私的図書館

本好き人の365日

八月の本棚 3

2003-08-26 21:27:00 | 海外作品
旧約聖書によれば、かつて、ソロモン王は、魔法の指環の力によって、獣や鳥や魚。地を這うものどもと語ることが出来たという。

ソロモンの指環はないけれど、動物が大好きで、その科学者としての確かな目と、豊かな経験によって、私達に動物達の行動の背後にある意味を教えてくれる、とても興味深く、愉快な本。
今回ご紹介するのは、ノーベル賞にも輝いたコンラート・ローレンツ博士の名著。

その名も『ソロモンの指環』です。

動物行動学入門と銘打った本書。
自身、たくさんの生き物と暮らすローレンツが、そのふれ合いの中で発見した彼等の不思議な行動を、その鋭い洞察力と明晰な頭脳でもって解説してくれています。

まず読んで思うことは、この先生、本当に生き物が好きなんだな、ということ。
登場する生き物の種類の数だけとってもそれがわかります。

自分達の娘が小さい頃は、飼っている中に、危険な動物もいるということで、とりあえず、檻の中に入れておいたとか。

…娘の方を(笑)

興味深かったのは、知識を代々伝えていくコクマルガラス。
カササギなどの他の鳥が、一度も見たことのないキツネなどの天敵を、本能的に知っている(!)のに対し、若いコクマルガラス達は、群れの中の経験豊かなコクマルガラスが天敵を見つけ、警告の声を上げるのを聞いて覚える(これもスゴイよね!)

さらに、彼等は生殖可能になる一年も前に求愛し、人間でいう「婚約」期間も持っています。
その求愛行動も笑える。

まずオスは立派な巣にメスを誘います。その中には、食べ物が用意されていて、彼女の気を引く。さらに、彼女の見ている前では、普段、絶対に逆らわない上位のオスにも立ち向かっていったりするのです。そのうえ、オスはたえず、目当てのメスの瞳を見つめているのに対し、メスの方は、一見そしらぬ顔であちこちに目をうつしながら、何分の一秒かの間、チラリと彼を見るというのだから小憎らしい。

そうして互いに好意を確かめ合った二羽は、ペアとなり、緊密な攻防協定を結んで、縄張り争いなどに共同で立ち向かって行く。
これは力のない若い二人には重要なこと。だから、単に繁殖のためだけの夫婦じゃないってことね。本当に人生(?)のパートナーって感じ。

ムムム…なんか人間とあまりかわりばえしないぞ。

誰とでも仲良くなれ、誰が綱を引っ張っても喜んでついていってしまうジャッカル系の犬と、ひとたび忠誠を誓ったら、知らない人にはしっぽさえ振らないオオカミ系の犬の違い。などなど、内容を丸写ししたいほど、興味深いお話しの数々。

きっと、あなたの知らなかった生き物達のドラマチックでミステリアスな一面が、発見できます。

ペットを飼っている人(特に鳥類)には、ぜひ読んで頂きたい。
「やれやれ、やっとわかってくれたの?」という、彼等の声が聞こえてきそう。

文句は、九百九十九人ものお妃がいたのに、一羽のナイチンゲールが、お妃の一人が若い男を愛していると告げた時、怒りのあまり指環を投げ捨ててしまった、ソロモン王に言ってちょうだい☆










コンラート・ローレンツ  著
日高 敏隆  訳
早川書房


最新の画像もっと見る

コメントを投稿