インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

ベンガル湾季節便り/ピンク色の満月

2012-10-29 19:20:35 | 季節・自然
今日は5時15分前と、入り日に間に合うよう早めに家を出た。
本日は真夏日和で、太陽はまだ高いところにあり、白々輝いていた。
ちょっと早すぎたかしらと思いつつ、砂浜に出ると、東側の後方に天幕が張ってあり、今日は富貴女神ラクシュミー(日本では吉祥天)のお祭りだと気付いた。
参拝しているうちに日も傾くだろうと、向かう。

サンダルを脱いで、祭壇に近づくと、鼻をもたげ両前足を持ち上げた二匹の白い小象を両脇に従えて、金の冠、黄金の胸当て、紫の上衣、濃桃色にグリーンのペイズリー模様のあるお召し物をまとったきらびやかな晴れ衣装の女神様が四手の二つに蓮の花を持って、優雅にたたずんでおられた。足元には、プジャ、祈祷儀式の名残の、ディーポ、素焼きの聖火小皿が供えられていた。
象の鼻には、ジャスミンやマリーゴールドの花輪が架けられ、女神様に捧げるように笑んで差し出している。

お参りの後、天幕を出ると、太陽はちょうどいい具合に色づいていた。
波打ち際を歩くうちに、マーマレドのように蕩けて流れ出した落日はみかん色のくっきりした大円になり、ふた筋の雲に裁断されて、切れ切れの臙脂の箔になった。まもなく顔をのぞかせ、赤みを帯びたオレンジから朱鷺色に色づき、雲のベールと鬼ごっこ、見え隠れしながら、するするともやに呑まれていき、半月型から三日月型に、とうとう没した。
日没後の名残が逆三角形に広がり、茜のグラデーションの雲をたなびかせ、美しい。
汀は残照を反映して、つややかな珊瑚色にきらめいた。

日が没した西側とちょうど真反対の東の低空に淡い満月が出だしたが、水平線の上空がほのかな紅いに刷かれるにしたがって、あえかな桜色に染まる。
ピンクのフルムーンの夕月の美しさに見とれる。
夕空を映し出した海は薔薇色に燃えていた。
宵闇が降りるにつれ、ピンクの月は黄味を帯びて、次第にこんじきへと変わったが、薄紺の空に浮かぶまん丸の金月の美麗さは見とれるばかりだ。
入り日を追って西の方角に伸ばした足を、フルムーンに向かって、東へと翻す。
汀にぽかりと浮いた大きなこんじきの満月は、ゆらゆら金色の帯を流し、まるで夕日の反映みたいにきらめく。
それだけ、月の光が煌々としているということだ。
事実、私は月が波打ち際に光を反映し、長々とだんだら帯を流すのを初めて見た。
最高のフルムーン、である。

ラクシュミー、財福の女神様にふさわしい豊穣さだ。
入り日と変わらぬ光輝を発し続ける、明るいこんじきのフルムーン。
日が落ちるにつれ、淡緑の大海は青みを帯びて、大波を押し寄せた。
満潮の迫力に足元をすくわれて、トレーナーのズボンのひざまで濡れそぼつ。
至上美に輝くフルムーンを満喫した後、名残惜しげに戻ったが、表道を帰るころには、白光に変わり、白いまん丸のお月さんでまた私を楽しませてくれた。
コメント
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