インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

ベンガル湾のフルムーン

2007-10-26 23:46:50 | 季節・自然
 現地生活ダイヤリー

<10月25日>
お昼に、先八月結婚したばかりの甥の新妻がひょっこり、顔を見せる。
今日はラクシュミー祭の初日で、新しい衣装で着飾る慣習があるため、
コバルトブルーのあでやかなシルクのサリーをまとって見違えるような
美しさ。夫が甥に衣装代として渡した予算から購入したらしく、「マ
ムー(叔父さん)のプレゼントよ」とうれしそうに漏らす。今日は、う
ちの使用人すべてにも、新しい衣服が贈られるのである。

                    

フルムーンの本日はクマール・プルニマといって、独身女性が理想の
パートナーが見つかりますように!と満月にお祈りする祝日でもある。
先ごろドゥルガーフェスティバルが終わったばかりで、町はその熱狂も
覚めやらぬ浮かれムード、日が沈む直前、浜に足を伸ばすと、家族連れ
の観光客が三々五々群れてフルムーンの浜を思い思いに楽しんでいた。
西の下空に浮かんだ大きな茜色の入日は、汀に着く頃には、大半が黒灰
色のもやの下に浸されてしまったが、空全体に薄く刷かれた幾条かの帯
雲が淡いオレンジ色に染まり、夕焼けの名残りが美しい。
すでに宵の色に沈み始めた東側の中空には見事なまん丸の月がうっすら
浮かび出した。薄藍の空に浮かぶ満月は、夜の色が濃くなるにつれ、黄
色いかさも消えてプラチナのような透明な白光を煌々と発し、くっきり
と浮き彫りになる。月下の汀が銀箔を乗せたように照り映え、思わず感
嘆の息が漏れる壮麗さ。すかさずデジタルカメラや携帯カメラで撮る観
光客も。
今日の満月はなにやら、地球に一番近くなるビッゲストフルムーンとか
で、大きさといい、明度といい、まさしく天下一品である。

                             

東端の汀に近いところでは、火が焚かれていた。近寄ってみると、透明
なオレンジ色の炎はわらくずを燃したもので、黒煙がもくもくと浜風に
吹かれながら西方にたなびいていた。フルムーンのファイヤーパーテ
ィーかと思ったのだが、どうやら、のろしの一種のようだった。漁船が
一隻、沖の方からポンポンと蒸気音を立てながら戻っている最中だっ
た。どうも、灯台代わりの目印のようだ。

浜の一角に建てられたラクシュミー女神のパンダル(仮設寺院)も、ア
プローチとして仕切った砂の通廊の両側のぼんぼりに灯が点り、闇を流
麗に彩っている。砂浜を横切って、大音響の音楽の鳴り響く天幕内にサ
ンダルを脱いで入ってみると、赤とゴールドの晴れ着サリーに着飾った
富と繁栄の女神様の白くて麗しいお顔がやさしげに明るい照明の下に浮
かび上がった。足元には素焼きの壷の口に乗せた椰子の実のお供え物も
いくつか、居合わせたお坊さんに額のところに赤いお印をつけてもら
う。お祈りを済ませた後、再度浜に戻って、満月を愛でる。立ち去りが
たい美しさで、いつまでも飽かずに波と月光の戯れに目を凝らす私だっ
た。

                                
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マンゴーの美味

2007-10-21 00:30:20 | 食・健康
夏季出回る亜熱帯のフルーツのキングはなんといっても、マンゴー。サ
フラン色に熟した果実は芳香の強い、桃とメロンを足して二で割ったよ
うなエキゾチックな味覚で、口中で実がとろけるように崩れ、超美味。
芳醇とはいっても、わりと癖のない味なので、日本人好み。かくいう私
の大好物でもある。一口にマンゴーといっても、品種がいろいろあり、
アルフォンソというのが一番有名だが、私の好みは、両端のくびれた実
の固めのものより、果汁たっぷりのとろけるような柔らか目のものであ
る。

4月になると、さあそろそろマンゴーが出回るころかなと期待に胸わく
わく躍らせ、果物屋の店頭をのぞく毎日。青めの実のものは完熟するま
で外に置き放しておくと、自然に2、3日後には完熟する。これを冷蔵庫
に入れてようく冷やしておくと、食後のデザートの一切れとしても頂
け、暑い盛りの夕食、冷麺を頂いた後、甘い果汁の滴るひんやりした芳
醇な実にかぶりつくのは至福。なお、サフラン色の熟したものなら、そ
の場ですぐ頂ける。
中の種が大きいので、まず種ぎりぎりのところで両側を切って食べ、残
りの果肉のついた種の部分にはかぶりつくことになる。果汁が滴り落ち
るのもなんのその、種をしゃぶるようにして実に吸い付き、きれいにこ
そげ取る。一個食べれば、おなかいっぱいになり、食後なら一切れで十
分。
               

マンゴーはデザートとして嗜まれるのみならず、アチャールといってピ
クルスにしたものも活ける。こちらは保存食品で年中瓶詰めの市販製も
出回っている。が、アチャールはなんといっても、手作りが一番。うち
もよくお義姉さんに分けてもらっているが、チリ(唐辛子)が効いたピ
クルスは超からいにもかかわらず、なぜか病みつきになるおいしさ。
ねっとり流動状の錆がかった液の中にマンゴーピクルスの皮付きかけら
が混ざっており、赤みそ状の酸味のある付け液もインド製ブレッド、ロ
ティになすりつけるとおいしいし、酸っぱくなった実の小片も柔らかく
しゃりしゃり砕けて薬味として最高。ただし、食べ過ぎると、辛味にや
られておなかを壊すかもしれないので、程ほど。

