私的図書館

本好き人の365日

十二月の本棚 スペシャル

2009-12-19 22:08:00 | 本棚スペシャル
今年も押しせまってまいりました。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。

昨日から雪が降り続けているので、私は外出もせずに引きこもっています。
引きこもりといっても、誰も料理も掃除も年賀状書きもしてくれないので、掃除をしながらカレーを作りました。
年賀状は毎年自分でデザインするので現在思案中。毎年12月に行っている本棚の整理もしました。今回は新しい本棚も購入して本格的。その中から何冊か紹介したいと思います☆

まずは年末年始の読書用に仕入れた本。

『もつれた蜘蛛の巣』(角川文庫)

これは「赤毛のアン」の作者ルーシー・モード・モンゴメリの一冊。

亡くなったベッキーおばの遺言のせいで、ダーク家とペンハロウ家の人々は大騒ぎ♪
果たして家宝の「水差し」の行方は?

『幽界森娘異聞』(講談社文庫)

こちらは笙野頼子さん。

猫を拾ったかつての文学少女が通りで見かけたのは文豪の娘で故人。
森鷗外の娘、森茉莉を「森娘」と名付けた作者の森茉莉賛歌?
この本を読む前にと森茉莉さんのエッセイ『貧乏サヴァラン』(ちくま文庫)も読みました。

「だいたい贅沢というのは高価なものを持っていることではなくて、贅沢な精神を持っていることである。」(「ほんものの贅沢」)

バスの中でカラオケをしながらおいしいものを食べに行くおばさん連中や、即席ラーメンやどこの店も同じなハンバーグを食い、つまらなくてあくびの出る女と歩いているのは本当の楽しさではないと一刀両断し、「…朝おきて窗(窓)をあけると、なにがうれしいのかわからないがうれしい。歌いたくなる。髪を梳(す)いていると楽しい。卵をゆでると、銀色の渦巻く湯の中で白や、薄い赤褐色の卵がその中で浮き沈みしているのが楽しい。そんな若い女の人がいたら私は祝福する。」(「楽しむ人」)と独自の美意識を展開しています♪

少しは共感できるところもありますが、やっぱり森茉莉ってお嬢様なんですね~
ちょっと鼻に付く感じ?(苦笑)

あとは、ロバート・J・ペトロ著山川紘矢+山川亜希子訳

『秘密の本 新版ホワンの物語』

オビの宣伝文句には「運命を切り開く成功哲学の寓話」とあります。
この本は翻訳者の名前だけで買いました☆

その他、本棚に並んでいる本は…

『また、つかぬことをうかがいますが…』(ハヤカワ文庫)

英国の週刊科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」のQ&Aコーナーに寄せられた質問を文庫化した第2弾。
「扇風機の羽根の数はどうやって決まっているの?」とか、「ふけ用シャンプーはどうして効くの?」といった素朴な疑問に科学者もタジタジ?

フランスの作家ラブレーの「ガルガンチュアとパンタグリュエル」の第4回。

『第四の書』

巨人の親子、ガルガンチュアとパンタグリュエルが活躍するブラックジョーク満載の破天荒な物語。

ディズニーで映画化もされた『クリスマス・カロル』の作者ディケンズの、

『ディヴィッド・コパフィールド』(1巻~4巻)
『大いなる遺産』(1巻~2巻)
『二都物語』(1巻~2巻)

こちらも映画化されたベルンハルト・シュリンクの

『朗読者』

幻想の紡ぎ手パトリシア・A・マキリップの短編集。

『ホアズブレスの龍追い人』

日本の作家、重松清さんの作品。

『流星ワゴン』
『ビタミンF』

などなど。

その他、

『大久保町の決闘』田中哲弥
『這いよれ! ニャル子さん』逢空万太
『ミミズクと夜の王』紅玉いづき

…太田忠司さんの『3LDK要塞山崎家』も読みたい。
あと笙野頼子さんの『硝子生命論』も。

ケネス・グレーアムの

『たのしい川べ』

ワイルダーの

『大草原の小さな家』シリーズ(全9冊)

マイケル・ホーイのネズミの時計屋ハーマックスⅠ

『空いっぱいに恋してる』

アーシュラ・K・ル=グィンの

『西のはての年代記』(Ⅰ~Ⅲ)

今年の収穫は角川文庫でモンゴメリの新装版が発売されたことと、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「クレストマンシー」の新作が読めたこと♪
あとは何といっても角野栄子さんの「魔女の宅急便」の最終巻、

『魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち』☆

これは良かった~

アメリカの作家ロイド・アレグザンダーの作品もいくつか手に入って収穫の多い1年でした。
まだ振り返るには早いか。

今年はあと3日ほど会社に通ったら仕事納めです。

早く年賀状書かなくっちゃ。

『沼地のある森を抜けて』

2009-12-19 10:47:00 | 梨木香歩

私が住んでいる地方でもこの冬はじめての本格的な雪が降りました。

カーテンを開けると一面の銀世界!

