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本好き人の365日

九月の本棚 『少女パレアナ』

2004-09-22 05:08:00 | 家庭小説

今回ご紹介する本は、1913年にアメリカで出版されて以来、多くの人々に「喜び」を与え続けている少女の物語。

エレナ・ポーターの『少女パレアナ』です☆

孤児となった女の子が気難しい叔母さんに引き取られる…

こんな始まり方からして、過酷な環境でもくじけないで頑張る少女の物語になるのかと思いきや、主人公パレアナのパワーはとてもそんなものではありません。

彼女を引き取ることになる独身の叔母は、引き取るのは愛情からではなくそれが義務だからだと言い切ります。
この「義務」という言葉を聞くたびに幼いパレアナは傷つきますが、積極的に日々の生活や人々との出会いの中に喜びや楽しみを見つけて乗り越えていくパレアナ。

例え暗い屋根裏部屋に押し込まれようと、夕食がパンと牛乳だけだろうと、どんなことからでも「喜び」を見つけ出すパレアナは、それを喜びを見つける遊び、ゲームだと言います。

亡くなった牧師の父と共に始めた「何でも喜ぶ」ゲーム。

ゲームのきっかけは一本の松葉杖でした。
人形が欲しかったパレアナは、教会の慰問箱から出てきた松葉杖にガッカリします。
でも父と娘はこう考えるのです。

松葉杖を使わなくて済むのが嬉しい☆

どんなことにでも喜びを見つけ、励まし合って生きていくこと。
それが、父が娘に残した「生きていく」という力。

「ありがとう」
「お元気ですか?」
「あなたに会えてうれしい」

こうした言葉がどれだけ人を励ますことになるか。
いつも明るく誰彼なく話しかけるパレアナは、喜びは共に生きている人すべての中にあることをよく知っています。

片足を骨折しても、両足じゃなくてよかったですね、と励ますパレアナ。
さすがに一生寝たきりの病人を励ますことには苦労しますが、ゲームが難しければ難しいほど「喜び」を見つけた時の喜びが増すわけですから、パレアナは張り切ります。
そんなパレアナに周りの大人は振り回されっぱなし♪

ところが物語後半、そんなパレアナに、もう「喜び」を見つけることができないくらい絶望的な悲劇が襲います。

それを聞きつけ、パレアナを心配して家を訪ねてくる人の多さに、たまげるパレアナの叔母。
パレアナの「ゲーム」はいつしか町の人々の心に明るい光を灯し、町に「喜び」を与えていたのでした。

パレアナは悲劇から立ち直ることができるのか?
そして気難しい叔母の秘密の過去とは?
物語はここから盛り上がりをみせ、終盤いっきにぐいぐいと読者を引き込んでいきます。

たまに混線するほどおしゃべりで、明るいパレアナが、枕を涙で濡らし、とても喜びなんて見つけられないと天国の父にこぼすシーンは、パレアナの性格をよく表していてとっても大好きなシーンの一つ。

話のテンポがよくて、次々とページをめくらせる手腕はさすがはエレナ・ポーター。
週刊誌に毎週掲載されたこの『少女パレアナ』は好評で、ついには辞書に普通名詞として載ったほど。
ちなみにウェブスター辞典にこう書いてあったそうです。

〈パレアナ=エレナ・ポーターという作家の有名な作品『パレアナ』からつくられた名詞で、喜びを意味する〉

実はこんなにお気に入りの作品なのに、なぜか出会いがなくて続編の『パレアナの青春』はまだ読んでいないんです。

でも考えようによっては、読む楽しみがまだ残っているということで、これもまたひとつの「喜び」なのかも☆







エレナ・ポーター  著
村岡 花子  訳
角川文庫



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