インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

カシミール民話/真の友人(3)

2008-05-07 22:34:33 | 現地語&民話
ある日、美人妻は自室の窓辺に立って、髪を飾り解き、クシを窓の上に
置きました。突然風が戸を揺り動かし、くしは下に落ちました。窓の下
には川が流れておりました。くしは流れに落ちて少しして、一匹の魚が
それを飲み込みました。ひとりの漁師がその川で漁獲しているとき、大
きな魚が網に引っかかりました。あまりの大魚に漁師は大喜びで取り上
げ、国王に献上しました。漁師が魚を切り分けているとき、腹のなかか
らくしが出てきました。王はくしを見て、これほどにも美しいくしは
きっとしかるべき女人の使っていたものだろうと思いました。いうまで
もなく、かの女人は大変美しいにちがいありません。

                         

全州に王はお触れを出し、くしの持ち主はやってきて引き上げるよう申
しました。その者には充分な賞金を取らせるとも。何日かが過ぎて、一
人の女が美人妻を伴って現れ、王の前にひれ伏し、くしは彼女のもので
すと申しました。それから、女は美人妻の館へ行きました。大変巧妙な
話術と優雅な振る舞いを目にして、妻は女がしかるべき女人と思い込
み、数日とどまるように申しました。女はこの機会こそを待ち構えてい
たのです。

女は王子を殺さなければ、妻を連れだせないことがわかっていました。
ある日、王子の食事に毒を盛って与え、殺害しました。僧にわいろを与
え、王子が逝去した旨のお触れをだすよう申しました。付近の村人たち
は、王子とその妻を溺愛いたしておりました。彼らは王子のしかるべき
死体処理をしなければ、妻もまた死に至るだろうと思いました。それ
で、大きな棺おけに大変慎重に死体を保管しました。非常に注意深く
行って、館の一隅に置きました。悪女の陰謀は成功しました。王子の妻
は館にたった一人でいることが耐えられず、女といっしょに行くのがよ
いと悟り、死体の世話を忘れて、放り出しました。

                    

家に着いて、女は自国の王に告げました。王は吉報を知らされ、そこに
行って美人寡婦のさまざまの魅力を目の当たりにして、自分の宮殿に連
れ帰りました。結婚して王妃にしたいと思い、求愛しました。美人寡婦
は喪に服しているため、半年間は結婚できませんと申し、半年後受け入
れますと返しました。王は同意しました。美人の住処として、グランド
ロードの脇に美しい館をこしらえ、与えました。寡婦はその館にひとり
で暮らしておりました。

             

ある日、窓辺に立っているとき、道を二人の男がこちらに向かって歩い
てくるのを妻は目撃しました。最初に、亡き夫から二人の親友について
聞いていたことを思い出しました。彼らを近くに呼び、正体を確認しま
した。二人はまさしく、故王子の親友でした。確認後、妻はすべての事
柄について話しました。ひとしきり話したあと、この国の王は必ず私と
結婚するでしょうと嘆きました。二人は妻に、紙の切れ端に結婚の時期
が近づいています、服喪期間の終了のために、2キンタルのビャクダン
と、結婚時には兄や兄嫁への贈り物も必要なことをしたためて、王に知
らせなさいと申しました。王はたちまちすべてを整えました。

                            

大工はビャクダンから家を一軒こしらえました。三人は家の中に入り、
大工が王子の死骸が安置されている家に行くよう命令を下すと、即座に
ビャクダンの家は宮殿に飛んでいきました。一同、棺おけのそばに行き
ました。ブラーミンには、死人を生き返らせるパワーが備わっていまし
た。彼が王子の手を取り、立ち上がらせると、王子はたちまち生き返り
ました。みなは大喜びしました。

                 

逸話を終えて、ライオンはこのように申しました。
「この三人こそが、真の友人といえます。王の息子はあなたの友人です
が、また敵でもあります」
何せ、ライオンの近くに置き去りにし、死にいたらせようとしたのです
から。幸いにも、ライオンはいかなる害も加えませんでした。恐れを知
らぬ勇敢な大臣の息子は家に戻った旨、堂々告げました。


※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ

(全編邦訳了/モハンティ三智江訳)

*     *     *

※カシミール地方に伝わる民話を読み終えて

「カシミール民話」は、オリッサ旧州都・カタックの出版社から発行さ
れたB6版の40ページの小冊子(20ルピー=約50円)。全編邦訳したもの
をご一読いただければわかるが、6話のストーリーで編纂されている。
わりと読みやすく面白い逸話ばかりで、学んでいて楽しかった。

なお、著者のフルロラー・ナーヨコさんは、裏表紙の顔写真から推察す
るに、年のころ4、50代の既婚女性と思われる。                            
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カシミール民話/真の友人(2)

2008-05-06 01:20:37 | 現地語&民話
大昔、一人の王子と一人のブラーミン、大工が大変親しい関係にありま
した。彼らは各自、特筆に価する性格をもっていました。王子は大変賢
く、難しい問題も簡単に妥協させ解決することができました。ブラーミ
ンは、死人を生き返らせることのできる特別なパワーを備えていまし
た。大工の資質は、ビャクダンの木から美しい邸宅をこしらえ、家自体
に命令すれば、どんな場所でも引いていくことができました。

                    