ロティのなかでもとくに脂の載ったパラタやナンによく合い、カレーや
ダルなどおかずなしでもアチャール一品さえあれば十分いける貧民の味
方、夏季のインド風お茶漬け、ウオーターライスにも添えられ、まさし
く、日本の漬物といった案配。
レストランなどでもよくテーブルの上にマンゴーピクルスの小壷を置い
ており、フリーで取れるようにしているところが多い(この壷を小さじ
でかき混ぜて、よく浸かってそうな大き目のかけらを探し出すのも、食
い意地が張っているように思われるかもしれないが、楽しいもんだ)。
南の菜食ミール(定食)にも必ず、少量付いてくる。

このほか、マンゴーのチャツネも、甘ったるくて食が進む。そういえ
ば、以前ダンス仲間との会食に際して頂いた、コターというマンゴーを
とろとろに煮詰めたおかずは思いがけず、舌がとろけるほどおいしかっ
たっけ。

マンゴーには目のないインド庶民だけあって、市販のジュースやアイス
クリームもマンゴー風味が人気、が、ねっとりと甘ったるいジュースな
ら、なんといっても、自前のミキサーによるフレッシュ手製が一番。
果汁を混ぜたヨーグルトジュース、マンゴーラッシーや、さいの目に
切った小片をヨーグルト(ドヒ)にミックスしたマンゴーカードもおい
しい。と、このように用途は限りなく広く、プリンやゼリーにしてもい
けそうだし、ケーキの上にタルト紛いに乗せるのもよし。
近年インド製マンゴーが日本にも輸出されるようになったと聞くので、
少し高価かもしれないが、ぜひ買い求めてエキゾチックな味覚を堪能し
てもらいたい。メニューをいろいろ工夫するのも楽しいと思う。

                        

余談になるが、当オリッサ西部の原住民の間には21世紀の今もって餓死
する人が絶えない惨状、で、その彼らが飢えをしのぐため何を食べてい
るかというと、驚くなかれ、このマンゴーの巨種なのである。悲惨な話
だが、保存しておいた種で空腹を満たして中毒死する人が跡を絶たない
とか。ばらにとげがあるように、美味すぎる果実には、油断しないと毒
に当てられるということか。ちなみに、妊婦がマンゴーを食べても、流
産するとのまことしやかな風聞が伝えられている。

                            
                                    
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南北二大グル

2007-10-19 23:49:53 | ヨガ・スピリチュアル
インドで今人気を二分するヨガのグルといったら、知る人ぞ知る、北で
は「ディヴヤヨガ」の開祖・ラムデヴ・ジー(ジーは敬称)と、南の「
アート・オブ・リビング」のラビ・シャンカール導師である。
私が旅行者だった二十数年前はインドの聖者といったら、ラジニーシと
クリシュナムルティが有名だったが、すでに両グルとも他界され、超能
力聖者・サイババは最近セクハラ疑惑が持ち上がり、その人気度にいさ
さか翳りが見え始めている。

アート・オブ・リビングは昨年25周年記念の盛大な催しがアシュラム在
のバンガロールで行われたが、ディヴヤヨガはまだ10年かそこらの、比
較的新しい流派。
TVのスピリチュアル専門のチャンネルで、ラムデヴ師主宰のヨガキャ
ンプの模様が流されるや、あっというまにお茶の間の成人病患者のアイ
ドルになってしまった。同師の授けるヨガの体位(アサナ)は超簡単
で、子供・中高年者はいうまでもなく、病人にですら行えるという利点
が大受け、週2-3度の割合でインド各地でヨガキャンプ開催、会場はい
つも何千人という人が駆けつけ大盛況、近頃は国外の米英、アフリカの
奥地にまで足を伸ばしているほど。参加者は中高年者層が主で、子供づ
れの家族も多い。外国の場合は、もっぱら印僑向け。

かくいう私自身も、年初に州都・ブバネシュワールで催されたヨガキャ
ンプに物見遊山半分で、参加した。
ほんと、ヨガ界のアイドルという感じで、とても40越えているとは思え
ない頑健な体にサフランオレンジの腰布をまとったのみ、ポニーテール
に黒々と長いあごひげの師はTVでおなじみの気さくで飾り気のない人
柄、レッスン自体も後ろの人にも見えるよう同時録画の大スクリーンが
前面に数個設置されているため(写真)、メソッドも細かいところまで
よくわかり、この手の大集会にしては、インドにありがちな混乱もな
く、非常によくオーガナイズされていた。
最終日のレッスンが終わった後は、受講者がどっとステージに詰めか
け、野次や歓声を飛ばしたり、携帯やデジカメでパチリ、はては万歳合
唱まで飛び出し、いやはや大変なもてはやされぶりであった。ミーハー
の私はヨガそっちのけで舞台の袖にかじりついて写真を取りまくり、
フィーバーぶりを楽しんだ。

                  

私とディヴヤヨガとのそもそもの縁は実は、わがインド人夫が取り持っ
たいきさつがあった。ヨガに以前から興味を持っていた私は、夫にイン
ストラクターを探してくれるよう頼んでいたのだが、見つからなかった
ようで代わりにディヴヤヨガのCDを借りてきてくれたのだった。これは
師自らが授けるアサナと呼吸法の2枚から成る初心者向けレッスンで、
英語の解説ゆえ、私には願ってもなかった(キャンプはヒンディ語で授
けられる)。

