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故郷の山と川

(故郷の来日山と円山川)

今の季節、故郷では朝霧が立つ。朝通学時、ひどいときには視界が50mほどになる。「弁当を忘れても傘は忘れない」といわれるほど雨の多い裏日本でも、朝霧の立つ日はお天気が良いとされる。午前の10時頃、霧が晴れてくる。霧が去って現れる日差しは眩しくて嬉しかった。

霧の立つ原因は豊岡盆地を南北に縦断して流れる円山川にある。秋冷とともに、天気の良い日は放射冷却現象が起きる。変化の少ない円山川の水温と外気の温度差が霧をつくる。

源流から河口まで落差が少ない円山川にはダムが無く、川の水がいつでもたっぷりと流れている。鉄道が出来る以前は、京阪神から陸路で来た城崎温泉の湯治客は、豊岡盆地から舟で河口の城崎まで通ったといわれる。今でも往時とおそらく水量は変らない。いまでも夏には納涼船が通うようだ。その川から川霧が立ち上がる。

霧は、日光に温められて外気と水温の温度差が無くなると供給されなくなって、盆地の切れ目の下流方向へ流れ出て消えていく。霧が晴れるときである。放射冷却の起きるときはお天気の良い日に限られる。だから霧の出る日は天気が良いことが約束されている。

その円山川の下流方向、方角では北方に来日(くるひ)山がある。この夏、帰郷したおり、両方を画面に入れて写真に撮ってみた。円山川と来日山はこの地方の学校の校歌には必ず歌い込まれている故郷のシンボルである。

朝早めに来日山に登ると、眼下に霧が雲海になって豊岡盆地を埋めているのがみられる。時間とともに霧が下流に流れて盆地から消えてゆく。その光景を見た気がするのだが、いつのことであったか記憶に無い。故郷を出てから、秋のこの季節に故郷に行ったことはほとんどないから子供の頃だと思うのだが、あるいは写真であったのか。

大河ではないがゆったりと流れている円山川と、高山ではないが、あたりより高く緩やかな稜線を見せる来日山、これらの風土がわが故郷の人々の資質をつくっている。そして、現在は、この景色の中に野生に戻されたコウノトリが悠々と飛んでいる。
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