ある日、ブラーミンは理由あって、両親の家を出ることになりました。
彼は打ちひしがれ、ほかの二人がそばに来て不幸をなだめました。友人
二人は同様に家を出、自国を去って、別国に同行するほど気を遣ってく
れました。道を行きながら、王の息子は少し後をついてきました。他の
二人は先を行き、王の息子が後についていると思い込んでおりました。
しかし、王の息子は二辻に着いて、そこで違う道に行ってしまいまし
た。他の友人二人は正しい道を、王の息子は間違った道を行き、友人二
人は早足で行きながら、王の息子も早足で付いてきていると思っており
ました。かなり行った後、彼らは後方に王の息子を見つけることができ
ませんでした。二人は、王の息子がゆっくり歩いているものと思い込み
ました。非常に遅いので、彼はすでに家に戻ったとも思いました。

                          

王の息子は一本道を独りで歩き、一軒の大きな美しい館にぶつかりまし
た。一夜の宿を求める場を見つけたと思い、近くに行きました。しか
し、そこには誰もおりませんでした。ゆっくりと中に侵入しました。一
人の美しい乙女が彼に向かってきました。乙女は自己紹介した後、大変
悲しい顔になりました。彼女は王子の美しさに魅せられました。それ
で、なんという不幸な状況だろうと考えて、泣き出しました。泣いてい
る理由を王子が尋ねると、彼女は申しました。
「この家には、一匹の怪物が住んでおり、あちこちの地域で、たくさん
の人間を食いさらばえているのです。家に戻ってきて王子様を見たな
ら、間違いなく食い殺すことでしょう」

                   

王の息子は思い悩み、解決手段を見つけました。乙女の館の裏に、一軒
の家があってそこに大きな箱がありました。乙女は王の息子を隠れさ
せ、絶対に箱から出ないようにと申しました。
夜になって、怪物が戻り、人の匂いをかぎつけ、誰か来たのかと問いま
した。乙女は誰も来ませんと答えました。怪物はどんなやつが来たのか
と不安に思う余り、口を閉ざしました。夜、乙女は泣きながら、怪物に
非常な恐れを訴えました。

             

「もし誰かがあなたさまを殺し、戻ってこなかったなら、私は一人でど
うやって暮らしていけばよいのでしょう」
と申して、号泣しました。怪物は彼女をなだめ、喜ばせるために申しま
した。
「わしの命の鍵は、この館の玄関が握っておる。玄関をぶち破るのは並
大抵のことでなく、とにかく壊さないことには、わしを殺すことは不可
能だ」
乙女は怪物の命の秘密を知りました。次の日の朝、怪物が一日中出かけ
たあと、裏で王の息子は箱から飛び出しました。乙女は王の息子に、怪
物の秘密についてもらしました。
突然、彼は鉄の棒の一部で、玄関を叩き壊しました。怪物は途端に落ち
着かなくなり、死に至りました。王の息子と乙女は結婚し、幸福にその
館で暮らしました。王の息子は以前、彼の二人の親友について、妻に話
したことがありました。王の息子が怪物を殺したことで、付近の村人は
敬意を表し、彼らは恐れを知らぬ館の周囲に、家のドアを作り、住みだ
しました。

(つづく)

※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ


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カシミール民話/真の友人(1)

2008-05-04 23:44:56 | 現地語&民話
ある国にひとりの王様がいました。彼の大臣は、王とよく似た境遇にあ
りました。王にも大臣にも、息子がいなかったのです。二人はそのた
め、大変悲しんでおりました。二人の関係はそれほどにも緊密だったの
です。それで、いつでも片方が片方なしで一人でいるのを見たことがあ
りませんでした。起居時もいつも親友で、いっしょでした。

                        

ある日、二人はともに森に狩猟に行きました。森の奥深くまで行ったあ
と、一人の聖者が瞑想しているのにぶつかりました。目を閉じていたた
め、聖者は王と大臣を見ることができませんでした。それで王は地面に
ひれ伏して長いお辞儀をし、自分の不遇について告げました。聖者は彼
らに二個のマンゴーを与え、ひとつは王妃に、あとひとつは大臣の妻に
食べさせるよう申しました。
「きっと、お子を授かるはずです」

      

館に戻って、聖者の言に従って、マンゴーを妻たちに食べさせました。
九ヵ月後、二人にそれぞれ息子が産まれました。息子たちの誕生で、宮
殿と大臣宅の両方で、喜びの潮が沸き上げました。すべての地域の借地
人に、お祝いの食事を与えました。ブラーミンと貧民にも寄付やお布施
を与えました。全州とも、みな大喜びしました。

                      

息子たちは次第に成長していきました。幼い頃からいっしょに遊んだの
で、永遠の絆を培うことになりました。王と大臣自身が、深い関係で
あったごとくに。青年になって、ある日深い森に狩にいきました。奥深
く入っていき、長い道のりを歩きました。王の息子は非常に疲れまし
た。それに喉の渇きも覚えました。大臣の息子は、王の息子に木の根元
に座るよう申し、水をとりにいきました。

               

近くに湧きあげていた泉に進んで、大臣の息子は魅せられて、泉がどこ
から発しているのか、興味を持ちました。彼は、王の息子に急いで水を
持っていかねばならない事柄を、すっかり忘れてしまいました。泉の岸
辺に行って、先頭にたどり着きました。泉の源を見ると、一人の大変美
しい乙女が座っていました。乙女の足の上には、ライオンが頭を置いて
眠っています。

      