一方の古株、アート・オブ・リビングだが、こちらも定期的に全土で
コースを開催しており、私自身は2004年1月当地の5スターホテルの一室
で行われたベイシックコースに参加したことがあった(6日間計30時間
ほどの内容で600ルピー)。グル自らが指導するわけではなく、師養成
コースで先生の資格をとった人たちが教えるのである。当地の場合は、
地元の年配女性だった。主に呼吸法中心のビギナークラスで、スピリ
チュアルな講義もあり、中身の詰まった充実した内容で、終わるころに
は受講者間に連帯感が生まれ、このままもっと続けたいような名残惜し
い気分にさせられた。最後に、みんなが持ち寄った手作りインド食での
心温まるランチ会や各種ゲーム、プレゼントごっこも楽しかった。

                           

グルが編み出したといわれるスダルシャン・クリヤ呼吸法は一年続ける
と効果がめきめき現れると諭されたが、残念ながら体調悪化で八ヶ月で
中断、が、実施中は体が軽くなったり、エネルギーが充実するような効
果も折々感じた。アドバンス(進級)・コースもそのうちと思いつつ、
ヨガを本格的に習い出したこともあって、いまだに機会を得ず、現在に
至っている。

日本のインド大使館でも、同コースを授けていると聞くので、興味のあ
る方は参加してみることをお薦めしたい。もっとも、日本の場合はさす
がに1500円というわけにはいかず、ン万円の受講料は覚悟しなければな
らないだろうが、師養成コースで資格を取得した日本女性が教えている
というので、言葉の面でも問題なかろう。

                   

息子の大学のあるバンガロールに立ち寄ったとき、遠郊にあるアート・
オブ・リビングのアシュラムものぞいてみたが、さすがに今をときめく
協会だけあって、広大な敷地で、5階建ての壮麗な円錐形神殿では、ちょ
うどベイシックコースが催されていた。360度パノラマが望めるトップ
の円形ベランダから地上を俯瞰すると、スケールのでかさがわかり、森
あり湖ありで、一体どこからどこまでが敷地なのかと、目を見張らされ
た。訪問者には無料でランチが供され、私たち親子も豆とほうれんそう
のシンプルな菜食カレーを堪能した後、ピクニックに来たような気分で
アシュラム巡りを楽しんだ。

                             

後日、当地を訪問されたラビ・シャンカール師を間近で拝見するチャン
スに恵まれたが、女性のように長い髪とあごひげ、繊細な面立ちの痩身
グルを熱狂的に取り囲む信者の壁は厚く、ちらりと一瞥したのみで終
わった。いつもにこにこと穏やかな風貌で知られる師、余談だが、著
名なシタール奏者のラビ・シャンカールとはまったくの別人なので、
間違わないように!

ハリドワールにあるラムデヴ・ジーのアシュラムにはまだ行ったことは
ないが、やはり壮大と聞くので、機会があれば、ぜひ訪問したいものだ
と考えている。

ちなみに南北二大グルは大の仲良しで、若い方のラムデヴ・ジーが己の
ヨガ大学就任式にゲストとして、先輩ラビ・シャンカール師を招待、シャ
ンカール師が茶目っ気たっぷりの若輩に熱く抱擁されての大歓迎を受け、
目を丸くするという一コマもあった。


コメント (3)
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億万長者勢ぞろい

2007-10-18 23:14:30 | 政治・社会・経済
経済成長率9%と快進撃のインド、米フォーブス誌億万長者リストに名
を連ねる者が急増している。昔は、このリストに載るのはNRI(ノン
レジデント・インディアン)といって在外インド人が大方を占めていた
が、近年、国内事業者も続々名を連ねるようになった。2007年版では、
ベスト25人中4名がインド国籍で、トップは5位のNRI鉄鋼王・ミタル
だが、14位にリラインス・インダストリー社のムケシュ・アンバニ氏、
18位にたもとを分かった弟のアニル氏(リライアンス・ナチュラルリ
ソース社)、21位にウィプロ社のアジム・プレムジ氏とほか三名はいず
れも国内実業家ばかり。

では今現在、インド一リッチなビジネスマンはといったら、誰なのか。
それは、リライアンス・インダストリー社のムケシュ・アンバニ社長
(50歳/写真)である。NRI鉄鋼王・ミタルを抜いて、最近一位に躍
り出たばかり。ムケシュ氏が一挙にNO,1に躍り出た背景には、株の
急騰があり(2007年10月現時点で18000ポイント突破、うなぎのぼりで
とどまることを知らぬ勢い)、総資産価値が600億ドル弱と跳ね上がっ
たためといわれる。
一方のミタル氏は仏アルセロール社の買収に成功し世界一の鉄鋼会社に
のし上がったことで大きな話題を呼んだが、私生活では娘の結婚式をベ
ルサイユ宮殿を借り切って大盤振る舞いしたことでも悪名高い。活力源
は毎朝プールで行う水泳といわれ、自家用機で三カ国股にかける超多忙
の日々を送っているらしい。

              

