アエラ 201.7.25にあった記事である。
これで日本も石油輸出国に
「藻」でエネルギー革命
我が国を縛り続けてきたエネルギー問題が解決し、
ついに石油輸出国に転じる。
原発事故に苦しむ日本で、こんな画期的な研究が
進行中だ。
「日本は明治以来エネルギー問題で苦しんできました。
日本の社会・経済を安定させるにはエネルギーを自給
する必要がある。
そのエネルギーは今や自然から取る時代ではありません。
作る時代に入ったのです」
エネルギーを作る。
その科学技術の最先端に位置するのが筑波大学大学院の
渡邉信教授(63)である。
渡邉氏が作ろうとしているのは、他ならぬ石油だ。
海で取れる藻から油脂成分を抽出することによって大量に
工業生産する。この最先端技術を説明するには、渡邉氏
自身の研究の歴史をひもとく必要がある。
「藻と言うと、赤潮やアオコなど環境の負の面をよく言わ
れるが、悲しいことです。
藻類は地球上で酸素をつくり、鉄鉱石、石油をつくって
きたのです。地球の歴史の中で大変な役割を果たしてき
ました。
そういう藻類が私は大好きで仕方がない」
そう話す渡邉氏は、東北大学理学部を卒業した後、日本
の藻類研究のメッカと言われる北海道大学大学院に進んだ。
自然界の藻を探す博物学的な分野から研究生活に入り、
フィールドワークの末、新しい藻類を発見することも
あった。
その後、国立環境研究所で藻類の絶滅危惧種の研究などを
手がけた。
「黄金色の壷」沖縄で
一方、世界的には藻類の油脂成分から石油ができること
が知られていた。
このため、1970年代、80年代の石油ショック後に、
藻から石油を作る研究が国際的に広がった。しかし21世紀に
入るころから原油価格が安定、研究はほとんど中断された。
渡邉氏が藻類石油の本格的な研究に入ったのは2004年
から。ボトリオコッカスという藻類の油脂成分から石油を
作ることを考えた。
この藻は油脂を作る能力が高く、その油脂はほとんど重油に
相当する成分だ。
しかし、培養に時間がかがるため、既存重油の生産コストが
1リットルあたり50円なのに対して、800円もかかってし
まう。
コストを下げるには生産効率を高めなければならない。その
ために渡邉氏は日本中の海に新たな藻類を探しに出かけた。
「勝利の女神が微笑んだのです。微笑みを得るには入念な
準備が必要だったのですが」院生時代に培った博物学的な知識
をはじめ長年の藻類一筋の研究生活が役に立った。
フィールドワークの経験や、渉猟した文献から、渡這氏は
沖縄の海に目をつけた。熱帯か亜熱帯海域に、石油生産に最適
な藻類が存在するにちがいない。腹這氏はそう直感していた。
08年10月から渡邉氏は、科学技術振興機構(JST)のCR
EST事業に参加し、藻類エネルギー技術開発プロジェクトチ
ームを組んだ。
翌年、渡邉氏のチームは沖縄の海から200株もの藻類を
採取した。分析を進め、顕微鏡のレンズ越しに出合ったのが、
オーランチオキトリウムだった。
ギリシャ語で「黄金色の壷」という意味を持つこの藻は、ス
クアレンという上質の石油成分を作る。その量はからだの20%
を占める。渡邉氏が探していたのは、この「黄金色の壷」の中
の「変わり者」だった。
36倍の増殖スピード
スクアレンというのはどんな生物でも持っている油脂成分。
人間の場合、青少年が背中にかく冷や汗の40%ほどがそれに当
たると言われている。
普通、そのスクアレンは別の物質に変化して跡をとどめない。
ところが、渡邉氏の発見した「変わり者」のオーランチオキ
トリウムの場合、このスクアレンを変化させずに、そのまま体
細胞の中に蓄積する代謝構造を持っていた。これを化学的に抽
出すれば、上質の石油成分を得ることができる。
しかも、オーランチオキトリウムの増殖スピードはきわめて
速い。ボトリオコッカスに比べて石油生産量は3分の1だが、
増殖スピードは36倍。
つまり、その石油生産効率はボトリオコッカスの12倍に相当
する。
このため、生産コストは、ほとんど重油に対抗できるだけの
水準にまで下がることがわかった。
