五時前勇んで浜に出た。
2011年の夕日の見納めだ。
南のタミールナドゥ州のサイクロンで低気圧が発達し、雨のちらつく曇天が続いていたが、今日は嵐が通過したようで晴れ渡り、比較的暖かな一日だった。
夕日が拝めそうだと期待して出かけたが、西の汀の上空には灰色の分厚いうろこ雲が湧きあげ、入日は隠れてしまっていた。
雲の隙間から、オレンジの光が洩れいるのみだ。
少しがっかりして、行楽客の集う大年の渚を歩きだす。
素足に冬のうしおは冷たい。
ヨットパーカー一枚のみでは、海風の吹き抜ける浜はやや肌寒かった。
冷たい潮をものともせず、二名の男性が沐浴し、波と戯れていた。
オリーヴ色の海面に時折、ジェット気流のような小波が伝わり走る。
西の空のうろこ雲がほんのり色づき、濡れた砂上に映し出された。
平らな砂鏡に反映する雲の帝国、白と灰色とピンクのまだら模様は、タピストリーのようにきらめく。まるで踏みしめる足の下にもうひとつ別の国、おとぎの城が屹立しているようだ。
雲の隙間から洩れいる光はオレンジから濃いピンクに変わったが、依然としてベールの下から沈む太陽が顔をのぞかせる気配はない。雲がぱかりと割れて全貌を覗かせないかしらんと虚しい願望を寄せたが、三分の一程度紗越しにおぼろに覗いただけだった。
洩れいる光と彩雲を反映して、オリーヴグリーンの海原がローズ色に照り映える。
波打ち際もなまめかな桜色にきらめいていた。
らくだが二匹と、白馬が一匹、いずれも観光客用の乗り物だが、通過していった。
うち、一匹のらくだが途中で停まり、客をキャッチ、父と幼い娘がはしごを使って上り、鞍に納まった。下で見守る母が記念撮影、私も便乗して、シャッターチャンスとばかり携帯で撮った。
ふと西の方角に向き直ると、雲に覆われた下空に一条の赤い縞が亀裂を生んでいた。細いあるかなきかの雲の隙間から、朱(あけ)の入日が洩れているのだ。
鮮やかな珊瑚色に洩れいる光に、今年最後の落日の端緒を見たような気になって、感激、そのまま立ち尽くし、今年も堪能させてくれたラスト・サンセットに敬礼、水平線の上はぼかしたような臙脂、その上に色づいた筋雲が二、三条尾を引き、東に向き直ると、海上は淡いピンクに染まり、藤色の雲が浮かんでいた。
すみれがかった桜色のさざなみが押し寄せる中、今年最後の浜辺を満喫し、ゆっくり戻った。
2011年の夕日の見納めだ。
南のタミールナドゥ州のサイクロンで低気圧が発達し、雨のちらつく曇天が続いていたが、今日は嵐が通過したようで晴れ渡り、比較的暖かな一日だった。
夕日が拝めそうだと期待して出かけたが、西の汀の上空には灰色の分厚いうろこ雲が湧きあげ、入日は隠れてしまっていた。
雲の隙間から、オレンジの光が洩れいるのみだ。
少しがっかりして、行楽客の集う大年の渚を歩きだす。
素足に冬のうしおは冷たい。
ヨットパーカー一枚のみでは、海風の吹き抜ける浜はやや肌寒かった。
冷たい潮をものともせず、二名の男性が沐浴し、波と戯れていた。
オリーヴ色の海面に時折、ジェット気流のような小波が伝わり走る。
西の空のうろこ雲がほんのり色づき、濡れた砂上に映し出された。
平らな砂鏡に反映する雲の帝国、白と灰色とピンクのまだら模様は、タピストリーのようにきらめく。まるで踏みしめる足の下にもうひとつ別の国、おとぎの城が屹立しているようだ。
雲の隙間から洩れいる光はオレンジから濃いピンクに変わったが、依然としてベールの下から沈む太陽が顔をのぞかせる気配はない。雲がぱかりと割れて全貌を覗かせないかしらんと虚しい願望を寄せたが、三分の一程度紗越しにおぼろに覗いただけだった。
洩れいる光と彩雲を反映して、オリーヴグリーンの海原がローズ色に照り映える。
波打ち際もなまめかな桜色にきらめいていた。
らくだが二匹と、白馬が一匹、いずれも観光客用の乗り物だが、通過していった。
うち、一匹のらくだが途中で停まり、客をキャッチ、父と幼い娘がはしごを使って上り、鞍に納まった。下で見守る母が記念撮影、私も便乗して、シャッターチャンスとばかり携帯で撮った。
ふと西の方角に向き直ると、雲に覆われた下空に一条の赤い縞が亀裂を生んでいた。細いあるかなきかの雲の隙間から、朱(あけ)の入日が洩れているのだ。
鮮やかな珊瑚色に洩れいる光に、今年最後の落日の端緒を見たような気になって、感激、そのまま立ち尽くし、今年も堪能させてくれたラスト・サンセットに敬礼、水平線の上はぼかしたような臙脂、その上に色づいた筋雲が二、三条尾を引き、東に向き直ると、海上は淡いピンクに染まり、藤色の雲が浮かんでいた。
すみれがかった桜色のさざなみが押し寄せる中、今年最後の浜辺を満喫し、ゆっくり戻った。