話を国内に戻すと、そもそもムケシュ氏の経営するリライアンス・グ
ループは亡父のディルバイ・アンバニ氏が1966年創立したもので、テキ
スタイルから始まった小会社は石油・ガス天然資源発掘などのエネル
ギー産業で急成長を遂げ、国内屈指の大企業にまでのし上がった経緯が
ある。長男だった彼と弟のアニルは2002年に他界した亡父の築いた大帝
国めぐって仲たがいをしていたが、結局母の調停のもとに会社を分割す
ることで合意、以後、これまで派手で社交受けする弟の陰に隠れて目立
たなかったムケシュ氏が、水を得た魚のように本来の事業手腕を発揮し
始めた。
昨今はリテイルビジネスにとくに力を入れており、全土にスーパーの販
売網を広げている。年収は6億を下らず、現在総工費25億円で27階建て
超豪邸をムンバイに新築中。
下3階は168台の車を納めるガレージになるらしく、ジムやプール、ヘリ
パッドは無論、サーバントの数にいたっては200名というスーパー規模、
庶民はその途方もないゴージャスさにただただ唖然とするばかり。
                   
                 

このほか、フォーブズ誌の100位リストからは漏れるが、国内長者として
つとに知れ渡るのが、昨今キングフィッシャー・エアラインという高級志向
の民間航空会社を創立した本業・酒販会社(ユナイテッドグループ)の
社長、ヴィジェイ・マルヤ氏。こちらも亡父から受け継いだものだが、
国内アルコール飲料の総元締めだけあって私生活も派手で、若いモデル
をつねに脇にはべらせ、やれヨットだ、カーレースだとマスコミをにぎ
わせ、話題に事欠かない。最近、格安航空会社・デカンエアラインを買
収、本業の方でも英国の酒販会社の買収に成功するなど、事業家として
も抜け目ない商才を発揮する。               

                         

昔からある財閥といったら、タタビルラ、ヒンドゥジャ兄弟(英ベースの
印僑)らが有名だが、なかでも100年の社史を誇るパルシー教徒一族
のタタはホテル業(ムンバイの5スター、タージマハル・パレスが高名)の
みならず、自動車(インディカという国内初の自給生産ディーゼルカーが
人気)、電力、紅茶と多岐にわたってビジネス展開、とくにタタスチー
ル社
は最近英コーラス社を買収し、世界6位に躍り出たことで話題を呼
んだ。とにかく、昨今は力をつけたインド企業による外国社買収劇が相
次ぎ、新聞のビジネス欄をにぎわすほど。
ITブームの近年は、ウイプロ社のアジム・プレムジ氏を筆頭とするソ
フトウエア企業社主も古い財閥を抜く勢いで、億万長者上位リストに名
を連ねだした。インドの商店看板などを見てると、よく「****(ファミ
リーネーム)&SONS」という英字を見かけるように、大家族制度が現存
するインドでは、同族会社が多く、先代から受け継いだ企業を一家で守っ
ていくという形態が過去多かったが、ソフトウエア産業などベンチャービ
ジネスに乗り出す若手実業家も急増、一代目リッチマンも増えている。                 

                                 

ルピー高騰(1ドル=約39Rs)で、ドル建てのIT企業や輸出業者は近
頃ちと打撃を被っているが、株もうなぎのぼりで外資がふんだんに流入
する昨今、優良国内企業の資産価値は跳ね上がる一方で、銀行、不動産
業、製薬会社など純益アップで笑いが止まらないといったところ。

中国に次ぐ巨大市場として注目されるインド、世界一の規模を誇る民主
主義社会でもあり、テクノ才に優れた若い人資にあふれているという利
点もあり、このまま急成長を続ければエレファント・インドがドラゴン・
中国を抜いてアジアのトップに躍り出る日も間近?、フォーブズ誌の上
位リストの大半がインド人で埋め尽くされる日もそう遠くないような気
がする。
                 


※追加コメント
株指数が20000ポイントを突破した恩恵を被って、2007年10月29日現在
で、ムケシュ・アンバニ氏は、マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長を
抜いて、世界一のリッチマン(総資産額630億ドル)にのし上がった。

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インド風混ぜご飯

2007-10-16 23:17:10 | 食・健康
日本の弾力のある粘ついたお米とちがって、インドのそれは外米、俗に
いうインディカ米で、細長い形状でパサパサしている。下層階級にポ
ピュラーなのは格安の赤米だがにおいがきつく、中流クラスは白米嗜
好。が、ゴミや石が混じっているので、洗う前選り分けるのが大変。イ
ンド人は硬めに茹で上げるのがお好みで、ご飯の炊き方も沸騰した湯に
入れて程よい硬さになったら、水を捨てて蒸らす方式。外米はそれだけ
で頂くと、日本のお米に慣れた身にはパサパサしてちっともおいしくな
いが、ピラフにするときだけはうってつけ。とくにバスマティというか
ぐわしい香りのする高品質米を使うと、サフラン風味がいっそう引き立
つ。
                    

インドの混ぜご飯にはいろいろあるが、最もポピュラーなのはプラオ
と、ビリヤニ(写真)。
プラオは、グリンピース主体の少量の野菜を混ぜたバター風味に炊き上
げたピラフで、わりとあっさりしており、北のマサラこってりカレーに
よく合う。ビリヤニにはヴェジなら大粒の野菜がたっぷり入った鮮やか
なイエローのサフランピラフ、ノンヴェジならゆで卵、もしくは骨付き
チキンやマトンがポテト入りサフランライスの脇についたものがポピュ
ラー。

個人的な好みをいえば、私はビリヤニ派。辛くてスパイシーな本場カ
レーが苦手な人には好都合なメニューで、おかずをとらなくとも、これ
一品で十分活ける。カルカッタ・サダルストリートにある「タージ・コ
ンチネンタル」という大衆食堂のビリヤニは20ルピー(約50円)前後の
格安で、私のお気に入りはエッグビリヤニ。ゆで卵入りのサフランライ
スは程よく塩味が効いて、大粒の茹でポテトがごはんの中に隠れてお
り、ほんのりオレンジイエローに染まったじゃがいもを崩して食べるの
がまたおいしい。
                      
