。
テレビに映る彼の顔を何度みても、個人的には
好感は持てないが、よく彼の本を読んでいる方で
ある。
この本もそういうことで読んだ。先の文章は、
その一部で、印象に残った。
彼がこの本で、あちらこちらに品のない話をし
ている。「お笑い」が仕事で、この品のない話が
彼の「キャラクター」であるし、それこその本来
キャラクターの一部でもある。
よく子供で憎たらしい子供がいるが、まさに、
そのような質である。
このキャラクターが、辺りに遠慮することなく、
言い放って生きていられるのは、信じがたいが、
このような知性を持ち合わせているのも彼という
人間の不思議さだ。
彼は、別の本でこういうことを言っている。
無理なものは欲しがるなとか、おふくろによく言
われたね。
金もねえくせに金持ちのフリをする奴が一番下品
だとか言われたからね。
以上。
ビートたけしは、不思議な人間で、本のなかで、
性的な下品な話が、よく出てくる。
しかし、上記の文章のような知性も持ち合わせ
ている。
時折、彼の本のなかで、やけに真摯な発言が出て
きて、考えさせられてしまうのだが、この辺も不
思議な人柄である。
ここんところが、世を追われた嶋田伸介との違
いだなと感じ入ってしまった。
人間は、自分が圧倒的に優位な立場にいると
きに、相手にどう振る舞うかで品位みたいなも
のがわかる。
ビートたけしは、語っているが、嶋田伸介は
「平氏にあらずんば人にあらず」
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠け
たることも なしと思へば」
と、歌った平清盛とだぶるような生き方をして
いた人間で、自分よりも立場の弱い人間に、
抜き身の刀を振り回して生きていたようだ。
彼は、文庫本で「哲学」という説得力のある本
を書いているのだが、弟子が寄りつく「たけし」
の人柄と抜き身の刀を振り回して生きる人間と
では、晩節の違いに大きなものがあるようだ。