インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

帰国中のインド三大事件

2011-06-25 22:18:44 | 政治・社会・経済
三月末からふた月近くの日本滞在中の英字紙を少しずつチェックしているが、私が不在中の三大事件について記しておきたい。

まず一つ目は、わが居住地プリーのある当オリッサ州の北隣の西ベンガル州政権が変わったこと。34年間続いた共産党政権が失脚したのだ。長年の独占の上に傲慢に胡坐をかき、人民不在の汚職政権に住民がほとほと嫌気がさしたのである。前評判どおり、与党国民会議派(CongressI)との連立党トリナル・コングレス(Trinamool Congress)が圧勝、5月20日党首マムタ・バネルジ(Mamata Banerjee)が初の女性州首相に就任したのだった。タタ(Tata)社の世界一の最安値車(約30万)ナノ(Nano)の工場敷地問題で、土地を奪われた農民の側に立って抗議運動、弱者の味方を標榜する草の根党には、底辺層だけでなく、中流庶民も一票を投じた。

何せ、州都カルカッタは、私が旅行者だった三十数年前と比べても、道路状況など未整備で、発展が著しく遅れ、長年の悪政を物語っているのだ。2兆円という赤字財政を引き継いだ新女性首相も前途多難だが、手腕が期待される。マムタ首相は飾り気のない、庶民派政治家で、弁舌巧み、よく貧民救済ハンストを行うことでも知られる。常に綿のサリーに身を包み、住居も質素だ。今後、産業誘致で発展に拍車がかかることを祈るばかり。

次は、世界的に知れ渡った大きなニュースだが、9.11事件の首謀テロリスト、アルカイダ(Al Qaeda)代表のウサマ・ビン・ラディン(Osama Bin Ladin、巻頭写真左)が5月2日、銃殺されたこと。パキスタンのアボッタバード(Abbottabad)に潜伏していたがために、インドの新聞はこぞって大見出しで詳細に採り上げていた。頭を打たれて血のりのついた崩れたグロテスクな死に顔写真が公開されていたが、ネットでも公表されたとかいうこの写真は偽物だったらしい。それにしても、迫真に迫ったデスマスクで、ひと目見ただけで私もぎょっとおののいた。最初抵抗したとか言われていたが、武器も持たず無抵抗だったらしい。つまり、問答無用の銃殺だったわけだ。三番目の奥さんを盾にしたとも言われているが、彼女が動いたので足を打たれたということらしい。

アボッタバードは風光明媚な高原地で、リタイアした軍関係者がたくさん住んでおり、軍関連施設もあることから、パキスタン軍と諜報局ISI内に支持者がいたことは間違いない。首都のイスラマバードからもそう遠くないところに潜んでいたのだから、疑われても仕方がない。しかも、隠れ家は一般邸の八倍もある広大な敷地の時価数億円の三階建て、パキスタン政府・軍関係者ら有力者の支援がなければ、のうのうと五年も潜んでいられるはずがない。ネットやモバイルは使わないようにしていたというが、伝言用に使っていたパキスタン密使から足がついたらしい。CIAは近くに住居を構え、スパイ行為も続けていたというが、死後押収された書類からは大量のポルノCDも見つかったようだ。アメリカの堕落した文明を批判しながら、本人がひそかに楽しんでいたとしたら、矛盾もはなはだしい。息子の所有物かもしれないが、三番目の奥さんは17歳というから、精力絶倫の革命家の姿が浮かび上がる。近年は、トップとしての威力が衰え、象徴のみの存在になっていたとも言われ、ナンバー2との間の軋轢で資金に行き詰っていたともいう(さるパキスタン関係者の証言)。その反面、米の鉄道を脱線させるテロプランも綿密に練っていたようで、やはり単なる象徴ではない影響力もあったようだ。

なお、遺体が海中投棄されたことに対しては、イスラム教原理主義者はいうまでもなく、一般イスラム民からも、快く思われていないことは確か。イスラム教に則った葬り方(土葬)ではないからだ。しかし、アメリカ側としては、墓地を作れば、殉死者を奉る寺院となって聖化されることを恐れたようだ。
それにしても、ウサマ本人も、きっと予想だにしなかった急襲であったにちがいない。軍の擁護もあるし、五年間問題なく潜伏していたこともあって、緊張感が薄れ、気の緩みが出たのかもしれない。武器を所持していなかったことにも、油断が見られる。

最後の事件は、掌から聖灰(ビブーティー)を出すことで有名な超能力聖者サイババ(Sathya Sai baba、巻頭写真右)の逝去(4月24日午前7時40分、85歳)。ここひと月ほど体調を崩して入院していたようで、死因は心不全だった。生前サイババは死期を93歳、その8年後に生まれ変わると予言していたが、8年早い死となった。マンモハン・シン(manmohan Singh)首相は、愛と平和を広めた偉大なスピリチュアル聖者だったと最大級の献辞を捧げた。バジパイ前首相はじめ高名政治家、芸能人、スポーツ選手、欧米人信者にいたるまで、信者の数は160カ国にまたがり、3000万人。が、近年美男弟子の性的虐待疑惑も持ち上がっていた。これまでも、掌から砂を現出する奇跡はビデオからも歴然とわかる手品と批判され、過去の暗殺未遂事件で警官含め六人が自室で殺戮された顛末にも、関与説が取りざたされていた。
グル亡き後の南インド・プッタパルティにあるアシュラムは現在後継者問題(39歳の甥が名乗り出ている)や遺産相続問題など、大混乱に陥っているようだ。生前の居室からは信者からの寄付と思われる2億という札束と、98キロの金、307キロの銀も見つかった。宗教団体なので、税金はかからないのだ。アシュラムからひそかに札束を運び出そうとする車も、警察に捕まったばかり(後日甥が主犯だったことが判明したが、本人は葬儀費用と弁明)。
生前、サイババは後継者を明らかにしていなかったこともあって、6000億円といわれる膨大な遺産の行く末がどうなるか、気になるところだ。


超能力聖者は物議をかもす一方で、病院や学校、無料給水と社会的貢献も成し遂げた
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