大臣の息子は非常に驚いて、急いで水を持って、王の息子の元へ戻りま
した。大臣の息子の表情が常ならぬことを見た王の息子は、理由を尋ね
ました。すべての事柄を語った後、王の息子はその美しい乙女を見たい
と焦がれました。二人は再度、その場に行きました。いかなる恐れも抱
かぬようにと、大臣の息子は申し、乙女のそばに行きました。そのと
き、ライオンは眠っていました。ゆっくりとライオンの頭を美しい足か
ら持ち上げて、その下に大臣の息子が代わりに寝ました。この機会を捉
えて、王の息子は美しい乙女を連れ去りました。

                          

大臣の息子はその場にとどまりました。ライオンが眠りから目覚めまし
た。大臣の息子を見て、美しい乙女はどこに行ったのだと尋ねました。
大臣の息子はすべての事柄を説明しました。そのあと、ライオンは、
王の息子はあなたの真の友人ではありませんと申しました。
「もし真の友なら、友人をライオンに向かわせ立ち去ることなど、とう
ていできえないはずだからです」
真の友人とはどんなものであるか悟らせるために、ライオンはある逸話
を語りはじめました。

            

(つづく)

※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ



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カシミール民話/残酷な継母

2008-04-16 01:24:34 | 現地語&民話
昔、一人のブラーミンとその妻が大変幸福な歳月を過ごしておりまし
た。ある日、ブラーミンは妻に、彼が食べないうちは、彼女も何も食べ
ないようにと命じました。もし食べたら、山羊になろうぞ。妻も同様に
夫に、自分なしで夫に何も食べないようにと言い渡し、もし食べたら、
虎になろうぞとおどしました。
この約束を取り交わした後、何日もが過ぎていきました。ある日、夫が
家にいないとき、妻は二人の息子の食事のためにこしらえていた料理の
味加減を知るため、少し口に放り入れました。たちまち妻は一匹の雌山
羊へと姿を変えてしまいました。彼女は家近辺のあちこちを飛び回りま
した。そのとき、夫が戻ってきました。山羊を見て、すべての事柄を悟
りました。例の約束を破ったため、山羊になったのだと知りました。
彼女を引いて、家の裏の一角につなぎ留めました。

数日後、ブラーミンは再婚しました。彼の二番目の奥さんは、しかし大
変悪らつな性分でした。育ち盛りの子供たちに少量食物を与えるのみ
で、充分に分けないほどの残酷さでした。子供たちのおなかは膨らま
ず、次第に不健康になってやせ衰えていきました。これらのことを山羊
になった生母は知りませんでした。
ある日、彼女はひとりの息子を近くにひそかに呼んで、棒で自分の角を
振ってつつけば、大量の食物が落ちてくるだろうと申しました。おかげ
で、息子たちはおなかはいっぱい食べることができました。子供たちは
空腹になると、このようにして十分な食物を得ることができました。彼
らの体調は改善し、とても健康でたくましくなりました。

                

ブラーミンの二番目の妻はそのうち、一人の娘を産みました。ブラーミ
ンは娘を大変慈しみ、よく世話をしました。次第に娘は大きくなりまし
た。外に出てほかの子達といっしょに遊びました。母は彼女に兄たちが
いつ何を食べてるか注意して見て、あとで話すように申しました。
娘はある日、息子たちが山羊のそばに行って、食物を得ているのを目撃
し、戻って母に告げました。彼女の母は残忍な性格でしたので、山羊を
殺すことに決めました。

ある日、ブラーミンが家に戻ってきたとき、仮病を装って言いました。
ベッドで寝ながら、痛みに苦しんでいる振りをしました。ブラーミンは
村のアユールヴェーダの医者を呼びました。妻は医者に賄賂を与え、わ
たしの病気は山羊の肉を食べればよくなるだろうと言うようにと、悪知
恵をつけました。医者の言葉を聴いて、ブラーミンは大変困窮しまし
た。外で一匹の山羊を買うための充分なお金がなかったのです。それで
妻の病気を治すために、家につないであった山羊を殺してマトンカレー
を作るしかないかと考えました。

                      

このことを知った息子たちは山羊の母のもとに行って、告げました。子
供たちが大変悩んでいるのを見て、母山羊は言いました。
「私は、山羊のままの姿でいたくないんだよ。やつらは私を殺せばいい
さ。お前たちはわたしの二本の角をとある場所に埋めなさい。誰にもこ
のことは言ってはならないよ。誰にも知らせてもいけない。お前たちが
空腹のときにはいつでも、この場所に来て食事を懇願すれば、手に入れ
られるだろう」
このあと、ブラーミンは一人の男を連れてきて、山羊を殺しました。彼
女の肉を料理し、妻に食べさせました。息子たちにも少量与えました。
ブラーミンの娘はこうしたさなかにも、次第に美しい娘に成長していき
ました。
                                 

ある日、娘は近くにある川に水浴びに行きました。水浴びしていると
き、鼻につけた金の鼻輪が水に滑って落ちました。そのとき、近くにい
た魚がそれを飲み込みました。川では一人の漁師が魚を捕まえていまし
た。その魚は漁師の網の中に落ちました。その国の王の料理人がその魚
を買いました。切り分けているとき、腹から金の鼻輪が出てきました。
料理人は即座に取り上げて、王に与えました。王は金の鼻輪を見て、州
内を回って、お触れを告げました。
「金の鼻輪を保管している。心当たりのある者は誰であろうとやって来
て、引き上げていくように」 
と知らせました。この事柄について知った、ひとりの息子が出向いて、
王に申しました。
「それは、水浴び時、うっかり水中に落としてしまった、どうやら妹の
金の鼻輪のようです」

