私的図書館

本好き人の365日

四月の本棚 3 『魔法使いハウルと火の悪魔』

2004-04-18 11:05:00 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

この季節になると、世界中の魔法使いや魔女達は大忙し。
五月一日の前夜に行われるという〈ワルプルギスの夜〉に向けて、準備に余念がないのです。

〈永遠に消えない大たき火〉

〈髄骨と臭化カリウムの夕食会〉

〈七つのクモの巣ダンス〉

年に一度の魔女達の集まりは、夜を徹しての大騒ぎ。
今からワクワクそわそわ、ほうきに磨きをかけている頃でしょう☆

最近めっきり有名になった魔法使いといえば、ハリー・ポッター。
六月に公開の映画最新作「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」も話題になっていますね。
ところで、イギリスにはハリー・ポッターの原作者J・K・ローリングと同じように根強い人気を持つ女性作家がいます。

「ハリーに夢中? ダイアナを試してごらんなさい」

今回は、宮崎駿監督、スタジオジブリの最新作、「ハウルの動く城」の原作となった、今もっとも魅力的な物語作家。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『魔法使いハウルと火の悪魔』をご紹介しましょう☆

主人公は、魔法が本当に存在する国インガリーで、帽子屋の三人姉妹の長女に生まれたソフィー・ハッター。

まず、ソフィーの紹介が笑えます♪

「せめて貧しいきこりの子なら、少しは出世の望みもあったでしょうが、あいにくそうではありません」

『長女は何をやってもうまくいかない』という昔話のパターンを”自覚”しているソフィーが可笑しい♪
(作者自身も三人姉妹の長女ってのが笑えます☆)

運だめしに出る運命(と、ソフィーが思っている)末っ子マーサは魔法使いの弟子に、とびきり美人の次女のレティーはパン屋の売り子にと、それぞれに落ち着いた時も、ソフィーは家業の帽子屋を継ぐために毎日作業場で帽子の仕上げをすることになります。

さらにさらに、まさに長女の宿命のように「荒地の魔女」の呪いをかけられ、九十歳の老婆に変身させられてしまうソフィー。

「年寄りがこんなことを我慢しているとは、ちっとも知らなかった!」

まさに踏んだり蹴ったり。

痛む手足。
きしむ関節。
しわだらけで静脈の浮き出た手。

家にはいられないと、杖を頼りによろよろと歩きだしたソフィー。
その彼女の眼前に、悪名高い魔法使いハウルの動く城が浮かんでいるのでした…

おばあちゃんになったソフィーの豪気なこと♪
振り回されるハウルの弟子のマイケルや、小さな暖炉に契約で縛られている火の悪魔のカルシファーがかわいそうなくらい。
この、いい子なんだけど頼りにならないマイケルや、愚痴の多い悪魔のカルシファーも魅力的なんだけれど、主人のハウルはそれに輪をかけて神秘的でわけわかんなくて魅力いっぱいなんです!

ソフィーも負けていなくて、ハウルに内緒で火の悪魔と取引したり、マイケルと”七リーグ靴”を持ち出したりと大騒ぎ。
謎のかかしや、犬人間も現れ、「荒地の魔女」の城にソフィーが乗り込んで騒ぎは最高潮に達します☆

はたしてソフィーは魔女の呪いを解くことが出来るのか?
ハウルとカルシファーの契約とは?
動く城の秘密に二人のレティー?
おまけでマイケルの恋愛模様もひっくるめて、謎がいっぱい、魔法がいっぱい!

作者が書きながら笑い転げてイスからころげ落ちそうになったという、読み出したら止まらない、極上のファンタジー。
映画公開の前に、ぜひ原作の魅力をお楽しみ下さい♪

続編の『アブダラと空飛ぶ絨毯』も楽しいですよ。
まるで違う世界のお話のようで、ちゃっかりソフィーとハウルも登場しています。
表紙も二冊共、佐竹美保さんですしね☆



ダイアナ・ウィン・ジョーンズ  著
西村 醇子  訳
徳間書店



最新の画像もっと見る

コメントを投稿