私的図書館

本好き人の365日

知ることで人間は変化する

2009-10-22 00:32:00 | 本と日常
先日、養老孟司さんの講演を聴く機会がありました。

『バカの壁』などの著書でも有名な解剖学者さん。

昔からファンで、本も何冊か読ませてもらっていたので楽しみにしていたんですよね。

「知ることで人間は変わる」ということを、解剖学者さんらしいアプローチで説明してみえたのには、すごく納得したものです。

実際に会えるなんてラッキー♪

生(なま)養老孟司、見て来ました☆

けっこう毒舌で、笑いを織り交ぜての話のもって行き方は、さすが長年大学生を相手にしてきた先生といった感じ。

でも聴衆を引き付けたのは、やっぱりその講演の内容でした。

 犬や猫は言葉を理解しない。

 名前を呼ばれて振り向くのは、「シロ」という言葉に反応しているんじゃなくて、その声の持ち主に反応しているだけ。

 動物はみな絶対音感を持っていて、犬にとっては男性の低い声でしゃべる「シロ」という音と、女性の高い声の「シロ」という音は、まったく違う音として聞こえる。

 その証拠に他の言葉で呼んでも犬は振り向く。

 人間は耳から入った違う音の高さを持つ「シロ」という言葉を、一つの”同じ”意味なんだと脳が変換するから理解できる。

すごく大雑把に説明するとこんな感じでした☆

動物と同じように、人間の赤ちゃんも生まれた時には絶対音感を持っているそうです。

でも、お父さんとお母さんが呼ぶ自分の名前が別々の音に聞こえたらややこしいので、しだいに脳が学習して、”同じ”ということにしてしまっている。

だから例えば「りんご」と「アップル」という耳から入ってくる音(情報)はまったく違うのに、学習すれば脳はこれが”同じ”果物の名称を指すことが理解できるのです。

高校で習う数学の方程式。
x=1 だとか、 x = y って、x と yは別々の形として目には映るのに、脳が”同じ”と理解させる。(…私はなかなか理解できなかったけど)

これの最たる物がお金の概念。

あんな金属や紙切れが、食糧や品物と”同じ”価値があると思い込めるのは、人間だけなんだそうです。

動物は物々交換さえできない。

人間の脳は”同じ”にする働きを持っている。

だから、人間は相手の立場になって考えることができる。

自分が相手と”同じ”だと変換することができる。

そこが他の動物との違いだとおっしゃられていました。

でも実はここまでが前置き。

これには落とし穴があって、人間がつい”同じ”だと感じてしまうのは、あくまで人間の脳の働きであって、現実は”違う”ということ。

長年連れ添って来た夫婦は、お互い毎日同じ物を見ていると思いがちですが、そんなことは全然ない。

その日その日の感情や気分は態度や顔色に表れているはずなのに、人間はついつい昨日と”同じ”だと思ってしまう。

この”違い”に気が付く能力は、大人よりも子供の方が優れているそうです。

目や耳や感覚は外の世界の”違い”を知らせてくれます。

田んぼの泥の中を歩くにはどうしたらいいか?

スキーをうまくすべるにはどのような体重移動が必要か?

こればっかりは体験してみないとわからない。

毎日同じ硬さのアスファルトの上を歩いているだけじゃ”違い”はわからない。

転んだりすべったりしながら、硬い地面ややわらかい地面、斜面や泥を踏みしめて、ようやく人は歩くことが出来るようになる。

脳には知識だけじゃなくて、こういう体から入ってくる情報(インプット)がないと、体を動かしようがない。(アウトプットできない)

ようするに、脳だけにまかせておいたら、毎日が”同じ”だとか、人間はみんな”同じ”だとか考えるようになるってことでしょうか。(脳ってそういうものだからしょうがない)

同じ日は二度と来ないし、人間だって1年もたてば細胞のほとんどは入れ変わってしまって1年前の自分なんてほとんど残っていないのに。

子供たちはこの”違い”のわかる能力を伸ばすためにもいろいろな(体を動かす)体験が必要だし、大人はこれ以上退化しないための努力が必要…

そんな感じで受け止めました。

他にも興味深い話がたくさんあって、講演の時間はあっという間に過ぎてしまいました。

すごく面白かったです♪

音痴の人の定義というのがあって、

「まったく違う音程で歌っていてもそれが”同じ”歌だと信じて歌い続ける人」

なんだそうです(笑)

とっても楽しい時間を過ごせました☆