             

王はそれで彼の妹にやって来て確認するように申しました。ブラーミン
の娘は出かけました、彼女の美貌を目の当たりにし、王は即座にプロ
ポーズしました。ブラーミンは大喜びし、娘を王と結婚させました。王
も、ブラーミンに使い切れないほどのお金と財産を与え、その後、みん
なで末永く幸福に暮らしたとのことです。

                             


※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ

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カシミール民話/ハーティモ王2

2008-04-08 00:21:50 | 現地語&民話
きこりには七人の娘がおりました。娘たちは次第に成長し、結婚適齢期
になりました。満足に食べさせるだけの甲斐性もないのに、どうやっ
て、結婚の支度をさせられるというのでしょうか。こうした緊迫状態に
あったとき、情け深い親戚が、
「ハーティモという名の親切な王様がいます。彼のところに行って不遇
を話せば、きっと、結婚資金のなにがしかを援助してくれるでしょう」
と言いました。
それを聞いたきこりは王国へ出かけました。しかし、その当時、王の状
況は決して好ましいものではありませんでした。大変な貧窮状態にあ
り、おのれのためのパン一切れすら、ままならぬ状態でした。しかし、
彼は非常に自由な精神と慈悲心に満ちておりました。いつだって、他人
に情けをかけたいと思っておりました。王は非常に貧弱な衣装を着てい
たので、きこりは彼が一般庶民と錯覚したほどでした。彼の不遇の一部
始終と、どうしたら、慈悲深い王様の下にたどり着けるだろうかと、国
にやって来た意図を申し述べ、援助してくれるようお願いしました。

   

王は夜、自分の館にとどまり、翌日、どうしたらきこりの意図に応えら
れるだろうと考えました。夜、王は自分の食事をきこりに与え、おのれ
は断食しました。朝は、王の威厳を持って、きこりと話しました。しか
し、彼自身きこりのように貧しかったのです。非常に困窮状態だったの
で、再度食事を与えることができないほどでした。
「しかし、私には一人娘がいて、あなたに譲ることができます。彼女を
売れば、そのお金であなたの娘を結婚させることができるでしょう。彼
女をいっしょに連れて行きなさい。神様は必ず、あなたに恵みを垂れて
くれるでしょう」
きこりは大変幸福でした。そして神様は王様に、この慈悲に見合うだけ
の報いを下さるでしょうとこのように申して、王の娘を伴って家に戻り
ました。

二人が森に入った途上で、一人の王子と出会いました。彼は森に猟に
やってきたのでした。王子は娘の容貌に惹かれ、結婚したいと焦がれ、
おのれの心からの願いをきこりに伝えました。きこりは喜びました。結
婚後、きこりも王子の援助により不遇から免れました。王子は一軒の美
しい館をこしらえ、充分なお金をきこりに与えました。で、一同財産を
築き、きこりの娘もみな、いい婿を見つけ、結婚できました、王子は新
妻をきこりの娘と思い込んでおりました。しかし、真実は長いこと隠さ
れておりませんでした。

                 

ある日、王子は一人の貧民に寄付をしました。これを見て、貧しい男の
妻が申しました。
「ハーティモ王は実に実に情け深いお方です」
王子は妻に、ハーティモ王について知ってることはなんであろうと申し
述べよと、尋ねました。
王女はすべての事柄を語りました。ハーティモ王がどのようにして自分
をきこりに譲って援助したか、仔細に申し述べました。王子はきこりを
呼びました。彼からも同様の話を聞いて、ただただ驚くばかりでした。
王子はハーティモ王を召還し、自分の州を支配するよう依頼しました。
なぜなら、彼自身若くて未熟だったからです。州管轄の経験も豊富でな
かったので、公務を助けるよう頼みました。王子はきこりにたくさんの
土地を与えました。そして、きこりから金の卵を盗み取った詐欺商人に
ついても、卵を返すよう命令を下したとのことです。

                             


※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ
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カシミール民話/ハーティモ王1

2008-04-07 01:40:09 | 現地語&民話
大変貧しい男がおりました。毎日森へ行って、木を切り倒してきまし
た。バザールで売っては、お金を得ました。食べさせていかなければな
らない家族全員の数は九名でした。妻と七人の娘、そして自分です。ど
うやっても、おなか一杯食べることが出来るだけの収入を得ることは不
可能です。満足できるおいしい食事は夢のまた夢でした。衣服は一枚の
ガムチャ(タオルや腰巻代わりにしたりする長い布地)すら、足元には
一対のサンダルさえおぼつかない状況でした。貧窮状態で森に出かけま
した。
                                 

ある日、木を切って森から戻り、非常に疲れました。木の下に木材の束
を置いて、陰で眠りました。そのとき、この路をフマーという名の一羽
の大きなジョヨ鳥が上空を飛びながら、この男を見ておりました。男の
貧困状態を見て大変に同情心が湧き上げました。地上に降りてきて、近
くに一個の金の卵を産み置き、また飛び去りました。眠りから覚めた男
は卵を見て、とにかくこれを売れば、何がしかの金を得るだろうと思
い、バザールへ行きました。そこで、男は毎日木を売っていました。卵
もいっしょに見せました。店の親父がなにがしかの金をくれました。金
の卵と認識した親父はどうやって入手したのかと尋ねましたが、素朴な
貧しい男にどうして、このようなものが手元に届いたのか、わかるはず
もありません。店主は大変ずるがしこかったので、この卵を産んだ鳥を
捕まえて持ってくれば、1ルピーあげようと誘惑しました。

