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十一月の本棚 2 『トニーノの歌う魔法』

2004-11-18 01:11:00 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

クレストマンシーとは、あらゆる世界の魔法の使われ方を監督する、大魔法使いの称号。
魔法をめぐる事件あるところ、つねにクレストマンシーは現れる!

さあ、「大魔法使いクレストマンシー」の活躍する今回のお話は、イタリアを舞台に、二つの呪文作りの名家に巻き起こった騒動を描く、まるでオペラのような意欲作♪

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『トニーノの歌う魔法』をご紹介します☆

まず、登場人物のほとんどが、今回は歌いまくります。
なんてったって魔法をかける方法が、「歌うこと」だっていうのだからにぎやかなこと、にぎやかなこと☆

モンターナ家とペトロッキ家という反目しあう二つの名家が、一族総出で街中でケンカする場面があるのですが、どちらも強力な魔法の呪文を唱えるために、声を合わせての大合唱。

伯父さん達のバスの低い歌声に伯母さんや若いイトコたちのソプラノが加わり、さらにテノールの高らかな歌声が力強く響き渡る。

そのだびにガラスが割れ、卵が飛び交い、炎に水にくさったキャベツなんかがあらわれる!

こんな魔法の戦い聞いたことありません☆

主人公のトニーノはモンターナ家の人間なんですが、まだ小さいのでたいした呪文は使えません。
できるといえば、家の主みたいなオス猫ベンヴェヌートの言葉が理解できることぐらい。

そんな時、二つの名家の強力な呪文のおかげで独立を保ってきたトニーノ達の暮らす小国カプローナに、不穏な空気が流れます。
なぜか呪文の力が弱まり、他国に侵略される危機が迫っていたのです。
それを防ぐには、かつて天使より送られたという〈カプローナの天使〉の歌の歌詞を見つけるしかない。

互いに呪文の力が弱まったことを相手の家のせいにする大人達にかわり、歌詞を見つけようとするトニーノの前に、大魔法使いのしかけた罠が口を開く…

天使に悪魔、鉄のグリフォンに人形劇「パンチ・アンド・ジュディ」。
おまけでロミオとジュリエットばりの恋愛模様もひっさげて、ダイアナ・ウィン・ジョーンズのあらたな世界は歌劇のような楽しい物語になっています。

「クレストマンシー!」

呼ぶとどこからでも、何をしていても現れるクレストマンシーのファッションにもご注目☆

登場人物も今回かなりの数になるのですが、みんな個性的で魅力たっぷり♪
舞台がイタリアだからなのか、全体に流れる明るい雰囲気と、リズミカルな文体でスラスラと読めてしまいました。

順番からいうと、今回のお話は、前作『魔女と暮らせば』から六ヶ月後に起こったことになっています。

主人公トニーノと、前回の主人公キャットは外伝『魔法がいっぱい』の中で共演していますので、二人の活躍がまだまだ読みたい方はそちらもおすすめです☆





ダイアナ・ウィン・ジョーンズ  著
野田 絵美  訳
徳間書店



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