まったり まぎぃ

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『82年生まれ、キム・ジヨン』

2022-05-16 16:55:04 | 韓国映画のエトセトラ

いやもう・・・泣けました。

 

「大丈夫、あなたは一人じゃない」

この一文が、見終わった瞬間、一番最初に心に響いて来ました。

 

仕事を持つ女性にたいする見方や子育てについて、昔に比べると随分変わって来たと思います。

それでも、まだまだ固定概念が消えたわけではありません。

かく言う私も、娘との会話や、TV等で見聞きするニュースに納得出来ないことがあったりすると、

「今の若い者は」

と、自分が親世代に言われたのと同じ台詞を呟いてしまうこともあります。

若い女性を生きにくくしている一人でもあるかも。

 

ジヨンは、とても真面目で忍耐強く、一生懸命に生きて来ました。

しかし、キャリアを積もうとしたタイミングで妊娠、出産。

仕事を辞めることになりました。

子育てが嫌なわけではありません。

夫は協力的です。

しかし、心の中に澱のように何かが溜まり続け、彼女の精神を混乱させるようになってしまったのです。

 

時々、誰かが乗り移ったようになってしまうジヨン。

ある時は、自分の母であったり、またある時は既に亡くなっている友人だったり。

その間の記憶がジヨン本人にはありません。

 

夫は、妻が心配でなりません。

一人で精神科医を訪ねますが、何より、本人を病院に連れてくることが最優先だと言われます。

しかし、夫は妻に受診するよう強制は出来ないのです。可哀想で。

疲れているようだからと検査を進めましたが、高額な費用に驚いたジヨンは、検査をキャンセルして帰って来てしまいました。

 

ジヨンの周辺にいる人たちは、皆ごくごく普通の人たちです。

ジヨンを心から愛する夫は勿論のこと、夫の両親や義姉たちも嫁いびりをするわけではありません。よくある韓国ドラマのような理不尽な要求をして来ることもありません。

ジヨンの両親や姉弟も善良で、家族を愛し、一生懸命にそれぞれの人生を生きています。

ただ、会話の端々に昔からの“嫁”の在り方、“女性”の在り方が何の疑いも持たないまま挟み込まれているわけです。

 

家族で集まっているときに、突然ジヨンが自分の母が乗り移ったような言動をしてしまったため、夫は自分の姉と母に事情を打ち明けるしかなくなりました。

この時、夫の母は、ジヨンを気遣いました。

責めるような態度は示さなかったのです。息子可愛さに、病気の嫁を責めるなんていう、韓国ドラマ定番の修羅場はありませんでした。

その後、ジヨンが再就職すると連絡して来たときも、ちょっと不安げな様子を示しただけでした。

しかし、ベビーシッターが見つからないので、夫が育休を取ると聞くと、やっぱり一言言いたくなっても仕方がないかも。

息子の出世の邪魔をするのか、病気なのに働いて大丈夫なのか!・・・って言っちゃった。ジヨン本人じゃなくて、ジヨン母に。

 

ジヨン本人に言わなかったのは、姑として最大限の忍耐だったかも・・・。

 

ジヨン母は、ジヨンの家に駆けつけました。

夫から事情を聞き、自分が近所に引っ越してきて孫の面倒を見ると言いました。だから、ジヨンは、好きな事をしなさいと。

ジヨンを抱きしめて。

 

すると、ジヨンは母の母、つまり自分の祖母の言葉を話し始めたのです。

祖母は、娘であるジヨン母に言いました。

そんなことをしなくて良いと。自分こそ、夢を諦めて生きてきたじゃないかと。

夫は泣きながら立ち尽くすのみ。

ジヨン母は、娘の病を目の当たりにし、ただただ泣きながら抱きしめるしか出来ませんでした。

 

ジヨンは、自分の病気を知りました。

この時やっと夫は自分の苦しみを口にすることが出来ました。

初めて泣くことが出来たのです。

愛する妻が、別の人になってしまうのではないかと言う恐怖や不安を一人で抱えて来たのですから。

夫を演じているコン・ユssiの号泣シーン、私も泣けました

 

ジヨンは治療を受け始めました。

心の内を語ることで、溜まった澱が出ていき始めたようです。

 

多くの女性が経験し、抱く感情を細かいエピソードで表現しています。

大事件が起こるわけでもないし、過激な言動や争い事もない坦々としたストーリーですが、それだからこそ、リアルです。

誰もが一つや二つ、自分の経験と被るエピソードがあるのではないでしょうか、国が違っても。

お薦めです


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