                               

翌日、男は木を切り出しに行きました。戻る途中で、木の束を下ろし
て、例の木の根元で狸寝入りをしました。またしてもその日、ジョヨ鳥
が男の貧窮状態を見ておりました。彼の状態はまるで変わってないよう
に思われたので、昨日の金の卵は見つけることが出来なかったのだと思
い、地上に下りてきて、今度は見つけることができるよう前の方に卵を
産み置きました。
狸寝入りをしていた男は突然起き上がって、鳥を捕まえました。鳥は大
変悩み恐れ、言いました。
「私を殺さないでください。私はあなたを助けるためにやってきたので
す。この羽毛を火にかざせば、父の王国にたどり着きます。大金に潤う
富裕な父は、高価な真珠の首飾りを贈り物にくれるでしょう」 
しかし、おろかな男は鳥の言うことを信じることが出来ず、商人から1
ルピー得る誘惑に駆られ、布地で鳥を縛り、連れ去りました。しかし、
途上で、鳥は息絶え、死にました。これを見て、男は傷つきうちひしが
れました。死んだ鳥では、いくらなんでもあの商人も約束の1ルピーを
くれないだろうと思い、鳥の羽毛を火にかざしました。

   

突然、鳥の王国に到着していました。死んだ鳥の父母に会って、すべて
の事柄を逐一申し述べました。鳥の死骸を見て、両親と友人は号泣しま
した。これらすべてのことを、もう一羽の鳥が上空を飛びながら目撃し
ておりました。鳥たちが泣いているのを見て、下に降りてきて、理由を
尋ねました。鳥の集団はいいました。
「親愛なる友人が死去したのです。それで、もう彼を見ることはおろ
か、話すこともできないので、悲しんでいるんです」
別の鳥は彼らに希望を与えようと約束し、泣かないようと諭しました。
それから草の一部を持ってきて、死んだ鳥の顔の上に載せました。この
後、フマー鳥はすぐに息を吹き返しました。そして、きこりを真正面か
ら見てからかいました。彼は言いました。
「あなたの不幸を取り除くお助けをしたかったのに、あなたはそれがわ
からず、私を殺しました。だから、あなたはまた前どおりの悲惨な境遇
に戻るしかありません」
この後、きこりは自分で森に行き、大変に傷心の思いで家に戻りまし
た。もう、あのフマー鳥を見ることは二度とありませんでした。

                              

<つづく>
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英語偏重教育の弊害

2008-04-03 23:01:04 | 現地語&民話
多言語国家・インドの公用語は、北インド六州で話されているヒンディ
語と、英コロニー来の慣習で英語の両語となっていることは、ご存知の
方もおられると思う。母国語はヒンディという名目になっているが、実
は南では観光業関係者を除いてはほとんど通ぜず、北と南の人がコミュ
ニケーションをとろうと思ったら、英語になってしまうこともざら。

植民地来の名残りの慣習で、お役所等の公文書はすべて英語になってお
り、日常会話やTVでも、英語放送がポピュラーなので、現実には英語
が話せないと、かなり不自由することになる。外人観光客相手の物売り
など、教育はなくとも、実地で培ったブロークンイングリッシュで堂々
と渡り合っている。かくいうわが安宿の使用人たちも、外人客との受け
答えで学んだ実践ブロークン。
 
                     

アッパーミドルクラス層は以上の理由から、子女を英語一辺倒のイング
リッシュスクールへと通わせたがるのだ。いわゆるエリート教育だが、
こういう風潮が根強くまかり通っているため、母州語はどうしてもおろ
そかにされがち。当オリッサ州の言語であるオリヤも衰退の一途をたど
り、保護運動が起こっているほど。なにせ、三歳から英語教育を受けた
わが息子など、私が現地語レッスンで意味不明の単語があって英訳して
くれるよう頼んでも、「ぼく、長いこと、オリヤの読み書きしてないか
ら、忘れちゃったよ」と平然とのたまい、日本人母を唖然とさせる始
末。
        

そういえば、暗殺された故ラジヴ・ガンジー首相も母国語が苦手だっ
た。当オリッサ州チーフミニスター(ナヴィン・パトナイク氏/写真右)
にいたっては、デリーで育ったためヒンディは流暢だが、報道陣のイン
タビューに答えるときはもっぱら、英語、オリヤ語がまったく話せない
のである。母州語の話せない州首相ということで、常々野党の揶揄の
種。

それはさておき、一時期南隣の西ベンガル州・共産党政権は母州語軽視
の風潮を嘆き、英語学習開始時期を遅らせたことがあった。が、これが
父兄の大不評を買ったことはいうまでもなかった。英語に弱い児童が続
出し、州政府は周囲のプレッシャーから、前案を撤回せざるをえなかっ
た。現実問題として、英語が出来ないと、就職にも大いに差しさわりが
あるわけで、わが子の将来に影が差してくることを案じた親たちはす
わっ。
                 

当地のような田舎では、教育を受けていない年配の主婦層は英語が話せ
ず、男性に比べると女性の読解率はかなり落ちるが、都会の若い女性た
ちは比較的流暢に英語を操る。なかでも堪能なのは、意外に思われるか
もしれないが、芸能人女性。昔は河原乞食と蔑まれた職業だが、インド
ではリッチなスターの二世はみな海外でエリート教育を受けた後、映画
界入りするため、全員英語が話せる。男優はいうまでもないが、女優さ
んも当然のごとく達者な英語でインタビューに答え、総インテリ美人。