雪が降るとテンションが上がります♪

車の運転をなさる方はお気を付け下さい。

最近、ちょっと体調を崩して会社を休んだりしていたのですが、このところ何とか回復して来ています。

何もかもが灰色に見えていた世界も、ちょっと回復しだして食事がおいしく食べられるようになると「別にそこまで深刻に考えることもないな」と、あっけなく色付いて元の世界に戻るのだから人間って現金なものです☆

あ~、ラーメンがおいしい♪

会社を休んでいる間も、復帰した後も、ずっと読んでいたのが梨木香歩さんの小説、

『沼地のある森を抜けて』(新潮文庫)

ぬか床の中から人間が生まれてくる!?

もう読み出したら他の事が手に付かなくて、没頭してしまいました。

曾祖父母が故郷の島を駆け落ちした時に持ち出したという、いわく付きの「ぬか床」

代々の女たちの手で毎日かき混ぜられ、台所でひっそりと引き継がれて来たその「ぬか床」が、母親や叔母の手を巡って、回り回って長女の長女である独身の主人公の元に引き取られます(母親は三姉妹の長女)。

初めは面倒臭がっていた主人公ですが、ちょうど新しいアパートを探す必要があったこともあり、その「ぬか床」を持っていた叔母が住んでいたマンションをもらえると聞いて、交換条件のように引き取ることを承知します。

しかし、その「ぬか床」がただ者じゃなかった。

朝と晩の2回、毎日ぬか床はかき混ぜないといけない。

化学メーカーに勤める主人公は、とりあえずキュウリやナスを漬けてみますが、これがなかなか美味しくて、職場でも好評。

化学メーカー勤務らしく、酵母とか乳酸菌とか微生物といった言葉が出て来ます。

ぬか床に釘などの金属を入れて置くと、ナスのアントシアンと結合して、安定した青紫の塩類を作るそうです。

その他には明礬(みょうばん)なんかを入れたりしますね。

ところが、毎日「ぬか床」の世話をしているうちに、手に何かが触る感触が…

…卵がある。

「ぬか床」が産んだ(?)卵から出て来た不思議な人たちとの奇妙な共同生活!!

梨木香歩さんの作品は好きなので、新作を見つけるたびに読んでしまうのですが、このお話にはのっけからやられました。

代々の女たちが朝に夕に繰り返して来たぬか床をかき混ぜるという行為に、伝えるもの、引き継ぐもの、食べる、命、果ては生命の根源といった意味まで彷彿とさせて、生と死についての物語が読めるようになっています。

物語のほとんどと、間に挿入される「寓話」のような「シマの話」も好きなのですが、主人公が「ぬか床」の故郷の島に渡るラストはちょっと不満足。

書きすぎじゃない?

そこがインパクトがあるのかな?

(あくまで個人的な感想です)

ただ、「ぬか床」に染み付いた女たちの情念とか、いやらしさとか、涙や強さとか、女性って怖いなって思いました(苦笑)

男は物語の中で秘密基地を作ったりしてますからね(いい年をしたおっさんが)☆

原初の地球。
まだ世界にたった一人で孤独を感じていた最初の細胞。

ただ分裂して自分を増やすだけだった彼女が、自分とちょっとだけ違う相手を見つけた時、彼女は、話しかけたようとしたのではないか…

分裂ではない、融合と結合という形で…

常に様々な立場と視点から物事を捉えることの出来る作者らしい「愛」の物語…なのかな?

でもまさか、細菌や酵母の立場から愛を語られるとは思わなかった(苦笑)

うちには代々引き継がれているぬか床なんて無くてホント、幸いでした。

…アレ?
…無い…よね?

そういえば、実家の台所の床下収納、開けたこと無い…

知らないだけだったりして!?