オーランチオキトリウムは光合成ではなく、有機物を取り込
んで成長するため、低コストの培養を考えて有機排水を活用す
る。家庭雑排水やし尿、産業排水などに、溶解する有機物を入
れておき、そこにオーランチオキトリウムを投入する。
藻類から石油を生産する第1段階はこれで終了。さらに第2
段階として、窒素やリンの残った処理水にボトリオコッカスを
投入する。窒素やリンはボトリオコッカスの栄養源となるため、
最後まで石油生産に貢献し、水処理まで同時にできるわけだ。
年2億トンの石油生産
この培養装置を広さ1ヘクタール、深さIメートルの規模で
作れば、4日ごとに収穫する計算で年間約1千トンの石油が取
れる。さらに収穫時間を4時間に倍加する連続生産システムを
構築すれば、年間1万トン以上生産することができる。
日本の石油輸入量は現在約1・9億トン。霞ケ浦ほどの面積
の2万ヘクタールあれば2億トンの石油が生産できる。農林水
産省の調査では全国の耕作放棄地は約40万ヘクタール。このう
ち5%の放棄地を培養施設に充てれば、日本は自らの石油需要
をまかなうどころか、石油輸出国に変貌する計算になる。
藻類石油の研究は、米国では軍産複合体制の上に、わかって
いるだけで1500億円もの予算がつく。日本はその100分
の1だ。米国からの誘いもいまや間接的に渡邉氏にかかる。
しかし、渡邉氏は、あくまで日本で研究を続けることを決め
ている。宮城県丸森町出身の同氏は、東日本大震災以後、その
決意を固くした。耕作できなくなった東北の被災地に「藻類バ
イオマス・ファーム」を作ることができないか、と考えている。
「究極にはエネルギー問題の桎梏から人類を解放したい、その
モデルを被災地からスタートさせたいのです」
こう話す渡邉氏は、10年以内に実用化したいとしている。
研究は政界でも当然、注目されている。民主、自民両党とも
強い関心を抱いており、科学技術・イノベション推進特別
委員長の川内博史衆院議員は、「根本的に見直すエネルギー
基本計画の中にしっかりと組み込んでいきたい」と話している。
「黄金色の壷」は、実現性のない核燃サイクル事業などに莫大
な予算を充て続けてきた歴代政権の姿勢を根底から問い直して
いる。
編集部佐藤章
以上。
沖縄の「藻」から石油を作るという話は、前回もブログで
取り上げた。
ヤフーのニュースにあったのだが、記事の内容はちょっとだけ
だったので、詳しいことは分からなかった。
しかし、これこそ、日本の戦略的技術だと喜んだ。
今回、アエラに詳しく載ることになった。
日本の国家的戦略的技術である。
この記事に、こういう文章がある。
藻類石油の研究は、米国では軍産複合体制の上に、わかって
いるだけで1500億円もの予算がつく。日本はその100分
の1だ。米国からの誘いもいまや間接的に渡邉氏にかかる。
しかし、渡邉氏は、あくまで日本で研究を続けることを決め
ている。宮城県丸森町出身の同氏は、東日本大震災以後、その
決意を固くした。耕作できなくなった東北の被災地に「藻類バ
イオマス・ファーム」を作ることができないか、と考えている。
「究極にはエネルギー問題の桎梏から人類を解放したい、その
モデルを被災地からスタートさせたいのです」
こう話す渡邉氏は、10年以内に実用化したいとしている。
以上。
「エネルギー問題の桎梏から人類を解放」
そう、誰もが望む究極の夢だ。
日本が第二次大戦へと、追い詰められたのは、アメリカが
企んだ石油輸出禁止の策略の性だという話を聞いた。
あの苦い歴史から、解放される。
3.11以来、原発に怯える時代がやってきた。
中国で、100基くらいの原発を作るようだ?
中国の新幹線のずさんさからすると、日本にとって
恐ろしい話だ。
脱原発が日本国民の声になってきた。
こんな不幸な時代に、大きな希望が現れようとしている。
渡邉氏は、宮城県丸森町出身だそうだ。
なんという運命だろう。
彼こそ、今の日本における「救世主」だろう。
「エネルギー問題の桎梏から人類を解放」
みんなで、渡邉氏にエールを送りたいものだ。