インディアンイングリッシュはなまりの強いブロークンで、早口の実践
英語だが、時にネイティヴ並みのすばらしい発音の芸能人もいて、たい
ていそういう人たちは、ショーなどのホスト役に抜擢されている。
マライカ・アローラ・カーンというセクシーなモデルの英語の発音はほ
んときれいで、立派に米英で通用する英語である。日本語と違って、イ
ンドの言語自体にrとlの発音があるので、巻き舌はお手のものなのだ。
いまだにこの区別が苦手な私には、うらましいばかり。オリヤ語にも両
発音があり、らりるれろといったら、一式発音しかない日本人の私は、
よく間違ってぜんぜん通じないという恥をかく羽目に。

                            

今年初め、デリー経由でリシケシに旅したとき、息子は寄宿舎時代の友
人と久々に再会したが、会食の席上、旧クラスメートとの会話はいうま
でもなく、早口にまくし立てる英会話で、親の私はフォローするのに苦
労した。

             
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カシミール民話/鳥娘

2008-03-17 23:43:17 | 現地語&民話
昔、二人の陶工夫婦が壷を作るための土を捜すために森にいきました。
彼らの幼い息子と娘は、面倒を見てくれる人が誰もいないので、いっ
しょに連れて行きました。子供は息子と娘一人でした。良質の土がある
森で、二人の子供は土遊びを始めました。一人がほじくり返し、もう一
人はバスケットに詰めました。そこへ一羽の鳶とからすがやってきて、
二人の子供に誰も付き添ってないのを見ると、男の子を連れ去り、殺し
てしまいました。けれども、同時に持ち去った女の子の方は殺さず、遠
い森の木の枝の上に隠しました。
彼らは女の子にたくさんの愛情を注ぎました。森の果物や野菜の根を見
つけては与えました。ときどき村に行ってパンを集め、女の子に食べさ
せました。女の子は次第に大きくなって、美しい娘に成長しました。

                     

ある日、森へ一人の大工が木を集めに来ました。その木のそばにたどり
着くと、誰かがあいさつするのを耳にしました。大工は木の上を見て、
美しい娘が枝の間から見ているのを目撃し、もし織り機を作って与えた
ら、どんなに喜ぶだろうと思いました。大工は娘の破れた衣服を見て、
同情心が湧き上げたのでした。で、織り機を作って与えました。からす
は村に行っており、留守でした。大工は糸巻き棒と布地を集め、持って
きました。娘は織り機を回し、糸を切っては編みました。

           

ある日、たまたま国王が延臣を伴って、その森に到着しました。木の近
くで彼らは織り機のパタンパタンと鳴る音を耳にしました。このような
森の奥深くにいったい誰がいるのだろう。王は驚くと共に、不審に思い
ました。森の中に誰がいるのか見つけるために、大臣に見てくるよう命
じました。大捜索の末、一人の若い娘が木の枝の間にいるのを見つけま
した。その娘は美しく魅惑的だったので、王は宮殿に連れ帰り、王妃と
して囲いました。王にはすでに六人もの王妃がおりました。この娘は七
番目の王妃になりました。
                       

ある日、王は王妃たちの中で誰が一番器用で趣味がいいか調べるために
視察に訪れました。王妃たちには、誰の家が一番美しく飾られているか
チェックしたいとの旨、告げました。
王妃たちはみな、各自の宮殿で、侍女と付き添いとともに暮らしており
ました。王妃はみな、自分の宮殿を飾り立てる必要があると感じまし
た。六人の王妃は館の壁をよい匂いのする芳香剤で洗い、装飾品を買っ
てきました。しかし、七番目の王妃は自分の意向に従って何もせず、か
らすにアドバイスを求めました。カラスは即座に、森に行って木の一部
を持ってきて、娘に、この木ですべての壁を磨くように言い渡しまし
た。カラスが指示したように、鳥娘は壁を磨きました。すると、途端に
きらきら輝き出し、壁は金色になりました。他の王妃たちが、何をつけ
たのかと聞きました。鳥娘はなんとも答えませんでした。

王が視察に訪れました。六人の王妃の家が美しく装飾されているのを見
て、非常に幸せになりました。
が、七番目の王妃の館を見たとき、心底驚喜しました。その館の周囲を
巡ると、すばらしい金色の行列でした。王は非常に喜んで、彼女をフ
ァーストクイーンにしました。第一妃の容貌はまどわせるほど美しかっ
たので、ほかの王妃たちのことはすっかり忘れてしまいました。

         

六人の王妃は非常に傷心の思いでした。彼女たちは嫉妬心から、第一妃
を殺す陰謀を企てました。相談の末、ある日、川に水浴びに行くことに
しました。無論、第一妃も連れて行きました。沐浴のために川の深いと
ころに行くと、だしぬけにみなで第一妃を水中深くに押し込みました。
王妃
たちは宮殿に戻り、王に第一妃は水浴び中足を滑らせて水中に沈没し、
溺れ死んだと告げました。王はそれを聞いて、非常に悲しみました。お
悔やみから、いかなる公務もする気になれませんでした。六人の王妃は
みな、第一妃を打ち負かし、大喜びで姿を消しました。王は自室のドア
を閉め切って一人で中にこもっておりました。