                       

ところで、ビリヤニの本場といったら、知る人ぞ知る、イスラム教徒の
多いハイデラバード。元々このミックスピラフはムーガル宮廷料理から
派生しているのだ。街のレストランは必ず名物メニューをそろえてお
り、さすがにビリヤニシティの異名をとるだけあっておいしい。南で
は、ヨーグルトにレーズンやオニオン、キャベツをミックスし、チリ(
唐辛子)でぴりっと辛みを効かせたサラダ、ライタの小鉢付き。
列車でも、南に下るにつれ、ビリヤニ弁当を売る車内売りが現れ、駅で
もビリヤニボックスを販売していたりする。カレーなしで安上がりに食
事を終えたい乗客には人気。

が、一口にビリヤニといっても、地方によって中身の材料が変わったり
とさまざまで、なかでもカシミール地方のそれはナッツやドライフルー
ツをふんだんに使うことで有名。カシミール風を真似た我が家のコック
手製のビリヤニも、カシューナッツ、レーズン入りで息子の大のお気に
入り。

中華料理が人気のインドでは、フライドライスといってチャーハンもポ
ピュラーだが、なんといってもバター風味で炊き上げたご飯の方がカ
レーには合う。このほか、各寺院の厨房で作られる菜食混ぜご飯には、
甘い赤飯様のもの、豆入りご飯などがあり、家庭で作れられるものとは
また一味違ったおいしさ。

祭や特別なお祝い事のあるとき、女たちは待ってましたとばかり料理の
腕を奮って、見た目もゴージャスな混ぜご飯が食卓を飾ることになるの
だ。
                             

*    *    *

☆簡単レシピ
日本で出来るビリヤニ

<材料>
▽鶏肉約200g、本場は骨付きだが、食べやすい腿または胸肉でもよい
▽米3カップ(インディカ米の代わりにタイの長粒種を使用すると、おいしく
炊き上がる)
▽タマネギ 中1/2~1個
▽ニンニク1片
▽月桂樹の葉3枚
▽クローブ7粒
▽ブラックペッパー7粒
▽唐辛子(レッドチリ)少々(辛いのが苦手な人は未使用)
▽ターメリック小さじ1/2粉(サフランの代用)
▽クミンシード小さじ1/2粉(なければ不要)
▽バター適量
▽塩小さじ1

<作り方>
1.米はあらかじめといで、水を切ってザルに入れておく
2.深鍋にバターを引き、たかの爪、ニンニクを軽く炒める
3.玉ねぎ、鶏肉を入れ玉ねぎがきつね色に変わるまで炒める
4.米を入れ、米が透明になるまで炒める
5.塩、ターメリックを入れ、3カップより少し多めのお湯を入れる
6。ふたをして火力を調節しながら20分で炊きあげる
  そのまま10分蒸らす

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チャイ⇔コーヒー比べ

2007-10-07 20:26:05 | 食・健康
 
 インドの庶民に愛飲されているポピュラーなホットドリンクは「チャイ」。水で
薄めて沸騰させたミルクにじかに茶葉を入れ、砂糖をたっぷり落とし濃く煮出した
後、茶漉しでこしてカップに注げば出来上がり。好みでしょうがを少々落とすと、
マサラチャイの出来上がり。砂糖の代わりにさとうきびから作ったジャガリ黒砂糖
蜜を入れると、キャラメル風味になってこくが増す。
 砂糖少な目の文明人から見れば、かなり甘ったるいミルクティーだが、慣れてし
まえば、暑い国ならではの疲労回復剤としてもたしなめる。現地庶民は朝目覚めの
一杯から始まって、ブレックファースト時、おやつ時はパウロティという手焼きの
大きなビスケットを浸して飲んだりと、そこかしこにもうけられた露店紛いの軒下
には、いつも人々が群がっている。
 こういう路頭の店はガラスの小コップに注ぐのがポピュラーで、大コップだと半
分という風に、現地庶民は大量は好まないのである。猫舌のインド人は、受け皿つ
きのカップだと、ソウサーに少量ずつチャイを注いで飲むという、先進国から見れ
ばバッドマナーも普及。

                          

 が、このチャイ、もっぱら北インドで愛飲されており、南に行くと、コーヒーに
取って代わられる。チャイ同様甘ったるいミルクコーヒーで、南産のコーヒー豆を
つぶした粉っぽいものもあるが、近年はもっぱらネスカフェ。列車でもチャイ・コ
ーヒー売りがやってくるが、最近は沸騰させた甘ったるいミルクを入れた保温器の
蛇口から半透明のプラスチック製カップに注ぎ、チャイならティーバッグ、コーヒ
ーならネスカフェの瓶を取り出して注ぐだけの、インスタント。コーヒーはともか
くも、昔は列車内で売るチャイはちゃんと前もってミルクといっしょに煮詰めてお
かれたもので、素焼きのカップに注がれたこくのある甘ったるいミルクティーは旅
の疲れを癒してくれ、超美味であった(時代の流れでしょうがないとあきらめてい
るが、汽車弁も以前のように仕切りのいくつかあるスチール製セット大皿でなく、
アルミ箔)。

                  

