現地生活ダイヤリー
<10月25日>
お昼に、先八月結婚したばかりの甥の新妻がひょっこり、顔を見せる。
今日はラクシュミー祭の初日で、新しい衣装で着飾る慣習があるため、
コバルトブルーのあでやかなシルクのサリーをまとって見違えるような
美しさ。夫が甥に衣装代として渡した予算から購入したらしく、「マ
ムー(叔父さん)のプレゼントよ」とうれしそうに漏らす。今日は、う
ちの使用人すべてにも、新しい衣服が贈られるのである。
フルムーンの本日はクマール・プルニマといって、独身女性が理想の
パートナーが見つかりますように!と満月にお祈りする祝日でもある。
先ごろドゥルガーフェスティバルが終わったばかりで、町はその熱狂も
覚めやらぬ浮かれムード、日が沈む直前、浜に足を伸ばすと、家族連れ
の観光客が三々五々群れてフルムーンの浜を思い思いに楽しんでいた。
西の下空に浮かんだ大きな茜色の入日は、汀に着く頃には、大半が黒灰
色のもやの下に浸されてしまったが、空全体に薄く刷かれた幾条かの帯
雲が淡いオレンジ色に染まり、夕焼けの名残りが美しい。
すでに宵の色に沈み始めた東側の中空には見事なまん丸の月がうっすら
浮かび出した。薄藍の空に浮かぶ満月は、夜の色が濃くなるにつれ、黄
色いかさも消えてプラチナのような透明な白光を煌々と発し、くっきり
と浮き彫りになる。月下の汀が銀箔を乗せたように照り映え、思わず感
嘆の息が漏れる壮麗さ。すかさずデジタルカメラや携帯カメラで撮る観
光客も。
今日の満月はなにやら、地球に一番近くなるビッゲストフルムーンとか
で、大きさといい、明度といい、まさしく天下一品である。
東端の汀に近いところでは、火が焚かれていた。近寄ってみると、透明
なオレンジ色の炎はわらくずを燃したもので、黒煙がもくもくと浜風に
吹かれながら西方にたなびいていた。フルムーンのファイヤーパーテ
ィーかと思ったのだが、どうやら、のろしの一種のようだった。漁船が
一隻、沖の方からポンポンと蒸気音を立てながら戻っている最中だっ
た。どうも、灯台代わりの目印のようだ。
浜の一角に建てられたラクシュミー女神のパンダル(仮設寺院)も、ア
プローチとして仕切った砂の通廊の両側のぼんぼりに灯が点り、闇を流
麗に彩っている。砂浜を横切って、大音響の音楽の鳴り響く天幕内にサ
ンダルを脱いで入ってみると、赤とゴールドの晴れ着サリーに着飾った
富と繁栄の女神様の白くて麗しいお顔がやさしげに明るい照明の下に浮
かび上がった。足元には素焼きの壷の口に乗せた椰子の実のお供え物も
いくつか、居合わせたお坊さんに額のところに赤いお印をつけてもら
う。お祈りを済ませた後、再度浜に戻って、満月を愛でる。立ち去りが
たい美しさで、いつまでも飽かずに波と月光の戯れに目を凝らす私だっ
た。
<10月25日>
お昼に、先八月結婚したばかりの甥の新妻がひょっこり、顔を見せる。
今日はラクシュミー祭の初日で、新しい衣装で着飾る慣習があるため、
コバルトブルーのあでやかなシルクのサリーをまとって見違えるような
美しさ。夫が甥に衣装代として渡した予算から購入したらしく、「マ
ムー(叔父さん)のプレゼントよ」とうれしそうに漏らす。今日は、う
ちの使用人すべてにも、新しい衣服が贈られるのである。
フルムーンの本日はクマール・プルニマといって、独身女性が理想の
パートナーが見つかりますように!と満月にお祈りする祝日でもある。
先ごろドゥルガーフェスティバルが終わったばかりで、町はその熱狂も
覚めやらぬ浮かれムード、日が沈む直前、浜に足を伸ばすと、家族連れ
の観光客が三々五々群れてフルムーンの浜を思い思いに楽しんでいた。
西の下空に浮かんだ大きな茜色の入日は、汀に着く頃には、大半が黒灰
色のもやの下に浸されてしまったが、空全体に薄く刷かれた幾条かの帯
雲が淡いオレンジ色に染まり、夕焼けの名残りが美しい。
すでに宵の色に沈み始めた東側の中空には見事なまん丸の月がうっすら
浮かび出した。薄藍の空に浮かぶ満月は、夜の色が濃くなるにつれ、黄
色いかさも消えてプラチナのような透明な白光を煌々と発し、くっきり
と浮き彫りになる。月下の汀が銀箔を乗せたように照り映え、思わず感
嘆の息が漏れる壮麗さ。すかさずデジタルカメラや携帯カメラで撮る観
光客も。
今日の満月はなにやら、地球に一番近くなるビッゲストフルムーンとか
で、大きさといい、明度といい、まさしく天下一品である。
東端の汀に近いところでは、火が焚かれていた。近寄ってみると、透明
なオレンジ色の炎はわらくずを燃したもので、黒煙がもくもくと浜風に
吹かれながら西方にたなびいていた。フルムーンのファイヤーパーテ
ィーかと思ったのだが、どうやら、のろしの一種のようだった。漁船が
一隻、沖の方からポンポンと蒸気音を立てながら戻っている最中だっ
た。どうも、灯台代わりの目印のようだ。
浜の一角に建てられたラクシュミー女神のパンダル(仮設寺院)も、ア
プローチとして仕切った砂の通廊の両側のぼんぼりに灯が点り、闇を流
麗に彩っている。砂浜を横切って、大音響の音楽の鳴り響く天幕内にサ
ンダルを脱いで入ってみると、赤とゴールドの晴れ着サリーに着飾った
富と繁栄の女神様の白くて麗しいお顔がやさしげに明るい照明の下に浮
かび上がった。足元には素焼きの壷の口に乗せた椰子の実のお供え物も
いくつか、居合わせたお坊さんに額のところに赤いお印をつけてもら
う。お祈りを済ませた後、再度浜に戻って、満月を愛でる。立ち去りが
たい美しさで、いつまでも飽かずに波と月光の戯れに目を凝らす私だっ
た。