                 

第一妃を殺すために他の王妃たちは水中深くに押し込みましたが、実は
彼女は死んでおりませんでした。水に落ちて浮かびながら、一本の大き
な木の近くにたどり着きました。カラスはこれらすべてのことを目撃し
ておりました。毎日何か食べ物を持ってきて、王妃に与えました。鳥娘
はその大木の上に居座りました。このようにして何日もが過ぎていきま
した。

ある日、王が川にボートで訪れました。王妃はこれ幸いとばかり、王を
呼びました。王は王妃のそばまで来ると、すぐに救出しました。一部始
終を聞いて、王は宮殿に戻ると、六人の王妃を州から追放し、その後鳥
娘と共に大変幸福な笑いに満ちた日々を送ったとのことです。

                       


※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ


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カシミール民話/奇跡の指輪3

2008-03-08 01:21:50 | 現地語&民話
商人の息子は狩りから戻ってきましたが、美人の奥さんも館も見つける
ことができずうろたえました。はなはだ傷心の思いで、自害を企てよう
としたとき、犬と猫がやってきました。二匹は、主人からすべての事情
を聞いて、同情心を覚え、とにかく一刻も早く奥さんを見つけるため
に、大至急外に駆け出しました。
王の庭にたどり着き、彼女が屋敷の中にいるのを目撃しました。犬に待
つように言って、猫は屋根の上に飛び乗りました。それは、主人の奥さ
んの館そのものでした。屋敷の窓口から中に飛び込むと、猫を認めた妻
は、すべての出来事を語りました。
「奇跡の指輪は今、怪物の腹の中にあります」
と申しました。猫は、
「指輪を怪物の腹からとり出すためにできうる限りのことをしましょう」
と言い、奥さんをなだめました。
「指輪さえ手に入れば、またすべてが元通りになりましょう」
と続け、いとまを告げました。

                

猫は手口を見つけるためにあちこち動き回り、一匹のねずみの巣にぶつ
かりました。その日は、ねずみの王の息子の結婚式でした。ねずみたち
はみな踊って、浮かれていました。これはひとつのチャンスだと思い、
猫はねずみの王の息子と取引きをしました。ほかのねずみたちも、息子
に退去する許可を与えるべく王に懇願してくれました。
猫は言いました。
「もし彼がここを辞したら、ひとつやってもらいたい仕事があるのです」
ねずみの王は同意しました。
「王が彼に許可を与えてくだされば、怪物を絞め殺し、おなかにある指
輪を取り戻すことができるはずです」
ねずみの一群は王宮へと駆け出しました。怪物はそのとき、寝ていまし
た。一匹のねずみが尻尾を怪物の口の中に入れて、喉の奥まで届かせま
した。突然、怪物は咳を漏らし、指輪は腹の中から飛び出し、床に落ち
ました。ねずみは指輪を取り上げると駆け出し、これで主人を助けるよ
うにと猫に与えました。
              
                    

指輪を手に入れた猫は、主人に与えるために犬と共に駆け出しました。
途上、川にぶつかりました。犬の背に乗って猫は渡りました。半分ほど
行ったとき、犬が言いました。
「その指輪、俺に渡しな。でないと、奔流がさらっちまうよ」
イノセントな猫は恐れから、指輪を犬に与えました。しかし不運にも、
犬が指輪を受け取り損ねて、川にぽちゃんと落ちてしまいました。それ
は、一匹の魚に飲み込まれてしました。犬は非常に気落ちしました。な
んという不遇だ。傷心の思いでいたところへ、猫が勇気を奮い起こし言
いました。
「指輪を取り戻すための手段を講じましょう」
猫は、犬に一匹の羊を殺して連れてくるよう命令しました。犬は大急ぎ
で駆けて、殺した羊を引きずって戻ってきました。猫は羊の腹を割い
て、内臓をすべて取り出し、腹の空洞に隠れました。そして、犬にここ
から少し離れたところで待つように言い渡しました。

                         

はげたかの群が動物の死骸をじっと見下ろしておりました。そのうちの
一匹が空から死骸を見て、下に降りて、その上に止まりました。このと
き、猫は羊の腹の中から現われ、はげたかと取引きをしました。
「もし魚の腹から指輪を取り戻してこなければ、お前を殺すぞ」
はげたかは、
「なんとしてでも持ち帰ります」
とすごすご従いました。はげたかは魚の王のそばに行って、これこれし
かじかの魚が指輪を飲み込んだ、なんとしてでも指輪を取り戻さなけれ
ばならないと、脅かしました。魚の王は問い合わせ、指輪をすぐに持ち
帰り、猫はこのようにして指輪を取り戻すことができました。

                

犬がそばにやって来て、すぐ主人の元に走ろうと申しました。
今回も同様に、犬は指輪を所望しました。
「渡さなければ、お前を殺すぞ」
と脅かしました。猫は指輪を渡しましたが、犬はうっかり不注意から、
手中から落としてしまいました。そのとき、鳶が飛んできて、指輪をく
わえ、木の上に止まりました。犬と猫は木のそばまで駆け出し、猫は犬
にほえないようにと命じました。ほえれば、鳶は飛び上がってしまうで
しょう。そうしたら、またしても、どうやって指輪を取り戻したらいい
というのでしょうか。
夜がやってきて、猫が静々と木の上に登り、鳶を殺し指輪を取り戻し、
今度は犬も指輪を携えた猫を脅すようなことはありませんでした。二回
も過ちを犯したことを猫に深くわびました。
二匹は飛ぶような勢いで駆けて、ご主人の元に到着しました。主人は無
事指輪を取り戻し、大喜びしました。指輪の助けによって、館と美人妻
もまた手元に戻ってきました。それからは、みんないっしょに、大変幸
福な日々を過ごしましたとさ。