 さて、北で根強い人気を誇っていたチャイだが、うちの息子を見ても、最近の若
者はコールドドリンク志向で、さしものチャイも近頃では年配者の飲み物と化しつ
つある。バンガロールでは、スターバックスなどしゃれた本格コーヒーショップも
お目見え、チャイ派は年々、他ドリンクに押される傾向にあるのである。加えて、
北の住民にも甘ったるいミルクコーヒーを好む向きが増えており、全土に浸透する
ネスカフェに押され気味。チャイショップ自体も、コーヒーをも提供する店が多く
なってきた。

 ところで、肝心の我が家はというと、インスタントコーヒー党。私が日本人でコ
ーヒー好きということもあって、夫もいつしかそうなってしまった。列車でときた
まチャイ売りしか来ないときがあるのだが、すっかりコーヒー慣れしている夫はネ
スカフェはないのかとしつこく聞きまくり、結局あきらめたようにティーバッグ入
りのまずいチャイをすする体たらく。うちはミルクを使わず、私はもっぱら砂糖な
しのアメリカン、夫は濃いのが好みで、インド人らしく砂糖はたっぷり。長年コー
ヒーを飲んでいる身には、ティーは今ひとつ朝の目覚め度が悪いように思うのだ
が、いかがなものだろう。早起きの夫は昼寝の習慣があるのだが、朝同様目覚めた
ら即コーヒーである。やっぱり、チャイでは今ひとつ頭がはっきりしないようであ
る。

 が、どっこい、ティーも負けておらぬ。私は朝二杯のコーヒーを飲み終わった
後、お気に入りのこくのあるアッサムティーをバジルの葉入りでポットでたっぷり
いただくのが習わし、夫もコーヒーはそう何杯も飲めないので、合間に気が向くと
チャイをすすっている。
 双方とも、自然にインドの住民の食生活になじみ、両党派は急増の一途をたどっ
ている。

                            


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わがチーフミニスター

2007-10-07 20:19:38 | 政治・社会・経済
当オリッサ州の現首相、チーフミニスターはナビン・パトナイク氏。すでに首相
の座に就いて八年以上になる。自由独立運動の闘士だったことで名高いベテラン政
治家かつ州首相歴のある、父のビジュ・パトナイク亡き後、次男だった彼が後継者
として政界入り、見事州議選で圧勝を納め、初の素人首相の座にのし上がったので
ある。

                      

 それまで、彼はニューヨークベースのライターで、かのジャクリーン・オナシス
に取材した本はじめ、何冊も出版していた。長子が政界進出を拒んだこともあっ
て、急遽ジャナタ・ダル党の新総裁として担ぎ出される顛末になったのである。デ
リーで育ったこともあって現地語のオリヤを理解できないビギナー首相を野党の国
民会議派はあざ笑ったが、水を得た魚のようにみるみるうちに手腕を発揮、同じ党
内でもおのれの地位を脅かすものは容赦なく切るなど、その初心者とも思われぬ権
謀術数ぶりはマスコミをして、「蝶のように優雅に舞って蜂のように刺す」と形容
させるに至ったほど。
 当年とって61歳だが、独身。白髪にトレードマークの純白のクルター・ピジャマ
(この民族服パンツスーツは一種政治家の礼装とも化している)をまとい、肌白う
りざね顔のインテリ風。演説やインタビュー時は決まって、流暢な英語だが、とき
たま茶目っ気たっぷりに片言のオリヤも混ぜる(周囲の要請で、初期個人教授につ
いて習ったそうだが、あまり上達しなかったようで、もっぱら英語、そのうち州民
の方もそういうもんだと慣れてしまった)。

 中央政府は共産党支持下の国民会議派連立政権なので、中央からの援助が望めな
いのが今ひとつ難だが、大手外資鉄鋼会社やIT企業も州都に招聘するなど、積極的
に産業化を推し進めている。いまだ未発達の奥地には餓死、コレラ流行、極左ゲリ
ラ(ナクサライト)など問題山積みなのだが、クリーンなイメージの少数弱者支援
を打ち出して、州民には人気。

                         

 ナビンが台頭する前は、国民会議派の黄金時代で、ベテランの老練政治家、J.B.
パトナイクが十年トップの座についていたのだが、汚職問題で失脚、若くて(八十
数歳の老政治家が当たり前のインドでは六十代はまだまだ若い)人気のある政敵の
前にはいまやすっかり影を失ったかの感がある。

                                

 中間選挙が取りざたされる昨今、現情勢下では、ナビンが再選されるとの予測が
有力、野党には彼のカリスマ力に太刀打ちできるリーダーがいないことが弱点、当
分ナビン全盛時代は続きそうである。


*     *     *

★コラム
白髪は政治家の象徴?

インドでは7、80台の老練政治家がポピュラー。
五十台なんて、まだひよっ子の口。そのせいか、白髪になっても、染め
ない人が多い。権謀術数の丈を尽くすせいか、若白髪の人が多いのだ
が、六十台のラルー鉄道大臣や上記のナビン当州首相も、染めずにその
まんま、白髪だと、かえって風格と貫禄が出てくるから不思議といえば
不思議。
女性はさすがに、ガンジー家のイタリア出身の嫁、現国民会議派総裁の
ソニアにしても、染めているが、七十年代を席巻した義母の故インディ
ラ・ガンジー鉄血元女性首相はストリークの白髪の前髪がやけにおしゃ
れだった。
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暑い盛りの飲み物

2007-10-07 00:00:52 | 食・健康

 内陸部では四十度を越すインドのミッドサマー、酷暑真っ只中、乾ききった喉を
やさしくクールに癒してくれるのは「ラッシー」といわれるヨーグルトジュース。
もちろんコールドドリンクス、コーラやファンタなどの清涼飲料水もポピュラーだ
が、昔ながらのラッシーは、年配層だけでなくいまもって若者にも人気。泡だった
甘めの酸味のある飲み物をいただくと、一気に熱が下りる爽快感でほっと安堵の息
が漏れる。市販の炭酸飲料水に比べ、ヘルシー面でも超お薦め。真夏時は、家庭で
お客さんをもてなすときも、手製のラッシーがもっぱら振舞われる。市販の飲料よ
り安上がりで、経済的にもお得だ。

                     

 路上のジュース屋さんで売られているフレッシュフルーツジュースも、ミッドサ
マー時は人気。マンゴー、パイナップル、バナナ、オレンジ、アップルとミキサー
はフル回転。路頭のショップは水や氷が心配なので敬遠している私も、信頼の置け
るレストランではオーダー、とくにパイナップルジュースがお気に入りである。ラ
ッシーは食堂に行かないと飲めないが、ジュース屋さんはあちこちに蔓延、駅のプ
ラットホームでも売られているほど。

            

 変り種では、さとうきびジュースもポピュラー。独特の鉄製手回し機で棒のよう
に太い茎を押しつぶして搾り取ったジュースは甘ったるく、酷暑時の肉体的疲労感
を癒してくれる。ただし、生水、氷入りなので、下痢に注意。
 おっと、忘れるところだった、亜熱帯の国ならではの、エキゾチックなココナッ
ツジュースもあったっけ。椰子の実をぶら下げたり、かごに入れたりして売りに来
る行商のおじさんは、暑い盛りは稼ぎどき、しょっちゅう呼び止められている。な
たでパカリと口を切り落とし、ストローを差し込むだけ。ほのかに甘みのあるココ
ナッツ風味のジュースはさらさらと喉越しよく流れ、下痢の心配もないどころか、
胃腸病にも効くとかで、ヘルシー志向者に超お薦め。
 
                          

 最近はよく冷えたミネラルウオーターが普及しているせいで、昔ほどではない
が、炎天下の路上には水屋さんも出現し、コップ一杯いまどき50パイサの格安で提
供、ライムを振りしぼったレモン風味のお水なんてのも、酷暑時リフレッシュする
安上がりのエナジードリンクとして人気を呼んでいる。


*****

簡単レシピ

ラッシーの作り方

●材料(二人分)
▽ヨーグルト(インドではドヒという)250g
▽牛乳100g
▽水100g(日本製のミルクの場合はすでに薄められているので、不要)
▽ジャガリ蜜(さとうきびから作った黒砂糖を溶かしたものだが、ハニーで代用
可)大さじ2

1.ヨーグルト、ミルク、水、ジャガリ蜜(またはハニー)をミキサーに入れる。
2.五秒ずつ二回に分けて攪拌する。
3.できたラッシーをグラスに入れ、ヨーグルトのもっとも脂肪分の濃い部分を少
し載せる(夏季は氷入り、もしくは冷やしていただくと、いっそうおいしい)

*インドでは、冷却作用のある素焼きのかめに材料を入れて攪拌棒でかき混ぜたも
のが路上で売られていて、これは格別おいしい。一般に甘味だが、塩味もあり、各
種フルーツジュースをミックスしたバナナラッシーやマンゴーラッシーもポピュラ
ー。ちなみに、大麻を混ぜたバングラッシーというのまで!。

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ガンジー家のカリスマ

2007-10-06 23:00:26 | 政治・社会・経済
 
 インドの名門政治家ファミリーといったら、知る人ぞ知る、ガンジー家。独立後
のネルー初代首相をはじめ、暗殺された鉄腕女性相・インディラと、爆弾テロに倒
れたその長男のラジヴと、三世代続けて国のトップを輩出してきた。
 今現在は、国民会議派(コングレスI)党首は、故ラジブ元首相のイタリア出身未
亡人、ソニア・ガンジー。夫の暗殺後、首相に担ぎ上げようとする動きと裏腹に公邸
に引きこもり、ときたま各国の要人と面会するだけで、隠遁生活を六年続けてきた
が、97年に新総裁として鮮やかに転身、この十年で押しも押されぬ政界のドンにま
でのしあがった。

                  

 イタリアの田舎町に育った少女がインドの名門政治家一家の長男とたまたま国際
結婚したのが縁となって、移住国でもっともパワフルな女性政治家にのし上がって
しまったわけだから、何やら運命の不思議さを感ぜずにはおれない。品のいいサリ
ーを優雅に着こなす美貌の彼女はカリスマ性抜群で、60歳という年齢ながら若々し
く、暗殺された夫に代わる大活躍ぶり、義母のインディラのお気に入りの嫁だった
というだけあって、鉄腕女性相の範を踏襲するかのような辣腕度を発揮している。

 さて、そのソニアの株が一気に急上昇したのは、前回の総選挙においてだった。
国民の熱い期待と裏腹に頑としてトップ職を辞退、「内なる声に従っての決断」と
の声明を発表したのである。国中蜂の巣をつつくような大騒ぎになり、党員の中に
はソニアが首相に就任しないなら、自殺すると脅す者まで現れた。メディアはこ
ぞって「マハトマショック」との大見出しをつけソニアの気高さを大賞賛、同様に
権力の座に就くことをよしとしなかった聖人マハトマと重ね合わせて、一躍聖女に
まで高められたかの感すらあった。
 野党のヒンドゥ至上主義を理念に掲げるBJP(インド人民党)は、ソニアが外
国出生であることを理由にイタリア女性がインド首相になるなど国の尊厳に関わる
由々しき問題と大反対していたのだが、蓋を開けてみると、あっさり辞退でソニア
のほうが一枚上手をいったという顛末だった。