                              



※出典/カシュミーロ・ロコター
(カシミール地方の民話<オリヤ語>) 
著者/フルロラー・ナーヨコ






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カシミール民話/奇跡の指輪2

2008-03-07 01:24:38 | 現地語&民話
それから、みんなで丘の近くまで行きました。ふもとに泉が湧き上げて
いるのを見た犬と猫は言いました。
「ぼくたちは、ここで何をすればいいんですか」
若者は申しました。
「自分が戻ってくるまで、そこで待ちなさい。そう遠くには行かないか
ら」
このように申して、蛇と共に泉に飛び込み、目に水を撒き散らし消えま
した。彼らが去ったあと、犬が言いました。
「ぼくたちはこれから、どうすればいいの」
猫が答えました。
「ご主人がここで待ってなさいと言ったのだから、この場を離れてどこ
かに行くのはよくない。でも、おなかがとっても空いたなあ、おまえ、
ここにいろよ。おれ、ちょっくら村の近くまで行って、二人分の食料を
調達してくるから」
猫はしばらくして戻ってきて、二人は思う存分飲み食いし、飼い主が
戻ってくるのを待ちました。

            

若者と蛇は、無事に父王のそばにたどり着きました。父王はわが子とそ
の客人に、自分のそばに来るように申しました。しかし、息子は言いま
した。
「彼は私の命の恩人です。よって、彼のそばに奴隷のようにお仕えして
いるのです、おそばを離れることはできません」
で、父王は自ら、彼らの元に赴き、息子を抱擁し、客人を歓迎し、王宮
に連れて行くと告げました。
若者は王宮で何日も楽しく過ごしました。王は息子を戻してくれたお礼
に、右手の指輪と、貴重な皿とスプーンをギフトとして与えました。

                        

若者が戻ってきました。犬と猫はご主人を見て、大喜びしました。みな
で連れ立って、川へ行くことにしました。若者は、指輪と皿やスプーン
の魔術を試してみたかったのです。指輪に命令を与えるや否や、一軒の
美しい宮殿が出現しました。皿とスプーンにも命令すると同時に、あり
とあらゆるおいしいご馳走が目の前に現われました。すばらしい宮殿
と、美しく気の利いた妻と共に、何年も幸福な歳月が流れていきまし
た。

               

ある日、新妻は朝の沐浴時、髪の一部を切り取って、竹筒に詰め、窓か
ら川に投げ入れました。竹筒は流れに乗りながら、はるか遠くのもうひ
とつの州へたどり着きました。
そのとき、その州の王子が川岸を訪れました。竹筒を見て、水をこぼし
ながら開けると、非常に美しい一塊の金髪が漏れ出てきました。これ
は、どこかの州の王女のものにちがいないとつれづれに思いを巡らしま
した。
彼は王女を手中にするまでは、飲み食いはじめ、公務は一切できないと
告げて、自室のドアを閉め切って臥せってしまいました。王子は深い恋
患いをしておりました。王女を手に入れなければ、断食の果てにいずれ
は死に直面し、おのれの系譜は途絶えてしまうだろうと大いに悩み、周
章狼狽しておりました。

           

この王子には、遠縁のおばがおりました、彼女は実は、さまざまに姿形
を変えることのできる怪物でした。王は、おばの助けを借りるために、
呼びにやり、一切合財打ち明けました。
怪物は、助力を与えることに同意し、一羽のミツバチに変身し、あちこ
ちに飛び交い、鋭い嗅覚によって、美しい人妻を発見しました。次に老
女に姿を変えると、杖をこつこつ突いて、美貌の新妻のそばにたどり着
き、あなたの伯母ですよと自己紹介しました。
何年か後、新妻に女児が授かりました。国外へ出て、老婆からさまざま
に魅力的な言葉をかけられたものの、幼女はすべて忘れてしまいまし
た。美貌の新妻も、老女を頭から信じ切り、自室に連れて行き、世話を
焼きました。老女はこの家に三日間居座ったあげくに、奇跡の指輪の匂
いを嗅ぎつけました。そのときには、新妻とは非常に親しい間柄になっ
ていました。
この機会をすかさずとらえて、老女は言いました。
「指輪はあなたの手元にありますが、いつ何時、森に狩猟に出かけたご
主人が危険に遭遇しないとも限りませんよ」
新妻は老女の言葉を真に受けて、夫に指輪を渡すように申しました。

                       

狡猾な怪物は指輪を見て、矢庭に手でつかみ、突然ミツバチに姿を変
え、飛び去りました。怪物はまっすぐ宮殿に向かいました。そのとき、
王の息子は飲み食いできず、完全に弱っていました。怪物は指輪の魔術
について王子に話しました。王子がとっさにつかみ命令を下すや、宮殿
と美しい花嫁が現れ、園におりました。王子は美しい花嫁を見て、うろ
たえました。結婚したいとすぐさまプロポーズしました。美貌の人妻は
一月待ってくださいというより他に、どんな言い逃れの手段も見つける
ことはできませんでした。

                                 (つづく)
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