                       

 国外生まれということで何かと矢面に立たされ、長年市民権を取得しなかった弱
点を突かれたりと、野党の心ない中傷讒謗を避け得ないハンデを背負った彼女だっ
たが、代わりに指名したマンモハン・シン首相は忠実で、ソニアが命ずると即実行
のあうんの呼吸の名コンビぶりを見せ、超法規的「スーパーPM」の威力をほしい
ままにしている。

 さる十月二日、独立運動の父・マハトマ・ガンジーの生誕記念日には、ソニアは
国連における演説で世界の状況を憂え「非暴力」を提唱、その自信に満ち溢れた態
度には、国際リーダーの一人としての大役を担う貫禄すら漂っていた。

                 

 ちなみに、三年前から、長男の混血息子、ラフールが政界入り、つい先般総秘書
の座に納まったばかりで、次期首相最有力候補として、国民は熱い目を向けてい
る。

                                


※コメント
名門政治家一家ガンジー家とマハトマ・ガンジーはたまたま姓を同じくするが、
直接に血縁関係があるわけではない。ただし、マハトマが提唱した「非暴力」は、
独立後創立された国民会議派の理念として今なお浸透、ちなみに、ネルー一家
はカシミール地方の最上カースト、ブラーミン出身。

***** 


▼コラム
スーパーPMのサリーコレクション

ソニア・ガンジーの正装はいつもサリー。
シンプルで素朴なデザインの上質の綿製が多く、色もくすんだ赤がお好みのよう
で、六十を超えている年齢にもかかわらず、華やかさが漂う。
隙のない着こなしで、スカートの部分の手折りのひだや肩に巻きつけて背後に下ろ
す裾の部分のプリーツもアイロンできっちりひだ目が付いている。
華美さを避けた優雅で上品なファッションは、女性層にも人気。
義母のインディラから受け継いだ貴重なサリーもあるようで、その宝物コレクショ
ンには同性なら誰でも、羨望のため息をつかざるをえない。
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ゴムぞうり賛歌

2007-10-06 22:45:59 | 生活・慣習
 
 インドの下層民に人気なのは、一足十数ルピーで買えるシンプルなゴムぞうり・
チャッパル、いわゆる日本のビーチサンダルである。といっても、日本のようにし
ゃれたデザインのものは高めになるので、もっぱら白やブルー、黒一色の素朴な粗
品(古タイヤを再生使用したものも)。安かろう悪かろうで、数ヶ月としないうち
に鼻緒がぷちっと切れてしまうのだが、貧民は決して捨てたりせずに路上の靴屋に
持っていき、新しい鼻緒と付け替えてもらって再使用、ほんとぺらぺらに擦り切れ
るまで履き尽くすのである。
 下層階級みたいに外でおおっぴらには履かないものの、中流以上の市民もバスル
ーム用のサンダルにしたり、若者は高めのおしゃれなものを着用するなど、暑い国
だけあって、さすがに簡便なゴムぞうりは大人気。

 かくいう私も日ごろから、愛用させてもらっている。ビーチ散歩用と、室内履き
代わりに使っているのである。私が旅行者だった二十数年前はバックパッカー旅行
者というと、決まってこのゴムぞうりを履いてペタペタ路上を歩いていたものだっ
た。暑い国ならではの蒸れないのがありがたいし、足が疲れず楽チン、ハードな旅
の移動には超便利な履物で重宝していた。
なんといっても、素足ばきというのは風通しがよく快適で、汚れたら水道の下に差
出し、ザーッと洗え、そのまま放っておけばインドの気候ではすぐ乾いてしまうと
いうのがよい。砂で汚れても、路上を我が物顔にのし歩くお牛様の泥状糞をうっか
り踏みつけてしまっても、水で洗い落とせば、瞬時にきれいになる。

                          

 ただしご用心、ゴムサンダル履きだと、高級レストランには入れてもらえないこ
とが往々にしてある。というわけで、お呼ばれ時や外食時は避けている私だが、一
度列車内でサンダルを盗まれてからは、旅行中もよっぽど支障のあるときを除いて
は、極力ゴムぞうりを着用するようになってしまった。かかとのあるものと比べ、
歩くときに超楽チンなのである。山道や岩場に適さないことはいうまでもないが。


 さて、現地で外出用の履物として一般市民にポピュラーなのは、革サンダル。英
コロニー来の「バタ」という靴屋の銘柄が品質がよく、やや高めだがよくバーゲン
セールをやっているので、人気。全土にチェーン店がある。

                  

 現地特有のデザインには親指に革ひもをつけたものがあるのだが、私はどうにも
このスタイルが苦手で、親指の付け根が痛くなってしまうので敬遠、日本式の甲の
上半分を覆ったタイプか、ひもを幾重にもたすき掛けにしたものなどおしゃれなも
のを愛用している。

                             

 が、かかとの高いお出かけ用のサンダルはあくまで表向きで、ゴムサンダル履き
に戻ったときが一番ほっとすることはいわずもがな。足が疲れないし、汚れたらい
つでもどこでも水洗い、内なら扇風機、外なら大気の下に放っておけば自然乾燥、
ほんと便利な履物で、チャッパルさまさま、散々酷使して薄っぺらくなったゴムぞ
うりにありがとうとひれ伏したくなる今日この頃なのである。

                                       
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